マイケルジャクソンのムーンウォークとロボットダンスの違いは、小脳の働きを理解すると説明できます。小脳の機能と小脳障害によって生じる症状を結びつけて理解しましょう。
マイケルジャクソンのムーンウォークとロボットダンスの違い
マイケル・ジャクソンによるパフォーマンスで有名なムーンウォークは、足を交互に滑らし、前に歩いているように見せながら後ろに滑る技法。
とてもしなやかで滑らかな動きが魅力です。
このムーンウォークという美しいパフォーマンスにするには小脳の働きが不可欠です。
小脳機能がない状態でムーンウォークをさせようとすると、手足がガクガクしたぎこちないロボットのような動きになります。
ロボットダンスとムーンウォークの動きの違いをイメージすると、小脳の働きがよく理解できます。
小脳の機能
小脳は大脳の下に位置し、大脳より「小さな脳」ですが、その役割は非常に重要な『小さな巨人』。
以下が主な小脳の役割です。
運動機能の調節
小脳の運動機能調節機能をもう少し詳しく説明すると以下のようになります。
ロボットダンスとムーンウォークの大きな違いは運動の滑らかさ。
人間と同じように関節を作っても、ロボットにムーンウォークのような滑らかな動きができないのは、小脳による筋肉の協調運動などの調整機能がないからです。
小脳が、大脳皮質、筋・腱・関節などの深部感覚、内耳からの平衡感覚などを統合し、運動の強さやバランスなどを調節することで、滑らかな動きができます。
記憶の保存
大脳の記憶をコピーして保存するメモリーのような役割があります。
一度習得した動作、例えば「自転車に乗る」などの行為が意識しなくてもいつでもできるのは、小脳に記憶が保存されているためです。
高次脳機能
短期記憶や注意力、情動の制御、感情、高度な認識力、計画を立案する能力のほか、統合失調症(分裂病)や自閉症といった精神疾患と関係している可能性も報告されていています。
小脳を含む神経経路:脊髄小脳路
姿勢の調節運動における個々の筋の精密な協調のために必要な情報の伝達する神経路で、末梢からの感覚情報が以下の経路で小脳に届けられます。
後脊髄小脳路
主に下半身の深部感覚を伝える神経路で、脊髄に入り後索をやや上行した後か直接に後角の胸髄核に達します。
- 感覚受容器で感覚刺激を感知 ↓
- 脊髄の後根を通って脊髄内へ
- 同側の側索の後外側部の表層を後脊髄小脳路として上行(非交叉性)
- 下小脳脚 ↓
- 小脳
前脊髄小脳路
主に下半身の深部感覚を伝える神経路で、姿勢や下肢の運動の全般的協調に関与しています。
- 感覚受容器で感覚刺激を感知 ↓
- 脊髄の後根を通って脊髄内へ
- 脊髄の後角内から白交連を通って反対側に交叉して側索の表層近くを前脊髄小脳路として上行(交叉性)
- 小脳
副楔状束核小脳路
主として上半身(上肢と体幹上部)からの深部感覚を伝える神経経路です。
- 感覚受容器で感覚刺激を感知 ↓
- 脊髄の後根を通って脊髄内へ
- 脊髄の後索を上行して延髄の後索核(副楔状束核)で中継(非交叉性)
- 下小脳脚 ↓
- 小脳
小脳機能障害の症状
脳血管障害などで、小脳機能に障害が生じると、筋肉運動すべての協調性が乱れるため、以下のような症状が生じます。
機能と結び付けて理解しましょう。