『脳の認知機能(知的神経機能)』とは?「認知機能障害(認知症や高次脳機能障害)」と「加齢による脳老化(健忘や遂行機能低下など)」の違い

「生理学的に誰でにも起こる脳老化」と「認知機能障害(認知症や高次脳機能障害)」を明確に区別しながら、脳の認知機能について整理しよう!

「認知症」や「高次脳機能障害」などの認知機能障害とは脳の器質的な病変による病気であり、知的発育が一度完成した成人に知能(認知機能)障害が生じます。

一方、加齢による脳老化でも「認知症」や「高次脳機能障害」などと似たような症状が出ることもありますが、『生理学的脳老化』と『認知機能障害』は明確に区別する必要があります。

【脳の認知機能について】【生理学的脳老化と認知機能障害の違い】【認知機能障害の種類や症状および原因】についてわかりやすく説明します。

「脳の老化」と「認知機能障害」の違いと「脳の認知機能」を整理しよう!

脳の役割:「認知機能」とは?

脳は人体の司令塔として全身の機能を調整統合する役割があり、脳の役割のうち「理解、判断、論理などの知的機能」に関する機能全般を「認知機能」と呼びます。

「認知」とは、五感(視覚・聴覚・触覚・臭覚・味覚)を通じて外部から入ってきた情報から「物事や自分の置かれている状況を認識する」「物事を記憶する」「言葉を自由に操作する」「計算や学習をする」「考えて問題を解決する」など日常生活や社会生活を行う上で不可欠な能力で、精神医学で定義される「知能」や心理学で定義される「知覚を中心とする判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解などの包括概念」に類似します。

実際、「認知機能」という言葉を正常の脳機能の説明に使うことはあまりなく、一般的には「知能(知的機能)」という言葉で認識されることの方が多い脳機能かもしれませんが、認知症などの認知機能障害の症状である記憶・判断・計算・理解・学習・思考・言語などを含む高次の脳機能障害に関して説明する時は「認知機能」と表現します。

「認知機能(高次脳機能)」種類と責任脳部位

全身の器官を通じて得た情報は神経を通じて脳に届きますが、その情報を整理して統合して処理するために高次の脳機能である「認知機能」があります。

「認知機能(高次脳機能)」は包括的な概念で、例えば「会話」ひとつとっても「相手の発する言葉を聞き取り」「意味を理解し」「意図を判断して返答を考え」「言葉を発して相手に伝える」など様々な認知機能を使う必要があります。

「認知機能(高次脳機能)」についてより理解を深めるために、「認知機能(高次脳機能)」の代表的な個別要素とそれぞれの要素を担当する脳部位について整理します。

各認知機能の責任脳部位

「認知機能」は脳機能の中でも特に高次の統合機能であるため「高次脳機能」と呼ばれることもあり、それぞれの機能に関して統合の役割を担当する部位が決まっています。

部位 責任機能
後頭葉 視覚情報統合、見当識、地誌的認識
側頭葉 聴覚情報統合、身体部位認識
頭頂葉 手指認識、身体部位認識、左右識別、観念統合、構成機能、病態認識、観念と動作の連携、空間における位置認識
角回(頭頂葉) 言語機能(表出・理解・復唱・書取・読解・音読)
前頭葉 遂行機能
大脳皮質と海馬

記憶

状況認識機能

私たちは、常に変化する外部環境や人の関わりの中で、日常生活や社会生活を営んでいますので、常に五感(視覚・聴覚・触覚・臭覚・味覚)や深部感覚(体の位置や姿勢などを認識する機能)を通じて外部から入ってきた情報から「物事や自分の置かれている状況を認識する」する必要があります。

これができるのは、脳の認知機能が正常に機能しているからです。

例えば、眼球や視神経に全く問題がなくても、視覚からの情報を統合する脳の認知機能に問題があれば、私たちは「見えない」とか「見えにくい」状態になりますし、姿勢(身体の位置)情報が正常に統合されなければ、運動麻痺などの運動機能に全く問題がなくても思い通りに身体を動かせなくなってしまいます。

このように「状況認識」や「外部情報の統合」が正しくできないことで、認識や行動に異常が生じることを「失認」や「失行」と呼び、「失認」や「失行」は脳の機能障害が生じる部分によりその症状は多様です。

また、状況判断能力が障害されると危険認識も正しくできなくなりますので、怪我や事故の可能性が非常に高くなります。

記憶(情報を記録して保持する能力)

「記憶」も認知機能の重要な要素のひとつで、加齢に伴う「脳機能低下」として「記憶力低下」を実感している人は多いと思います。

「記憶」とは情報を記録して一定期間保持し、必要に応じて引き出すことができる能力のことで、保持できる期間により以下の3つに分類できます。

部位 責任機能
感覚記憶(感覚情報保存) 目・耳・鼻・皮膚などの感覚器官から常に得ている膨大な感覚情報のうち、特に意識していないために1秒程度で消滅する記憶
短期記憶・ワーキングメモリー(作業記憶) ワーキングメモリー(作業記憶)】:特定の目的を遂行するために一時的な保持を目的とした記憶
長期記憶 自分の電話番号、名前、生年月日など長期的に保持される記憶

記憶を司る脳は多くの神経細胞(ニューロン)によって構成されていますが、記憶は神経細胞の単位ではなく、複数の神経細胞をつなぐシナプスの単位で行われていて、特に記憶に関係しているのが脳の部位は【海馬】と【皮質領域】です。

直近の短期記憶を海馬が保持し、長期的な記憶は脳のさまざまな皮質領域にまたがって保存されます。

海馬から送られてきた記憶の情報は、電気信号として大脳皮質の神経細胞を刺激しますが、その刺激が強くなるほど多くのシナプスが組み合わせされて伝達効率が増し、特定の電気信号が通りやすい特別な回路ができ、その回路が長時間にわたって持続することで記憶が長期間保持され、記憶を引き出すときは、その記憶の回路に電気信号が流れて情報を引き出す(思い出す)ことができます。

つまり、海馬は長期記憶そのものを司る器官ではなく、長期記憶を形成する前段階に必要な器官で、海馬は多くの記憶を整理し、覚えるべきものとそうでないものを区別し、覚えるべきものと判断した記憶を大脳皮質に送る役割をしています。

海馬は、「年齢を重ねても神経細胞が増える」性質があるので、記憶力は鍛えれば鍛えるほど高められますが、海馬は快や不快の感情を作り出す扁桃体とのつながりが強いため、興味関心があるものでは記憶の定着が高まりますが、逆にストレスによって海馬の神経細胞は増える力を抑制されてしまうため記憶の形成が困難になることも分かっていて、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症すると海馬が小さくなります。

また、若くても、健康でも、私たちは一度覚えたことを忘れてしまいますが、それには様々な可能性が考えられます。

記憶には、【情報を認識して記憶を形成】【重要情報のフィルタリングや整理を行い記憶として保存(海馬や皮質領域)】【記憶を選択して引き出す(思い出す)】と複数のステップがありますので、そのどこで失敗しても忘れる(思い出せない)という状態が起こります。

原因 詳細
そもそも記憶が形成されていない

誰しも経験があると思いますが、そもそも記憶しようと意識していないことは記憶されません。

私たちの日常は、記憶することだけに集中できる場面は少なく、行動しながら記憶しなければならない場合がほとんどなので、意識して記憶しようとしていないことはほとんど忘れてしまいます。

そのため、私たちは重要なことはメモしたりして忘れないように補いますが、注意力や集中力が散漫な状態で聞いたことはすぐ忘れてしまうのは、そもそも情報を記憶として保存する以前の問題です。

明らかな脳の疾患や萎縮がないのに忘れっぽいひとは、そもそも記憶が形成されていません。

保存した記憶が衰退・干渉している

脳で保存できる容量に限度があるため、古い記憶や重要度が低くなった(反復されなくなった記憶)は、衰退していくか類似した新しい記憶と干渉して、思い出すことが困難になります。

海馬は似た記憶を区別できるという特異的性質を持っているので、海馬にファイルされる記憶は他の記憶と干渉されませんが、似た記憶を区別する能力が低い嗅周皮質にファイルされた記憶はごちゃごちゃになりやすい特徴があります。

一般的に似たような情報であれば、古い情報よりも新しい情報の方が思い出しやすく、感情的だったり、特別なイベントなど干渉する対象が少ない記憶ほど鮮明に思い出しやすい理由もここにあります。

生理学的には、海馬に集まる新しい記憶のうち、神経回路では頻繁に強く信号が来るシナプスはその結合が強くなりますが、信号があまり来ないシナプスでその結合が弱くなっているので、シナプス結合の強い記憶回路は皮質領域へ移動して長期記憶として定着して行きますが、シナプス結合の弱い記憶回路は、移動していく過程で衰退してしまいます。

これらの回路は、てんかん、頭部外傷、脳機能障害、脳萎縮(認知症)などでも壊れますので、この場合も記憶が衰退します。

記憶が適切に引き出せない

記憶が引き出せない(思い出せない)には、「自発的には思い出せないけれど、見る(聞く)と思い出す」状態と、「見ても(聞いても)思い出せない(初めて見た印象を受ける)」状態があります。

「自発的には思い出せないけれど、見る(聞く)と思い出す」状態は、記憶が衰退・干渉しているため脳内でその記憶を探しづらい状態になっていて、「見ても(聞いても)思い出せない(初めて見た印象を受ける)」状態はそもそも記憶されていないか、何らかの原因で記憶が完全に消失してしまっていると考えられます。

近年、忘れることは機能障害や低下とする説よりも、「脳が記憶を忘却するのは、脳に備わった基本的な機能である可能性がある」、つまり「脳は積極的に忘れようとしているとする説」が有力です。

もし、人間が全ての事柄を覚えていたら(忘れることができなければ)、膨大な情報量となってしまい限りある脳スペースを有効に活用できませんので、不要な情報は数日か数週間は保持しても、重要でないとフィルタリングしたものや新しい類似情報が入ってきた時は、古く重要ではない情報を脳のスペースから削除して、新しい情報や重要な情報を引き出しやすい状態を脳は意図的に作ろうとしています。

また、もし仮に感覚器官を通じて脳に送られる情報の全てが長期記憶に変換されるのであれば、脳が消費するエネルギーや記憶に必要な脳細胞が膨大な量になってしまい、現状の忘れる仕組みの脳が体内で消費する全エネルギーの約25%を消費することを考えると、膨大な記憶を保持するために更なるエネルギーを消費してしまえば生命維持すら困難になる可能性もありますので、消費エネルギーを抑えるために必要不可欠な機能とも考えられます。

パソコンやスマホも予め設定された容量以上はデータを保存できないので、古いものや不要なものを整理する必要があるように、脳にも全ての経験を記憶しておくほどのスペースがないため、一番重要なものや将来必要になるものだけを保存しておこうとうしますので、日常的なことよりも、感情的が強く動いたものや特別なイベントほど記憶に残りやすくなりますし、繰り返し練習して習得した情報ほど定着率が高まります。

「忘れる」ことは適応性でもあり、忘れるから効率的に記憶できるともいえますし、嫌なことなど忘れた方がいいこともあるので、忘れること自体が「認知機能」の問題にはなりません。

言語(言葉を自由に操作する)機能

言葉を自由に操る「言語機能」も社会生活を行う上で不可欠な認知機能です。

言語機能を司る機能中枢は大脳皮質の言語優位半球(右利きの人なら左半球)にあり、以下の機能全てを含みます。

機能 説明
表出 自発的に言葉を話す
理解 音声を聞いて意味のある言葉かどうか理解する
復唱 聞いた言葉と同じ言葉を表出する
書取 聞いたまたは見た言葉を書き取る
読解 文字を読む
音読 読んだ言葉を理解して相手に伝える

『言葉』はコミュニケーションをするためのツールのひとつで、道具である言葉はなくてもコミュニケーション自体は可能ですが、言葉の理解と表出のスキルは成熟度やその人の社会的な能力を示す指標でもありあります。

言葉の表出や理解の問題を『言語障害』といいますが、発話や発語機能に問題がないのに会話のキャッチボールが成立しない状態を「失語症」と呼び、脳の損傷の場所や範囲によって「聞く」「読む」「話す」「書く」のいずれかまたは全てが障害されます。

計算や学習をする機能

「認知機能」には計算をしたり、新しいことを学習する機能も含まれ、加齢による脳機能低下で「記憶力低下」とともに低下しやすい能力としても知られています。

遂行(考えて問題を解決する)機能

「遂行機能」は状況に応じた適切な行動を考え実行に移す能力のことで、認知機能の重要な要素のひとつです。

「遂行機能」が障害されると、計画や目標を立てて実行したり、順序立てて物事を処理したりすることが困難になるため、社会生活が非常に困難になります。

加齢による脳の変化

二十歳を過ぎると細胞の増加や成長が止まり『老化』が始まりますが、脳も身体の組織の一部なので同様に『老化』します。

「認知機能低下」は60歳を過ぎると顕著にみられるようになると言われていて、病理学的にみても高齢者の脳組織は神経細胞や神経突起の減少が認められ、脳委縮もみられます。

分類 具体的変化
脳の重さ 20‐30歳にかけて最大(1200‐1600g)だが40歳頃から減少が始まり80歳では17%程度減少
変化の時間差 灰白質:20-50歳の間に減少開始 
白質:70-90歳の間に減少開始
細胞減少が多い部位 大脳:前頭葉
側頭葉:灰白質部(大脳皮質、被殻)
小脳:プルキンエ細胞
脳幹:青斑核・黒質・視床・扁桃核
画像診断初見 前頭葉の円蓋部や大脳半球裂に面した面や側頭葉のシルビウス裂に面した部分の委縮が著名

ただし、また、脳の生理学的老化は認知機能障害(認知症)はイコールではなく、実際に脳の委縮が画像診断上認められても記憶力や判断力がしっかりした高齢者はたくさんいますし、日常生活や社会生活によって、健康状態、ストレス、教育、職業、趣味、周囲との人間関係など認知機能に与える因子に大きな差があるため、高齢者の認知機能には個人差が大きいという特徴があります。

また、認知機能障害にはいくつかの種類(「記憶障害」「失語(しつご)」「失行(しっこう)」「失認(しつにん)」「遂行(すいこう)機能障害」など)がありますが、加齢によって低下しやすい認知機能にも特徴があります。

例えば、「円熟」「老練」「長老の知恵」の言葉でも表現されるように、これまでの教育や学習などによって発達させた認知機能は高齢になっても保持されやすく高齢になっても活躍をする芸術家、文芸家、政治家、組織や企業のトップは、世界中にたくさんいます。

一方、新しいことを覚えたり、新しい環境に適応するために問題解決していく能力は、加齢により大きく低下していきますし、脳内での情報処理スピードも低下するため理解力・記憶力の低下したり、課題遂行に時間がかかったり、反応や判断が苦手になったり、反射運動の低下や平衡感覚障害が生じたりします。

「認知機能」を低下させるその他の要因

「認知機能」を低下させる要因として最も多いのは「加齢」による脳の器質的な変化(細胞減少や萎縮)ですが、脳神経や脳の病気、脳への循環や脳機能環境を阻害する以下のような因子も「認知機能」を大きく低下させる原因になります。

分類 具体的因子
神経の変性疾患 アルツハイマー病、ピック病、レビー小体型の認知症など
脳疾患 脳梗塞、脳出血など
感染症 クロイツフェルト・ヤコブ病など
内科系疾患 甲状腺機能低下症、ビタミンB12 欠乏症、脱水など
精神疾患 統合失調症、うつ病など
薬剤 抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬など

脳血管障害で脳の障害された部位が明確な場合は、失語や失行など症状と原因が結びつけられるものもありますが、加齢による全般的な脳萎縮や薬剤の副作用などでは、特定の目立つ症状が出るというよりも全般的に認知機能が低下します。

「認知症」の定義と分類(脳の病的変化)

認知症の定義を一言にまとめると、知的発育が一度完成した成人の知能障害です。(先天的な異常や知的発育途上での知能障害は『精神発達遅滞』といいます。)

「認知機能低下」とは、理解力、判断力、記憶力、言語理解能力など認知機能に関する能力が低下した状態のことで、脳の生理学的老化(加齢)により誰でも起こり得ることですが、日常生活を困難にするほど著しい状態が半年以上継続すると「認知症(認知機能障害)」と診断されます。

例えば「記憶障害」は認知機能障害の一例ですが、若い人や健康な人でも「物忘れ」をすることがあります。

最近物忘れがひどいとか、最近人の名前が出てこなくなったと感じるとか、何をしようとしていたかすぐ忘れちゃうとか、体験したことの一部を忘れたりしても、物忘れをしている自覚がある限りは「生理的健忘(けんぼう)」と呼び、「認知症(認知機能障害)」とみなしませんが、忘れた自覚が無い場合は「認知症」として対応が必要になります。

また、「認知症」による認知機能低下は萎縮や特有の病理学的所見に付随する特徴的な症状を伴い、これも認知症診断の基準のひとつになります。

例えば、老人班は認知症の脳にみられる特徴的な所見のひとつで、アルツハイマー神経原繊維変化により起こり、60歳を超えると出現・増加していくと言われていて、典型的な老人班は、中心にβアミロイドというタンパクからなる核があり、周辺に崩壊した神経突起・グリア細胞などが環状に取り囲んでいて、このβアミロイドの蓄積が認知症、つまり脳の病的変化の原因と考えられています。

認知症の特徴的な症状と重症度目安

初期認知症徴候観察リスト ( OLD: Observation List for early signs of Dementia )

  • 1:記憶、忘れっぽさ
    • 1)いつも日にちを忘れている:今日が何日かわからない
    • 2)少し前の事をしばしば忘れる:朝食を食べたことを忘れる
    • 3)最近聞いた事を繰り返すことができない:大きな出来事のニュースのでき事そのものを思い出せない
  • 2:語彙、会話内容の繰り返し
    • 4)同じ事を何度もいうことがしばしばある:診察中に同じ話を繰り返しする
    • 5)いつも同じ話を繰り返す:毎回、診察時に同じ話(昔話など)を繰り返しする
  • 3:会話の組み立て能力と文脈理解
    • 6)特定の単語や言葉がでてこないことがしばしばあり:仕事上の使いなれた言葉が出てこない
    • 7)話の脈絡をすぐに失う:話があちこちに飛ぶ
    • 8)質問を理解していないことが答えからわかる:医師の質問に対する答えが的外れでかみ合わない
    • 9)会話を理解する事がかなり困難:患者さんの話がわからない
  • 4:見当識障害・作話・依存など
    • 10)時間の概念がない:時間(午前も午後も)わからない
    • 11)話のつじつまを合わせようとする:答えの間違いを指摘されると言い繕う
    • 8)質問を理解していないことが答えからわかる:医師の質問に対する答えが的外れでかみ合わない
    • 12)家族に依存する様子がある:本人に質問すると家族の方を向く

アルツハイマー型認知症

「アルツハイマー型認知症」は、画像診断上高度な脳萎縮など器質的な変化が明確にみられる認知症で、比較的若い年齢でも発症し、徐々に悪化していくことが特徴です。

アルツハイマー型認知症の特徴的な症状は、中核症状(認知症患者に必ず認められる知的機能障害で診断の根拠になるもの)と周辺症状(知的機能が障害されつつある人が周囲との関わりの中で示す精神症状や行動異常や問題行動)に分類できますが、75%が物忘れや置き忘れなどの軽度記憶障害で発症し、緩徐に進行性の経過を取り、 物取られ妄想や視空間性認知機能障害が早期~中期に現れる事が多いという特徴があります。

分類 具体的変化
病理学的特徴 高度な脳委縮(内側側頭葉(特に海馬傍回)の委縮が顕著)
特に大脳皮質に多数の顆粒状構造物(老人班)と太い繊維の塊を持つ神経細胞変化(アルツハイマー神経原繊維変化)
好発年齢 早発型:初老期(40-65歳)に発症または晩発型:65歳以上に発症に分類される
初期症状 75%が物忘れや置き忘れなどの軽度記憶障害で発症
中核症状 記憶障害
判断力障害
問題解決能力障害
実行機能障害
言語障害
高次脳機能障害(失行・失認など)
周辺症状 精神症状:せん妄、幻覚、妄想、抑うつ状態
行動異常:異食、過食、不潔行為、徘徊、夕暮れ症候群、介護への抵抗

アルツハイマー型認知症の経過(重症度)を判断するスケールにがFAST(Functional Assessment Staging)があります。

ステージ 臨床診断 認知症判定 症状特徴
1 認知機能の障害なし 正常 主観的・客観的機能低下は認められない
2 非常に軽度の認知機能の低下 年齢相応 物の置き忘れを訴える・換語困難
3 軽度の認知機能低下 境界状態 熟練を要する機能の低下・新しい場所への旅行困難
4 中等度の認知機能低下 軽度のアルツハイマー型認知症 家計管理・買い物・招待・複雑な仕事が困難
5 やや高度の認知機能低下 中等度のアルツハイマー型認知症 洋服を選んで着る際の援助や入浴の説得などが必要
6 高度の認知機能低下 やや高度のアルツハイマー型認知症 不適切な着衣が見られる・入浴に介助要・入浴拒否、尿/便失禁・トイレの水を流さない
7 非常に高度の認知機能低下 高度のアルツハイマー型認知症 最大6語に限定された言語機能低下・理解単語の激減(一語程度)・歩行/着座/感情などの機能消失・混迷や昏睡

脳血管性認知症

「脳血管性認知症」は、脳血管障害に付随して生じる「認知症」で、責任病巣が明確な「高次脳機能障害」とは区別します。

「脳血管性認知症」の一般的な特徴としては、「高血圧症、糖尿病、心疾患などの既往歴あり」「比較的突然の発症」「まだら認知症」「段階的な悪化」「抑うつ症状」などがあります。

原因 特徴
脳梗塞 病巣の大きさに関わらず、視床・海馬・大脳辺縁系などに脳梗塞をきたした場合、急激に認知症状を発症
多発脳梗塞 大脳皮質に多発する場合と、大脳深部白質・灰白質に小梗塞(ラクナ)を多発する場合があり、階段的に徐々に進行する認知症が発症

 

レビー小体型認知症

アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症に次いで頻度の高い認知症で、大脳皮質や脳幹部にレビー小体と呼ばれる物質が多数出現して神経細胞が消滅するのが特徴です。

症状の特徴としては「認知症状が進行性に悪化」「日内変動がある繰り返す精神症状(具体的な幻視、弦聴)」「パーキンソン症候が出現(*認知症を伴うパーキンソン病と同義)」などがあります。

ピック病

「ピック病」は前頭側頭葉型認知症の一型で、40歳代男性に多く発症します。

初期の記銘力・記憶力は比較的保持されますが、早期から病識喪失し、脱抑制・人格変化・行動異常が現れる反社会的行動が目立つようにな李ます。

治療(原因の除去)が可能な認知症

「認知症」は進行するものがほとんどですが、「薬物誘発性認知症」「ビタミンB1欠乏症(ウェルニッケ脳症)」「胃全摘出後のビタミンB12欠乏症による認知機能低下」「慢性硬膜下血腫」「正常圧水頭症」「脳腫瘍」など原因が明確かつ一時的なものであれば、原因の除去することで、症状が解消する場合もあります。

高次脳機能障害の定義と分類

あらゆる機能を司る最高中枢である脳の中にも役割分担があり、全身の器官を通じて得た情報は神経を通じて脳に届きますが、脳ではさらにその情報を整理して統合するという働き(高次脳機能)があります。

高次脳機能障害は、情報を受け取り脳へ届けるシステムに問題がなくても、脳の最高中枢である脳の機能の中でも特に高次である統合機能(認知機能)が何らかの原因で障害された場合に起こります。

高次脳機能障害を理解するのはとても難しいのですが、症状と責任病巣(問題を引き起こしている脳部位)の関連が明確な場合も多く、症状から病巣の推測や確認もできますので整理して理解しましょう。

高次脳機能障害の症状と責任病巣

高次脳機能障害は、思考や近くの認識や統合を行う頭頂葉の障害で起こりやすいのですが、高次脳機能障害の症状と責任病巣の関連、症状の理解や判別が難しい失行や失認の症状の特徴についてまとめました。

部位 高次脳機能障害
優位半球後頭葉 視覚失認
優位半球側頭葉 聴覚失認・身体部位失認
優位半球頭頂葉 身体部位失認・手指失認・左右失認・観念運動失行・観念失行・構成失行・触覚失認・視覚性空間定位障害
優位半球角回 Gerstmann症候群・運動失語(Broca失語・皮質性運動失語)・感覚失語(Wernicke失語、皮質性感覚性失語)
劣位半球頭頂葉 病態失認・半側身体失認・半側空間無視(usn)・着衣失行・触覚失認・視覚性空間定位障害
劣位半球後頭葉 地誌的見当識障害・
前運動野 肢節運動失行

 

失行とは

「失行」とは高次脳機能障害の症状のひとつで、運動麻痺・運動失調・不随意運動などの運動障害がなく、かつ行うべき行為もわかっているのにその行為を行うことができない状態のことです。

行う身体的な能力はあり、やらなければいけないこともやるべきこともわかっているのにできない、なかなか理解が難しい症状です。

失行 責任病床 症状の特徴
肢節運動失行 左右いずれかの運動野 確実に習得できていた基本的な動作(立つ・歩く・手を開く・舌を出す・口笛を吹く・眼を閉じる)ができない
観念運動失行 優位半球の頭頂葉下部広範囲

指示された簡単な動作や習慣化された動作が意図的にできない(例えば、自発的に手を振ってサヨナラをしたり歯を磨いたりはできるのに、「さようならと手を振ってください」「歯を磨くまねをして下さい」といった指示に対して、頭では理解しているのに実行できない、比較的簡単な動作(Vサインの模倣など)でも自発的にはできるのに、指示されてやろうとするとできない、などで、自発的には動作が可能なため、本人は気づかないことが多い。

観念失行 優位半球の頭頂葉

使い慣れた物の扱い方が分からない、目的に沿った動作ができない(例えば、日常よく使うもので、物の名前や用途は説明できるし使い方も知っているのに、いざ使用しようとするとできない状態です。使い方を聞いてもできない、歯ブラシを歯を磨くものだとわかっているのに、いざ使ってみるように伝えて渡すと耳に入れてしまうとか、普段当たり前に行っていた、お茶を入れて飲むとかタバコを吸うなど手順を踏む動作ができなくなる、など)

構成失行 優位半球の頭頂葉から後頭葉 物の空間的な構成が把握ができない(例えば、丸や四角などのシンプルな図形を書く、簡単な積み木を組み立てる、マッチ棒で三角形を作るなどができなくなるなど)
着衣失行 優位半球(高度なものは劣位半球)の頭頂葉から後頭葉 着慣れているいる服でもうまく着用ができない

混乱しやすい「観念失行」と「観念運動失行」の違いを簡単に補足します。

「観念運動失行」はある一定の動作ができないのに対し、観念失行は順序だった動作に対して個々の部分的な動作はできますが、各動作の順序が混乱し複合した動作ができなくなります。

一方、「観念失行」は観念の連続性が断たれ、観念運動失効は観念の運動の連続性が断たれている状態です。

失認とは

失認は視覚・聴覚・味覚・嗅覚・体性感覚など感覚自体には異常がないが対象の認知ができない、注意や知能など一般的な精神機能が保持されているにも関わらず、対象を認知できないことです。

つまり、目の機能も、耳の機能も、触覚も、口の機能も全く問題がなく、触覚、視覚、聴覚の情報は感覚路を通じて入ってきていて(感覚の経路に器質的な問題がない)、意識もあり(意識レベルにも問題がない)、認知症状もない(認知レベルにも問題がない)のに、それが何であるか?を判別できない状態です。

感覚器を通じて脳に情報は入っているが脳の中で正しく統合されていない状態なので、脳の高次の機能障害です。

失行 責任病床 症状の特徴
視覚性失認 両側後頭葉 日常よく使うものを見せてもそれが何であるか?どんな使い方をするのか説明できない状態のことで、触ってみるとわかることが多い。
色彩失認 優位半球後頭葉 色彩がわからない状態
視空間失認 右の大脳半球広範(左の半側空間無視の場合)

どちらかの空間(主に左)を無視する状態(中心が身体の右側に寄っていく)

病巣と反対側の視空間を無視する症状で、例えば食事時に皿の半分を残す、歩行時に左側がぶつかるなどがあり、全視野が入っているが意識して注意を向けなければ左側(病巣と反対側)に気づかない状態です。

半側身体失認 右大脳半球(左の半側身体失認の場合)

身体の半分に対する認識の欠如がある(左が多くまるで存在しないかのように扱う)のことで、半側空間無視を伴うことが多く、麻痺側が壁にぶつかっていたりしても全く気にしなくなる状態

身体部位失認 前頭葉 身体の部位が分からなくなってしまう状態のことで、身体の部分を言われたり触られてもそこを指示できない
病態失認 前頭葉 麻痺があるのに否認したり、病気であることを認めない状態
相貌失認 右後頭葉内側面 友人・家族・鏡に映った自分の顔も分らない状態(声や着衣からの判断は可能)のことで、喜怒哀楽など表情の変化も認識できない
手指失認 指の操作に困難があり、手指とその名称が結びつかない状態のこと。
例えば、自分の指がそれぞれ何指が分からず、人差し指と言われてもその指を指示できない
左右失認

自己及び他人の身体の左右の区別ができない状態のことで、例えば、自分にとってどちら側が右か左か分からなく、右手で左耳を指すというような左右の理解ができなくなる

 

言語(読み書きや会話)関する高次脳機能障害

『言葉』はコミュニケーションをするためのツールのひとつで、道具である言葉はなくてもコミュニケーション自体は可能ですが、言葉の理解と表出のスキルは成熟度やその人の社会的な能力を示す指標でもありあります。

言語機能を司る機能中枢は大脳皮質の言語優位半球(一般的には左半球)にあり、「自発的に言葉を話す(表出)」「音声を聞いて意味のある言葉かどうか理解する(理解)」「聞いた言葉と同じ言葉を表出する(復唱)」「書き取る(書取)」「文字を読む(読解)」「読んだ言葉を理解して相手に伝える(音読)」を含み、計算や学習機能にも影響します。

認知機能としての言語機能が障害されると以下のような高次脳機能障害が生じます。

失行 責任病床 症状の特徴
運動性失語(ブローカ失語) ブローカ言語野(左前頭葉下後方) 聞いて理解することは比較的よくできるのに、話す事がうまくできずぎこちない話し方になる(軟口蓋や咽頭などの構音器官の発音、発語運動を開始させるタイミングをうまく調整できず、言葉を組み立てている音を上手く表出できない為に生じ、理解は日常会話レベルであれば比較的良好ですが複雑なもの、たとえば意味付けや読解は困難、音読・書字は漢字では保たれますがひらがなで困難となる)
感覚性失語(ウェルニッケ失語) ウェルニッケ言語野(左側頭葉上後方)

相手の話す言葉がまったく理解できず、流暢に話すことはできますが錯語が多く聞かれ、
病識がなく、相手の話を聞かず(理解できない)一方的にしゃべるという特徴がある

復唱が可能な場合がありますが、復唱している言葉の意味を理解することはできず、文字の読解も障害されるが、聴覚的理解よりは軽度で、漢字の方がひらがなより理解良好

全失語 「聞く・話す・読む・書く」のすべての言語機能に重度の障害が起きた状態
構音失行(発語失行)

全く運動障害がないのに構音筋(舌・口唇・咽頭など)が言語中枢の指示通りに動かなくなった状態で、まったく発語ができなくなったり、語音の言い間違い(音韻性錯語)・歪み・吃様症状などで発語が非流暢になる

韻律障害(ディスプロソディー) 話言葉のメロディー(音の強さ・高さ・リズム)が失われた状態で、話言葉に抑揚がなくなり短調になる
残語

ほとんどすべての言葉が失われた状態でかろうじて発話する、あるいは書くことのできる言語のことで、質問の内容とは無関係に、問いに対していつも同じ語が繰り返されることろから反回語とも言われ、全失語症や運動性失語症で見られる

語健忘 そのものや事や人をわかっているが名称(名前)が喚起できない状態のことで、語想起障害ともいい、名詞で多く起こるため代名詞を多様するようになりなる
迂語 語健忘により、目当ての言葉の想起ができないためその事物の特徴や用途を遠まわしに説明する状態で、漢字の音読でも見られます。
保続 呼称・音読・復唱などでよく出現する症状で、一度使った言葉のイメージや思考が頭から離れず、場面・状況が変わっても同じ言葉が繰り返し出没する状態。
ジャルゴン失語 錯語が頻発し、しゃべっていることが全く意味をなさなくなっている状態で、錯語の内容によって音性ジャルゴン、語性ジャルゴン、新造語性ジャルゴンなどがあります。
文法障害 話す・書く・読むなどで助詞が省略されたり、動詞の活用が不正確だったり語順を誤るなどが見られる状態のこと。
語音把握の障害 聴力が正常であるのに、語音が正しく認知・識別されない状態のことで、復唱が不正確になり聴覚理解も障害されます。
錯語 話す・呼称・音読・復唱・書字の際、誤って表出される言葉のこと
音韻性錯語(字性錯語) 語性錯語のことで、類義的錯語・非類義的錯語・新造語がある
失算

計算ができない状態のことで、暗算も筆算もできず演算自体ができないという障害のほかに、数字も読めないし書けない

失書

文字が書けない(写字より自発書字が障害されやすい)状態で例えば、自分の名前や住所などでも、自ら考えて書字することができず、重症例では字を書くことも書き取りもできなくなる

ゲルストマン症候群 手指失認・失書・左右失認・失算の4つが同時に生じる

失読

話す・聞くなどの障害はないのに読みができない状態

【聞く】【話す】【読む】【書く】のいずれかまたは全部が障害されることを『言語障害』といい、「失語症」の他にも「構音障害」の可能性もあります。

失語症は、脳血管障害(脳梗塞・脳出血)、脳腫瘍、頭部外傷に起因する大脳皮質の言語中枢の損傷による生じ、会話のキャッチボールが成立しない状態ですが、構音障害は脳皮質の顔面・咽喉頭・舌の運動の領域の損傷、脳幹の口腔・舌・咽頭に関与する神経核の損傷、口腔・舌・咽頭に関与する脳神経の末梢性の損傷が原因で生じる症状のことで、会話の内容は正確だけど、舌や口唇・咽頭・喉頭などの筋肉の運動麻痺により呂律が回らなかったり声がうまく出せない状態のことで、明確に区別できます。

高次脳機能障害(失行や失認)を他の機能障害と区別する方法

高次脳機能障害は、上記意外にも注意障害、脱抑制、認知機能障害など様々な種類があり、実際の症状がどの症状なのか明確に識別することは非常に困難で、様々な原因が複雑に絡み合っていることもあります。

失行か失認かを理解するためには、まず、麻痺・失調・感覚障害の有無、視覚機能や聴覚機能の障害の有無など、機能的な問題がないかどうかを見極めることが重要です。

その上で責任病巣と症状を照らし合わせて、可能性を確認していくこと正しい理解を目指しましょう。

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