「上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの違い」と「中枢性麻痺と末梢性麻痺の見分け方」

神経が中枢神経と末梢神経に分けられるのに付随してニューロンも上位と下位に分類され、機能や構造にも違いがあります。

「上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの違い」と「中枢性麻痺(上位運動ニューロン障害)と末梢性麻痺(下位運動ニューロン障害)」に大きく分けて運動麻痺を分類しています。

運動麻痺は損傷部位や損傷の仕方によって症状の出方が異なりますので、症状から損傷部位をある程度特定する事も損傷の状況から症状を予測することも可能です。

上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの違いを整理しよう!

「上位運動ニューロン」と「下位運動ニューロン」の違い

上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの違いを簡単にまとめてしまうと、「上位運動ニューロンは中枢神経(脳と脊髄)」のことで、「下位運動ニューロンは末梢神経(脳と脊髄以外の全身に分布する神経)」のことです。

より詳しく解剖学的に説明すると、「上位運動ニューロンは脊髄前角細胞や脳幹の脳神経核まで」で、「下位運動ニューロンは脊髄前角細胞や脳幹の脳神経核より末梢」の部分です。

意識・無意識に関わらず、すべての活動は中枢神経系(脳・脊髄)に制御され、伝達役である末梢神経(運動神経)によって中枢から全身へ指令が送られ、全身の器官(受容器)からのフィードバックは末梢神経(感覚神経)によって脳に送られて統合されます。

中枢神経系(脳・脊髄)と末梢神経では役割が全く異なるため、損傷部位が中枢(上位運動ニューロン)か末梢(下位運動ニューロン)かで麻痺症状の特徴も全く異なりますし、具体的にどの部位が損傷されているかによっても症状が異なります。

正常の神経経路と照らし合わせると、症状から損傷部位を想定することもできます。

神経の構造と情報伝達の仕組みや主要な神経路のまとめ

『ニューロン』と『主要神経経路』について詳しく見る

人体の連絡網である神経を細胞レベルまで分解し、神経伝達を理解する上で重要な【ニューロン、シナプス、神経伝達物質】および【主要神経路】や【反射機能】について整理して説明します。

【上位運動ニューロン障害】と【下位運動ニューロン障害】の特徴比較

上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害では、ニューロンの役割や位置が異なるため、生じる症状にも明確に特徴の差があります。

上位運動ニューロン障害 下位運動ニューロン障害
損傷部位 上位運動ニューロン 下位運動ニューロン
麻痺の部位 障害側と反対側の上下肢顔面など損傷部位により多様(障害される神経経路により異なる) 損傷部位同側で損傷部以下
筋緊張 亢進(痙性麻痺) :初期は弛緩→次第に痙性 (痙直:筋肉の緊張(抵抗感)が増強した状態 やジャックナイフ現象など) 減弱または消失(弛緩性麻痺)
深部腱反射 亢進 減弱~消失
表在反射 消失 減弱~消失
病的反射 あり なし
筋委縮 軽度~なし(二時的に廃用委縮は起こる) 筋委縮:早期からあり、3か月以内に70~80%が減少
繊維性筋攣縮 なし あり
麻痺の種類 多様 損傷部以下の機能低下

また、中枢性麻痺では、損傷部位により麻痺部位も多様です。

単麻痺 一側下肢の痙性麻痺であることが多いが、同側上肢にもごく軽度障害を合併することもあり
対麻痺 両側下肢のみに麻痺があり、痙直型であることが多い
片麻痺 一側の上下肢体幹、顔面に麻痺を呈するが、上肢の方が下肢より麻痺の程度が強く、痙縮型、アテトーゼ型でみられる
三肢麻痺 両側上肢と一側下肢の痙性麻痺であることが多い
四肢麻痺 四肢体幹すべてに同程度の麻痺があるもので、左右差があっても、同側上下肢の麻痺の程度が同じであればこの型とする
両麻痺 四肢体幹すべて、ときに顔面にも麻痺がみられるが、上肢より下肢で麻痺の程度が強いもの
両側片麻痺 四肢体幹すべて、ときに顔面にも麻痺がみられるが下肢より上肢で麻痺の程度が強いもの

 

中枢性麻痺【上位運動ニューロン障害】

「上位運動ニューロン障害」とは「中枢神経(上位運動ニューロン)」の障害によって生じる麻痺などの機能障害のことです。

中枢(制御や統合)機能の障害なので、単純に機能が低下や消失するというよりもあるはずのないものが出てくるなどの異常所見が特徴です。

中枢神経(脳や脊髄)には機能分担がありますので、損傷される部位によって特徴的な症状は異なります。

大脳皮質・白質の障害

大脳皮質は脳の最表層にある神経細胞の集まりで、大脳白質は神経細胞から出た神経軸索ですが、大脳皮質と白質のどちらが障害されても運動麻痺が起こります。

運動機能に関係する大脳皮質は、中心前回(ブロードマン第4野)と前運動領野(ブロードマン第6野)でそれぞれ支配領域が異なりますが、隣接しているので単独障害は少なく、4野と6野と同時に障害されると典型的な中枢性麻痺の症状が出現します。

第4野単独障害 第6野単独障害 第4野・6野同時障害
麻痺のタイプと重症度 不全片麻痺 不全片麻痺 完全片麻痺
麻痺の内容 微細な運動の障害 より大きな協調運動障害 全般的な随意運動障害
筋肉の緊張 弛緩性 剛直性 痙性
深部反射 減弱 中等度亢進 亢進
病的反射 バビンスキー(母趾現象)反射・チャドック反射 バビンスキー(開扇現象)反射・ホフマン反射 バビンスキー(母趾開扇現象)反射・ホフマン反射・チャドック反射

その他にも前頭(第8野)頭頂(第3野)も関与していると考えられていて、大脳皮質の運動領野障害時に出現するその他の症状としては以下のようなものがあります。

焦点性(ジャクソン型)痙攣 大脳皮質の運動機能局在に一致した身体部位に限局して始まり、全身に広がっていく痙攣発作のことで、例えば、円蓋部髄膜腫が手の運動機能を支配している頭頂部の大脳皮質を圧迫した場合、異常な電気性興奮(てんかん焦点)が発生して、腫瘍と反対側の手だけに痙攣が生じますが、周辺の大脳皮質に波及して指→手→腕→上肢全体→顔面→足のように全身へ広がります。(ジャクソン型進展)
失語症 優位半球前頭葉下部の言語中枢が損傷されると、運動性失語や語健忘などの言語障害が生じます。
反対側失認症 非優位半球の頭頂葉の皮質が損傷すると麻痺側の存在を無視する症状が生じます。

 

内包の障害

広範囲の大脳皮質から出る錐体路の神経線維は狭い内包部に集束しているため、内包やその周囲の障害では症状の現れる範囲は広範囲でかつ重篤になります。

内包部や隣接するレンズ核や視床を栄要する血管には、前脈絡叢動脈、レンズ核線状体動脈、視床穿通動脈などがあります。

視床の障害

知覚に関するすべての刺激は視床に集まる(交叉済み)ため、一側視床が障害されると反対側の全知覚障害が生じます。

視床膝状体動脈の出血、閉塞による視床症候群(デジュリン・ルーシー症候群)では、反対側の知覚障害、異常な自発痛(灼熱痛、視床痛)、不全片麻痺、運動失調、同名半盲などの症状を呈します。

脳幹部の障害

脳幹部とは、中脳・橋・延髄のことで第3(動眼神経)~第12(舌下神経)の脳神経核がある場所です。

皮質延髄路に関係する脳神経(第3~7、9~12脳神経)は脳幹部で交叉、皮質脊髄路の上位運動ニューロンは延髄下部の錐体交叉部で交叉していますので、障害されると病変と同じ側の脳神経障害反対側の手足の麻痺(交代性片麻痺)が生じます。

例えば、左側の中脳腹側に出血が生じると、左動眼神経核、左動眼神経(末梢神経)、皮質脊髄路に障害が生じ、左側の眼球運動障害、右側の運動麻痺(皮質延髄路も同時に障害されると、右側脳神経麻痺(5~7、12脳神経)も)が生じます。
第9~11脳神経(舌、咽頭、喉頭)は両側性支配のため、一側だけの障害では 症状がでにくい。

疾患例としては、「交代性麻痺を呈する症候群:中脳(腹側):動眼神経麻痺+反対側運動麻痺(顔含む)」「ウェーバー症候群:橋下部(腹側):顔面神経麻痺+反対側運動麻痺(顔を除く)」「ミヤール・キュブレール症候群:橋下部(背側):顔面神経、外転神経麻痺+反対側運動麻痺(顔を除く)」「フォビーユ症候群:延髄:舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経+反対側運動麻痺と温痛覚脱失(顔を除く)」「ジャクソン症候群など」があります。

脊髄の障害

脊髄が損傷すると損傷部以下の運動麻痺、知覚麻痺、膀胱直腸障害が生じますが、横断面でみた脊髄部位のどこか損傷されるかによっても神経経路への影響が変わるため、症状の出方が異なります。

脊髄の部位 障害される神経路 症状 特徴的な疾患
脊髄後索の障害 深部知覚と微細触覚を伝える神経線維の通路 位置覚・振動覚・識別覚・立体認知が障害されて、ロンベルク試験陽性となり痛覚過敏が生じる 脊髄癆・後脊髄動脈の閉塞(外傷など)
脊髄後角の障害 温痛覚や粗大触覚の神経線維が次のニューロンに接続する部位 障害髄節が司る温痛覚だけが障害されて、粗大触覚が事実上保持(障害として認識されにくい)される(知覚解離)
脊髄灰白質の障害 脊髄の中心管を取り囲む脊髄中心部

障害部位に対する体節性の症状

  • 前角/前根障害:弛緩性運動麻痺 筋委縮などの下位運動ニューロン障害
  • 後角障害:温痛覚障害
  • 後根障害:全感覚の障害、神経根痛
  • 脊髄中心部病変:温痛覚は障害されるが、振動覚は保たれる(解離性感覚障害)
  • 後索の選択的障害:固有感覚障害、温痛覚保持、仙部回避(尾側からの脊髄視床路の繊維ほど脊髄表面に位置する配列をとるため、脊髄内部に病変があれば 仙髄支配の感覚は保たれることがある)
前脊髄動脈の閉塞、脊髄空洞症、脊髄内腫瘍、脊髄出血
脊髄白質の障害 長い連絡路が障害

障害部位のレベル以下に以下の症状を呈する

  • 側索障害:(錐体路徴候)と同側性の運動麻痺、痙縮、健反射亢進、病的反射
  • 後索障害:同側性の触覚、振動覚、位置覚の障害
  • 前側索障害:反対側の音痛覚障害(脊髄視床路)
横断性脊髄障害 脊髄が横断されるように損傷

脊髄髄節以下すべての知覚障害と運動麻痺、膀胱直腸障害が生じる

横断面は1cmにも満たない構造で、左右の仕切りもないので、外部からの圧迫性病変により容易に両側性の障害をきたします。

  • 1)運動障害(錐体路障害) 急性発症は弛緩性→次第に痙性麻痺になる
  • 2)感覚障害 上行性感覚路:後索、脊髄視床路の障害 対応する皮膚分節以下の全感覚脱失
  • 3)膀胱直腸障害、陰委、発汗障害(下行性運動路、交感神経など)
  • 4)障害部位の分節性の筋委縮と弛緩性麻痺(脊髄前角など)
  • 上部頸髄の障害(第1~4頸髄)では、呼吸麻痺や四肢麻痺(痙性麻痺)
  • 下部頸髄の障害(第5~8頸髄)では、呼吸不全(肋間筋麻痺)や四肢麻痺(下肢・体幹:痙性麻痺、上肢:弛緩性麻痺)
  • 胸髄の障害では、対麻痺(下肢:痙性麻痺)やはさみ足歩行(両下肢伸展、尖足、内旋位)
  • 腰髄の障害では、対麻痺(下肢:弛緩性麻痺)
半側性の脊髄障害(ブラウン・セカール症候群) 一側半分の脊髄が破壊されるとブラウンセカール症候群(特徴的な知覚障害と運動麻痺)と呼ばれる特徴的な症状を呈する

【知覚障害】

  • 病変部より上のレベルの脊髄後根から入る知覚神経は、病変部を通過しないので問題なし
  • 病変のある髄節が司るデルマトームでは全知覚脱失
  • 温度痛覚障害:病変部およびその下1~2髄節下で後根から脊髄に入る繊維と、病変の反対側から脊髄内に入り交叉してから病変部を通過する繊維があるので、病変部(正確には病変部とその下1~2髄節)で両側温痛覚障害が生じ、病変部以下では病変の反対側だけに温痛覚障害が生じる
  • 深部知覚・微細触覚:反対側は全く影響なく同じ側の病変のある髄節以下で障害
  • 粗大触覚:経路から温度痛覚と同様に考えることができるが、微細触覚が正常に働いているため症状として自覚しにくい

【運動障害】

  • 障害部の病変側以下に錐体路障害あり
  • 上部頸髄の障害(第1~4頸髄)では、同側片麻痺(痙性麻痺)
  • 下部頸髄の障害(第5~8頸髄)では、同側片麻痺(痙性麻痺)(下肢・体幹:痙性麻痺、上肢:弛緩性麻痺)
  • 胸髄以下の障害では、同側下肢麻痺(下肢:痙性麻痺)
円錐部症候群・馬尾症候群 第3仙髄以下のことを円錐と呼ぶ 下肢の麻痺はないが、膀胱直腸障害、陰委が著名で、肛門周囲の感覚障害を呈します。 腫瘍、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア くも膜炎、骨折などで、馬尾が障害されると、サドル麻痺(殿部、大腿後面、会陰部感覚障害)、非対称性対麻痺 膀胱直腸障害が生じます。

 

末梢性麻痺【下位運動ニューロン障害】

「下位運動ニューロン障害」とは「末梢神経(下位運動ニューロン)」の障害によって生じる麻痺などの機能障害のことで、末梢の伝達機能障害なので、単純に損傷部以下で機能が低下や消失する症状が基本的な特徴です。

末梢神経にも機能分担がありますので、損傷される部位によって麻痺などの症状が出る場所が異なります。

末梢神経が障害されて2~3日経過すると神経が変性(ワーラー変性)しますが、50~60%は神経再生で回復します。
(*中枢神経は回復しません。)

脊髄前角細胞・脊髄前根部の障害

下位運動ニューロン障害では、脊髄前角細胞、脊髄前根部の障害も含まれ、代表的疾患としては、ポリオ(ポリオウィルスによる急性脊髄前角炎)、進行性脊髄性筋委縮症(アラン=ドゥシェンヌ型)などがあります。

脊髄前角細胞・脊髄前根部が、損傷された前角細胞、前根を通るニューロンが支配している筋群にのみ麻痺が起こり、脊髄前角細胞そのものが損傷されている場合には、麻痺の筋肉がピクピクと痙攣する繊維束攣縮が生じます。

神経根の障害

神経根の障害が障害されると、障害された脊髄後根のデルマトームに沿って痛み(放散痛)や知覚障害を引き起こします。

変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、腰椎の石灰化や突出した椎間板によって脊髄(L4,5、S1,2)から出たばかりの神経根(後根)が圧迫されその神経の支配領域の皮膚に疼痛(電激痛)をきたす坐骨神経痛などがあります。

脊髄神経節の障害

皮膚や筋肉の受容器から出発した知覚の第1次ニューロンの神経細胞(脊髄神経節細胞)が含まれた後根の膨隆部の障害で、単純ヘルペスヘルペスウィルスによる感染症で神経節の支配領域に、電激痛と発赤、水疱形成がみられるなどが代表例です。

所定の筋肉群へ向かう脊髄神経の障害

各髄節レベルの支配筋領域は以下のようになっていますので、損傷レベルによる症状の出る部分が異なります。

C1-C4 頸部
C3-C5 横隔膜
C4-C8
C5-C8 上腕
C5-Th1 前腕
C7-Th1
Th2-Th12 体幹
L1-S1 臀部
L4-S2 大腿・下腿・足
S3-S4 会陰
C5~Th1 腕神経叢(正中神経、撓骨神経、尺骨神経など)
Th12~L4 腰神経叢(大腿神経など)
L4~S4 仙骨神経叢(坐骨神経:総腓骨神経・脛骨神経など)

末梢神経が単独で障害されるのか、隣接する部分や網目状になっている神経叢部分で障害されるのかによっても、症状の範囲や重症度が異なります。

単神経障害

ある末梢神経障害に単独で生じる単神経障害(単神経炎とも呼ばれる)で、障害された神経の支配領域の運動麻痺と感覚障害が同時(末梢神経なので、運動神経と知覚神経混在)に現れます。

外傷、神経線維の周囲軟部組織による圧迫や絞扼、代謝性疾患(糖尿病・膠原病)などが原因で、正中神経、撓骨神経、尺骨神経、総腓骨神経で起こりやすい特徴があります。

代表的な疾患としては手根管症候群(肥厚した横手根靭帯による圧迫による正中神経麻痺)があり、正中神経の支配域の知覚および運動障害、筋萎縮、前腕・手指の激痛、母指、示指の屈曲困難(握りこぶしをれない)、母指球の萎縮(母指と手のひらが同じ面を向く:猿手)などの症状が見られます。

尺骨神経の障害(肘管症候群)では、小指球と骨間筋の萎縮による鷲手(フロマン兆候陽性)がみられます。

撓骨神経の障害では肘・手関節・中手指節関節伸展が困難となる下垂手がみられ、長時間の腕枕や酔っ払いがベンチの背に腕をかけて寝込んだ場合などにも起こります。

総腓骨神経麻痺は足根管症候群とも呼ばれます。

神経叢の障害

神経叢とは、多数の末梢神経が絡み合ったもので、単神経障害より、広範囲に知覚・運動麻痺が発生します。

第4頸髄から第1胸髄までの脊髄神経根が合流して網の目状に走行している腕神経叢は、神経根が単独で障害されても症状は比較的経度ですが、代表的疾患としては、肩や上腕の強打、引き抜き損傷、肺尖部の腫瘍(パンコースト症候群)、前斜角筋症候群、胸郭出口症候群などがあります。

C5-C6の障害で肩から肘の運動障害、C8-Th1の障害で肘伸展困難などの運動障害と知覚の異常や低下を呈します。

多発性ニューロパチー

多発性ニューロパチーは、支配領域が近い末梢神経が四肢末梢部で多発性に障害されたもので、麻痺と知覚障害が四肢末梢部から同時に始まり、知覚障害は、左右対称性に末梢から中枢へ進行(手袋、靴下型)します。

糖尿病などの代謝性障害、血液疾患、ウィルス・細菌感染、中毒(水銀、ヒ素)などが原因で起こります。

(糖尿病・膠原病)などが原因で、正中神経、撓骨神経、尺骨神経、総腓骨神経で起こりやすい。

神経・筋接合部の障害

アセチルコリンは、大脳皮質から神経線維を通じて筋肉に指令伝えるために重要な物質ですが、受信側または発信側いずれの問題でも伝達障害が生じます。

神経接合部でのアセチルコリンの放出障害:イートンランバート症候群、筋肉側のアセチルコリンの受入障害:重症筋無力症などが代表例です。

上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害の区別

「球麻痺と仮性球麻痺の違い」は、上位運動ニューロン(中枢神経)と下位運動ニューロン(末梢神経)の違いを理解するとてもよい例です。

構音障害と失語症の違いとは?

口から言葉を出す際の音声の組み立てや調節に異常がある場合に起こり、滑らかに言葉を発することができない状態のことを構音障害といいます。

語音を正しく作りだすためには声帯や口蓋・舌・口唇などを適切な形に変化させることが必要で、この音声の通路にある諸器官の運動により語音を作りだすことを「構音」といい、脳の指令による随意的な運動です。

つまり、構音を機能的に生じさせるには、「口・舌・咽頭・口蓋などの発声に必要な構音器官が言語中枢からの指令で適切に動くこと」と「小脳や大脳基底核で滑らかな運動になるように調節する機能が正常であること」がいずれも必要です。

大脳皮質運動野(顔面・口腔・咽喉頭器官の部分から出た指令は、皮質延髄路、内方膝部、大脳脚、脳幹を経て構音に関係した以下の脳神経核へ届きます。

  • 顔面神経・舌下神経:一側性支配
  • 疑核(口蓋、咽頭、喉頭の運動を支配):両側性支配
  • 顔面神経核:顔面神経:顔面の表情筋・口唇の運動
  • 疑核:舌咽神経(運動枝):咽頭筋の運動、舌・咽頭の知覚
  • 疑核:迷走神経:咽頭筋・声帯の運動
  • 舌舌神経核:舌の運動

言葉の理解も発する言葉の内容も正常であることが失語症(上位運動ニューロン障害)との明確な違いは、会話の内容や了解には全く問題がないのにしゃべりずらさが出るため相手は聞き取りにくくなります。

また、構音障害の中でも、舌の動きが不自由になる状態を特に呂律障害と言います。

発音に関わる神経や筋肉は飲み込み運動(嚥下)に関わるものと一部は同じなので、飲み込みにくさを伴うこともあります。

球麻痺と仮性球麻痺の違いとは?

構音障害(しゃべりにくい、呂律がまわらない)や嚥下障害(食べ物や飲み物が飲み込みにくい)が出る病態に、『球麻痺』がありますが、よく似た名前の『仮性(偽性)球麻痺』という病態もあります。

この2つの違いは一体何でしょうか?

球麻痺と仮性球麻痺の違いは、問題のある場所(原因)の違いで、問題のある部位が、中枢(上位運動ニューロン)か末梢(下位運動ニューロン)かの違いで、名前や症状が似ており、言葉で書くと同じように聞こえますが、全く異なる病態です。

球麻痺(Bulbar Palsy) 仮性球麻痺(Pseudobulbar Palsy)
定義 延髄の運動神経核の障害(下位運動ニューロン障害):延髄にある脳神経の運動神経核の障害によって発語、発声、嚥下、呼吸、循環などの障害を来たすもの 両側性の皮質脊髄路の障害(上位運動ニューロン障害):大脳皮質と下位運動脳神経核を結ぶ経路(皮質核路)の両側性障害により起こる軟口蓋、咽頭、喉頭、舌などの運動麻痺
由来 延髄を外側から見ると球(ボール)のようにみえるため、延髄の麻痺=球麻痺という名前になりましたが、臨床上は運動麻痺に限定される 球麻痺に症状が似ている
病理 延髄にあるⅨ(舌咽神経)・Ⅹ(迷走神経)・ⅩⅡ(舌下神経)の運動神経核が両側性に障害

神経支配領域である咽頭、口蓋、喉頭を動かす筋肉の運動が障害(咽頭や舌の筋肉が委縮)

嚥下障害、構音障害、舌の運動障害が生じる
皮質脊髄路の障害

舌咽(Ⅸ) 迷走(Ⅹ) 副(ⅩⅠ) 舌下(ⅩⅡ)の神経支配領域である咽頭、口蓋、喉頭、舌を動かす筋肉の運動が障害

嚥下障害、構音障害、舌の運動障害が生じる
(言葉が滑らかに出ない)
症状
  • 多くは、同時に口輪筋麻痺、咀嚼筋麻痺も伴う
  • 急性、慢性がある
  • 舌委縮が特徴的所見
  • 呼吸障害、唾液分泌亢進、心調律異常なども起こりえる
  • 固形物の嚥下障害が顕著
  • 左右差がある場合が多い
  • 球麻痺を伴う代表疾患:下位運動ニューロン障害
  • 構音障害と嚥下障害に、下顎反射亢進、錐体路症状、反射異常を伴うことが多い
  • 舌委縮は起きない
  • 下位脳神経核の多くは両側性支配のため、通常一側性の皮質核路の障害では生じない (大脳皮質性の場合は、片側でも起こりえる)
  • 水様物のむせが顕著
代表的な疾患
  • 筋委縮性側索硬化症
  • ギランバレー症候群
  • 多発性硬化症
  • 重症筋無力症
  • 延髄梗塞/延髄出血
  • 延髄腫瘍
  • 仮性(偽性)球麻痺を伴う代表疾患:上位運動ニューロン障害
  • 多発性脳血管障害(特に前頭葉ラクナ梗塞)
  • 進行性核上性麻痺(神経変性疾患)
  • 脳炎
  • 梅毒
  • 脳腫瘍
  • 小脳障害(脊髄小脳変性症/小脳梗塞/小脳腫瘍 など):各音節の感覚や大きさが不均一かつ不明瞭で、時に爆発性(酔っ払いのよう)になる
  • パーキンソン病:発語筋の硬直、短調で抑揚が乏しい、小口、早口、語尾が聞き取りにくい
  • 進行性筋ジストロフィー:筋肉そのものが侵され、パ行⇒バ行(口唇音の変化)、ラ行⇒ダ行(舌音の変化)ガ行⇒鼻声(軟口蓋筋麻痺)になる

ALS(上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが同時に障害)

アイスバケツチャレンジで世界中に病名が広く病名が知られるようになり、最近は美容家佐伯チズさんの公表でも注目された原因不明の難病ASL(筋萎縮性側索硬化症)では、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンのどちらも障害されます。

ALSをひとことでまとめると、身体を動かすための神経系(運動ニューロン)が変性する病気で、以下のように定義されています。

上位運動ニューロン、下位運動ニューロンが選択的かつ進行性に変性、消失していく原因不明の疾患

運動ニューロンが変性することで発生していることはわかっているのですが、選択的に運動ニューロンが変性する原因そのものについては現在も不明の難病です。

ASL(筋萎縮性側索硬化症)50代から70代前半の年齢層に好発し、一番多い年代は65~69歳、男女比はおよそ1.5:1の割合で男性に多く、職業や生活環境とは無関係に発生すると言われています。

ALSの症状は個々により様々ですが、症状が限局的にはじまり、全身に波及していくという特徴があります。

初発症状のパターンは手先の細かい動きができなくなったり、「手先・足先の力が入りにくくなるタイプ」と「しゃべったり、飲み込んだりなど口の中が先に動かなくなるタイプ」に大きく二分されます。

「箸が持ちにくい」「重いものを持てない」「手や足が上がらない」「走りにくい」「疲れやすい」「手足の腫れ」「筋肉のピクツキ」「筋肉の痛みやつっぱり」など手先の細かい動きができなくなることから始まるタイプは全体の3/4を占め、「舌の動きが思いどおりにならない」「ことばが不明瞭(とくにラリルレロ、パピプペポの発音が困難)」「食べ物や唾液(つば)を飲み込みにくくなり、むせることが多くなる」など「しゃべったり、飲み込んだりなど口の中が先に動かなくなるタイプ」が残りの1/4を占めます。

初期症状の出方には複数のパターンがありますが、ほとんどが「手足から始まる場合は、手先・足先など体幹から遠い部分の筋肉が弱く・細くなる」→「追って飲み込みが困難になる、しゃべりにくくなるなどの症状がでてくる」→「2~4年で、全身の筋力低下・呼吸困難なども出てくるため、人工呼吸器が必要になったり、日常生活にも介助が必要な状態になる」のよう順序で徐々に全身に広がっていくという特徴があります。

ALS (筋萎縮性側索硬化症)は、障害されやすい部分と障害されにくい部分があり、以下の症状は出にくいという特徴があります。

  • 眼球を動かす筋肉は障害されにくい
  • 肛門括約筋も障害を受けにくい
  • 知覚障害が起こりにくい
  • 感覚障害が起こりにくい
  • 認知機能も正常に保たれる
  • 失禁が起きにくい

認知機能も正常に保たれるため、全身の筋力が低下していてもアイコンタクトやなんらかの手段でコミュニケーションが可能であるということも大きな特徴のひとつです。

ALSでは、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンのどちらも障害されます。

上位運動ニューロン障害 下位運動ニューロン障害
運動き右脳障害(麻痺) 巧緻性低下 球麻痺(第Ⅸ、Ⅹ、Ⅻ脳神経の両側性障害)
筋緊張

痙縮(折りたたみナイフ現象)

筋弛緩

筋痙攣

筋痙攣 繊維束性収縮

筋委縮 猿手・鷲手・垂れ足

正常の神経経路は以下の通りですが、この経路を司る運動ニューロンのいずれかが変性することで症状が発生します。

  • 脳で、「口や手を動かしたい」と考える
  • 運動神経細胞(上位運動ニューロン)からその命令が神経線維を伝わって下降する(錐体路)
  • 脳幹、脊髄で次の神経細胞(下位運動ニューロン)に命令が伝わる
  • 筋肉に命令が伝わり、運動が起こる

ALS初期は特定診断が困難で、特異的に診断する検査方法はなく、症状の経過を追い、様々な検査結果から他の疾患の可能性を除外しながら、特定診断となる場合がほとんどです。

ALS (筋萎縮性側索硬化症)は手足の先の方の筋肉が徐々に低下して動かしにくくなり、その他の部位にゆっくり拡大進行する際にまずその可能性が疑われます。

筋肉の表面が小さく痙攣する症状(筋線維束攣縮)も診断基準のひとつになりますし、しゃべりにくい、飲み込みにくいなどの舌や口の中の筋肉の動かしにくさ(球症状)も見られたり、腱反射の亢進などもみられるようになるとほぼALSと特定されます。

つまり、実際にはかなり進行してやっと診断が確定すると言うのが現状です。

下位運動ニューロン障害に対しては、筋電図での証明は可能です。
ALSの場合は、まだ症状が出ていない手足や舌の筋肉でも異常を認めるので、診断のひとつとして有効です。

また、血液検査で、血液中のCKが経度上昇する症例もみられます。

その他、筋電図以外に血液検査、脊髄・脳のMRI、髄液、場合によっては筋生検などを行い、変形性頸椎症、脊髄空洞症、ミオパチーなどその他の可能性を検討する為の検査は並行して行われます。

ALSは原因不明の進行性病変の為根本的な治療がなく、薬物療法やリハビリテーションなどの対処療法が中心になります。

通常、発症後3~5年で人工呼吸器などを使用しなければ、呼吸不全、肺炎、窒息などで死亡することが多く、予後はきわめて不良です。

ビルゲイツやレディーガガ、スピルバークなど世界を騒がす著名人までをも巻き込んだアイスバケツチャンレンジは、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を支援するチャリティーのひとつでアメリカで始まりました。

あまりに衝撃的で大きな広がりをみせたので、本来の意図とかけ離れ批判の声もありますが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を知るひとつのきっかけになったというのはとても大きな意味を持っていると思います。

アイスバケツチャレンジを通してALS(筋萎縮性側索硬化症)という病名をはじめて聞いた人も多いと思いますし、そこから、症状などについて詳しく調べた人もいると思います。

多くの人にきっかけを与えたという意味では、この活動は、とても素晴らしいと考えています。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)に限らず、神経難病の患者さんはその病状の過酷さに加えて、孤独感、孤立感はとても簡単に説明できるものではありませんが、理解してくれるだけで救われる部分って誰にでもある。

アイスバケツチャレンジはそんな多くの共感を生んでいます。

このサイトはもちろん健康を維持し病気を予防する助けになることを第一の理念としていますが、同時に病気の理解を得ることで、誰かの思いをつなぐきかっけになればとても嬉しいと思っています。

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