肩甲帯の筋肉 胸郭の筋肉

【小胸筋】ストレッチや筋トレでこりや痛みを解消【イラストでわかりやすい筋肉解剖学(作用と起始停止)】

【小胸筋】解剖学的構造(作用、起始停止、神経支配など)を理解した効果的なストレッチでこりをほぐし、正しい筋トレで猫背解消!肩こり知らず!上向きバストや綺麗な姿勢を作りましょう。

【小胸筋】とは?どこにあるどんな筋肉?

【小胸筋】は、「大胸筋」「鎖骨下筋」「前鋸筋」と共に胸郭前面に付着する筋肉群で、バストや胸板の筋肉である「大胸筋」深層にあります。

【小胸筋】は「肩甲骨烏口突起」と「肋骨」をつなぐサスペンダーのような走行をしているため、「肩甲骨」および「胸郭」の動きに作用し、肩関節運動、呼吸、姿勢などに関与します。

  • 名称:小胸筋
  • ふりがな:しょうきょうきん
  • 英語名:Pectoralis minor

【小胸筋】が凝って固くなったりして正常に機能しなくなると、「猫背」「腕を動かす時の痛み」「垂れたバスト」「浅い呼吸で疲れやすい」などの痛みや悩みの原因になります。

【小胸筋】はデリケートな位置にある筋肉なので、解剖学構造を理解したセルフマッサージやストレッチで、良い姿勢と深い呼吸を維持しながら、良い姿勢や自信が持てる胸板やバストのある姿勢を維持しましょう!

【小胸筋】起始停止

【小胸筋】は、「第(2)3~5肋骨前面(肋軟骨付近)」から3〜4頭と「肋間筋を覆う筋膜」から起始し、上外側に走行して平な腱を構成し、「肩甲骨烏口突起」および「肩甲骨内側縁」に停止する筋肉です。

 起始停止
小胸筋第(2)3~5肋骨前面(肋軟骨付近)
肋間筋を覆う筋膜
肩甲骨内側縁
烏口突起

【小胸筋】は「大胸筋」深層部にあり、「肩甲骨」から「肋骨」に吊り下がるサスペンダーのような走行をイメージしておくと、作用や姿勢への影響がイメージしやすくなります。

【小胸筋】主な作用

【小胸筋】には様々な作用がありますが、主に「肩甲胸郭関節における肩甲骨運動、および肩甲骨の安定」に作用し、「肩甲骨」を固定した状態では「肋骨を引き上げる作用」が生じるため「努力呼吸時の呼吸補助筋」としても作用します。

日常の動作などで考えると、【小胸筋】は「腕を上方に引き上げてリーチ範囲を拡大」したり、「上向きのバストや胸を開いた姿勢を作る」ときに重要な筋肉です。

作用する関節(部位)主な作用
肩甲胸郭関節肩甲骨を前下方へ引く
肩甲骨を胸郭に安定させる
肋骨引き上げ(呼吸補助)

【小胸筋】は、「野球の投球」「テニスのサーブ」「バドミントンのスマッシュ」「水泳のクロールやバタフライ」など頭上の高い位置へリーチする動作でもよく働きます。

小胸筋作用:他の筋肉との連携作用

【小胸筋】は小さな筋肉ですが、上肢運動の要となる「肩甲骨」に付着しており、他の「肩甲骨」や「肋骨」に付着する筋肉群と連携して、姿勢、日常活動、スポーツや運動、トレーニングなどの際に重要な動きに大きく関与します。

筋肉関節および部位作用(運動方向)
【小胸筋】+「前鋸筋」肩甲胸郭関節肩甲骨プロトラクション
【小胸筋】+「前鋸筋」肩甲胸郭関節肩甲骨下制
【小胸筋】+「肩甲挙筋」+「菱形筋」肩甲胸郭関節肩甲骨下方回旋

例えば、【小胸筋】と「前鋸筋」が一緒に働く時は、「肩甲骨プロトラクション(肩甲骨が胸郭に沿って前外側に動く)」が生じ、腕を前方に伸ばす時にとても重要な働き(作用)ですし、通常重力によって自然に生じる運動である「肩甲骨下制」を意識的に行う場合にも【小胸筋】と【前鋸筋】が作用します。

また、抵抗に対する「肩甲骨下方回旋(下角が内側に移動する)」は、【小胸筋】が肩甲骨外側を下に引く作用と「肩甲挙筋」および「菱形筋」が回転軸の内側を上方に引くことによって生じます。

【小胸筋】神経支配

【小胸筋】は、「内側胸神経」「外側胸神経(C5-T1)」支配です。

【小胸筋】触診

【小胸筋】は、「大胸筋」とほぼ同じ大きさがある「鎖骨胸筋筋膜」に腋窩から肋骨前面部分の組織と共に埋め込まれるように「大胸筋」の深層部に存在する腋窩前壁にあります。

【小胸筋】筋繊維の中でも外側(腋窩側)の垂直繊維は、水平方向に走行する「大胸筋」の深層でも触診しやすいので、仰向けで腕を挙上して肘を曲げ、掌を床向きにして耳の近くにおいた状態で胸筋群と広背筋の間の肋骨に指を置き、「大胸筋」の下を、「烏口突起」から下やや内側に進んで腹直筋の上外側付着部までのラインをイメージしながら、胸鎖関節の方向(上)へゆっくりと肋骨に沿ってスライドさせて【小胸筋】に触れます。

【小胸筋】の走行を意識して肋骨に沿って指を滑らせると最初に第5肋骨の位置で筋繊維が確認でき、続いて第4肋骨の位置で筋繊維を確認できますし、リラックスした状態で適切にアプローチすれば、第3肋骨や第2肋骨まで【小胸筋】繊維を確認できます。

【小胸筋】の深層には「前鋸筋」と「肋間筋」があり、「鎖骨胸筋筋膜」に埋め込まれるように上肢に関連する神経や血管が走行しているため、【小胸筋】の位置は臨床ランドマークとしても重要な場所ですが、特に肋骨周囲は神経が多いため、押圧すると余計な痛みが生じます組織を押し込まないように十分に注意します。

また、バストや腋窩と接する触診が難しいデリケートな場所のため、触診が難しい場合は、【小胸筋】の緊張状態(短縮など)を体側から「肩甲骨の位置を評価」することで予測できますし、【小胸筋】は鎖骨胸筋筋膜に埋め込まれているため、【小胸筋】に直接触れることができなくても、大胸筋深層の組織をストレッチするアプローチを加えるだけでも、【小胸筋】の緊張や短縮を解消できます。

【小胸筋】押すと痛い?コリの原因と解消方法

日常の動作や家事もほとんどが腕を前に出して行う動作なので、【小胸筋】疲労しやすくコリやすい筋肉なので、以下のような自覚症状がある場合は、ストレッチ、マッサージ、筋トレなどの【小胸筋】セルフコンディショニングが必要かもしれません。

  • 【小胸筋】のあたりを押すと痛い
  • バストが垂れてきた
  • 呼吸が浅く疲れやすい
  • 肩こり・首こりが慢性化している
  • 猫背だと言われる
  • 腕を動かすと痛みがある

    これらの自覚症状は、「小胸筋」および「鎖骨胸筋筋膜」の短縮や機能不全により生じる典型的な機能制限によって生じます。

    自覚症状関節や部位姿勢や行動制限
    息をスムースに吸えない上位肋骨動きが制限肩と肋骨が同時に動く
    洗濯干しや頭上での作業がやりにくい肩甲骨の動きが制限肩(腕)が上がりにくい
    猫背胸郭(背骨含)と肩甲骨の動きが制限首や頭が前に出る
    呼吸が浅くなる
    仰向け肩先がベットにつかない
    胸が開けない
    肩甲骨の動きが制限巻き肩

    日常生活では特に、「猫背や巻き肩でスマホやパソコン作業を長時間行う」「電車でつり革をつかまるなど脇をしめた状態で腕をあげる状態」などが続くと【小胸筋】コリになり、 「呼吸が浅くなる」「肩こり」「首こり」などにつながり、腕の痛みや痺れを引き起こす原因となることもあります。

    また、【小胸筋】は、「野球の投球」「テニスのサーブ」「バドミントンのスマッシュ」「水泳のクロールやバタフライ」など高い位置から腕を振り下ろす動作でもよく働きますので、スポーツによる誤用や過用による痛みなどが生じることもあります。

    【小胸筋】解剖学構造を理解して、日々メンテナンスを行うことで、姿勢、運動パフォーマンス、呼吸、腕の痛み、痺れ、運動制限などを効果的に解消しましょう。

    【小胸筋】筋膜リリースとマッサージ

    【小胸筋】を触診してみて硬さや痛みを感じるようなら、まずはマッサージで柔軟性を取り戻しましょう。

    【小胸筋】直接的にマッサージするのは難しいので、「大胸筋」深層の「鎖骨胸筋筋膜」にアプローチする意識で、腋窩からテニスボールなどで押圧するなどして【小胸筋】筋膜リリースやマッサージを行います。

    【小胸筋】ストレッチ

    【小胸筋】ストレッチは、何かにぶら下がったり、ダウンドッグなどのヨガポーズなどのときに肩や腕を伸展させたりすることで「鎖骨胸筋筋膜」全体にアプローチをかけると効果的です。

    しっかり運動する意識を持たなくても、例えば、少し前屈みになり腕をだらんとさせた状態で【小胸筋】を軽く押圧し、ごく小さい動きで腕を回旋させると、【小胸筋】がほぐれますし、壁などを使って胸を広げるように肩関節を外転+伸展することでも(巻き型や猫背と逆の方向)【小胸筋】を効果的にストレッチできます。

    また、真っ直ぐの立位姿勢(腰を反らないように注意!)で左右の「肩甲骨」を寄せて引き下げるように後ろで腕を組んで下に引くようにすると、【小胸筋】と周囲の組織のストレッチに加えて拮抗する僧帽筋下部の強化もできるので、肩こり解消や姿勢改善にも効果的です。

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