『筋肉の機能障害』種類まとめ:「ミオパチー」と「ニューロパチー」の違い

「筋肉(主に骨格筋)」の機能低下を引き起こす病気を原因別:「筋原性」「神経性」「神経筋接合部の問題」:に分類して整理!

筋の病気の原因を大きく分類すると、筋自体に原因があるもの、筋を動かす作用を持つ神経系に原因があるも、筋肉と神経の接合部に原因があるものと3種類があります。

混乱しやすい【ミオパチー(筋原性)】【ニューロパチー(神経原性)】の違いも含めて整理しましょう。

「筋肉の構造」と「筋肉が動く仕組み(神経経路)」と合わせて整理しよう!

筋肉の機能低下を引き起こす3つの要因

筋の病気の原因を大きく分類すると、「筋自体に原因があるもの」「筋を動かす作用を持つ神経系に原因があるも」「筋肉と神経の接合部に原因があるもの」の3種類があります。

筋肉に原因あり 神経に原因あり 神経接合部に原因あり
障害名 ミオパチー
  • 上位運動ニューロン障害
  • 下位運動ニューロン障害(ニューロパチー・末梢神経障害)
神経接合部疾患(重症筋無力症など)
損傷部 骨格筋 筋肉への神経経路 神経と筋肉の接合部
原因 遺伝性・炎症・自己免疫など 糖尿病・圧迫性・遺伝・感染・自己免疫・癌・栄養障害・薬物・中毒など 自己免疫など
主要な症状 筋萎縮と筋力低下(近位部で顕著) 神経の支配領域に沿った神経症状 筋肉に力が入らなくなったり疲れやすくなったりする
その他の症状 筋痛、筋痙攣、筋の短縮による関節拘縮など 目の症状だけの眼筋型、全身に症状が出る全身型、呼吸筋が麻痺する重症例も

全身の全て合わせれば人体最大の臓器になる「筋肉の基本的な構造」や「筋肉が作用する仕組み(神経経路やシナプス)」と合わせて詳細を確認・整理します。

    筋原性の筋肉機能低下

    【ミオパチー(筋原性筋疾患)】は筋肉自体に原因があって起こる骨格筋疾患の総称で、あらゆる活動(運動)に不可欠な筋肉がやせたり、力が弱くなっていく筋肉の病気です。

    【ミオパチー(筋原性筋疾患)】は原因や症状の特徴により大きく4つに分類できます。

    原因
    先天性ミオパチー 遺伝性
    筋ジストロフィー 遺伝性
    炎症性ミオパチー(筋炎)
    代謝性ミオパチー

    筋ジストロフィーと先天性ミオパチーはどちらも遺伝性の疾患で、とくに進行性が明瞭なものを筋ジストロフィー、それほど進行が目立たないものが先天性ミオパチーとおおまかに分類しています。

    主な症状は「筋萎縮」と「筋力低下」ですが、疾患によっては筋痛、筋痙攣、筋の短縮による関節拘縮を起こすこともあります。

    【ミオパチー(筋原性筋疾患)】の「筋萎縮」や「筋力低下」は近位部で症状が強い傾向があり、筋萎縮が遠位部で顕著で筋萎縮の程度にくらべて筋力が保たれている傾向がある「ニューロパチー(神経原性筋疾患)」とは異なる特徴があります。

    また、【ミオパチー(筋原性筋疾患)】では血清中のCKの特異的に上昇するという検査所見も特徴です。

    神経原性の筋肉機能低下

    筋肉は神経に支配されて作用しますので、筋肉自体に問題がなくても、糖尿病・圧迫性・遺伝・感染・自己免疫・癌・栄養障害・薬物・中毒など様々な原因で、筋肉に指令を送る神経(神経細胞体・軸索・髄鞘など)が障害された場合も筋肉の機能は低下します。

    筋肉に指令を送る神経は中枢神経(上位運動ニューロン)と末梢神経(下位運動ニューロン)に分類されますので、神経のどの部分で障害されるかによって症状の特徴は異なり、神経の支配領域に沿った神経症状が生じます。

    神経原性の中でも下位運動ニューロンの障害による筋肉機能低下の主症状はミオパチーと類似する筋緊張低下、弛緩性麻痺、筋萎縮、筋力低下などですが、神経の支配領域に沿った神経症状を伴って遠位部に優位な萎縮が起こるなどミオパチーとは異なる特徴があります。

    特に、感覚神経や自律神経障害を併発する場合も多く、多発ニューロパチー、単ニューロパチー、多発性単ニューロパチーなど障害が発生する部位や範囲は神経の支配領域によって異なります。

    損傷部位により神経症状の出方が異なります。

    神経経路(上位運動ニューロンと下位運動ニューロン)障害について詳しく見る

    「上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの違い」と「中枢性麻痺(上位運動ニューロン障害)と末梢性麻痺(下位運動ニューロン障害)」に大きく分けて運動麻痺を分類しています。

     

    神経筋接合部原性の筋肉機能低下

    神経経路や筋肉自体に問題がなくても、神経と筋肉が直接連絡する「神経筋接合部」が障害された場合も筋肉の機能低下が生じます。

    人間が動くため(随意運動)には、脳からの指令が末梢神経を経て骨格筋へと伝わる必要がありますが、この際、神経終末と筋肉側の受容体とから構成されている神経筋接合部にて、アセチルコリンによる情報伝達が行われています。

    神経筋接合部は、末梢神経の興奮を筋に伝えて筋収縮をおこす情報を伝達する役割を果たしていて、神経の終末からアセチルコリンが放出され、筋の表面にあるアセチルコリン受容体に結合することによって筋内のカルシウムを介した筋収縮の機構が働きます。

    代表的な神経筋接合部の病気は「重症筋無力症」で、脳からの指令を筋肉に伝える末梢神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の神経からの指令を受け取る筋肉側のアセチルコリン受容体の働きを妨げる抗体(抗アセチルコリン受容体抗体)が自己免疫が原因で作られて受容体が破壊されてしまう自己免疫疾患で、筋肉側が神経からの運動指令を正しく受け取れない状態になってしまうため、全身の筋力低下や疲れやすさ(易疲労性)や眼瞼下垂や複視などの目の症状が生じたり、免疫系を司る胸腺の肥大が認められます。

    胸腺は心臓の前方にある免疫に関係する器官で、通常成人になると小さくしぼんでいきますが、重症筋無力症の患者では、高い確率で胸腺が肥大(過形成)してリンパ球が多く含まれる病変が認められます。

    特異的な病気のマーカーである自己抗体(アセチルコリン受容体抗体、MuSK抗体)の測定も診断基準になります。

    目の症状だけの眼筋型、全身に症状が出る全身型に大きく別れますが、重症例では呼吸筋麻痺で呼吸困難になるケースもあります。

    目の周りの筋肉での特徴的な症状は「まぶたが落ちてくる」「ものが二重に見える」「斜視」「目が疲れる」「まぶしい」などで、口の周りの筋肉での特徴的な症状は「噛みにくい」「飲み込みにくい」「唾が溢れる」「食べたり飲んだりするとむせる」「しゃべりにくい」「鼻声になる」などがあります。

    顔の筋肉全体に広がると「表情がうまくつくれない」「笑おうとしても怒ったような顔になる」、手足の筋肉に広がると「持ったものを落す」「字が書けない」「立てない」「歩けない」「階段が昇れない」「洗濯ものがほせない」「おふろで頭が洗えない」などの症状が出て日常生活や社会生活が困難になります。

    約2/3が眼の症状(眼瞼下垂・眼球運動障害・複視)から発症し、咀嚼・嚥下・構音障害などの口咽頭障害からの発症は全体の1/6程で、筋力低下からの発症は10%程度、また、眼瞼型(眼症状のみにとどまる)患者は約10%ほどで、1年以内に全身型に進行するのが約50%、2~3年以内に全身型に進行するのは約30%と言われています。

    重症筋無力症の治療は、主に症状に対する対処療法と免疫に対する治療(「コリンエステラーゼ阻害薬:神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤」「早期拡大胸腺(腫)摘出術」「免疫抑制剤」「ステロイド剤」「血漿交換療法」「免疫グロブリン大量療法」)が行われ、早期診断・早期治療が行われるようになったことで予後は比較的良好で、ステロイド薬や免疫抑制薬を服用中であっても、少ない量で病状がコントロールされていれば発症前とほぼ同じ生活を送れます。

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