肩甲帯の筋肉 背筋(背中の筋肉) 首(頸部)の筋肉

【僧帽筋】筋トレやストレッチのための【イラスト図解ででわかりやすい筋肉解剖学(起始停止や作用)】

肩周りのデザインや肩コリ解消のキーとなる【僧帽筋】解剖学構造についてイラスト図解を使ってわかりやすく説明していますので、正しく効率的なトレーニングやメンテナンスで理想の身体をデザインしましょう!

【僧帽筋】とは?どこにあるどんな筋肉?

【僧帽筋】は、頸背部の最表層上部にある大きな筋肉で、肩首周りからのバックラインを決める(「なで肩」「いかり肩」「首の長短」など)を決める意識しやすい筋肉です。

【僧帽筋】は背面から見ると菱形になっているので、英語ではそのまま形を表す「trapezoid Muscle」と呼ばれ、日本語訳では僧侶がかぶる帽子である「僧帽」に似ていることから【僧帽筋】と名付けられたようです。

  • 名称:僧帽筋
  • ふりがな:そうぼうきん
  • 英語名:Trapezius

【僧帽筋】の直下深層には、「小菱形筋」「大菱形筋」「肩甲挙筋」があり、肩や腕の運動に関連して強力に作用するので、機能的には頸部や背面の筋肉というよりも上肢(肩甲帯)の筋肉に分類できます。

また、「菱形筋」や「肩甲挙筋」深層には「上後鋸筋」があり、「板状筋」「棘筋」「最長筋」「腸肋筋」などの背骨周りの筋肉(脊柱起立筋群など)や「後頭下筋群(頭頸部をつなぐ筋肉群)」があります。

日常生活の中でも【僧帽筋】は、重いものを持つ時や肩や腕の運動時に肩甲骨を体幹に安定させる重要な役割があるため疲れやすく、ストレスやデスクワークなどで緊張してコリやすい筋肉です。

【僧帽筋】のコリや緊張状態は見た目でもすぐわかり、【僧帽筋】盛り上がり、なで肩、いかり肩など肩や首のラインに直接的に影響してしまいますので、【僧帽筋】起始停止など解剖学構造を理解したトレーニングやストレッチし、肩こり知らずのかっこいいバックラインもデザインしましょう、

【僧帽筋】発達の過程と多様な役割

【僧帽筋】は頸部の筋肉に分類される骨格筋の中でも最も大きく、頭部から後頸部を経由して上背部まで広く覆っているため、頭頸部の動きだけでなく、「姿勢(背面や背骨のライン)」や「肩関節(肩甲帯)」の動きにも強く作用し、肩こりの原因筋としてもよく知られています。

骨格筋であるにもかかわらず、脊髄神経だけでなく脳神経からも神経支配を受けている点も含めて、その役割や状態が全身に与える影響がとても大きい筋肉のひとつです。

そんな【僧帽筋】の機能(作用)は、成長と共に進化していきます。

 動き発達させる機能
Step1頭を起こす僧帽筋上部(左右対称)
Step2胸部を起こす(後屈する)+ 僧帽筋下部繊維(左右対称)
Step3 両手・両足を地につける+僧帽筋全体(左右対称)
Step4四つ這い(ハイハイ)+僧帽筋全体(左右非対称 )
Step4二本足歩行+僧帽筋全体(更に細かい役割分担)

生まれたばかりの赤ちゃんが「寝返り」を覚えて「腹臥位(うつ伏せ)」ができるようになると、頭を起こせるようになりますが、この動きができるのは「僧帽筋上部繊維」が使えるようになった結果です。

「うつ伏せ(腹臥位)」で頭を上げることができるようになったら、次第に腕で上半身を支えて背骨の後屈を深めて胸部を床面から離せるようになります。

これは「ヨガの後屈ポーズ」に似た動きですが、この時には「僧帽筋下部繊維」も発達して使えるようになっていて、「僧帽筋上部繊維」の作用で更に頭を後ろに傾けられるようにもなっています。

その後、初めて「両手・両足を地につけた姿勢」ができるようになった初期には、「僧帽筋」の3つの繊維(上部繊維・中部繊維・下部繊維)の役割はまだ分離されておらず、ひとつの大きな筋肉のように作用するため、頭部が後ろで大きく引っ張られるように頭の位置が高くなります。

その後、頭の位置を変えながら「四つ這い(ハイハイ)」ができるようになりますが、この時には上半身の重さを支えつつ腕の位置を動かすために「僧帽筋」を左右非対称に使えるようになっていて、頭部を持ち上げる繊維と腕を後ろに引く繊維など「僧帽筋」の中でも役割分担ができ始めます。

その後二本足で立ち歩けるようになると手で上半身を支える必要がなくなるので、骨格筋構造に更に大きな変化が生じます。

「僧帽筋」を始め多くの頸部筋肉は頭部を直立位に保持し、多様な方向へ頭部(顔や目線)を動かすことが主な役割になりますが、「僧帽筋」は上背部まで含む大きな筋肉なので、上部繊維・中部繊維・下部繊維とそれぞれ異なる役割の3つの筋肉のように作用します。

そのため、一部分だけが過剰に緊張している一方で、一部分だけが緩んで機能していないなどということも起こり、このような筋肉のアンバランスが「なで肩」「いかり肩」「肩こり」などの原因にもなります。

合わせてチェック

【僧帽筋】起始停止

【僧帽筋】は、「後頭骨〜全胸椎まで背骨上部広範囲」から起始し、左右に三角形を作るように筋腹を走行して、「肩甲帯(肩甲骨や鎖骨)の広範囲」に停止する幅広く大きい筋肉です。

機能的には、【僧帽筋】筋腹を「上部(下行繊維)」「中部(横行繊維)」「下部(上行繊維)」の3つに分けて考えますが、それぞれの繊維が「肩甲骨上角」に向かって収束し、「肩甲骨」や「鎖骨」の複数のポイントに停止します。

 起始停止
上部(下行部)後頭骨上項線内側1/3、外後頭隆起鎖骨外側1/3後縁
中部(横行部)C1-C6棘突起に付着した項靭帯、C7-T3棘突起および棘上靭帯肩峰内側縁、肩甲棘上縁
下部(上行部)T4-T12棘突起および棘上靭帯肩甲棘三角結節

「僧帽筋上部(下行繊維)」起始停止

「僧帽筋上部」は、「後頭骨上項線内側1/3」および「外後頭隆起」から起始し、下行するように走行して「鎖骨外側1/3後縁」に停止ます。

「僧帽筋上部」は、その走行から「僧帽筋下行繊維」と呼ばれることもあります。

「僧帽筋中部(横行繊維)」起始停止

「僧帽筋中部繊維」は、「頸椎および上部胸椎の棘突起や靱帯」から起始し、水平(横)方向に走行して「肩峰内側縁」と「肩甲棘上部」に停止ます。

「僧帽筋中部」は、その走行から「僧帽筋横行繊維」と呼ばれることもあります。

「僧帽筋下部(上行繊維)」起始停止

「僧帽筋下部繊維」は、「下部胸椎の棘突起や靱帯」から起始し、上行(一部横行)して、「肩甲棘三角結節上の腱膜」を介して停止します。

「僧帽筋下部」は、その走行から「僧帽筋上行繊維」と呼ばれることもあります。

【僧帽筋】作用

二本足歩行を獲得した後の【僧帽筋】の主な作用は、安静時および上肢の運動時に「肩甲骨を解剖学的に安定した位置に保持・調整すること」で、起始停止(走行)がことなる3つのパーツごとに機能(作用)を細かく分類もできます。

 作用する関節運動
上部(下行部)環椎後頭関節頭頸部伸展(両側)および側屈(同側)
上部(下行部)環軸関節/上位頸椎椎間関節頭部回旋(反対側)
上部(下行部)肩甲胸郭関節「肩甲骨」と「鎖骨の肩峰端」を上内側に引く(挙上・内転・上方回旋)
中部(横行部)肩甲胸郭関節肩甲骨を内側に引く(リトラクション)
下部(上行部)肩甲胸郭関節肩甲骨を下内側に引く(下制・下方回旋)

【僧帽筋】全体が緊張して肩甲骨を肋骨に安定させることで、「ダンベルなどの重いものを持つトレーニングや腕立て伏せなどの自重筋トレ」「投球動作やバレーのアタックなどの三角筋や回旋腱板などを同時に使う上肢運動」などが安定してできるようになります。

更に、【僧帽筋】は頚部や肩甲骨周りにも付着しているので、頭頸部の運動や肩(肩甲帯)の挙上などにも関与し、普段の姿勢の影響による肩こりや首こりなどの原因筋としても有名(自覚症状を感じやすい)です。

【僧帽筋上部繊維】作用

【僧帽筋上部繊維】は、深層にある「肩甲挙筋」と共にいわゆる肩をすくめる動作(肩甲胸郭関節における肩甲骨挙上)に作用します。

また、上腕挙上時の肩甲骨上方回旋、重りなどを持っている時に重力に抗して肩の位置を保つ時にも強く作用し、腕を体幹に安定させるためにも重要な役割があります。

更に、下行する繊維が「環椎後頭関節」や「上位頸椎の椎間関節」に作用する時は、「頭頸部側屈」や「頭部回旋(片側収縮)」「頭部伸展(両側収縮)」運動が生じます。

【僧帽筋中部繊維】作用

【僧帽筋中部繊維】は、深層にある「菱形筋」と共に「肩甲骨」を正中線に引きつける運動(リトラクション/内転)に作用します。

「肩甲骨リトラクション」は猫背や巻き肩になりがちな現代人の姿勢をリセットするときにとても重要な動きです。

【僧帽筋下部繊維】作用

【僧帽筋下部繊維】は、上部繊維と連携して「肩甲骨の回旋運動」や「上肢運動における肩甲骨の安定サポート」に重要な役割があります。

また、【僧帽筋下部繊維】が作用すると、特に坐位で手を使ってお尻を持ち上げるようなプッシュアップなど抵抗に対して肩を下げるような動作や運動で重要な「肩甲骨内側縁を引き下げる運動」が生じます。

現代人の生活習慣では、肩甲骨が引き上がりやすく【僧帽筋下部繊維】の筋緊張が筋力が低下していることが多く、【僧帽筋下部繊維】を意識的に収縮させて行う「肩甲骨引き下げ」運動が苦手な人が増えている傾向があります。

【僧帽筋】神経支配

【僧帽筋】は、上肢機能(運動)に関与する筋肉の中では、腕神経叢から神経支配を受けない唯一の筋肉です。

【僧帽筋】運動神経支配は「副神経(CN XI)」および「脊髄神経の腹側枝C3-C4(頸神経叢を介す)」で、筋肉からの固有受容/感覚線維も含まれています。

  • 副神経
  • 頸神経叢(C2~C4)

【僧帽筋】は、上肢機能(運動)に関与する筋肉の中で、腕神経叢から神経支配を受けない唯一の筋肉で、副神経に支配されていることも大きな特徴です。

【僧帽筋】がストレスや目や首を酷使するスマホやパソコン作業でコリやすい理由は、これらの神経支配も影響していると考えられます。

【僧帽筋】触診

【僧帽筋】は、肩および上背部覆う表層の大きな筋肉のため簡単にに触診できます。

【僧帽筋】前縁は、「後頸三角:(僧帽筋前縁)+(胸鎖乳突筋後縁)+(鎖骨)」後縁を構成していますが、「後頸三角」内には、「外頸静脈」「頚横動脈」「頚神経叢」「腕神経叢」「頚リンパ節」「副神経」「胸管」が通過しています。

更に、【僧帽筋】下縁は、肩甲骨に覆われず筋肉による厚い層がない胸壁部分である「触診三角:(広背筋)+(僧帽筋)+(大菱形筋)」後縁を構成します。

【僧帽筋】筋トレと僧帽筋ストレッチで肩こり解消!

パソコンやスマホ姿勢で首が前に出たり猫背になっている時、【僧帽筋】上部繊維は短縮し、【僧帽筋】中部繊維と【僧帽筋】後部繊維は引き伸ばされた状態で疲弊し、【僧帽筋】盛り上がりや【僧帽筋】コリによる肩こりの原因になります。

つまり、【僧帽筋】上部繊維は短縮してコリやすい傾向がある一方で、【僧帽筋】下部繊維と中部繊維は弱化しやすい筋肉であることを理解することが、効果的なストレッチやトレーニングメニューをする前に重要です。

【僧帽筋】コンディショニングの際に意識したいのは「肩甲骨」と「鎖骨」の動きなので、肩甲骨周りの解剖学構造や作用をイメージしながら行いましょう。

多くの人の場合、普段の生活で意識しにくい中部繊維の作用である「肩甲骨内転(リトラクション)」や下部繊維の作用である「肩甲骨下制」運動を意識することで、【僧帽筋】の柔軟性と肩甲骨周りの血流を改善して肩周りのバランスを整って、肩こりや猫背を解消できます。

【僧帽筋】中部繊維のトレーニング

「中部繊維の作用である「肩甲骨内転(リトラクション)」を正しく行うには、肩甲骨周りの解剖学構造をイメージしながら、鎖骨を真横に広げていくイメージで「肩甲骨」を背骨に近づける要素を含めた運動をしましょう。

【僧帽筋】下部繊維のトレーニング

ストレスで特に過緊張になりがちな【僧帽筋】上部繊維の緊張を緩めて下部繊維を収縮させる意識を持って、「肩甲骨」を下に引き下げる要素を含めた運動を行います。

肩甲骨を引き下げる運動をイメージできない場合は、ドリフターズのヒゲダンスをイメージして腕を下にひっぱる運動や椅子に座って腕で椅子を押してお尻を持ち上げるような運動でイメージを掴みましょう。

【僧帽筋】で決まる!「いかり肩」と「なで肩」

【僧帽筋】上部繊維が過剰に緊張すると「いかり肩」(肩甲骨挙上位)になり、逆に【僧帽筋】下部繊維が優位になると「なで肩」になります。

肩こり解消方法や姿勢改善方法は、「いかり肩」か「なで肩」で異なります。

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