『中枢神経(脳と脊髄)疾患』症状や治療法などのまとめ

『中枢神経(脳と脊髄)疾患』症状や治療法などのまとめ

中枢神経(脳と脊髄)の病変について整理してまとめました。

中枢神経(脳と脊髄)の障害は全身に影響を及ぼします!

目次

髄膜炎とは?

髄膜炎は、脳を覆う硬膜・くも膜・軟膜のうち最外層に位置して頭蓋骨と接している硬膜を除く部分に対する病原体(ウィルス・細菌・真菌・スピロヘータ属)の侵襲により引き起こされる炎症性の疾患で、重篤な機能障害を残す可能性があります。

髄膜炎の原因

  • ウィルス性
  • 細菌性
  • 結核性
  • 真菌性

髄膜炎の症状

髄膜刺激症状

  • 発熱
  • 頭痛
  • 悪心
  • 嘔吐
  • 羞明

髄膜刺激徴候

  • 項部硬直
  • ケルニッヒ兆候

特徴的な症例

  • 細菌による急性化膿性髄膜炎:昏睡や痙攣を呈するほど重篤
  • 結核性髄膜炎(→脳底髄膜炎):脳幹部周辺の髄膜に炎症が強い
  • 真菌性髄膜炎:クリプトコッカスによるものが多く血管炎や肉芽腫形成により、脳局所徴候を呈する

髄膜炎の検査・診断

【腰椎穿刺による髄液検査】

  • 真菌性髄膜炎:髄液における好中球の著名な増加と髄液糖の低値(血糖の1/3以下)
  • ウィルス性・結核性・真菌性:単核球優位(リンパ球・単球)
  • ウィルス性:末梢血の白血球数は減少傾向
  • 細菌髄膜炎:赤沈の亢進と末梢血の白血球増加、CRPの上昇

【胸部X線】

  • 結核性髄膜炎:胸部X線所見が認められない場合、粟粒性結核とは無関係に発症する場合もあり

 

【頭部MRI】

  • 脳底部髄膜の肥厚が有効な所見
  • クリプトコッカス髄膜炎:胸部X線上肺に原発巣あり

 

その他、PCR法(ヒトゲノムの30億塩基対のDNAから必要な塩基配列だけを取り出して増幅させるために必要な操作)・墨汁検査など。

髄膜炎の治療

髄膜炎は、症状は様々で急性、亜急性、慢性と経過を観察しながら、安静と適切な対処療法が必要です。

髄膜炎の予後

 

  • ウィルス性:良好
  • 細菌による急性化膿性髄膜炎:致死率20~30%
    回復例でも聴覚障害など後遺症を残す:20~30%
  • 真菌性髄膜炎:白血病・糖尿病・膠原病などを合併する患者が多く、合併症に予後が左右される。

ウィルス性脳炎とは?

ウィルス性脳炎の原因

一次性脳炎:各種ウィルスが脳実質へ直接感染し、その侵襲により引き起こされる病態       

  • 単純ヘルペス脳炎(前頭葉・側頭葉・大脳辺縁系に好発)
  • 日本脳炎(大脳着基底核・黒質・視床に好発)
  • 西ナイルウィルス脳脊髄炎

 

二時性脳炎:ウィルス感染により惹起された免疫反応が脳実質を障害し発症した病態       

  • 麻疹後脳炎

 

ウィルス性脳炎の症状

発熱、頭痛、意識障害、痙攣、悪心・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状、更に障害された脳部位による特徴的な症状も生じる。

 

  • 単純ヘルペス脳炎(前頭葉・側頭葉・大脳辺縁系に好発)
    →異常行動・人格変化・記銘力障害など
  • 日本脳炎(大脳着基底核・黒質・視床に好発)
    →筋固縮などの錐体外路症状

 

ウィルス性脳炎の検査・診断

【画像診断】
単純ヘルペスウィルス脳炎:前頭葉や側頭葉の浮腫または、破壊性病変
日本脳炎:大脳基底核領域に低吸収または異常信号

【血清】 特異ウィルス抗体価の優位な上昇で確定診断(ペア血清の補体結合抗体価で4倍以上)

【PCR法】
単純ヘルペスウィルスDNA検出も可能

ウィルス性脳炎の治療

症状に応じて対処療法を行う

ウィルス性脳炎の予後

単純ヘルペス脳炎・日本脳炎とも致死率は30%前後で、救命できても重篤な後遺症を残すことが多く、他のウィルス感染では、完全回復から死に至るまでさまざまな経過を取る。

亜急性硬化性全脳炎とは?

亜急性硬化性全脳炎の原因

1~2歳で麻疹に感染した後、変異株の麻疹ウィルス(SSPE)が脳内に持続感染するために起きる遅発性ウィルス感染症。
通常6~9歳の学童期に好発し、進行性に精神・神経症状が増悪する。

亜急性硬化性全脳炎の症状

 

  • 第1期:集中力の低下・無関心による学業低下
  • 第2期:びくっとした四肢・体幹の動き(ミオクローヌス)や全身の痙攣発作などが出現
  • 第3期:意識障害や後弓反張などの症状が出現し、気管切開や経管栄養が必要になる
  • 第4期:全般的な大脳機能低下により無言症を呈する

 

亜急性硬化性全脳炎の検査・診断

 

  • 麻疹ウィルスの抗体価が上昇(血清・髄液の両方で上昇していれば診断確定)
  • 脳波:周期性同期性放電
  • MRI:びまん性脳委縮

 

亜急性硬化性全脳炎の治療・予後

インターフェロンα(脳室内投与)、イノシンプラノベクス内服などにより、生命予後は数年以上に延長され、長期生存例も報告されている。

進行性多巣性白質脳症とは?

進行性多巣性白質脳症の原因

パポバウィルスに属するJCウィルスに感染した乏突起膠細胞が死滅することにより、中枢神経組織の髄鞘を維持または新たに作成することができなくなって脱髄が起こる疾患で、HIV感染・血液系の悪性腫瘍などで免疫力が低下していたり、抗癌薬や免疫抑制薬の投与を受けている患者の日和見感染として発症します。

進行性多巣性白質脳症の症状

好発年齢は、40~60歳代で、比較的急性に発症し、脱髄がおこる場所により、認知症・性格変化などの性格変化・片麻痺・四肢麻痺・視力障害など様々な症状がみられる。

進行性多巣性白質脳症の検査・診断

基礎疾患と脱髄症状を確認します。

    • MRI:T2強調画像で多巣性の高信号領域・造影なし
    • PCR法にて髄液中にJCウィルスDNAが存在することが証明できれば確定

      進行性多巣性白質脳症の治療・予後

      有効な治療はなく、多くは、6か月以内に死亡する。

 

ヒトTリンパ球向性ウィルス脊髄炎とは?

ヒトTリンパ球向性ウィルス脊髄炎の原因

レトロウィルスのひとつであるHTLV-Ⅰに起因する脊髄症(ミエロパチー)。
母児の垂直感染か輸血(10~30%)が原因で、感染発症率は1人/1300人であるがそのほとんどが無症候性。

ヒトTリンパ球向性ウィルス脊髄炎の症候

胸髄に主病巣があるため神経症状は下肢に強いが、重症例では上肢の障害や手指振戦・眼球運動異常・視神経炎など併発する例もあります。

陽性症状

緩徐進行性かつ対象性の錐体路障害(数か月から10数年)

―階段が上がりにくいなどの下肢の痙縮に起因する症状(足先がジンジンするなど)や頻尿などの排尿障害から始まり、徐々に歩行困難(杖歩行→車イス)、弛緩性膀胱に対する導尿など症状が進行していく。

陰性症状

感覚障害は出にくい

ヒトTリンパ球向性ウィルス脊髄炎の検査・診断

  • 抗HTLV-1抗体が陽性:血清・髄液
  • MRI:胸髄の委縮
  • ミエロパチーを呈する脊髄腫瘍や頚椎症などの脊髄圧迫病変ではない

 

ヒトTリンパ球向性ウィルス脊髄炎の治療

 

  • 中等度の経口副腎皮質ステロイド薬が有効(長期連用は行わない)
  • インターフェロンαが有効
  • 対処的に抗痙縮薬・頻尿改善薬など

 

ヒトTリンパ球向性ウィルス脊髄炎の予後

進行の動揺や停止がほとんどなく、長い期間をかけて緩徐に進行し、日常生活が困難になることもある。

神経梅毒

神経梅毒の原因

性行為や輸血による梅毒トレポネーマ感染

神経梅毒の症状

【先天性】:乳児期
・梅毒性天天疱瘡(梅毒疹の一種:濃疱性梅毒が癒合した広い天疱瘡)
・梅毒性肝硬変
・肺炎(梅毒性結合織炎)
・骨軟骨炎(骨長軸成長障害)

【先天性】:学童期(遅発性)
・ハッチンソン三徴候
実質性角膜炎・内耳性難聴・半月状切痕歯(ハッチンソン歯)

【無症候型】:感染しているが無症状
神経学的に無症候だが、梅毒反応がプラスで髄液に異常があり、放置すると実質型梅毒に移行する

【髄膜血管型】:感染後3~10年の潜伏期間を経て発症
・髄膜炎型:亜急性の経過・髄膜炎症状・脳神経麻痺・意識障害・脳病巣症状
・血管型:脳血栓を伴った梅毒性動脈炎・片麻痺・知覚障害・失語
・ゴム腫:梅毒性炎症による限局性肉芽組織・頭蓋内腫瘍の症状

【実質型】:脊髄癆感染後5~20年経過後発症する脊髄後索・後根・後根神経節に慢性進行性病変や10~20年経過後に発症する進行性麻痺や晩期髄膜脳炎

  • 電撃様疼痛・失調様歩行
  • 瞳孔異常:アーガイルロバートソン徴候(+)、対光反射は消失しているけど、近見反射は保持深部腱反射(-)
  • アバディ徴候(+)、アキレス腱圧痛の欠如、ロンベルク徴候(+)、ウェストファル徴候(+):足関節背屈の他動的背屈で前脛骨筋隆起、手を放してもしばらくその肢位を保ちしばらくすると戻る
  • 精神知覚障害(不眠・記憶障害・人格変化・痙攣・精神障害)、瞳孔異常(アーガイルロバートソン徴候+)、進行性認知症、失語、失行、失認など

神経梅毒の経過

【第1期(初期変化)】:感染後約3〜4週間(潜伏期間)~3か月
初期硬結(感染局所粘膜、皮膚に小指頭大、扁平、硬い赤い丘疹)
硬性下疳(丘疹:表面は潰瘍、周囲は軟骨様に硬い)
硬性無痛性横痃(鼠径リンパ節の炎症性腫脹)

【第2期】:第1期直後に続く3か月~3年
バラ疹(赤色小斑点状の発疹)
梅毒疹(四肢屈側、手掌、背部などに斑状、丘状、膿疱状の発疹)
扁平コンジローマ(肛門や陰部の扁平の広い丘疹

【潜伏期(無症候性)】:無制限に続くか後期段階ヘ

【第3期】
ゴム腫(全身各種臓器に見られる進行性破壊性限局性の肉芽腫)
動脈瘤(血管の結合組織の慢性増殖性結合織炎)
進行麻痺
脊髄癆

梅毒の治療・予後

無症候性や髄膜血管型治療には駆梅療法(水溶性プロカインペニシリンG)が有効ですが、実質型神経梅毒では効果が期待できない場合もあり、特に進行麻痺は予後不良。

脳膿瘍の原因

10~40歳に好発する脳実質内に限局した化膿性病変で、以下のような感染経路がある。

  • 中耳炎
  • 副鼻腔炎
  • 開放性頭部外傷
  • 血行性感染(敗血症、胸・腹部の濃瘍からの転移や先天性の心奇形)

脳膿瘍の症状

軽度の発熱や全身倦怠感から始まり、以下のような神経症状(側頭葉、前頭葉、小脳半球に好発)を呈する

  • 視野異常
  • 部分てんかん
  • 不全片麻痺
  • 脳神経麻痺
  • 小脳性失調
  • 頭蓋内圧亢進症―頭痛、嘔吐、嘔気、徐脈、せん妄

脳膿瘍の検査・診断

既往や先天性疾患の有無を確認し、発熱・頭痛と脳局所徴候で脳膿瘍の可能性を検討

鑑別診断:CT
円形または楕円形の低吸収域を認め造影すると被膜がリング状に描出される

脳膿瘍の治療

抗生物質やステロイド薬の投与。
改善がなければ外科的手術へ

脳膿瘍の予後

孤立性のものが多いが血行性のものは多発性の病巣を形成。

放置すれば致命的であるが、CTなどを用いた早期診断や早期治療が可能となり30~40%は完全回復し、10%程度の死亡率になっている

中枢神経(脳と脊髄)系に発生する腫瘍の【分類】【症状】【検査・診断・治療】について整理してまとめました。

人体の司令塔である脳と脊髄(中枢神経系)に影響する範囲に腫瘍ができると、生命維持や身体機能の制限や停止に直結するため、早急な対応が必要です。

腫瘍とは

腫瘍は身体の表面や体の中に発生するかたまりの総称で、良性・悪性、生まれつきのもの(先天性)・生まれてからできるもの(後天性)、形状も平らなものや盛り上がってくるものなど様々な種類があります。

世界最大の腫瘍の重さは、2010年8月にアルゼンチンのある女性から取り除かれた24キロ(7才位の子の平均体重!)です。
18ヶ月間かけて彼女の体内で成長し、摘出手術時間は4時間を超えたそうです。

手塚治虫の名作漫画【ブラックジャック】の相棒であるピノコは、とある患者の腫瘍をパーツにして作られましたが、腫瘍は全身の臓器や器官に様々な形状で発生します。

また、腫瘍は直接身体に害を及ぼす悪性のもの(癌・悪性新生物など)ばかりではありませんが、腫瘍自体が良性であっても、人体の限られたスペースを腫瘍が占有すると他の器官を圧迫して機能障害を起こす場合もあるので、ほとんどの場合で摘出手術が必要となります。

特に人体の司令塔である脳と脊髄(中枢神経系)に影響する範囲に腫瘍ができると、生命維持や身体機能の制限や停止に直結するため、早急な対応が必要です。

脳腫瘍とは?

脳腫瘍は頭蓋骨内に発生する腫瘍の総称で、頭蓋骨内という閉鎖的な空間に発生するため、脳や脳神経にダイレクトに影響を及ぼして重篤な機能障害を引き起こすリスクがあります。

脳腫瘍ができると、湿潤的かつ圧俳性に脳・脳神経・血管が侵されるため、局所神経症状・痙攣・内分泌障害、脳浮腫・脳脊髄循環障害・水頭症による脳圧亢進(頭蓋内圧亢進症)、頭痛・嘔吐・意識レベルの悪化、脳ヘルニアなどが生じます。

脳腫瘍の分類

  • 約80% 原発性腫瘍
  • 約20% 転移性腫瘍

脳実質性腫瘍

脳実質性腫瘍は脳組織そのものから発生する腫瘍で、発育すると健常な脳組織との境界がわかりにくく(湿潤性発育)、組織学的には良性でも全摘出が困難となることから悪性腫瘍に分類される。

ほとんどが原発性であるが、転移性腫瘍もある。

  • グリオーマ(神経膠腫):全脳腫瘍の約1/4を占める

-星細胞系腫瘍(星細胞腫・退形成性星細胞腫・多形成膠芽腫)
-乏突起膠腫
-上衣腫

  • 髄芽腫:小児の悪性腫瘍の代表
  • 血管芽腫
  • 悪性リンパ腫
  • 胚細胞腫

脳実質外腫瘍

脳を包む硬膜や脳神経の神経鞘から発生するもので、脳実質をゆっくりと圧迫するように発育(圧排性発育)する。
脳実質との境界が明瞭のため、手術にて全摘出可能。

  • 髄膜腫:グリオーマに次いで頻度が高い
  • 神経鞘腫:聴神経に好発
  • 下垂体腺腫
  • 頭蓋咽頭腫
  • 類表皮嚢腫

転移性腫瘍

頭蓋内組織以外の身体組織に原発した悪性腫瘍が、脳や頭蓋内に転移したもので、組織学的に悪性で、症状の進行が急速。

転移性腫瘍には、脳実質内転移と硬膜転移があり、脳実質内転移でも周囲の脳組織と境界が明瞭な場合もある。

  • 肺癌からの転移
  • 乳がんからの転移
  • 消化系癌からの転移
  • 転移性腫瘍

脳腫瘍の悪性度分類

WHO分類に基づく臨床的悪性度(WHOGradeと5年生存率)

gradeI 増殖力の低い
外科的切除で治癒可能
gradeⅡ 湿潤性で増殖力は低いがしばしば再発する
より高いGradeの腫瘍へ進展することがあるが多くは5年生存が可能
(悪性転化の例:びまん性星細胞腫(gradeⅡ)→退形成性星細胞腫(gradeⅢ)→膠芽腫(gradeⅣ)
gradeⅢ 核異型や活発な核分裂活性などが高く壊死を起こしやすいなど組織学的に悪性所見を示す
放射線化学療法単独または外科的手術と放射線化学療法の併用
治療後2~3年生存
gradeⅣ 組織学的に悪性で核分裂活性が高く壊死を起こしやすい
術前・術後も急速に進行し死に至る
周辺組織への広範囲湿潤や脳脊髄液への藩腫が生じることもあり
膠芽腫では大部分が1年ほどで死亡

脳腫瘍の症状

頭蓋内圧亢進症状(腫瘍の増大による)

  • 頭痛、嘔吐、うっ血乳頭
  • 脳ヘルニアのリスク
  • 刺激性脳症状(腫瘍の圧迫や湿潤による)
  • てんかん発作(特に焦点性てんかんは要注意!!)

損傷部位により特徴的な巣症状

  • 【前頭葉】
    • てんかん(痙攣)発作
    • 感情失禁
    • 運動麻痺(片麻痺)
    • 運動性失語(優位半球障害時)
    • 人格変化
    • 共同偏死
    • 嗅覚脱失
  • 【側頭葉】
    • 精神運動発作
    • 幻臭
    • 感覚性失語(優位半球障害時)
  • 【頭頂葉】
    • 知覚障害
    • 失行・失認
    • てんかん発作
    • 高次脳機能障害(優位半球障害時)
  • 【後頭葉】
    • 視交叉:視力障害、視野狭窄(両耳側半盲)
  • 【視床・脳幹・小脳】
    • 下垂体:尿崩壊
    • 視床下部:性機能異常
    • 脳幹部:嚥下障害・運動麻痺・構音障害・眼球運動障害(複視)
    • 小脳:共同運動障害・歩行障害(小脳失調)・平衡機能障害(めまい)

脳腫瘍の検査・診断・治療

症状を確認し、画像診断などで診断して経過を追います。

腫瘍の種類や大きさ、年齢等を考慮し対処療法を行う事があるが、多くは手術療法(合併症を出さずできるだけ多く腫瘍を切除することが目的)と化学療法・放射線療法が併用されます。

脊髄腫瘍

脊髄腫瘍は、脊髄内および、クモ膜・硬膜・神経鞘(神経を保護する膜)・脊柱管内の軟部組織や椎体に発生した腫瘍のことで、脊髄や神経根が圧迫されるため重篤な神経症状を呈します。

脊髄腫瘍の分類

発生部位から以下のように分類されます。

  • 硬膜内腫瘍:ごく稀
  • 硬膜外腫瘍:転移性腫瘍で多い
    -髄内腫瘍(脊髄そのものから発生):上衣腫・高分化の星細胞腫・硬膜内髄外腫瘍
    -硬膜内髄外腫瘍:神経鞘腫・髄膜腫

脊髄腫瘍の代表的腫瘍

  • 髄膜腫:脊髄の周囲の硬膜より発生
  • 神経鞘腫:神経を保護する膜より発生
  • 神経膠腫:脊髄そのものより発生

上記のように良性腫瘍が多いが、癌などの悪性腫瘍・類上皮腫・血管腫などもある。

脊髄腫瘍の症状

腫瘍の種類に関わらず通常は脊髄圧迫症状が主で、転移性腫瘍以外では緩徐に増大する。

四肢の神経痛や筋力低下、感覚障害(しびれなど)、比較的急激に発病して手足が動かなくなったり、尿や便の失禁,呼吸障害など重篤な症状を示す例もある。

脊髄腫瘍の原因

直接的な原因不明で、遺伝的要因は否定されている。

脊髄腫瘍の検査・診断・治療

MRIやCTなどの画像診断を行い、ほとんどは腫瘍の全摘出と脊椎の再建を行うが、腫瘍と正常組織の境界が明確でなく全摘出が難しい場合は、放射線や化学療法も検討される。

「脳ヘルニア」は、何らかの病変や原因により局所的に頭蓋内圧が亢進した結果、脳の一部がゆがんだり偏倚したりする状態(組織が正しい位置からはみ出した病態)で、中枢神経系の正常な構造に影響を与えるため、重篤な神経障害や意識障害をきたします。

 

【頭蓋内構造】と【脳ヘルニアが起こるメカニズムと特徴的な症状】について整理してまとめました。

頭蓋内の基本的構造

硬い頭蓋骨に囲まれた頭蓋内腔(頭蓋内のスペース)には、脳実質、脳を包む膜(軟膜・くも膜・硬膜)、血液、脳脊髄液が存在しますが、頭蓋内腔を区切るように以下のような構造があります。

  • 【左右の大脳を分ける大脳鎌】
    頭蓋天井の正中線上の硬膜から前後方向に垂れ幕を下ろしたような膜状構造で、左右の大脳を分ける
  • 【大脳と小脳を分ける小脳テント】
    左右の後側頭から内側に張り出した硬膜で、大脳と小脳を分ける
  • 【テント上腔】
    左右の大脳が収まっているスペース
  • 【テント下腔(後頭蓋窩)】
    小脳と脳幹が収まっているスペース

脳ヘルニアが発生する部位

脳ヘルニアは、脳の実質が元の位置から圧の低いところへ飛び出ることなので、以下のように隙間のある場所で脳ヘルニアが発生します。

  • 大脳鎌の下縁と脳梁の間
  • テント切痕と中脳の間
  • 大後頭孔(大孔)

脳ヘルニアが起こる原因とメカニズム

なんらかの原因で頭蓋内スペース間の圧差が生じると、圧の高い方から低い方へ脳組織が偏倚し、狭い隙間にはみ出す現象が起こります。

【原因】

  • 内腔占拠病変(脳腫瘍・血腫・脳膿瘍)
  • 脳静脈洞閉塞
  • 髄膜炎
  • 髄液循環障害(水頭症)

+

  • 脳浮腫
  • 腰椎穿刺や浣腸などの人為的要因

全頭蓋内容量から脳実質を除く容量は100~150ml近くあるため、腫瘍などが急激に代償の範囲を超えて大きくなることが稀ですが、脳浮腫、腰椎穿刺や浣腸など頭蓋内圧を亢進させる可能性のある行為が加わることで脳ヘルニアを誘発します。

頭蓋内圧亢進(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭)で、液体成分(血液・脳脊髄液)での代償の限界を超えると脳実質がゆがんで圧の低い方への偏倚し、もともとその場所にあった組織を圧迫するため、細胞の破壊・虚血・変形が起こり、意識障害や局所の神経症状が生じ、最悪の場合呼吸停止や血圧の急激な低下により『死』に至ります。

脳ヘルニアの特徴

大脳鎌ヘルニア

  • CT所見にて容易に診断可
  • 頭蓋内圧亢進症が主な症状
  • 巣症状はあまりみられない

テント切痕ヘルニア

  • 臨床上もっとも頻度が高く、見逃すと致命傷になりやすい
  • 中脳圧迫による徐脳硬直
  • 意識障害
  • 病巣反対側の片麻痺
  • 同名半盲
  • 病巣側の散瞳
  • 瞳孔(左右)不同(アニソコリア)

大後頭孔ヘルニア

大後頭孔は延髄が貫通していて狭いスペースしかないので、小脳扁桃が偏倚してくると脳脊髄循環が閉塞されて水頭症が起き、延髄の直接圧迫により意識障害、呼吸停止、血圧低下がおきます。

小脳扁桃の偏倚が多いため小脳扁桃ヘルニアとも呼ばれ、腰椎穿刺が原因で起こるヘルニアのほとんどが小脳扁桃ヘルニアです。

脳ヘルニア【バイタルの変化】

バイタルサイン(血圧・脈拍・呼吸・体温)、眼球・瞳孔所見の確認により、異常状態に早期に気づくことが重要です。

  • 血圧
    急激な頭蓋内圧亢進で脳血流量の低下するため、生体調整機構により血圧が上昇(クッシング現象)
  • 呼吸
    橋、延髄の呼吸中枢の障害による異常呼吸パターン
  • 脈拍
    急性期は圧脈拍
  • 体温
    視床下部の体温調節中枢の障害

プリオン病とは、大脳や小脳などの中枢神経系に異常なプリオン蛋白が蓄積して脳機能が障害され、脳組織の海綿(スポンジ)状変変性を特徴とする疾患群です。

社会問題として広く認知された狂牛病と呼ばれる牛海綿状脳症(BSE)、人間に発症するヒトプリオン病としてクロイツフェルト・ヤコブ病(CDJ)などが代表的な疾患です。

プリオン病について整理してまとめました。

プリオン病とは

プリオン(Prion)とは、蛋白質性感染粒子(proteinaceous infectious particle)のことで、プリオン蛋白はヒトのすべての細胞に発現し、特に神経系細胞上に多く存在します。

プリオン病とは、異常構造を有する異常プリオン蛋白が大脳や小脳などの中枢神経系に蓄積し、不可逆的かつ致死性の神経障害を起こす疾患群のことで、正常なプリオン蛋白が感染型に変異・変化し、徐々に蓄積範囲が増加していきます。

ヒトに発生するヒトプリオン病の大半を占めるのはクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)で、他にクールー斑状沈着を特徴とするゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、家族性に発症する致死性家族性不眠症があります。

現在プリオン病の詳細な発生機序は解明されておらず、有効な治療法もないため、対処療法が行われますが、予後は不良で数年以内に寝たきりになり死亡します。

クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)

クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt‐Jakob disease, CJD)はプリオン病の代表疾患で、大多数は弧発性(遺伝ではない)ですが、プリオンには感染性があり、家族歴や遺伝子変異のある遺伝性CJD、CJD患者の角膜や脳硬膜を移植で発症した医原性CJD、牛海綿状脳症(BSE:狂牛病)がヒトに感染した疑いのある変異型CJDも報告されています。

世界各国の弧発性CJD有病率は同一(100万人に1人の割合)と地理的な相違のない稀な感染症で、発症年齢の平均は62歳、女性が男性よりやや多い傾向があります。

CJDは、1920年代初頭にドイツの神経病理学者CreutzfeldtとJakobによって論述されたため、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt‐Jakob disease,CJD)と呼ばれていましたが、現在では病理学的成因から、プリオン(prion)病や伝達性海綿状脳症(transmissible spongiform encephaolopathy,TSE)として哺乳類の神経疾患群としてまとめられています。

孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)

クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の主症状は進行性痴呆とミオクローヌスです。

クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の症状は、易疲労性、性格変化、記憶・記銘力低下などからはじまり、数ヶ月後には認知機能障害、幻覚・幻想・妄想などの精神症状、四肢のミオクローヌス・振戦・不随意運動・筋固縮(錐体外路症状)、小脳性失調・協調性運動障害・筋委縮・失行などが出現し、3〜7ヶ月大脳皮質の全般的な機能障害による無動性無言・徐皮質姿勢に至り、1〜2年で全身衰弱・呼吸麻痺、肺炎などで死亡します。

遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)

遺伝子変異が認められる遺伝性CJDの臨床症状や経過は、弧発性CJDに類似しています。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)

20歳代の若年者に好発し、行動異常・感覚障害・ミオクローヌスを主症状とし、無動性無言状態に至るまで1年程度と孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)よりも緩徐な経過を辿ります。

ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)

ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)は、脳に異常なプリオン蛋白が蓄積して脳神経細胞の機能が障害され、脳に海綿状の変化が出現するプリオン病と呼ばれる疾患群に属する病気ですが、遺伝子に異常が認められ(ただし同じ家族に全員発症するとは限らない)、病気の主症状や経過が他のプリオン病とは異なります。

孤発性CJDに比べ、発症年齢は、40~60歳代(30歳代の若年発症例もあり)と若く、発症から死亡までの経過も緩徐です。

ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)の主症状は、プリオン蛋白遺伝子変異の部位によって多少異なりますが、行動異常・四肢の知覚異常が主訴に始まり、小脳症候(酔っぱらいのような歩行障害や四肢の運動障害)と認知症が出現し、徐々に進行して起立・歩行が出来なくなり、寝たきりの状態になり、発病後2~10年に全身衰弱、肺炎などで死亡します。

脳の病変部に広範に異常プリオン蛋白が沈着したクールー斑や空胞がみられることも特徴です。

致死性家族性不眠症(FFI)

致死性家族性不眠症(fatal familial insomnia: FFI)は、脳に異常なプリオン蛋白が蓄積して脳神経細胞の機能が障害され、脳に海綿状の変化が出現するプリオン病と呼ばれる疾患群に属する病気ですが、遺伝性で(プリオン蛋白遺伝子の178番のコドンに異常)40~50歳代で発症することが多く、病気の主症状や経過が他のプリオン病とは異なります。

視床が主に侵されるため、夜に興奮状態となり眠れない、幻覚、記憶力低下、体温上昇、多汗、脈が速くなるなどの症状から始まり、認知症やミオクローヌス(けいれん)が発症し、1年前後で意識がなくなり、発病後2年以内に全身衰弱や肺炎などで死亡します。

 

多発性硬化症は、神経細胞の軸索を覆っている「ミエリン」が障害(脱髄)される疾患で、【難病】に指定されています。

多発性硬化症の【症状】【原因・病理】【検査・診断】【治療・予後】について整理してまとめました。

多発性硬化症の由来

多発性硬化症は、亡くなった患者さんの脳や脊髄を手で触ると固く感じるような病変が多数あることからこの病名がつけられたそうです。

英語では、Multiple(多発する)Sclerosis(硬化)と表現され、頭文字をとってMS(エムエス)と呼ばれています。

多発性硬化症の原因・病理

多発性硬化症(MS)は、脳・脊髄・視神経を中心に、あらゆる神経に病巣(脱髄)が発生することで、様々な機能障害を呈する疾患です。

正常の神経伝達

電気ケーブルの導体まわりを絶縁体が囲っているように、正常な有髄神経線維では、神経の電気活動を伝える神経軸索の周りを髄鞘が囲っていていることで正常な神経伝達が行われています。

脱髄とは

脱髄は神経軸索を取り囲んでいる髄鞘が壊れて神経軸索がむき出しになった状態のため、神経の電気信号がスムースに伝達できなくなり、機能障害が生じます。

導体がむき出しになったような壊れた電気ケーブルでは電気が正常に伝達されず、家電が正常に動かないようなイメージです。

髄鞘(ミエリン)が障害される原因に「自己免疫」が関係していて、なんらかのきっかけで自分の細胞を自分で攻撃してしまうことで脱髄が起きているという説が有力ですが、未だ詳細は明らかになっていません。

多発性硬化症の症状

病巣より以下のように様々な症状を呈します。

また、経時的に悪化していく場合と、寛解(症状が一時的に軽くなったり消えたりするが病気が完全に治った状態ではない)と再発を繰り返しながら経過していく場合があります。

■視覚障害(視神経・脳機能)
・視力低下
・視野が欠ける
・二重に見える
・ぼやける
・文字が読めない
・色がわからない
・何となく暗い
・目を動かすと痛みを感じる
・目の奥が痛い

■運動障害(麻痺・失調)
・上手く歩けない
・力が入らない
・すぐに力がなくなってしまう
・ガクガクする
・つっぱる

■感覚障害
・感覚が鈍い
・温度の感覚がわからない
・熱さと冷たさの感覚が逆になる
・皮膚の上に薄い紙が置かれているような感じがする

■異常感覚
・チクチクする
・ピリピリする
・ジンジンする
・しびれる
・かゆい
・小さな虫が歩いているように感じる
・レルミッテ徴候(首を曲げると腰から足にかけてしびれや痛みが走る症候で発作的に起こる)

■痛み
・焼けるように痛い
・針で刺されたように痛い
・感電したように痛い
・体を何かで締め付けられているように痛い
・有痛性強直性痙攣(手足を動かすと痛みを伴っていわゆる「つった」状態になる)

■疲労
・急にエネルギーが切れた感じ
・起きたばかりなのに疲れている
・突然重度の疲労感を感じる

■めまい(平衡障害)・ふるえ ・ふらふらする
・まっすぐ歩けない
・酔っぱらっているよう、いつもグルグル回っている感じがする
・吐き気
・ふるえ

■言語障害

■嚥下障害

■しゃっくりがとまらなくなる

■排泄障害(自律神経障害)
・トイレの回数が多い
・急にトイレに行きたくなる
・尿が出にくい・失禁・残尿感
・便秘

■認知・感情の障害
・物忘れが多くなった
・判断力が低下した
・集中力がない
・うつ症状

■体温との関連
・「ウートフ徴候」:体温が上がると一時的に症状がひどくなったり、別の症状が出てきたりすることで体温が下がれば症状は回復する。
・お風呂に入ると力が入らなくなる
・お風呂に入ると視力が悪くなる
・運動すると体がふにゃふにゃになる

多発性硬化症の検査・診断

大脳および脊髄のMRI検査所見は必須で、以下3点が満たされた時に確定診断とされます。

      • 2か所以上の中枢神経病変を示す臨床兆候
      • 2回以上の発作または6か月以上の進行性の経過
      • 他の病気が否定される

多発性硬化症の治療・予後

薬物による対処療法やリハビリテーションにより、経過を追いながら生活の質を維持するための治療が行われます。

初発から急速に進行していく場合もあるが、寛解・再発を繰り返しながら徐々に障害が進行していく場合が多いため、経過観察が重要。

寛解とは、症状が一時的に軽くなったり消えたりした状態で、病気が完全に治った状態ではありません。

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