肩甲帯の筋肉

【棘上筋(ローテーターカフ)】イラスト図解でわかりやすい筋肉解剖学(作用・起始停止・神経支配)

肩関節を包み込むローテーターカフの中でも最も断裂や損傷しやすく、肩の痛み、脱臼、四十肩や五十肩、肩こりなどの原因にもなりやすい筋肉【棘上筋】の解剖学構造(起始停止、作用、神経支配)についてイラスト図解を用いてわかりやすく解説しています。

【棘上筋】とは?どこにあるどんな筋肉?

【棘上筋】は、「僧帽筋」の深層で「肩甲骨棘上窩」から「上腕骨」に向かって走行している筋肉で、「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」と共にローテーターカフを構成し、肩関節を上から包み込むように肩関節の安定した機能をサポートしています。

筋肉名称ふりがな英語名
棘上筋きょくじょうきんSupraspinatus

【棘上筋】の主な作用は「ローテーターカフの一部として腕にかかる重力や肩関節運動に対して肩関節構造を安定させる」ことで、関節運動面では「肩甲上腕関節の外転運動(特に動き始め〜15度)」に重要な役割をします。

上腕骨を上から重力に対抗して引っ張るような走行になっている【棘上筋】は、腕をダラリと垂らした状態でも緊張し続けて(重力に負けて腕が落ちないように上から引っ張っている)いるため、ローテーターカフの中でも最も負担が大きく損傷(断裂など)しやすく、「肩の痛み」「脱臼」「四十肩や五十肩(肩関節周囲炎)」「肩こり」などの原因にもなりやすい筋肉です。

また、野球の投球時やバレーボールのアタックなどの際に、上腕骨が引っ張られて肩甲骨から離れようとする時にも強く働いて脱臼を予防する役割もあり、【棘上筋】に強い負荷がかかるスポーツなどによる【棘上筋】損傷もよく起こります。

【棘上筋】起始停止

【棘上筋】は、ローテーターカフ(回旋筋腱板)の中で最上位にある筋肉で、肩甲骨背面上部の「棘上窩」から起始し、小さな三角形の筋腹を作って走行して「上腕骨大結節」に停止します。

 起始停止
棘上筋肩甲骨棘上窩上腕骨大結節

「肩甲骨棘上窩」は肩甲棘上の窪みで、肩甲骨棘上窩から起始した筋繊維は、三角形の筋腹を作ったあと腱に移行して肩峰下を進み、肩関節を上から包み込むように「上腕骨大結節」に停止します。

【棘上筋】作用

【棘上筋】は回旋筋腱板(ローテーターカフ)を上部を構成する筋肉で、上部から関節窩に上腕骨頭を安定させるように調整を加えることで肩関節の安定性と可動性をサポートしています。

関節作用
肩関節肩関節安定
肩関節外転運動の始まり

【棘上筋】は単独で「肩関節外転運動」を起こす力はありませんが、外転運動の際の支点となる上腕骨頭の関節窩への引きつけ(つまり運動開始)と運動方向の調整に働き、「三角筋」の肩関節外転運動(外転運動開始)をサポートしていて、特に、動き始め〜15度までの外転運動に作用します。

【棘上筋】神経支配

【棘上筋】は、肩甲骨上神経(C5- C6)支配です。

【棘上筋】触診

【棘上筋】は「僧帽筋」深層で肩甲棘上部にある筋肉で、肩峰下滑液包によって「烏口肩峰靱帯」「肩峰」「三角筋」から分離されています。

肩関節外転の運動開始(0-15度)時は「三角筋」が主動作筋として作用しないため、【棘上筋】の収縮が確認しやすくなります。

【棘上筋】ストレッチとトレーニング

【棘上筋】は、解剖学構造を理解したストレッチやトレーニングで柔軟性を維持して疲労を溜めないコンディショニングを行うことで、「四十肩や五十肩(肩関節周囲炎)」「脱臼」「スポーツ損傷」などを予防できます。

「三角筋」に頼らないように、また過剰な負荷で逆に筋肉を痛めないように小さな動きで丁寧に行うことがポイントです。

【棘上筋】と回旋筋腱板(ローテーターカフ)

【ローテーターカフ】とは、「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4筋で構成される腱板構造で、人体で最も動く範囲が広い肩関節の安定性と広範囲の可動域を両立させるための解剖学構造(機能ユニット)です。

【ローテーターカフ】は、広範囲で多彩な運動ができる肩関節の安定性と可動域を実現するため、肩関節の健全な機能を維持するためにとても重要な機能構造単位で、上腕骨骨頭を肩甲骨関節窩に引きつけるように作用することで、肩関節の解剖学的構造のデメリット(不安定性)を補完し、メリット(可動性)を最大限生かす(骨頭を求心位へ誘導して骨頭の安定した支点での運動を制御)役割をしています。

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