『脳卒中』とは脳血管障害を総称した通称で、大きく【脳出血】と【脳梗塞】の2つに分類できます。
脳血管障害の原因や症状の特徴について整理してまとめました。
脳血管障害の分類
脳血管障害(脳卒中)は大きく以下の2つに分類できます。
出血性疾患(脳出血)
出血性疾患(脳出血)は、脳を栄養する血管がなんらかの原因で切れて脳組織内で出血し、破れた血管に栄養されていた脳部位に血流が不足することや出血で組織が圧迫されることで、脳の機能障害が生じる病気で、高血圧性脳内出血やくも膜下出血などがあります。
閉塞性疾患(脳梗塞)
閉塞性疾患(脳梗塞)は、脳を栄養する血管がなんらかの原因で詰まり、脳血流が阻害され、その血管から栄養されていた脳部位が壊死(または一時的な機能停止)する病気で、脳梗塞(脳血栓症・脳塞栓症を含む)や一過性虚血疾患(TIA・RINDなど)があります。
脳血管疾患の各論
患者数の多い脳血管疾患をいくつかピックアップして、原因、症状の特徴、発生のメカニズムなどについてまとめます。
高血圧性脳内出血
定義
高血圧が原因で、脳内組織を栄養する血管が切れて出血し、脳内に血液が溜まってしまう脳血管性の疾患。
原因
動脈硬化などが原因で脆くなっている脳の血管から漏出性出血することで発症します。
脳血管の細動脈と小動脈は他の部位の動脈と異なり、再外層にある外弾性板という保護膜がなく、中間層にある中膜筋層も薄くて膠原繊維が多いため、高齢化や高血圧で中膜の筋細胞が繊維(血管壊死)すると、内膜も変化(血漿性動脈壁組織融解、類繊維素変性、血管壊死)し、動脈瘤ができやすい。
特徴的症状
好発部位
レンズ核線条体動脈(被殻・内包)
レンズ核線条体動脈(特に外側線条体動脈,中大脳動脈から分岐して大脳基底核を灌流)で栄養され、錐体外路を構成する被殻は、脳出血の60~65%を占める好発部位。
純粋な被殻出血であれば運動のぎこちなさがでるだけですが、ほとんどの場合隣接する内包(錐体路)に影響を及ぼし、重篤な知覚・運動障害が生じるケースが多い。
視床
視床を栄養する視床膝状体動脈(後大脳動脈から分かれて間脳(視床)を灌流)、視床穿通動脈、前脈絡叢動脈などの出血の場合、以下のような症状の特徴があります。
皮質下(脳の皮質と髄質の境界部近辺)
血管壊死よりも血管腫や奇形、腫瘤や血管病変などが原因(血管造影でも原因特定困難)で、頭頂葉→側頭葉→前頭葉→後頭葉の順で好発し、以下のような症状が特徴となります。
小脳
上小脳動、前下小脳動脈、後下小脳動脈など小脳を栄養する血管が出血した場合、めまい、嘔吐、頭痛、起立歩行困難や小脳失調症状を呈します。
第4脳室に内に穿破した場合、早期に水頭症から脳ヘルニアが生じるため、後頭骨の解放(後頭蓋窩減圧術)と血腫除去が必要になります。
脳幹(橋・延髄)
橋に特に好発(頻度は1~5%)し、高度の意識障害・呼吸障害・脳神経障害・運動麻痺(穿通枝の破綻)を呈します。
背部の中脳蓋に限局した出血では、意識障害を伴っても一過性で眼球運動障害程度で済む場合もありますが、被蓋(中脳蓋より腹側で黒質より背側)を含む場合は、重篤な意識障害・四肢麻痺・顔面神経麻痺・外転神経麻痺などを停止、生存しても植物状態になります。
また、一側に偏っている場合は、交代性片麻痺を呈します。
CT所見
脳出血部は高吸収域として描出されるので出血直後は真白になり、脳浮腫を示す低吸収領域が出現(脳実質の圧迫が示される)しますが、経時的に吸収域が低下し、4週間程度で脳実質と同じ程度に(等吸収域)なります。
治療の考え方
症状が重篤で機能障害が起こる可能性がある場合などは緊急手術を行いますが、JCS20より意識障害が良く、血腫が小さければ手術は行わず自然吸収を待つ(約1か月)か、血腫が大きい場合でも4週間経過以降に血腫除去を行う場合もあります。
また、再出血を防ぐための血圧コントロールも重要です。
くも膜下出血
定義
くも膜と軟膜の間のくも膜下腔(脳脊髄液が灌流する場所)を通る血管が破れ、血液が脳表のくも膜下腔に広がってしまう脳血管障害。
原因
好発部位
ウィリス動脈輪(内頸動脈→前交通動脈→中大脳動脈→堆骨・脳底動脈→前大脳動脈の順)
特徴的症状
「ハンマーで殴られたような」「今までに経験したことないほど激しい」などと表現される
動脈瘤破裂により脳内に血腫が生じて麻痺や知覚症状を示すことはあるが、それ以外では局所的な神経脱落症状を示さない
眼底検査で硝子体(網膜前方)出血あり(ターソン症候群)
血腫が吸収されない場合は視力障害を残す
治療
原因の種類によって対応が異なり、再出血、血管攣縮、急性水頭症、正常水頭症などに対するリスク管理も重要となります。
脳梗塞
定義
脳血栓症、脳塞栓症、急激な血圧低下における脳循環不全、脳血管攣縮などで脳の血管が閉塞し、脳細胞に酸素やブドウ糖が供給されなくなり、脳細胞が壊死状態になった結果、脳機能障害を呈する病気。
症状の特徴
治療
急性期には、血流を補うバイパス術などなど外科的手術の他、薬剤による血栓溶解、病巣周囲の血流改善、閉塞によって生じた脳組織ダメージの最小化、血圧管理などを図る内科的治療も重要となる。
血流が停止する時間が短いほど細胞へのダメージは少なく済むので、いかに緊急対応を適切に行えるかが、予後に大きく影響します。
脳卒中は生活習慣病
脳の血管に負担をかける生活習慣を続けていると、血管が破裂するか血管がつまり、正常の血流が途絶え、脳血管障害になるリスクが高まります。
身体の仕組みを正しく理解し、普段から身体に負担をかけない生活を心がけ、脳血管障害を予防しましょう。