筋膜とアナトミートレイン

【スーパーフィシャルバックライン(SBL:浅後線)】アナトミートレイン・イラスト図解解剖学①

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足底から頭頂部まで背面を一直線につなぐ【SBL(スーパーフィシャルバックライン:浅後線)】は、直立二本足歩行を獲得した人間の機能を維持するために重要な役割があります。

筋膜の機能的なつながりである「アナトミートレイン」のうち、【SBL(スーパーフィシャルバックライン:浅後線)】についてイラスト図解を用いてわかりやすく解説します。

【アナトミートレイン】とは? 筋肉の機能的連携

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】とは、Thomas Myers氏が開発した「全身の筋膜のつながりを示すマッピング」のことです。

筋膜の機能的なつながりである【アナトミートレイン】を理解していると、肩こりや腰痛などの身体の不調の解消、運動パフォーマンス向上、姿勢改善などに役立ちます。  

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【スーパーフィシャルバックライン(SBL/浅後線)】とは?

【スーパーフィシャルバックライン(The Superficial Back Line/SBL/浅後線)】は、「アナトミートレイン」のうち【背面表層部における筋膜のつながり】のことで、足裏から背面をまっすぐ上行して前額部まで至る筋膜のつながりです。

  • 「前額(おでこ・眉)」
  • 「頭頂(あたまのてっぺん)」
  • 「首後ろ」
  • 「背骨」
  • 「骨盤」
  • 「太もも裏」
  • 「膝裏」
  • 「ふくらはぎ」
  • 「アキレス腱」
  • 「足裏〜足趾」

「前額(おでこ・眉)」←「頭頂(あたまのてっぺん)」←「首後ろ」←「背骨」←「骨盤」←「太もも裏」←「膝裏」←「ふくらはぎ」←「アキレス腱」←「足裏〜足趾」

日本語では「浅後線」と訳されていて、英語名の頭文字をとった「SBL」もよく使われていますので、以降、「SBL(浅後線)」と表記します。

【SBL(浅後線)】経由地点(骨)と筋膜のつながり

【SBL(浅後線)】は【「前額(おでこ・眉)」←「頭頂(あたまのてっぺん)」←「首後ろ」←「背骨」←「骨盤」←「太もも裏」←「膝裏」←「ふくらはぎ」←「アキレス腱」←「足裏〜足趾」】を経由するように背面を上行する筋膜の繋がりです。

中継する骨格構造および筋膜のつながりを図にすると以下のようになります。

 筋膜および筋肉
前頭骨、眼窩上隆起13 
 12帽状腱膜
後頭骨稜11 
 10仙腰筋膜・脊柱起立筋
仙骨9 
 8仙結節靭帯
坐骨結節7 
 6ハムストリング
大腿骨顆5 
 4腓腹筋・アキレス腱
踵骨3 
 2足底筋膜・足底筋群(足趾屈筋群)
趾骨底面1 

*「筋膜」は骨に直接付着している多くの骨格筋とは異なり、骨を覆う骨膜を経由して骨格構造に付着します。

【SBL(浅後線)】特徴

【SBL(浅後線)】はひとつの筋膜のつながりとして定義されていますが、坐骨結節以遠で左右別々の2本に別れるので実質は二本のラインです。

より厳密言えば、【SBL(浅後線)】は、左右それぞれ「足裏から膝まで」と「膝から眉まで」の2つのパーツにも別れます。

つまり、【SBL(浅後線)】は両膝を伸展して直立している時はひとつの連結したラインとなりますが、両膝屈曲位では膝関節でつながりが途切れますし、片足の膝だけ曲げた場合も筋膜連結経路が変わります。

この筋膜経路の特徴は実際に前屈(股関節屈曲)をしてみることで簡単に実感できます。

立位でも長坐位でも構いませんが、膝を伸ばして前屈しようとする場合と膝を曲げて前屈(股関節屈曲)しようとする場合では膝を曲げた時の方が明らかに前屈(股関節屈曲)しやすくなりますよね?

これは、膝を屈曲することで膝で筋膜のつながりが膝の位置で途切れ、前屈(股関節屈曲)の制限要素が小さくなるからです。

【SBL(浅後線)】機能

【SBL(浅後線)】は、人間が二本足直立歩行を獲得し、その姿勢を維持するための重要な働きをしています。

直立姿勢保持

お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの背骨は弓状ですが、重力の影響を受けながら成長していく過程で、背骨に生理的湾曲(S字カーブ)ができ、二本足での直立歩行ができるようになります。

【SBL(浅後線)】は生理的湾曲による直立姿勢(抗重力位)を維持し、背中が赤ちゃんの時のように丸くなる(前屈みになる)のを抑制する機能があります。

観点を変えると、【SBL(浅後線)】は、24時間365日ほぼ休みなく働いている「姿勢保持」のための「抗重力筋」が集まっているラインであるとも言えます。

実際に【SBL(浅後線)】に含まれる筋肉は「遅筋」の割合が非常に高く、「アキレス腱」「ハムストリング」「仙結節靭帯」「胸腰筋膜」「脊柱起立筋群」など強い力に耐えうる筋肉や筋膜構造が多く含まれます。

【SBL(浅後線)】は基本的にひとつのラインとして伸展に機能する(膝伸展位 + 足関節背屈位での立位姿勢)ときに最も活動が高まり、立位での脛骨と大腿骨間では、十字靭帯も【SBL(浅後線)】をサポートしています。

ただし、【SBL(浅後線)】膝関節以下の関節屈曲に作用する筋肉群も含まれていて、膝関節屈曲時は二本の機能ラインに別れるため、この時には「直立姿勢保持機能」は弱まります。

伸展(過伸展)運動

膝関節以下の屈曲作用を除けば、【SBL(浅後線)】全体としての運動作用は「伸展(過伸展)」です。

【SBL(浅後線)】が段階的に発達することで、赤ちゃんの首が座って目と手が協調して使えるようになり、その後お座りを経て、立位歩行ができるようになります。

つまり、直立歩行に十分な【SBL(浅後線)】の強度や機能を習得するまでに、私たちは生まれてから1年以上かけています。

それでも元々は弓形の背骨で屈曲優位の構造で生まれてきていることや重力に対する影響などで疲労しやすいため、【SBL(浅後線)】機能は簡単に低下しやすく、加齢や運動不足で猫背や腰の曲がりが起きやすいのもある意味では自然なことです。

【SBL(浅後線)】で注目すべき機能構造

【SBL(浅後線)】において、特に注目すべき機能構造は、起点となる足底部(つま先からかかとまで)と、機能の分岐点となる膝関節を含む構造です。

【SBL(浅後線)の起点】つま先から踵までの機能構造

【SBL(浅後線)】の起点はつま先(足趾末節骨)底面で、趾骨底面(つま先)から踵骨(かかと)までの間には足底に沿って走行する「足底筋膜」と足底から起始する「足趾屈筋群の筋腹と腱」が含まれます。

5本の足趾にそれぞれ伸びている筋束や腱はひとつの腱膜に収束し踵骨の前下面に達しますが、足底筋膜には第5中足骨基部より起こる踵骨外側端の繊維束も含みます。

つま先からかかとまので筋膜のつながりには、下腿の筋肉群と協力して土踏まず(足の内側縦側アーチ)形成に関与し、踵と第1および第5中足骨頭を適切な位置に保ちながら足の内側に弓状のカーブを形成するような働きがあり、長足底靱帯とばね靱帯により構成される距骨下関節下の横アーチと共に立位歩行時の唯一の支持面である足裏の機能構造を支えています。

【SBL(浅後線)】の起点でもある足裏の運動には足趾の動きが含まれ筋膜が大きくストレッチされるため、より上部における姿勢や運動の制限や問題の要因と強く関係します。

例えば、「ハムストリングの短縮」「腰椎前腕増強(反り腰)」「上部頸椎の緊張性過伸展」などよくある姿勢不良も足裏の機能制限と相関していますので、足裏の過緊張をほぐしたり負荷を軽減させるだけで、ハムストリングや腰に一切触れなくても、姿勢やパフォーマンスを改善につながることがよくあります。

この事実を実感できるわかりやすく簡単なテストを紹介します。

簡単チェックでSBLを実感!
  • 立位体前屈をした時の手の位置や背中の両側の状態や感覚を記録
  • 直立位姿勢に戻り(または椅子坐位などで)、片足裏にテニスボールなどを置いてゴロゴロと転がしてゆっくりと圧をかけながら数分かけて足底深層部までじっくりとほぐす
  • 足裏の筋膜が十分にほぐれたら、再度同じように立位体前屈
  • 「あれ?足裏をマッサージしただけで体が柔らかくなった!」SBL全体で「柔軟性の改善」を実感!

足裏をマッサージしただけで、ハムストリングにも腰にも何もしていないのに、客観的にも主観的にもアプローチした側の【SBL(浅後線)】全体で「柔軟性の改善」を実感できるはずです。

*側湾症やその他左右非対称になる大きな原因がある場合は、片足ずつでの変化は感じにくい場合もあります。

左右のバランスをとるために、変化を観察したら必ず反対側の足裏も同じように筋膜リリースをしてみると更に【SBL(浅後線)】全体の柔軟性が向上することを実感できます。

もちろん、これはあくまで筋膜の繋がりを実感するためのテストなのでこの方法で全ての問題が解決する方法ではありませんが、実際にさまざまなトレーニングや姿勢の悩み改善目的のアプローチに応用できます。

【SBL(浅後線)】 踵からアキレス腱までの機能構造

足底筋膜・足底筋群(足趾屈筋群)から「踵骨」骨膜を経由して上行した【SBL(浅後線)】は「アキレス腱」と連結します。

足関節における「踵骨」は膝関節における膝蓋骨のような位置にあり、足底筋膜からアキレス腱への筋膜のつながりは踵部分を支点にした弓の弦のようなイメージです。

「テンセグリティ」の観点で言えば踵骨は支柱の役割をする「圧縮材」で【SBL(浅後線)】の「張力材」を足関節(足首)から押し出し、膝からつま先までの軟部組織と共に「脛骨」-「距骨」支点後面を適切な緊張になるように調整します。

「アキレス腱」は強い負荷に耐えなければいけないので、木が地面に根を張るように骨膜だけでなく踵骨自体のコラーゲン構造にも付着しています。

足関節を安定させる構造は、他にも外くるぶしを囲むように走行する「腓骨筋群」や内側くるぶし後方を通過する「長趾屈筋」などがありますが、これらと比較してもレバレッジの強さが圧倒的です。

【SBL(浅後線)】アキレス腱から膝まで:【下腿三頭筋】の「ローカル」と「エクスプレス」

足裏の筋膜は踵骨をラップのように覆うコラーゲン組織である骨膜を介して踵骨に付着していますので、足底の筋膜は踵骨の骨膜を経由し、より上位の筋肉および筋膜構造である「アキレス腱」を経由して「腓腹筋」につながって膝まで上行します。

「アキレス腱」を経由して【SBL(浅後線)】は「腓腹筋」につながり膝裏まで上行します。

ここで注目しておきたいのはともに「アキレス腱」に移行して踵に停止する「下腿三頭筋」で、「下腿三頭筋」は深部の「ヒラメ筋」と表層で2頭の「腓腹筋」の2つの筋肉です。

【SBL(浅後線)】に含まれるのは理論上「腓腹筋」のみになりますが、実質的には「ヒラメ筋」も影響を与えていて、この構造をうまく説明した「ローカル」と「エクスプレス」という考え方(概念)があります。

「エクスプレス」が複数の関節をまたいでいる特急電車のような構造であるのに対し、各駅停車のように1関節ごとの筋膜つながりが「ローカル」で、一部例外がありますが通常「ローカル」は「エクスプレス」よりも深層にあります。

「エクスプレス」にあたる「腓腹筋」は「足関節底屈」と「膝関節屈曲」に作用する2関節筋ですが、深層部のヒラメ筋は踵から下腿骨構造(脛骨・腓骨・骨間膜)後面を経由して「足関節」のみに作用します。

(*実際の足部運動を考える時、底屈-背屈が主な作用の(脛骨-距骨による)距腿関節(いわゆる足関節)と、内反-外反が主な作用の(距骨と踵骨による)距骨下関節がそれぞれ作用し、下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)と足底筋はいずれも距骨下関節に影響しますが、複雑になるためここで足部を足関節のみとみなします。)

【SBL(浅後線)】において「ヒラメ筋」は足関節のみに作用する「ローカル」とみなしますが、解剖学的には同じ筋膜面で膝を横切るように走行して膝屈曲(+脛骨内旋)に作用する「膝窩筋」後方の筋膜とつながっています。

【SBL(浅後線)】膝から体幹へ連結: ハムストリングとの連結と脱線

「腓腹筋」を経由して膝裏まで上行した【SBL(浅後線)】は、大腿骨顆からハムストリングへと筋膜連結を上行させます。

ハムストリング腱周辺で大腿骨顆上部に付着していている「腓腹筋」2頭と腓腹筋周囲で脛骨と腓骨に付着している「ハムストリング腱」の構造は、二人で向き合ってお互いの手首を持ち合う空中ブランコのペアや2本のひもでばつ印の結び目を作るようなこま結びのように強固に連結しています。

膝後方(膝窩)を解剖してみると、「ハムストリング」遠位端付近と「腓腹筋」近位端が強力な筋膜でしっかりと結合されていることもわかります。

強固な一連の筋膜のつながりであるアナトミートレインのひとつである【SBL(浅後線)】においては、膝関節屈曲位でこの部分の結合が緩んで「脱線」し、「大腿筋膜」と「下腿筋膜」が別々に機能します。

体幹で一本のラインになった筋膜は、背骨に沿って上行し、帽状腱膜を経由して、眉毛の上あたりまで繋がります。

【SBL(浅後線)】代償姿勢や動作

【SBL(浅後線)】は主に矢状面での姿勢や動きを制御するラインなので、機能に問題があれば、足部から目の動きまで、姿勢や運動パフォーマンスに大きく影響を及ぼします。

  • 足首背屈制限
  • 膝関節過伸展
  • ハムストリングの短縮
  • 骨盤前傾
  • 仙骨ニューテーション
  • 前弯症
  • 胸部屈曲時の伸筋拡大
  • 上頸部の過伸展
  • 環椎後頭関節での後頭部の前方移動や回旋
  • 目と背骨の協調断裂

【SBL(浅後線)】コンディションチェック

【SBL(浅後線)】構造を理解していると、症状の出ている場所だけでなく、根本の原因となっている場所を適切に見極めて、適切な対処をすることができるようになります。

踵の位置で【SBL(浅後線)】の状態チェックしてみよう!

日常的な不良姿勢などで【SBL(浅後線)】が慢性的に過緊張している場合、「踵が距骨下関節前方に押し込まれる」または「下腿骨(脛骨と腓骨)を距骨後方へ引くような力」(どちらも同じ作用)が生じます。

直立位で足を外側から観察して外くるぶしの下端から床に垂直に線を下ろした線を引き、【外くるぶし下の基準点から第5中足骨頭までを前方要素(足趾は変化しやすいので含めない)】:【外くるぶし下の基準点から踵が床に接しているぎりぎりまでを後方要素】とした前後の比率から【SBL(浅後線)】の状態を確認できます。

正常の解剖学的ポジションと比較し、前方要素の割合が大きくなっている場合は【SBL(浅後線)】が過緊張状態です。

目安としては「前部要素:後部要素 =3: 1から 4 : 1の間くらいが機能的正常」で、5 : 1以上になると身体の後ろでの支持がかなり低下していることを示します。

【SBL(浅後線)】のコリが原因で起こるこの姿勢不良では、膝や骨盤が前に出て前足により多くの重心がかかるため、更に【SBL(浅後線)】の過剰緊張によるコリを増加させますし、また足部での重心のずれを腰で調整するため不安定感も感じやすくなります。

【SBL(浅後線)】の疲労解消!柔軟性アップエクササイズ

【SBL(浅後線)】は、重力に対抗して直立歩行を獲得した人間が発達させてきた機能構造で、24時間休みなく働き続ける姿勢保持筋を多く含む構造のため、緊張状態が続くことで非常に疲れやすく、柔軟性も低下しがちです。

【SBL(浅後線)】の柔軟性を保ち、良い姿勢の土台を作るには、前屈系のヨガポーズがおすすめです。

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【SBL(浅後線)】を意識したトレーニングやエクササイズ

【SBL(浅後線)】を意識することで、機能的でパフォーマンスの高い姿勢を維持できるようになります。

問題点を明確にして、適切な筋膜リリース、ストレッチ、筋力トレーニングをしましょう。

例えば、膝や骨盤が前に出てバランスが悪いときは、踵の動きや位置も確認してみましょう。

踵が動きにくいと感じる場合は、まず足底筋膜(外側束含む)を指先からかかとに向かって筋膜リリースをしてから、「下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)筋膜」を膝からかかとに向かってリリースします。

その後、片手で足根前面を抑えて安定させたまま、もう片方の手で踵骨を包み込む内反⇄外反を繰り返すようにモビライゼーションをします。

それでも動きが出にくい場合は、神経構造に配慮しながら各くるぶしの角から踵骨の後下角までななめにゆっくりと引くように靭帯をリリースします。

リリースする時の踵骨の動きはごくわずかですが、重心の位置や姿勢には大きな変化が出るので、骨盤前傾に直接的にアプローチする前にやるべきプロセスです。

また、ハムストリング遠位部のリリースや拮抗構造の【SFL(スーパーフィシャルフロントライン:浅前線)】における大腿直筋へのアプローチを含めて、継続した対応が必要となる場合もあります。

-筋膜とアナトミートレイン