感覚の種類や受容器を一覧にまとめました。
感覚とはヒトが外からの刺激を感じ取る機能のことで、外部からの情報はすべて感覚器官を通して脳に入ってきますので、感覚機能を研ぎ澄ませておくことは人生を豊かに生きるためにとても重要です。
また、【退化しがちな現代人の感覚を研ぎ澄ます方法】、【五感とシックスセンス】、【刑事ドラマの「なんか匂う」が医学的にも的を射た表現である理由】【感覚派と理論派の違い】、など感覚にまつわる雑学もいくつか紹介しています。
感覚とは
感覚とはヒトが外からの刺激を感じ取る機能のことで、感覚神経は全身から脳に向かって張り巡らされていて、皮膚・目・鼻・耳・舌など身体の器官にある感覚受容器を通して受け取った外部情報情を脳に伝えます。
例えば、尖った針が刺さった時「痛い!」と感じ(痛みの情報が脳に伝わる)、熱いものを触ったときは「熱い!」と感じ(熱さの情報が脳に伝わる)、その程度が強ければ手を反射的に引っ込める逃避反射が起こります。
感覚刺激を感じ取り、それに反応するということは生物にとってなくてはならない防御反応です。
感覚の種類
触覚(粗大触覚・微細触覚)
痛覚
身体の組織を侵害するほど強い刺激が加わったときに生じる感覚で、強い刺激が加わると皮下組織内にブラジキニンという化学物質が産生され、痛覚受容器(自由神経終末)から脳に伝達させて痛みを感じます。
痛覚検査は痛覚低下部位から正常部位、または正常部位から痛覚過敏部位へと行うと明確に結果が出やすい。
温度覚
温度を感じる温度覚は、慣れ(順応性)が生じやすい感覚でお風呂でも最初は熱く感じても慣れてしまう。また、0℃以下や45℃以上の熱さでは組織障害を生じるためむしろ痛みを感じる。
深部知覚
筋肉、骨膜、関節からの刺激情報を大脳皮質が感知して身体の姿勢や位置を保持しようとする感覚で、深部感覚が障害されるとロンベルク兆候は陽性になる
複合知覚(頭頂葉の機能が関与)
感覚の程度評価
感覚の異常は以下のように分類・表現されます。
感覚受容器一覧
各器官にある感覚受容器(レセプター)で感知された感覚は、専用の神経線維を通って大脳皮質知覚領野へ伝えられます。
分類 | 種類 | 受容器(受容細胞) | ||
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特殊感覚 | 視 | 網膜(錐状体細胞・杆状体細胞) | ||
聴 | コルチ器官(有毛細胞) | |||
嗅 | 嗅上皮(嗅細胞) | |||
味 | 味蕾(味細胞) | |||
加速度 | 半規管(有毛細胞)・耳石器(有毛細胞) | |||
一般感覚 | 体性感覚 | 皮膚感覚 | 触・圧 | ルフィニ小体・メルケル触覚盤・パチニ小体(※振動覚も)・マイスネル小体(神経終末) |
温 | (自由神経終末) | |||
冷 | クラウゼ小体(自由神経終末) | |||
痛 | (自由神経終末) | |||
深部感覚 | 関節の位置と運動 | 関節包のルフィニ小体(神経終末) | ||
筋の伸長 | 筋紡錘(神経終末) | |||
筋の張力 | ゴルジ腱紡錘(神経終末) | |||
痛 | (自由神経終末) | |||
内臓感覚 | 血圧 | 頸動脈洞や大動脈弓の圧受容器(神経終末) | ||
肺胞の膨満 | 肺胞壁(神経終末) | |||
血液CO2分圧 | 延髄中枢性化学受容器(神経細胞) | |||
血液O2分圧 | 頸動脈体・大腿脈体などの化学受容器(神経終末) | |||
血液浸透圧 | 視床下部神経細胞 | |||
血糖値 | B細胞・視床下部神経細胞 | |||
痛 | (自由神経終末) |
感覚にまつわるおまけの話
五感とシックスセンス
五感とは:現在、感覚の種類は20種類以上の報告されていますが古来からある以下の5つの感覚のことを五感と呼びます。
では、映画『シックス・センス』 (The Sixth Sense) でも話題になったシックスセンス(第六感)とは一体なんなのでしょうか?
シックスセンス(第六感)は、人間が基本的に持っている五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)以外のもので五感を超えたもの、つまり直感・霊感・超感覚・予知能力などとも言われています。
直感は五感が優れれば優れるほど精度は上がっていきますし、他の人には感じられない小さな変化も感じ取ることができるので、シックスセンスは人間の機能構造から考えると極限まで研ぎ澄まされた五感を持つひとだけが感じる感覚だと考えると医学的にも辻褄があうような気がします。
嗅覚は直感力?
刑事ドラマとかでもよく「なんか匂う..」と言って鼻をヒクヒクさせる場面が登場しますが、臭覚は直感力というような意味でも使われます。
もちろん彼らは物理的な「におい」を感じているわけではありませんが、実際嗅覚の働きは物理的な臭いを感じるかどうかとは直接関係ないので、医学的にも間違った表現ではありません。
嗅覚は12個ある脳から出ている神経である脳神経の第1番目で、12個の脳神経の中でも2番目の視神経と1番目の嗅神経は発生学的には脳の一部とされています。
つまり、脳への影響および関連性が非常に大きい器官として目と鼻があり、目と鼻は脳の一部と言っても過言ではありません。
その中でも一番目の嗅覚はさらに特殊で、臭いの成分は鼻の粘膜から体の中に直接入り込み、血管からダイレクトに脳細胞に到達します。
これは、感覚的に臭いを感じるか否かと直接関係がなく、脳にダイレクトに届いた臭いの物質とそれに関わる経験は脳内に記憶として蓄積されていきます。
同じような行動や性質を持っているものは類似する臭いを発しますので、刑事などのようにたくさんの事件を見てきているとその事件に関連するものが発する臭い(成分)と過去の経験が一致し、何か怪しい = 何かにおう…という表現になる訳です。
面白いですよね。
また、嗅覚を活用する視点としてアロマセラピーのように香りを癒しや疲労回復、免疫力増強に用いるものとても有効で、香りを直接脳に作用させて全身をケアできるとても効率のいい方法です。
退化していく現代人の感覚機能を鍛える方法
古来からある以下の5つの五感と呼ばれる感覚を始め、現代人は感覚機能が退化している傾向があると言われています。
感覚は、それぞれのパーツ(目や耳など)で感じていると思われがちですが、目や耳は情報を受け取る道具でしかなく、実際はその機関で得た情報を感知しているのはすべて脳(あなたの頭の中)です。
もともとは自分の身を守る為、身体に悪影響を及ぼす可能性のある物を避けたり、身体に取り入れないようにする為にとっても重要な働きをしてきた感覚機能ですが、現代の安心安定した、変化の少ない生活では感覚機能が低下しても不思議ではありません。
感覚機能が低下するということは、脳機能や生命維持機能も低下していると言えますし、小さな変化に気がつけないようではせっかくの人生も楽しめなくなってしまいます。
感覚を鍛えるのはとっても簡単で、普段の生活に彩りを添え意識的に楽しめばよいのです。
感覚情報を処理するのは脳なので、意識的に感覚器官から得た情報に集中する時間を持つことが大切です。
季節の変化や植物の香り、大切な人の体型やファッションの変化、小さな変化にも気がつけるくらい研ぎすまされた五感は、貴方の身体を守り人生を豊かにする武器となります。
感覚派と理論派の違い
よく感覚派か?理論派か?という相対するカテゴライズがあるれど、そもそも【感覚で物事を捉えること】と【思考】は全く別の作業です。
感覚とは外部から情報を受け取る作業ですし、思考は感覚情報も含めそれらの情報を統合してなんらかのアウトプットを出すことです。
理論派の人も感覚情報は得ているし、感覚派の人もちゃんと考えています。
世間で言われている感覚派と理論派の違いは、受け取った情報をどれだけ言語化できるか(言語化することを優位に取り組んでいるか)の違いで、自分の考えた情報を言語化するのが得意(理論派)か苦手(感覚派)かの話のように感じます。
理論派か感覚派かの議論自体はあまり意味のないことですが、感覚機能を研ぎ澄ました上で、自分の考えていることを言葉にする練習をすることで、より豊かな人生を送れるようになるのは間違いありません。