重症筋無力症は、神経と筋肉が接する場所(神経筋接合部)の障害により、神経から筋肉への指令が伝わりにくくなるため、筋肉に力が入らなくなったり疲れやすくなったりする病気です。
重症筋無力症について、【症状】【原因・病理】【検査・診断】【治療・予後】を整理してまとめました。
重症筋無力症とは
重症筋無力症は、脳からの指令を筋肉に伝える末梢神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の情報受信機である受容体が自己免疫が原因で破壊されてしまう自己免疫疾患です。
筋肉側が神経からの運動指令を正しく受け取れない状態になってしまうため、全身の筋力低下や疲れやすさ(易疲労性)や眼瞼下垂や複視などの目の症状が生じたり、免疫系を司る胸腺の肥大が認められます。
目の症状だけの眼筋型、全身に症状が出る全身型に大きく別れますが、重症例では呼吸筋麻痺で呼吸困難になるケースもあります。
重症筋無力症の原因・病理
人間が動くため(随意運動)には、脳からの指令が末梢神経を経て骨格筋へと伝わる必要がありますが、この際、神経終末と筋肉側の受容体とから構成されている神経筋接合部にて、アセチルコリンによる情報伝達が行われています。
重症筋無力症では、神経からの指令を受け取る筋肉側のアセチルコリン受容体の働きを妨げる抗体(抗アセチルコリン受容体抗体)が体内で作られて、脳からの指令が筋肉に伝わりにくくなることが原因です。
重症筋無力症に特徴的な症状
障害される部位により様々な症状が出現します。
眼の周りの筋肉
口の周りの筋肉
顔の筋肉
手足の筋肉
呼吸筋
胸腺異常
胸腺は心臓の前方にある免疫に関係する器官で、通常成人になると小さくしぼんでいきますが、重症筋無力症の患者では、高い確率で胸腺が肥大(過形成)してリンパ球が多く含まれる病変が認められます。
重症筋無力症の症状の経過
約2/3が眼の症状(眼瞼下垂・眼球運動障害・複視)から発症し、咀嚼・嚥下・構音障害などの口咽頭障害からの発症は全体の1/6程で、筋力低下からの発症は10%程度。
眼瞼型(眼症状のみにとどまる)患者は約10%ほどで、1年以内に全身型に進行するのが約50%、2~3年以内に全身型に進行するのは約30%。
重症筋無力症の検査・診断
特異的な病気のマーカーである自己抗体(アセチルコリン受容体抗体、MuSK抗体)の測定が有効。
重症筋無力症の治療・予後
重症筋無力症の治療は、主に症状に対する対処療法と免疫に対する治療が行われます。
早期診断・早期治療が行われるようになったことで予後は比較的良好。
ステロイド薬や免疫抑制薬を服用中であっても、少ない量で病状がコントロールされていれば発症前とほぼ同じ生活を送れます。