脳脊髄液循環~脳を保護する仕組み~

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脳脊髄液は脳を保護する仕組みのひとつで、硬い頭蓋骨と柔らかい脳の隙間を埋めるように存在することで、脳自体に栄養を与えながら緩衝材の役割も果たしています。


脳脊髄液の仕組みと循環障害(水頭症)について整理してまとめました。

脳脊髄液は脳を守るクッション

人体のあらゆる情報を統合して生命活動を統括する脳は、頭蓋骨という硬く丈夫な空間に大切に収められていますが、柔らかい脳が傷付かずに安定して仕事ができるように、頭蓋骨内には他にも脳を保護する仕組みがたくさんあります。

頭蓋骨は複数の骨が癒合してできていますが、安定が必要な場所なので、顎関節以外の関節は存在しない構造になっています。

また、脳と脊髄(中枢神経)はとても柔らかいデリケートな器官なので、髄膜という膜で覆われており、髄膜は構造的に内側から軟膜・くも膜・硬膜の順にあり、特に硬膜は強靭で脳全体を隅々まで包んでいます。

更に、頭蓋骨と硬膜は比較的しっかりくっついていますが、くも膜と軟膜の間には脳脊髄液が流れ、脳に栄養を与えるとともに脳を優しく包むクッションの役割をしています。

脳脊髄液の仕組みと役割

脳を浸すように頭蓋骨と脳実質の間の空間を補填している脳脊髄液(髄液)は、脳室で産生されて脳表に現れ、脊髄くも膜下腔や脳表を循環し、最後はくも膜顆粒ということろで吸収されるという髄液循環を1日に4~5回行い、脳の周りを循環しながら緩衝材として脳を保護したり、脳実質との物質交感、代謝産物の運搬作用、酸-塩基平衡に関与しています。

脳脊髄液の産生

脳脊髄液は、脳室内の脈絡叢(細動脈のからまったもの)や脳室上衣(脳室表面の細胞層で生産されます。

髄液の産生量が多い順

  • 側脳室:左右の大脳実質内に1対
  • 第3脳室:左右の側脳室をつないで正中部にある
  • 第4脳室:第3脳室からつながり、小脳と橋に挟まれる
  • 脳表
  • 脳脊髄液循環

    ≪脳室の仕組みに沿った流れ≫

    【往路】

  • 側脳室
  • モンロー孔
  • 第3脳室
  • 中脳水道
  • 第4脳室
  • マジャンディ孔:橋背側正中部に開口
  • ルシュカ孔:小脳橋角部に開口
  • 脳表
  • くも膜下腔(くも膜と軟幕の間)を循環
  • 脳表くも膜下腔
  • 脊髄くも膜下腔 (小脳と延髄の下背側の大槽と呼ばれる脳表くも膜下腔から脊髄方向に広がったもの)
  • 脊髄の背側を下降しながら末端へ
  • 【復路】

  • 脊髄の腹側を通過
  • 脳表くも膜下腔
  • テント下脳表くも膜下腔
  • テント上脳表くも膜下腔
  • 頭頂部くも膜下腔
  • くも膜顆粒と呼ばれる腺組織を通過 (上矢状静脈洞に向かって突出)
  • 静脈洞に吸収
  • 脳脊髄液の循環障害〜水頭症〜

    水頭症は、以下のいずれかあるいはすべての原因で、髄液が脳室あるいは脳表くも膜に過剰に貯留することになり、頭蓋内圧亢進・脳室拡大した状態のことえ、脳脊髄液の循環障害です。

  • 髄液の生産量が異常に増えること
  • 髄液の循環経路が閉塞したり、狭窄したりして流れにくくなること
  • 髄液の吸収部位に障害が起こり、吸収量が低下すること
  • 水頭症の原因

    【髄液生産部の異常】

  • 脳室内の脈絡叢では、脳脊髄液の生産量がほぼ一定で頭蓋内圧が異常に上昇した時にわずかに減少するが、炎症が発生するとわずかに生産量が増加する(脈絡叢の代表的腫瘍(脈絡叢乳頭腫)でも生産量は大きく変わらない)
  • 【脳室内での髄液の通過障害】

  • 脳室内での髄液通路に障害物があると生じる
    脳室内や脳室近傍の腫瘍(脳室上衣腫・星細胞腫・頭蓋咽頭腫・コロイド囊胞・松果体腫瘍・脈絡叢乳頭腫)や先天性奇形(中脳水道狭窄症・アーノルドキアリ奇形・ダンディウォーカー奇形)
  • 【脳表くも膜下腔での髄液の通過障害】

  • 第4脳室を出た髄液は脳表のくも膜下腔を循環しながら頭頂部に向かう為、くも膜下出血や重症髄膜炎などが原因で起こる
  • 【髄液吸収部での障害】

  • 頭頂部正中線上の上矢状静脈洞内に突出したくも膜顆粒で静脈洞内に吸収されるはずの髄液が、くも膜下出血など(上矢状静脈洞血栓症でも起こりえる)で凝血塊や繊維素が吸収部を閉塞するため生じる
  • 年齢別水頭症の特徴

    水頭症では頭蓋内圧亢進症状が見られますが、その他の臨床症状は年齢によって特徴があります。

    【新生児から乳児期(2歳まで)】

  • ほとんどのケーで先天性中枢神経系疾患が原因
    • 第4脳室出口付近で通過障害をきたす疾患(アーノルドキアリ奇形・ダンディウオーカー奇形など)
    • 脊髄破裂(二分脊椎)
    • 頭蓋破裂(二分頭蓋)

  • 特徴的な症状
    • 頭囲拡大(正常時より、約2.5cm以上拡大)
    • 急激な進行
    • 大泉門膨隆
    • 頭蓋骨縫線解離
    • 頭皮静脈怒張
  • 【乳児期から学童期(10歳)まで】

  • 脳室内あるいは脳室近傍の腫瘍が原因
    • 特に小脳や第4脳室の髄芽腫/脳室上衣腫
    • 第3脳室の松果体腫瘍・脳室上衣腫

  • 特徴的な症状
    • 早期に頭痛や嘔吐
    • 歩行拙劣
    • 外転神経麻痺
    • うっ血乳頭
    • 頭蓋骨縫合は閉鎖しているので頭囲拡大は起こらない
  • 【成人期から老年期】

  • ほとんどのケーでほとんどが後天性の疾患(くも膜下出血後など)が原因だが、原因が特定できないものもある
    • くも膜下出血
    • 重症髄膜炎
    • 脳室内腫瘍(第3脳室コロイド嚢胞など)
    • 中脳水道狭窄症(閉塞症)
    • 正常圧水頭症
  • まれに先天性水頭症がありながら成人期に至るまで症状が出現せず、成人期に合併した感染症(髄膜炎など)で急激な発症をすることもあり。


  • 特徴的な症状
    • 認知機能低下
    • 尿失禁
    • 歩行不安定(失調性歩行)
    • 思考緩慢・自発性低下
    • 記憶障害
    • CT上脳室拡大認めるが、脳委縮と違い大脳皮質の脳溝の拡大なし
    • 脳室周囲・側脳室前角部周囲にX線低吸収域がみられる
    • 腰椎穿刺で髄液圧を測定すると正常範囲
  • 水頭症の診断

  • 急性であれば、頭蓋内圧亢進(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭(眼底鏡で測定)症状を確認
  • 乳幼児以外は外観から判断できない為、画像診断が必須
  • 成人の水頭症では脳室拡大が見られるが、脳萎縮と区別
  • 水頭症の治療

    原因の除去と頭蓋内圧を下げる対処療法や手術(脳室-腹腔短絡術など)を行う

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