言語障害【失語症と構音障害の違いと分類】 

病気の教科書
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言葉はコミュニケーションを行う際に重要な道具ですが、何らかの原因で【言葉という道具】が思うように使えなくなる【言語障害】が発生することがあります。


言葉という道具がどのような仕組みで生成され届けられるのかを理解しておくと、 言葉という道具の使用に不具合が生じても他の手段で補うなどの適切な対応を取ることができます。

ここでは言語障害を『失語症』と『構音障害』に分けて説明しています。
何が問題で何ができないのかを正しく理解しておけば、適切な配慮や対策でコミュニケーションを円滑に進めることができます。

言語機能とは

『言葉』はコミュニケーションをするためのツールのひとつ。

道具である言葉はなくてもコミュニケーション自体は可能ですが、言葉の理解と表出のスキルは成熟度やその人の社会的な能力を示す指標でもありあります。

言語機能を司る機能中枢は大脳皮質の言語優位半球(一般的には左半球)にあり、言語とは主に以下の機能を含みます。

  • 自発的に言葉を話す(表出)
  • 音声を聞いて意味のある言葉かどうか理解する(理解)
  • 聞いた言葉と同じ言葉を表出する(復唱)
  • 書き取る(書取)
  • 文字を読む(読解)
  • 読んだ言葉を理解して相手に伝える(音読)
  • 失語症と構音障害の違い

    言葉の表出や理解の問題を『言語障害』といい、大きく失語症と構音障害に分類できます。

    状態による違い

    失語症は会話のキャッチボールが成立しない状態で、構音障害は会話の内容は正確だけど、舌や口唇・咽頭・喉頭などの筋肉の運動麻痺により呂律が回らなかったり声がうまく出せない状態のことです。

    原因の違い

    失語症は大脳皮質の言語中枢の損傷による生じる症状ですが、 構音障害は、大脳皮質の顔面・咽喉頭・舌の運動の領域の損傷、脳幹の口腔・舌・咽頭に関与する神経核の損傷、口腔・舌・咽頭に関与する脳神経の末梢性の損傷が原因で生じる症状です。

    失語症とは

    ほとんどの人は大脳左側の優位半球に言葉を支配する『言語領域』がありますが、『失語症』は、この『言語領域』が何らかの原因で傷ついたために、言葉が上手く使えなくなった状態を言います。

    脳の損傷の場所や範囲によって以下の4つの機能のうちのいずれか、またはいくつかもしくは全部が障害されます。

  • 【聞く】
  • 【話す】
  • 【読む】
  • 【書く】
  • 具体的な症状は損傷した脳部位によって異なりますが、例えば以下のような症状が出現します。

  • 物品の名前が答えられない
  • 文字による言葉の理解や表出ができない
  • 音読と書取ができない
  • 復唱ができない
  • 失語症の原因疾患

    失語症の原因として考えられる病気としては以下があります。

  • 脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
  • 脳腫瘍
  • 頭部外傷
  • 失語症の種類

    運動性失語(ブローカ失語)

    ブローカ言語野(左前頭葉下後方)の障害による流暢性に欠ける運動性の失語。
    聞いて理解することは比較的よくできるのに、話す事がうまくできずぎこちない話し方になるのが特徴です。

    軟口蓋や咽頭などの構音器官の発音、発語運動を開始させるタイミングをうまく調整できず、言葉を組み立てている音を上手く表出できない為に起こります。

    理解は日常会話レベルであれば比較的良好ですが複雑なもの、たとえば意味付けや読解は困難、音読・書字は漢字では保たれますがひらがなで困難となります。

    感覚性失語(ウェルニッケ失語)

    ウェルニッケ言語野(左側頭葉上後方)の損傷による失語で、相手の話す言葉がまったく理解できず、流暢に話すことはできますが錯語が多く聞かれます。
    また、病識がなく、相手の話を聞かず(理解できない)一方的にしゃべるという特徴があります。

    復唱が可能な場合がありますが、復唱している言葉の意味を理解することはできません。
    文字の読解も障害されるが、聴覚的理解よりは軽度で、漢字の方がひらがなより理解良好です。

    全失語

    「聞く・話す・読む・書く」のすべての言語機能に重度の障害が起きた状態のこと。

    失語症でみられるその他の症状

    中枢性の言語障害(失語症)の症状には以下のような症状があります。

    構音失行(発語失行)

    全く運動障害がないのに構音筋(舌・口唇・咽頭など)が言語中枢の指示通りに動かなくなった状態。

    まったく発語ができなくなったり、語音の言い間違い(音韻性錯語)・歪み・吃様症状などで発語が非流暢になります。

    韻律障害(ディスプロソディー)

    話言葉のメロディー(音の強さ・高さ・リズム)が失われた状態で、話言葉に抑揚がなくなり短調になります。

    残語

    ほとんどすべての言葉が失われた状態でかろうじて発話する、あるいは書くことのできる言語のこと。

    質問の内容とは無関係に、問いに対していつも同じ語が繰り返されることろから反回語とも言われ、全失語症や運動性失語症で見られます。

    語健忘

    そのものや事や人をわかっているが名称(名前)が喚起できない状態のことで、語想起障害ともいい、名詞で多く起こるため代名詞を多様するようになります。

    錯語

    話す・呼称・音読・復唱・書字の際、誤って表出される言葉のこと。

    音韻性錯語(字性錯語)

    語性錯語のことで、類義的錯語・非類義的錯語・新造語があります。

    迂語

    語健忘により、目当ての言葉の想起ができないためその事物の特徴や用途を遠まわしに説明する状態で、漢字の音読でも見られます。

    保続

    呼称・音読・復唱などでよく出現する症状で、一度使った言葉のイメージや思考が頭から離れず、場面・状況が変わっても同じ言葉が繰り返し出没する状態。

    ジャルゴン失語

    錯語が頻発し、しゃべっていることが全く意味をなさなくなっている状態。
    錯語の内容によって音性ジャルゴン、語性ジャルゴン、新造語性ジャルゴンなどがあります。

    文法障害

    話す・書く・読むなどで助詞が省略されたり、動詞の活用が不正確だったり語順を誤るなどが見られる状態のこと。

    語音把握の障害

    聴力が正常であるのに、語音が正しく認知・識別されない状態のことで、復唱が不正確になり聴覚理解も障害されます。

    構音障害とは

    口から言葉を出す際の音声の組み立てや調節に異常がある場合に起こり、滑らかに言葉を発することができない状態のことを構音障害といいます。

    構音とは

    語音を正しく作りだすためには声帯や口蓋・舌・口唇などを適切な形に変化させることが必要で、この音声の通路にある諸器官の運動により語音を作りだすことを「構音」といい、脳の指令による随意的な運動です。

    つまり、構音を機能的に生じさせるには、「口・舌・咽頭・口蓋などの発声に必要な構音器官が言語中枢からの指令で適切に動くこと」と「小脳や大脳基底核で滑らかな運動になるように調節する機能が正常であること」がいずれも必要です。

    構音器官の中枢と神経経路

    大脳皮質運動野(顔面・口腔・咽喉頭器官の部分から出た指令は、皮質延髄路、内方膝部、大脳脚、脳幹を経て構音に関係した以下の脳神経核へ届きます。

  • 顔面神経・舌下神経:一側性支配
  • 疑核(口蓋、咽頭、喉頭の運動を支配):両側性支配
  • 顔面神経核:顔面神経:顔面の表情筋・口唇の運動
  • 疑核:舌咽神経(運動枝):咽頭筋の運動、舌・咽頭の知覚
  • 疑核:迷走神経:咽頭筋・声帯の運動
  • 舌舌神経核:舌の運動
  • 構音障害の症状の特徴

    言葉の理解も発する言葉の内容も正常であることが失語症との明確な違い。
    会話の内容や了解には全く問題がないのにしゃべりずらさが出るため相手は聞き取りにくくなります。
    また、構音障害の中でも、舌の動きが不自由になる状態を特に呂律障害と言います。

    発音に関わる神経や筋肉は飲み込み運動(嚥下)に関わるものと一部は同じなので、飲み込みにくさを伴うこともあります。

    構音障害の原因疾患

    球麻痺を示す典型的な疾患

    咽頭や舌の筋肉が委縮

  • 進行性球麻痺
  • 筋委縮性側索硬化症
  • 延髄空洞症
  • 延髄腫瘍
  • 仮性球麻痺を示す典型的な疾患

    言葉が滑らかに出ない

  • 脳血管障害
  • 小脳障害

    各音節の感覚や大きさが不均一かつ不明瞭で、時に爆発性(酔っ払いのよう)になる

  • 脊髄小脳変性症
  • 小脳梗塞
  • 小脳腫瘍
  • 小脳障害
  • パーキンソン病

    発語筋の硬直、短調で抑揚が乏しい、小口、早口、語尾が聞き取りにくい

    進行性筋ジストロフィー

    筋肉そのものが侵され、パ行⇒バ行(口唇音の変化)、ラ行⇒ダ行(舌音の変化)ガ行⇒鼻声(軟口蓋筋麻痺)になる

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