認知症(知的神経機能障害)と生理学的脳の老化の違いとまとめ

病気の教科書
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認知症は脳の器質的な病変による病気であり、知的発育が一度完成した成人に知能障害が発生します。

生理学的に誰でにも起こる脳老化でも認知症と似たような症状が出ることもありますが、認知症の生理学的脳老化は明確に区別する必要があります。


【脳の基本的な役割】・【生理学的脳老化と認知症の違い】・【認知症の種類】について関連つけてわかりやすく説明します。

脳の役割

最近は日本国でも国を挙げて起業を応援するようになってきているように、時代の変化スピードがとても早い現代において、時代に合わせて世の中に必要とされるサービスや商品を生み出す起業家へ期待は世界中で高まっています。

企業の核となるのは、当然事業を作り上げた起業家(多くの場合はそのまま代表取締役社長・CEO)で、CEOの指示により様々な部門でメンバーが活躍することによって事業や会社が成り立ち育っていきます。

理念やビジョンを発信するの、各部門からの情報を取り入れ、決断し、指示を出すのもCEOの役目です。

会社はしっかしとした司令塔がいて、そこから発信される指示やビジョンが明確かつ円滑に各部署に届けられることによって、またそれぞれの部署から実践結果や外部情報のフィードバックが正確かつタイムリーに司令塔に届けられることによって成長する企業であり続けることができます。

人体においてもそんな企業のトップと同じ役割をする臓器があり、それが脳です。

人体は脳をCEOとする会社組織

人間の身体の仕組みの説明も会社組織とほぼ同じように説明ができます。

人間の場合、CEOの役割をするのが脳で、骨・筋肉・皮膚・血管・心臓・肝臓などがそれぞれの役割を持った専門部署があり、それを構成する細胞ひとつひとつが社員でありスタッフというイメージです。

脳がほぼ全てを決めている

会社は、CEOつまりトップ次第で良くも悪くもなるように、人間の考え方・行動・性格・習慣などもすべて脳が司っています。

運動や行動も脳が司っていて、筋肉は脳が発する指令を達成するための手段として発達するだけなので、筋肉を太くすれば運動ができるようになるわけではありません。

もちろん、見た目や性格も脳に左右されますし、健康状態も脳の働きが大きく影響します。

生理学的脳老化とは(認知症との比較)

『認知症』は加齢による生理学的な脳の老化とは異なります。

最近物忘れがひどいとか、最近人の名前が出てこなくなったと感じるとか、何をしようとしていたかすぐ忘れちゃうとか、年齢を重ねるごとに誰もが感じるこれらの変化は自分で認識できている限り認知症ではありません。

二十歳を過ぎると細胞の増加や成長が止まり『老化』が始まりますが、脳も身体の組織の一部なので同様に『老化』します。

病理学的にみても高齢者の脳組織は神経細胞や神経突起の減少が認められ、もちろん個人差はありますが脳が委縮し、反射運動の低下や平衡感覚障害、理解力・記憶力の低下などが生じます。

これは、誰にでも起こりえる加齢による『脳の老化』で、『脳の老化』と『認知症』はイコールではありません。

脳組織の生理的老化に関するデータ

加齢にともない形態学的には神経細胞の減少の為に脳委縮が進み、機能的には記憶力や判断力が低下する。

【脳の重さ】

  • 20‐30歳にかけて最大(1200‐1600g)
  • 40歳代から減少傾向
  • 80歳では17%程度に減少
  • 【細胞減少が著しい部位】

  • 灰白質:20-50歳の間に減少開始
  • 白質:70-90歳の間に減少開始

  • 大脳:前頭葉
  • 側頭葉:灰白質部(大脳皮質、被殻)
  • 小脳:プルキンエ細胞
  • 脳幹:青斑核・黒質・視床・扁桃核
  • 画像診断での所見では、前頭葉の円蓋部や大脳半球裂に面した面や側頭葉のシルビウス裂に面した部分の委縮が著名

    脳の生理的老化 = 認知症ではない

    脳の生理学的老化は認知症とイコールではなく、実際に脳の委縮が画像診断上認められても記憶力や判断力がしっかりした高齢者はたくさんいます。

    生理的脳老化による脳の変化は正常の範囲で認知症ではありませんが、認知症は脳に特有の病理学的所見や付随する特徴的な症状を伴うものを指します。

    老人班は認知症の脳にみられる特徴的な所見のひとつで、アルツハイマー神経原繊維変化により起こり、60歳を超えると出現し増加していくと言われています。

    典型的な老人班は、中心にβアミロイドというタンパクからなる核があり、周辺に崩壊した神経突起・グリア細胞などが環状に取り囲んでいて、このβアミロイドの蓄積が認知症、つまり脳の病的変化の原因と考えられています。

    認知症の分類(脳の病的変化)

    認知症の定義

    認知症の定義を一言にまとめると、知的発育が一度完成した成人の知能障害です。

    知能とは記憶や経験によって累積された知識や物事を判断する力や問題解決をしようとする力のことですが、記憶・知識・判断力のいずれかまたはすべてが一著しく障害された状態を『認知症』と呼びます。

    (先天的な異常や知的発育途上での知能障害は『精神発達遅滞』といいます。)

    頻度の多い認知症のメカニズムと特徴について詳しく説明をしていきます。

    アルツハイマー型認知症

    病理的特徴

  • 高度の脳委縮
  • 特に大脳皮質に多数の顆粒状構造物(老人班)と太い繊維の塊を持つ神経細胞変化(アルツハイマー神経原繊維変化)
  • MRIでは、内側側頭葉(特に海馬傍回)の委縮が顕著
  • 早発型:初老期(40-65歳)に発症または晩発型:65歳以上に発症に分類
  • 症状の特徴

    75%が物忘れや置き忘れなどの軽度記憶障害で発症し、緩徐に進行性の経過を取り、 物取られ妄想や視空間性認知機能障害が早期~中期に現れる事が多い。

    アルツハイマー型認知症の特徴的な症状は、中核症状(認知症患者に必ず認められる知的機能障害で診断の根拠になるもの)と周辺症状(知的機能が障害されつつある人が周囲との関わりの中で示す精神症状や行動異常や問題行動)に分類できます。


    中核症状

  • 記憶障害
  • 判断力障害
  • 問題解決能力障害
  • 実行機能障害
  • 言語障害
  • 高次脳機能障害(失行・失認など)

  • 周辺症状

  • 精神症状:せん妄、幻覚、妄想、抑うつ状態
  • 行動異常:異食、過食、不潔行為、徘徊、夕暮れ症候群、介護への抵抗
  • アルツハイマー型認知症評価表

    FAST(Functional Assessment Staging)は、アルツハイマー型認知症の経過(重症度)を判断するスケールです。

    ステージ 臨床診断 認知症判定 症状特徴
    1 認知機能の障害なし 正常 主観的・客観的機能低下は認められない
    2 非常に軽度の認知機能の低下 年齢相応 物の置き忘れを訴える・換語困難
    3 軽度の認知機能低下 境界状態 熟練を要する機能の低下・新しい場所への旅行困難
    4 中等度の認知機能低下 軽度のアルツハイマー型認知症 家計管理・買い物・招待・複雑な仕事が困難
    5 やや高度の認知機能低下 中等度のアルツハイマー型認知症 洋服を選んで着る際の援助や入浴の説得などが必要
    6 高度の認知機能低下 やや高度のアルツハイマー型認知症 不適切な着衣が見られる・入浴に介助要・入浴拒否、尿/便失禁・トイレの水を流さない
    7 非常に高度の認知機能低下 高度のアルツハイマー型認知症 最大6語に限定された言語機能低下・理解単語の激減(一語程度)・歩行/着座/感情などの機能消失・混迷や昏睡

    初期認知症徴候観察リスト ( OLD: Observation List for early signs of Dementia )

  • 1:記憶、忘れっぽさ
    • 1)いつも日にちを忘れている:今日が何日かわからない
    • 2)少し前の事をしばしば忘れる:朝食を食べたことを忘れる
    • 3)最近聞いた事を繰り返すことができない:大きな出来事のニュースのでき事そのものを思い出せない
  • 2:語彙、会話内容の繰り返し
    • 4)同じ事を何度もいうことがしばしばある:診察中に同じ話を繰り返しする
    • 5)いつも同じ話を繰り返す:毎回、診察時に同じ話(昔話など)を繰り返しする
  • 3:会話の組み立て能力と文脈理解
    • 6)特定の単語や言葉がでてこないことがしばしばあり:仕事上の使いなれた言葉が出てこない
    • 7)話の脈絡をすぐに失う:話があちこちに飛ぶ
    • 8)質問を理解していないことが答えからわかる:医師の質問に対する答えが的外れでかみ合わない
    • 9)会話を理解する事がかなり困難:患者さんの話がわからない
  • 4:見当識障害・作話・依存など
    • 10)時間の概念がない:時間(午前も午後も)わからない
    • 11)話のつじつまを合わせようとする:答えの間違いを指摘されると言い繕う
    • 8)質問を理解していないことが答えからわかる:医師の質問に対する答えが的外れでかみ合わない
    • 12)家族に依存する様子がある:本人に質問すると家族の方を向く
  • 脳血管性認知症

    脳血管性認知症の一般的特徴

  • 高血圧症、糖尿病、心疾患などの既往歴あり
  • 比較的突然の発症
  • まだら認知症
  • 段階的な悪化
  • 抑うつ症状
  • 脳血管性認知症の原因

    1)脳梗塞
    病巣の大きさに関わらず、視床・海馬・大脳辺縁系などに脳梗塞をきたした場合、急激に認知症状を発症。

    2)多発脳梗塞
    大脳皮質に多発する場合と、大脳深部白質・灰白質に小梗塞(ラクナ)を多発する場合があり、階段的に徐々に進行する認知症が発症。

    3)びまん性の白質病変
    大脳白質にびまん性の白質病変が生じて認知症を発症。
    病理学的には、びまん性の髄鞘喪失を示して脳委縮をきたすが、脱髄ではなく神経膠細胞の減少による神経線維の減少という考えが有力。

    レビー小体型認知症

    アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症に次いで頻度の高い認知症。

    病理的特徴

    大脳皮質や脳幹部にレビー小体と呼ばれる物質が多数出現して神経細胞が消滅する。

    症状の特徴

  • 認知症状が進行性に悪化
  • 日内変動がある
  • 繰り返す精神症状(具体的な幻視、弦聴)
  • パーキンソン症候が出現
    (*認知症を伴うパーキンソン病と同義)
  • ピック病

  • 前頭側頭葉型認知症の一型で40歳代男性に多い
  • 初期の記銘力・記憶力は比較的保持
  • 早期から病識喪失
  • 脱抑制・人格変化・行動異常が現れる
  • 反社会的行動
  • 治療(原因の除去)が可能な認知症

    以下のように原因が明確で、治療(原因の除去)が可能な認知症もあります。

  • 薬物誘発性認知症
  • ビタミンB1欠乏症(ウェルニッケ脳症)
  • 胃全摘出後のビタミンB12欠乏症による認知機能低下
  • 慢性硬膜下血腫
  • 正常圧水頭症
  • 脳腫瘍
  • 仮面認知症
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