大脳基底核の役割とパーキンソン病【症状】【原因・病理】【検査・診断】【治療】【予後】

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パーキンソン病について【症状】【原因・病理】【検査・診断】【治療】【予後】と5つの観点に分け、キーとなる大脳基底核の役割とともに説明しています。

パーキンソン病の【症状】

1817年にイギリスのジェームス・パーキンソンという医師がこの病気を「振戦麻痺」として発表したことに由来して名前がついたパーキンソン病の【症状】について概要を説明します。

好発年齢

好発年齢は40歳以降。
遺伝性で20歳代から発症するレアケースも報告されています。

典型的な症状:パーキンソン病の4大症状

全体的なイメージはアクセルが効かないのにブレーキもかからない乗り物みたいな感じ。
運動麻痺も感覚障害もないのにとにかく「動きにくい」のに、動き出したら制御ができない状態なので非常に危険ですし日常生活も困難になります。

更、便秘・あぶら顔・多汗・よだれ・起立性低血圧などの自律神経症状や抑うつなどの精神症状もみられます。

パーキンソン病の4大症状と呼ばれる典型的な症状は以下の4つです。

  • 振戦
  • 筋固縮
  • 無動
  • 姿勢反射異常
  • 振戦

    「動かそうとしていないのに勝手に身体がふるえてしまう」自分の意識とは関係なく起こる「振え」のことで、安静時(意識的な行動をしようとしていないとき)に起こるのも特徴です。(安静時振戦)

    初期症状として最もよく現れ、最初は左右どちらかの手または足から始まり、反対側へ広がっていき(N字型または逆N字型)、進行すると体幹や口唇など顔でもみられるようになります。

    筋固縮(強剛)

    筋肉の緊張が常に亢進している状態で、手足を屈伸させてみるとまるで鉛を曲げているような抵抗を感じます。
    振戦が加わるとまるで歯車を回しているような抵抗を感じますが本人に自覚はありません。

    無動

    日常のすべての動きが遅くなります。

    普段無意識に行っている瞬きや表情の変化もなくなるので仮面様顔貌と呼ばれる固い顔つきになったり、書いている字がどんどん小さくなったり(小字症)、声も小さく聞き取りにくくなったり(特に語尾が小さくなる)、歩く歩幅や動作の時の動きがどんどん小さくなっていきます。

    一時的に凍り付いたように動かなくなったり、動作開始にものすごく時間がかかったり、ずっと同じ姿勢で静止していることもあります。

    姿勢反射異常

    正常であれば、通常多少バランスを崩しても反射的に修正することができますし、万が一転倒しそうになっても手を出すなどの保護伸展反応が働きますが、これらの反応が正常に働かなくなるため非常に転倒しやすい状態になります。

    この症状が出始める頃には歩行自体も困難になっていて、小刻み歩行(前屈みの姿勢で歩幅の小さい歩き方)、すくみ足歩行(床に足がくっついたような状態になって前へ進めない)なども顕著になりますし、逆に歩いているとどんどん加速していって止まれなくなったりする「突進様歩行」もみられるようになってきます。

    パーキンソン病の【原因・病理】

    パーキンソン病の原因と病理を考える時にポイントとなるのは、運動麻痺や感覚障害はないのに動きが上手くコントールできないという特徴です。

    運動機能の調節ができないことで症状が出ていると考えられるので、中枢神経である脳の運動機能を調整している部位になんらかの原因がありそうです。

    実際パーキンソン病は脳の大脳基底核と呼ばれる部分の変性に原因があると言われていて、現在も様々な研究が進められていますが完全に究明されていません。

    ただ病変が起こっている部位及び病理については大分わかってきています。

    ドーパミンの不足が原因

    大脳基底核には目的や状況に応じた運動を促進し不必要な運動を抑制する役割があり、運動の開始や筋緊張の調整に関与してます。

    大脳基底核の線条体に中脳の黒質緻密部からニューロンが伸び、ドーパミンという神経伝達物質が供給され円滑な神経伝達が行われているのですが、なんらかの原因で線条体で放出されるドーパミンの量が減少するためにパーキンソン病の症状が生じていると考えられています。

    根拠として以下が報告されています。

  • パーキンソン病の患者ではこのドーパミンが大幅に減少していること (1950年代発表)
  • ドーパミンを作る神経はニューロメラニンをという色素を含むため黒く見えるのですが、パーキンソン病患者の黒質ではこのニューロンが大幅に減少しているため正常の人よりも色が薄くなっていること (1950年代発表)
  • 中脳黒質のドーパミン神経が変性脱落したところにレビー小体という封入体が存在すること (1910年代発表)
  • 大脳基底核の役割とは

    大脳基底核とは、随意運動の発現と制御に重要な役割を果たしている高次中枢で、部位別に分けると以下の4つの神経核からなり配置されています。

  • 線条体……尾状核/被殻
  • 淡蒼球……外節/内節
  • 黒質……緻密部/網様部
  • 視床下核
  • それぞれの部位が神経伝達の面では大きく以下の4つに役割分担され、間接路と直接路の2つの回路を構成します。

    入力部

    大脳皮質の広い領域から運動に直接関与する情報だけでなく、感覚、情動、認知機能などあらゆる情報運動の発現に関与するあらゆる情報が入力され、大脳基底核全体で統合処理されます。

    直接路と間接路を形成する線条体の細胞はGABAを有する抑制性であり、大脳基底核の修飾部である黒質緻密部からドーパミン入力を受け、直接路を形成する細胞にはD1受容体を介してドーパミン入力が興奮性に作用し、間接路を形成する細胞にはD2受容体を介してドーパミン入力が抑制性に作用します。(直接路と間接路で相反する働きをします。)

    出力部

    最終的に処理された内容が運動内容を決定する信号としてここから視床へ伝えられ、視床から最終的には前頭葉の運動野→脊髄へ出力されることによって運動が起こります。

    正常な運動が発生する回路

    淡蒼球内節と黒質網様部もGABAを有する抑制性の細胞で構成されており常に活発に活動しているため視床の神経活動を持続的に抑制しています。

    前頭葉からの入力により線条体の細胞が興奮すると直接路を介して淡蒼球内節や黒質網様部の神経活動が抑制され、一時的に視床に対する抑制が取り除かれるいわゆる「脱抑制」という現象が起こり、これにより視床および前頭葉の活動性が亢進し、結果的に必要な運動が惹起されると考えられています。

    間接路(視床下核から淡蒼球への連絡)と直接路(線条体から淡蒼球への連絡)を細胞レベルで比較すると間接路が淡蒼球の比較的広い領域をカバーするのに対し直接路は狭い領域に限局することが知られています。 つまり、直接路が狭い領域への脱抑制効果で特定の運動の発現に関与するのに対し、間接路はその周辺領域への抑制効果によりそれ以外の不必要な運動の抑止に貢献していると考えられています。

    直接路は必要な運動を促進する回路で、間接路は不必要な運動を抑制する回路ということになり、両方の回路が正常に働いていることによって私たちの正常な運動が可能になっています。

    介在部

    直接路(入力部→出力部)とは別の回路で、間接路(入力部→介在部→出力部)を構成する部位。

    修飾部

    直接路と間接路を形成する線条体の細胞はGABAを有する抑制性にドーパミンを供給する部位。

    パーキンソン病の病理

    パーキンソン病とは黒質緻密部のドーパミン細胞が変性・脱落することで、線条体でのドパミンが枯渇し、無動、固縮、振戦、姿勢反射障害を主症状とする運動障害が発生する疾患で、その病理は、直接路、間接路において視床への抑制が過剰に働くことによって発生しています。

    【直接路】

  • D1受容体を介する線条体の直接路細胞への興奮性入力が消失しこれらの細胞の活動性が減弱
  • 淡蒼球内節の神経活動が亢進
  • 視床・大脳皮質の活動性の抑制
  • 運動を円滑に表現できずに無動症状になる
  • パーキンソン病の【検査・診断】

    パーキンソン病は、症状が特徴的でわかりやすいのですが、初期の頃は症状がはっきりせず気がつかれなかったり、他の病気や障害と誤解されたりすることもあります。

    厚生労働省の特定疾患神経変性疾患調査研究班によると以下のような診断基準があり、神経内科でも目安にされています。

    パーキンソン病診断基準

  • 【Ⅰ:自覚症状】
    • 1.安静時にふるえがある(四肢またはあごに目立つ)
    • 2.動作が遅くひとつの動作に時間がかかる
    • 3.歩行がのろくうまく歩けない
  • 【Ⅱ:神経所見】
    • 1.毎秒4~6回ほどのゆっくりしたふるえが安静時に起こる
    • 2.無動・寡動:仮面様顔貌、低く単調な話し声、動作の緩慢、姿勢をうまく変えることができない
    • 3.歯車現象を伴うこわばり(筋固縮)がある
    • 4.姿勢・歩行障害:前傾姿勢、歩行時に手を振らない、歩き出すと止まらない(突進現象)、小刻み歩行、立ち直り反射障害
  • 【Ⅲ:臨床検査所見】
    • 1.一般的な検査には特異的な異常がない
    • 2.脳の画像検査(CT、MRI)では明らかな異常がない(脳の黒質細胞は小さすぎてMRIでみても細胞の破壊が確認できない)
  • 【Ⅳ:鑑別診断】
    • 1.血管障害性の病気ではないことが証明されている
    • 2.薬剤性の病気ではないことが証明されている
    • 3.その他の変性疾患ではないことが証明されている

  • 【診断の判定】
    次の1~5のすべてを満たすものをパーキンソン病と診断する。

  • 1.経過は進行性である。
  • 2.自覚症状で上記のいずれか1つ以上がみられる。
  • 3.神経所見で上記のいずれか1つ以上がみられる。
  • 4.抗パーキンソン病薬による治療で自覚症状や神経所見の明らかな改善がみられる。
  • 5.鑑別診断でその他の変性疾患ではないことが証明されている。
  • 【参考事項】
    診断上以下の事項も参考となります。

  • パーキンソン病では神経症候に左右差を認めることが多い。
  • 反射の著しい亢進、バビンスキー徴候陽性、初期からの高度の痴呆、急激な発症はパーキンソン病ではみられにくい所見である。
  • 画像所見で、著明な脳室拡大、著明な大脳萎縮、著明な脳幹萎縮、広範な白質病変などはパーキンソン病ではない可能性が高い。
  • 【診断的投薬】
    診断的投薬で症状が明らかに改善された場合は、ほぼパーキンソン病と診断できます。

    薬の効果が現れる期間は、およそ1~2週間で、ふるえがなくなったか、歩行状態が改善できたか、などが判断の目安となり、1ヵ月ほど経っても薬の効果が現れない場合はパーキンソン病の可能性はないと考えられます。
    症候性パーキンソニズム(パーキンソン症候群)では、別の薬による治療が行われます。

    【その他の検査】
    脊髄液検査:
    ドーパミンが減って起こる病気ですので、ドーパミン代謝産物も減っている可能性があるため、脊髄液内のドーパミン代謝産物が、パーキンソン病のマーカーとして参考になります。

    血液検査や尿検査:
    パーキンソン病と他の病気を区別したい場合に行われます。

    PET (陽電子放射断層撮影)
    SPECT(単光子放射線コンピュータ断層撮影):黒質線条体系ドパミン作動性神経回路の機能を評価するためにCTやMRI画像検査にプラスして行います。

    パーキンソン症候群と区別

    「手足が硬直する」「動作が鈍くなる」「もの覚えが悪くなる」などパーキンソン病特有の症状がある場合、すべてがパーキンソン病というわけではなく、パーキンソン病の症状と非常によく似た症状を発症する疾病があり、それらを総称してパーキンソン症候群といいます。

    パーキンソン病が中脳黒質におけるドパミン作動性運動ニューロンの変性から生じる突発性または家族性(遺伝性)のものであるのに対し、パーキンソン症候群はそれ以外の部位の病変を含む場合(パーキンソンプラス症候群)・脳血管障害・中毒・薬物・脳炎・外傷などの明らかな原因によりパーキンソン症候を示す病気を総称した表現です。

    つまり、一見同じような症状が出ていても、その原因がどこにあるのかによってパーキンソン病かパーキンソン症候群かを区別できます。

    パーキンソン病の【治療】

    薬物療法とリハビリテーションが現在治療の2本柱ですが、近年では外科的手術なども行われるようになってきています。

    【薬物療法】

    主に以下の2つの目的で薬物投与が行われます。

    L-ドーパによる補充療法

    脳で欠乏しているドーパミンを補うことを目的とした治療です。
    即効性があり診断には有効ですが、副作用も大きく長期的利用は困難。

    ドーパミンは脳に入らないので、前駆物質のL-ドーパを服用。
    L-ドーパは脳に入った後酵素の働きでドーパミンになります。

    長期利用の副作用として以下が報告されています。

  • ウェアリングオフ:薬の効き目が低下する
  • オンオフ現象:一日の中で、まるでスイッチが切り替わるように症状の変動が大きくなる
  • ジストニアによる姿勢異常
  • ジスキネジア:不随意運動
  • 幻聴、幻覚、自律神経症状
  • ドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体賦活剤)

    ドーパミン受容体に作用してドーパミンと同じように刺激を伝えることができる薬物を投与する治療法です。
    (商品名:パーロデル、ペルマックス、ドミン、カバサールなどがあります。)

    ドーパミンアゴニストはL-ドーパと比べると効いている時間が長く、症状の日内変動を軽くすることができます。

    クスリの有効な期間を長く維持できると考えられているため、早期で症状の軽いパーキンソン病ではドーパミンアゴニストを先ず使用し、充分な治療効果を得られればそれだけで治療を継続し、もし不充分であればL-ドーパ合剤を少な目に併用するという治療法が主流となっています。

    その他、補助薬として抗コリン剤やその他の薬物が使われることもあります。

    【リハビリテーション】

    身体機能や生活の質を落とさないように、運動や体操を取り入れたり、日常生活においては環境の工夫を行います。

    【外科的治療法】

    1940年代から、薬物療法で限界がある患者に対して上記のような手術も行われています。

  • ふるえ(振戦)に対する治療を目的とした視床Vim凝固術
  • パーキンソン病の症状全般の改善を目的とした後腹側淡蒼球破壊術、視床下核刺激術
  • 脳の視床下核に電極を留置して電気刺激をおこなう視床下核刺激術(脳深部電気刺激:DBS)
  • また、自分の副腎や交感神経節の一部を脳に植える自家移植などの再生医療や遺伝子治療も研究として行われています。

    パーキンソン病の【予後】

    パーキンソン病の治療は、L-dopaの治療が始まってからも年々進歩してきています。

    臨床試験や開発中の薬もどんどん報告されてきています。

    治療が有効に働き、上手く組み合わせる事によって長期間良好な社会生活を維持することが可能にはなってきていますが、その間もドーパミンの減少は続いており、長期的にみると進行性である事実は変わりなく、日常生活に序々に障害が出てきます。

    パーキンソン病の重症度と生活レベル低下

    パーキンソン病の症状の重症度の基準としては「ホーン・ヤールの重症度分類」がよく利用されます。

    厚生労働省の「生活機能障害度」も評価基準も合わせて記載していますので、症状と生活の困難さが比例していく様子が読み取れるかと思います。

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