【筋膜とアナトミートレイン】筋膜リリースや筋膜はがしのためのイラスト図解解剖学

 筋膜の構造と全身の筋膜のつながりをマッピングした「アナトミートレイン」についてイラストを使ってわかりやすく解説

「筋膜リリース」や「筋膜はがし」という言葉が流行していますが、そもそも「筋膜」とはどんな構造や役割を持っているものなのか正しく理解していなければ、効果的で正しい「筋膜」へのアプローチができず、機能改善やパフォーマンス向上は期待できません。

「筋膜」の構造や仕組み、筋膜による筋肉のつながりを理解すれば、何故「筋膜」が私たちの姿勢や活動に影響するのか、どんな方法で「筋膜リリース」すれば効果的なのか自分で考えられるようになります。

また、「筋膜」のつながりを意識して姿勢改善や運動パフォーマンス改善のためのトレーニングやエクササイズをすれば、より早く効果を実感できます。

「筋膜」の構造と機能的なつながりについて整理しよう!

【筋膜】とは?筋膜の基本構造と3つの役割

「筋膜」とは名前の通り筋肉の周りを覆う綿飴のような薄い膜状の結合組織で、主成分はコラーゲン繊維です。

料理をする人であれば皮付きの鶏肉の周りについている膜を見たことがあると思いますが、筋膜は筋肉をぴっちりと包み込んでいて、人体の筋肉組織が「筋膜」によって結合されていることで、その形状を維持し、本来あるべき場所に安定して存在することができます。

「筋膜」も全身に張り巡らされた人体構造の生理学的ネットワークのひとつで、「心臓を中心とする血液循環ネットワーク」や「脳を中心とする神経系ネットワーク」と同じくらい私たちの生命維持および円滑な活動のために不可欠です。

「筋膜」の主な役割は①「筋肉を機能単位ごとに包みこんでまとめる整理整頓袋のような役割」②「筋膜細胞間での変化も常に感知して空間における身体の位置や姿勢を認識する役割」③「隣接する構造や機能とを繋ぐ連絡網のような役割」の3点です。

もし「筋膜」がなければ、体内のあらゆる臓器はその形状を維持できませんし、骨格が作る身体の特定の位置に筋肉などの組織が安定して存在することができません。

つまり、身体に指令を送る脳も、血液を循環させる心臓も、食べた物を消化する胃や腸も、運動する時に働く骨格筋も、みんなベッドから起き上がった瞬間に床に落ちて、水溜りになってしまいます。

この記事では「筋膜」の役割のうち、「骨格筋(意識的な筋肉運動に関与する筋肉)」に影響を与える要素と役割に特化して解説しています。

【筋膜】の3層構造:①筋肉を機能単位ごとに包みこんでまとめる役割

【筋膜】には「筋肉を機能単位ごとに包みこんでまとめる整理整頓袋」としての役割があります。

【筋膜】は深層から浅層まで身体全体に立体的に張り巡らされていて、筋繊維だけでなく、神経・血管・リンパ節・脂肪など皮下組織も含んで包み込んでいます。

筋肉ごとの構造を個別に解剖していくと、筋繊維ひとつひとつを包みこむ筋膜と筋繊維の束ごとに包み込む筋膜、そして、筋肉全体を包み込む筋膜の3層に分かれていることがわかります。

筋膜 構造
筋内膜 筋繊維単位で包む
筋周膜 主要筋繊維束単位で包む
筋外膜 骨格筋単位で包む

骨格筋を包み込む「筋膜」では、筋肉の末端部(骨付着部)に向かうほど高密度になり、最終的に腱を形成して骨を包む膜と完全に混ざり合います。

【筋膜】があることで骨格筋が所定の位置に安定し、筋肉ごとのチームプレイによるスムースな関節運動ができるため、私たちの姿勢・日常生活動作・スポーツなどが円滑に行えます。

【筋膜】のコラーゲン繊維配列を正常に保ち弾力性を維持するためには、十分な水分量と定期的な筋肉運動が必要ですが、座っている時間やスマホやパソコン使用で長時間同じ姿勢をとることが多い現代人は、筋膜が筋肉や皮膚に癒着して【筋膜】の弾性や機能性が低下しがちです。

筋膜が固く柔軟性がなくなると筋肉運動が制限され、姿勢やアライメントが崩れて肩こりや腰痛になったり、血液やリンパの流れが滞ることでむくみや老廃物蓄積の原因となり、ボディラインや運動パフォーマンスに悪影響が出てきます。

【筋膜】のどこか1箇所でも萎縮や癒着が起こるとそこを起点に全身のパフォーマンスに悪影響が生じるので、全身のパフォーマンスの中でどこが制限されているのか見極めることが重要です。

【筋膜】と固有受容器:②空間での身体の位置や姿勢を認識する役割

【筋膜】には「筋膜細胞間での変化も常に感知して空間における身体の位置や姿勢を認識する」役割もあります。

筋肉を包み込む【筋膜】には、筋肉の収縮を感知する多様な機能を持つ多様な固有受容器がたくさん含まれています。

受容体 役割
GTO 負荷を感知
Paciniform小体 圧力を感知
ルフィニ終末 せん断を感知
自由神経終末 あらゆる刺激を測定し侵害受容路(痛み)にも接続

脳は、前庭器官や皮膚にある様々な感覚(痛み、温度、触覚、圧覚など)センサーからの情報だけでなく、筋膜細胞間での変化も常に感知し、空間における身体の位置や姿勢を認識しています。

例えばストレッチをするときには「筋肉の伸びを感じる」と表現しますが、筋肉よりも筋肉を囲む筋膜の方が固有受容器の数が6倍程度あるので、実際には「筋膜の伸びを感じる」という表現の方が適切かもしれません。

筋肉内の固有受容器(筋紡錘)も、結合組織の長さの変化から筋長の変化を予測する機能がありますが、「後頭下筋」「眼筋」「足底筋」「深層の固有背筋群」など一部の筋肉(主に姿勢や機能保持調整に作用する筋肉)を除いて、筋肉自体には筋肉の長さの変化を感じる機能がほぼありません。

【筋膜】と【アナトミートレイン】:③構造や機能とを繋ぐ連絡網としての役割

【筋膜】には「隣接する構造や機能を繋ぐ連絡網」となる役割もあります。

この役割を実際の運動に役立つ形で体系化したものが Thomas Myers 氏が開発した全身の筋膜のつながりを示すマッピングである【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】です。

身体中には複数の骨格筋があり、姿勢を保持したり関節を動かす運動を行うために筋肉が収縮と弛緩を繰り返していますが、筋肉が単独で作用することはなく、人体というひとつの機能単位として目的に合わせて全身の筋肉が協調して動くことが必要です。

筋繊維を機能単位ごとにまとめているのが「筋膜」ですが、全身の協調運動(姿勢保持やスポーツなど)を起こす際に、同じ深さで直接的に筋膜でつながって互いに影響を及ぼしているつながりが【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】です。

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】は、Thomas Myers 氏が姿勢パターンの分析を経て体系化したもなので、スポーツ、リハビリ、ヨガなどあらゆる動作や姿勢の分析やパフォーマンス改善に役立ちますし、近年の研究で【筋膜】が運動に直接的に及ぼす影響についても解明されてきています。

例えば、長時間のパソコンワークやスマホ使用などで猫背が続くと肩こりだけでなく、腰痛や頭や目の奥の重だるさまなど体調不良が全身に連鎖することがあったり、ハムストリングの硬さを感じて前屈ができなかったのに足裏をほぐしたら前屈ができるようになることがありますが、これらは【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】を理解することで説明できます。

「筋膜のつながり(アナトミートレイン)」を理解すると、問題の原因がどこにあるのかや効果的な対処法を自分で考えられるようになりますし、身体の使い方、動きの統合、姿勢の問題への意識も大きく変わるので、パフォーマンスが向上します。

特に、「姿勢改善や健康増進 ・発育期(子供)の発育を促す運動(体育)」「 リハビリテーション(ネガティブ→ニュートラル) 」「パフォーマンス向上(スポーツ競技やアスリート、ダンス、演劇、楽器演奏など) 」などに関わる人には必須の知識で、姿勢や運動パフォーマンス改善だけでなく、人生100年時代において健康寿命を伸ばすためにも有効に活用できます。

【アナトミートレイン】3つの基本ルール

【筋膜】は、筋肉の張力(筋力)を直接的かつ効率よく伝達するために方向と深さに一貫性を持ってつながっています。

【筋膜】の機能的なつながりを示す【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】にも効率よく機能を連動させるための3つの基本ルール(規則性)があります。

*特定の姿勢においては筋膜のつながりが途切れる「脱線」が生じたり、特定の機能構造における「一部例外」はあります。

①同一方向

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】は、筋膜および筋肉や靭帯などを含む結合組織を経由地点とした筋膜繊維のつながりなので、基本的には真っ直ぐか、徐々に進行方向を変えて直進します。

車でも電車でも方向を変えたりカーブを曲がる時は大きく減速しなければならないので、つながりは直線の方が効率がよいことは簡単にイメージができると思います。

例えば、「小胸筋」と「烏口腕筋」は解剖学上「肩甲骨烏口突起」で明らかに繋がっていますが、腕をリラックスして下に降ろしている時はそれぞれ別機能の筋肉として作用していますが、腕を頭上に持ち上げたり、懸垂をする時などのように何かにぶら下がったり、テニスのサーブや投球などで肩関節を大きく振るように動かすような時は「小胸筋」と「烏口腕筋」が肋骨から肘までをひとつのラインとして繋ぐ1本のチェーンようになって機能します。

更に言えば、「デイープフロントアームライン(DAFL)」から「スーパーフィシャルフロントライン(SFL)」を含めて親指から骨盤まで1本のほぼ真っ直ぐな機能ラインとしてつながり、機能的にひとつのユニットのように作用します。

「同一方向」でなくても結果として張力を効率よく伝えて機能を高めていれば「例外」としてアナトミートレインに含まれる場合があります。

例えば、「腓骨筋」は外くるぶし周辺で角度のあるカーブを描くように走行して直線という原則からは外れますが、この構造自体が滑車の役割を果たして筋膜のつながりによる力の伝達の効率を高めています。

②同階層

骨格筋は段階的な層構造(深層〜浅層)になっていますが、力を効率よく伝達するための「筋膜」は基本的に同じ層(平面)で連結しています。

階が異なれば連結するための階段が必要になるのと同じように、階層が変わると同じ面で連結するよりも非効率になってしまうからです。

例えば、上半身を正面から見た場合、「腹直筋」と「胸骨筋膜から肋骨前面を走行する筋膜」は、喉の前面を通る「舌骨下筋群」につながるように見えます。

確かに上部脊椎全体が過伸展している場合に胸から喉への機能的な接続を感じることはありますが、表層の胸筋膜と「舌骨下筋群」では、筋膜面の階層が異なるため直接的な筋膜連結はありません。

「舌骨下筋群」は胸骨深層を通過して肋骨内壁と胸腔内の筋膜に接続していて、胸骨および肋軟骨接合部から上行する表層の筋膜は、「胸鎖乳突筋」へとつながります。

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】の層構造を理解するには、筋肉それぞれの起始停止など基本的な解剖学構造の知識が不可欠です。

また、機能的に筋肉が階層を超えて連結している場合などは「同階層ルール」の例外になります。

③隣接

「筋膜」は隣接する機能構造をつないでおり、特定の関節や組織を飛び越えてつながることは非効率なのであり得ません。

例えば、「長内転筋」は恥骨から大腿骨粗線に下降し、大腿骨粗線から「大腿二頭筋短頭」が下降しますので一見「筋膜」でつながっているように見えますが、「大内転筋」が「長内転筋」と「大腿二頭筋短頭」を切断するように大腿骨粗線に付着しているためこの2つに筋膜のつながりはありません。

「長内転筋」と「大腿二頭筋短頭」に骨を介在したなんらかの機能連結が存在する可能性はありますが、筋膜により力の伝達の観点では「大内転筋」により連結が切断されています。

【アナトミートレイン】種類:7つの機能線

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】のうち、姿勢や運動改善に特に有用な7つの機能線について詳細を整理しています。

名称 機能や特徴
SBL(スーパーフィシャルバックライン:浅後線) 【背面表層部における筋膜のつながり】「前額(おでこ・眉)」←「頭頂(あたまのてっぺん)」←「首後ろ」←「背骨」←「骨盤」←「太もも裏」←「膝裏」←「ふくらはぎ」←「アキレス腱」←「足裏〜足趾」
SFL(スーパーフィシャルフロントライン:浅前線) 「頭皮筋膜」←「胸鎖乳突筋」←「胸郭」←「腹直筋」←「骨盤前側」←「大腿直筋(大腿四頭筋)」←「膝前側」←「前脛骨部の筋肉群」←「趾骨背面」
LL(ラテラルライン:外側線) 「耳の後ろの頭蓋骨」←「頸部筋」←「胸郭」←「腹斜筋」←「股関節と臀部(臀筋群)」←「太もも外側(大腿筋膜張筋・腸脛靭帯」←「膝外側」←「腓骨筋群(下腿外側筋群)」←「足首外側周辺」
SPL(スパイラルライン:ラセン線)

「両側の頭蓋骨」→「背中上部で反対側の肩と結合」→「肋骨周りを経由して身体の前面」→「お臍から腰の高さで再度交差して股関節(骨盤)」→「前外側太ももに沿って進んでスネを横切って外側から足底」→「足底で内側縦アーチを経由して足底を横切る」→「足底内側から脚の後外側を坐骨」→「脊柱起立筋群の筋膜」→「後頭骨稜」

FL(ファンクショナルライン:機能線)

「腕」⇄「体幹をクロス」⇄「反対側の脚」

*「スパイラルライン(SPL:ラセン線)」の追加機能、または「AL:アームライン」の体幹への延長として機能

AL(アームライン:腕線) 肩甲帯を経由して体幹軸と上肢(腕・手・指)をつなげる4種類の機能ライン
DFL(ディープフロントライン:深前線)

冠状面では左右の「外側線(LL:ラテラルライン)」の間、 矢状面では「浅前線(SFL:浅前線)」と「浅後線(SBL:浅後線)」の間、更に「らせん線(SPL:スパイラルライン)」と「機能線(FL:ファンクショナルライン)」に囲まれるように存在する「スペース(空間)」

浅後線:スーパーフィシャルバックライン(SBL)

【SBL(スーパーフィシャルバックライン:浅後線)】は足底から頭頂部まで背面を一直線につなぐラインです。

【SBL(浅後線)】は生理的湾曲(直立二本足歩行を獲得するにあたって形成される背骨のS字カーブ)による直立姿勢(抗重力位)を維持して背中が丸くなる(前屈みになる)のを抑制する機能があり、抗重力筋(姿勢保持筋)が集まるラインとも言えます。

浅前線:スーパーフィシャルフロントライン(SFL)

【SFL(スーパーフィシャルフロントライン:浅前線)】は、足背から身体の前側表層を上行して頭蓋側面に至る筋膜のつながりです。

【SFL(スーパーフィシャルフロントライン:浅前線)】は抗重力ラインである「SBL(スーパーフィシャルバックライン:浅後線)」と拮抗する役割があり、矢状面での姿勢保持をサポートしています。

また、直立位で生活をしている人間は身体の重要な器官を身体の前面に集めているため、大切な器官や臓器を守るための保護機能としても重要な役割があります。

外側線:ラテラルライン(LL)

【LL(ラテラルライン:外側線)】は、足首外側周辺から下腿と太ももの外側→体幹→肩→耳の後ろの頭蓋骨と身体の両外側を囲むように上行する筋膜のつながりです。

【LL(ラテラルライン:外側線)】は、他の「スーパーフィシャルライン(SFL・SBL)」「全アームライン(AL)」「スパイラルライン(SPL)」の作用を仲介してバランスを取りながら作用するので、姿勢において「前後のバランス調整」および「左右でのバランス調整」に機能しています。

運動面では、「体幹側屈」「股関節外転」「足の外反運動」に作用し、体幹の側屈や回旋を調整する「ブレーキ」としての役割も果たします。  

ラセン線:スパイラルライン(SPL)

【SPL(スパイラルライン:ラセン線)】は、身体の周りを左右2つの対抗するラセンで二重に包み込むように走行する筋膜のつながりで、筋膜要素のほとんどは他の筋膜経路 :「SBL(浅後線)」「SFL(浅前線)」「LL(外側線)」「DBAL(アームラインの一部)」:にも含まれています。

つまり、【SPL(スパイラルライン:ラセン線)】は、ねじれ、回旋、横方向への重心移動などで姿勢や運動を維持調整など様々な機能を持つ筋膜のつながりであると同時に、機能不全を起こすと他の様々な筋膜ラインにも悪影響を与える可能性があります。

機能線:ファンクショナルライン(FL)

【FL(ファンクショナルライン:機能線)】は名前の通り、特定の動作における「機能」を高めるために腕から体幹を経由して脚まで含めてクロス方向へ作用するラインで、以下の3ラインに分解できます。

名称 特徴
後機能線(BFL) 体幹後面でクロス(X)を作る
前機能線(FFL) 体幹前面でクロス(X)を作る
同側機能線(IFL) 肩から同側の膝内側をつなぐ

【FL(ファンクショナルライン:機能線)】は、実質「スパイラルライン(SPL:ラセン線)」の追加機能、または「AL:アームライン」の体幹への延長として機能しているとも解釈できます。

アームライン

【AL(アームライン:腕線)】とは、肩甲帯を経由して体幹軸と上肢(腕・手・指)をつなげる機能ラインのことで、肩を経由する時の相対的な配置によって4つのラインに分解できます。

名称 相対的位置
ディープフロントアームライン(DFAL) 前面深層
スーパーフィシャルフロントアームライン(SFAL) 前面表層
ディープバックアームライン(DBAL) 後面深層
スーパーフィシャルバックアームライン(SBAL) 後面表層

二本足歩行を獲得した人間の上肢関節(肩関節や腕の関節)は可動性を重視(安定性を犠牲に)した解剖学構造になっていますが、複数のアームライン(前後深浅)を機能的に重ね合わせることで、負荷や多様な動作に柔軟に対応しつつ安定性も高めています。

深前線:ディープフロントライン

【ディープフロントライン(深前線:DFL)】は、他のアナトミーラインに囲まれる「スペース(空間)」のような構造で、安定した姿勢を作りつつ運動や姿勢変化における自律神経支配による心肺や内臓機能とを連携させています。

【アナトミートレイン】と姿勢

私たちは日々様々な活動やスポーツをするために、特定の姿勢を維持したり変化させたりを繰り返しています。

「筋膜」のつながりである【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】は、正しい姿勢を維持するための機能としても重要な役割があります。

特定の動きや運動の際に筋膜経路通りの動きをすることはほとんどありませんが、身体のパーツで独自の動きをコントロールできるは「筋膜」のつながりによって全身の安定性が保持されていることが大前提です。

例えば、椅子に座って片方の足の上にもう片方の足を置いてみてください。

そのまま膝を持ち上げて足を床から離そうとすると、「つま先」-「股関節」-「お腹」-「胸骨」-「頸部」までがひとつのラインのように繋がって緊張するのを感じられると思います。

膝の持ち上げ(股関節屈曲)運動自体は主に「大腿直筋(大腿四頭筋)」と「大腰筋」の作用ですが、筋膜のつながりによって「SFL(スーパーフィシャルフロントライン:浅前線)」および「DFL(ディープフロントライン:深前線)」全体が作用して姿勢を保持しているからです。

ヨガなどのポーズなどでよくある脚を前後に大きく開いて前足に重心を乗せる動作(例:ウォーリアワン)では「SBL(スーパーフィシャルバックライン:浅後線)」全体が緊張するのを感じますし、後脚を床から離して体重を完全に片足に乗せる(例:ウォーリアスリー)と、「LL(ラテラルライン:外側線)」と「DFL(ディープフロントライン:深前線)」が相互作用してバランスが取れて安定したポーズになります。

身体の軸となる部分をしっかりと固定することで、自由度を高めたい部分の運動パフォーマンスを最大限高めるように、「アナトミートレイン」同士も協調的に作用していることも重要なポイントです。

例えば、先ほどのヨガポーズの場合でも、姿勢安定のキーとなる背骨や骨盤をニュートラルに保つように「アナトミートレイン」が作用することで、姿勢が安定した上で腕の動きなどが加えられます。

サッカーのキックでは、「LL(ラテラルライン:外側線)」の腹筋群が十分に緊張して胸郭をニュートラルポジションに安定させることで、肋骨の回旋や傾きでキック力が低下せずに大きな力を発揮できます。

【アナトミートレイン】とトレーニング

筋トレやフィットネスブームに合わせて、「筋膜」が重要であることは認知されはじめています。

骨格および関節構造を維持したり動かしたりする役割がある骨格筋がトレーニングやストレッチなどで作用する時には、もれなく「筋膜」を含む結合組織が連動するからです。

筋膜構造や筋膜のつながりである【アナトミートレイン】自体がトレーニング方法ではありませんが、姿勢がどのようなつながりで保持されているか、運動において緊張がどのように伝達されるかを体系化された知識があることで、怪我予防やパフォーマンス改善、姿勢改善などのために、身体のどこにどんなアプローチを加えるべきかが明確になります。

リハビリやトレーニングの分野では、昔から個別の関節ごとの腱や靭帯は考慮されてはいましたが、身体全体の筋膜を意識したアプローチをするセラピストはあまりいません。

ストレッチ、ダンス、武道、ヨガ、姿勢改善エクササイズ、筋力増強トレーニング、コンディショニングなど、様々なアプローチ方法(手段)がありますが、どんなトレーニング方法でも「筋膜」へ何らかのアプローチを加えています。

最新の研究では、栄養、神経伝達協調機能、筋力のバランスに加えて、筋膜の状態や適応性がパフォーマンスに大きな影響を与えることがわかってきています。

もちろん、「筋膜」が全ての姿勢やトレーニングの問題を解決する特効薬ではありませんが、適度な制限を設けながら多様な動きに機能的に対応するには、筋膜の作用が不可欠です。

筋膜のつながりを生かすことで、近位から遠位へ筋肉間で運動作用を効率よく伝達できるので、野球のピッチングなどの近位関節から遠位関節へ徐々に動きが移動する鞭のような複数関節の協調連動運動がスムースに行えますが、個別の筋肉にフォーカスしたトレーニングでは、その筋肉だけ見たら効果的に強化できているようでも、身体全体の機能的で健全な動きで見たときにネガティブ効果になる場合もあります。

例えば、椅子に座って足首に重りをつけて膝を伸展することで「大腿四頭筋」を鍛えるトレーニングがありますが、反対側の仙腸関節靭帯と梨状筋への影響を考えないと骨盤の機能障害や痛みにつながります。

また、筋膜のつながりにアプローチしていても、全く同じ姿勢で行う筋トレ、エクササイズ、ヨガポーズだけを繰り返していると、特定の筋膜経路だけに負荷が加わって筋膜が整っていても、周囲の他の筋膜経路の筋膜の構造が乱れたままの場合、全身でみたときにアンバランスを増強してしまうため、特にトレーニングしていていない腱膜経路に強い外力が加わった場合に、怪我や損傷につながりやすくなります。

ストレッチやトレーング中に負荷を加えるベクトルを変えることで、筋肉周辺の筋膜全体にバランスよく負荷を加える意識が重要です。

「筋膜」のコンディションを改善する2つの方法

運動において「筋膜」が正常に機能しているか評価するポイントは2点あります。

1つ目は「静止時は一定の長さを保ち、遠位性収縮および求心性収縮のいずれにも対応できる」ことで、2つ目は「筋膜のつながり全体で一貫した張力を発揮できる」ことです。

正常な「筋膜」は規則的な螺旋状のラインが格子のように整然と並んだ構造ですが、「筋膜」への負荷がない状態が続くとフェルトのような縮れたラインが不規則に並ぶ構造になり、筋膜の配列が乱れると弾力性が低下し、弾力反応から筋力負荷を感知するゴルジ腱器官(GTO)機能も合わせて低下します。

パソコンなど机上作業時間が長かったり、病気や骨折などで長期臥床していると運動機能が低下するのは、単純に筋力が低下するだけでなく、筋肉の作用をコントロールする「筋膜」の構造が変化することも原因です。

粘弾性(衝撃吸収)と弾性(ばね)の性質が組み合わさっていている「筋膜」は、適度な負荷を与えることで、構造と機能を改善できることがわかっています。

具体的には①「筋膜の弾性(ばね)を高める筋肉トレーニングなどの手法」と②「筋膜の配列を整える筋膜リリースなどの手法」が有効です。

「筋膜」の弾性を改善する正しい筋肉トレーニング

「筋膜」は、粘弾性(衝撃吸収)と弾性(ばね)の性質が組み合わさっていていますが、トレーニングで改善できるのは「弾性」です。

例えば、「一般的なストレッチ(反対の動きによる準備運動)」「 ジャンプ前にしゃがむ」「 ストローク前にラケットを後ろに引く」「 ケトルベルを前方に持ち上げる前に後ろに引く」などの若く健康な人の弾むような動きは、「筋膜」の弾性機能を活用した運動で、力を溜めてから発揮することで効率的で素早い動きができます。

つまり、「筋膜」の弾性機能を活用した準備運動を加えることで、目的動作の効率が高まるだけでなく、怪我予防にもつながります。

ただし、毛細血管で満たされた筋肉組織のタンパク質代謝に比べて、血管の少ない「筋膜」のコラーゲン代謝には時間がかかるため、筋力増強よりも長い目でみて取り組む必要があります。

コラーゲンの半減期は約1年なので、「筋膜」構造を完全に入れ替えるには6–24ヶ月(年齢、食事、エクササイズ内容などにより変化)は必要です。

特に、鍛えている筋肉に対して筋膜構造が正常に作用していないトレーニング初期は怪我をしやすいので、短期集中でなんとかしようと思わないことが大切です。

また、過剰な負荷や急激な負荷も逆効果です。

ストレッチでも筋トレでも過度な刺激を加えられると、線維芽細胞が刺激されて更に「筋膜」が増え、コラゲナーゼやメタルラーゼなどの筋膜破壊酵素が他の「筋膜」を分解し始めます。

実際に怪我の多くは、「筋膜」の一部に大きな負荷がかかりながら急激に動いたときに生じます。

イメージとしてはプラスチックの買い物袋に似ていて、ゆっくり引き延ばされているときはかなり伸びても破れませんが、強い力で急激に引っ張ると破れます。

何か運動やエクササイズを始める時は、まずゆっくりと動きで練習をしてから同じ動きを速くした方が、最初から速い動きを習得しようとするよりも怪我のリスクを大幅に減らすことができます。

筋膜構造を整える「筋膜リリース」の正しいやり方

一度配列が乱れてしまった「筋膜」は、正しい【筋膜リリース】で筋膜のコンディションを整え、規則的な螺旋状のラインが格子のように整然と並んだ構造を取り戻す必要があります。

【筋膜リリース】とは萎縮したり癒着した筋膜を正常な状態に戻す方法のことで、徒手的に筋膜を解きほぐす方法と関節運動で解きほぐす方法があり、併用することで最大限の効果が期待できます。

運動でバランス良く筋肉を収縮させることでも筋膜のコンディションを整える効果がありますが、筋膜が短縮した状態では筋肉の収縮範囲も限られてしまうので、ストレッチやトレーニングで「筋膜リリース」をする前に、ローラーやストレッチポールなどを使って筋膜に沿って押圧を加えて筋膜の流れを整えることも有効です。

筋膜の萎縮や癒着は筋肉の短縮・硬化・疲労などと連動して起こっているため、動かしにくい関節運動方向でコリや歪みの原因を見極め、ゆっくりと呼吸しながら筋膜を解きほぐすように、ターゲットとなる関節運動を行い、10秒〜20秒程度保持してから元に戻すことを繰り返すと徐々に全身のバランスが整っていくのを実感できます。

筋膜に直接押圧刺激を加え、アイロンをかけるように癒着や短縮を引き伸ばしていく徒手での筋膜リリースを自宅で自分で行うには、ストレッチポールやトリガーポイントのフォームローラーなどがおすすめです。

  • 凸凹構造で指で押圧しているような効果をプラス!
  • サイズや形状もたくさんありポイントコントロールがしやすい!

MAZONで見る トリガーポイント

部分的な筋膜リリースに使いやすい!

一番基本のタイプのページへ移動しますが、ボール状のものなど形や硬さなど目的に合わせて選べるので自分に合ったサイズや形状を選んで使いましょう。

  • 全身を本来あるべき状態に整える効果も!
  • 高い品質で安定しているからリハビリでも活用!

MAZONで見る LPN ストレッチポール

リセット&コンディショニングに幅広く使える

一番基本のタイプのページへ移動しますが、サイズや硬さも選べるので自分に合ったサイズを選んで使いましょう。

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