「腸」と「脳」は生まれた時から密接な関係にあります。
心と身体の健康に深く関連する「腸内環境」と健康や脳との関係を紐解き、腸内環境を効果的に整えて人生を豊かにする方法についてまとめました。
腸の働きと役割
腸は人間の身体の臓器の中で最も大きく・長い器官で、人間にとって必要な栄養素や水分を身体に取り込むと同時に不要なものを排泄する非常に重要な働きをしますが、その機能は大きく分けて以下の7つと多岐に渡ります。
- 消化
- 吸収
- 免疫
- 浄血
- 排泄
- 合成
- 解毒
口から摂取し、唾液や胃で分解された食べ物や水分を、消化・吸収して全身に送ったり、全身から集まった不要なものを排泄するのが腸の仕事ですが、近年は脳と密接な関係に注目が集まっています。
「腸」は人体の司令塔「脳」と密接に連携
私たちは生まれたばかりの赤ちゃんの頃から、「腸」の状態(腸から伝達される感覚)に大きく影響されています。
お腹が空けば泣いて不満を訴え、お腹が満たされればご機嫌になりますし、お腹にガスが溜まったり、排泄した時などにも泣きます。
大人になると、「飲み過ぎや食べ過ぎになると嘔吐が起こる」「お腹にガスが溜まったり、異常が発生したら痛みや不快感を脳が感じる」「美味しいものをお腹いっぱい食べると満足して幸せな気持ちになる」など腸の状態はより細かく脳に届くようになります。
反対に、「緊張するとおかながいたくなる」「不安やストレスが強いと食欲がなくなる」「嫌なことがあると好きなものをたくさん食べたくなる」など脳の状態が腸の状態にも大きく影響を及ぼします。
腸と脳(自己認識や感情処理、不安、記憶、動機付けなどをおこなう人体の司令塔)が密接に関係していることは、普段の生活の中でも頻回に実感していることで、現在ではそれらを証明する研究も増えてきています。
腸の構造と脳の構造の共通点
受精卵として始まった私たち人間の命は、お母さんのお腹の中で細胞分裂を繰り返しながら人間の形になっていきますが、以下の順番で作られていきます。
- 脳と脊髄神経(神経系)
- 心臓と血管(循環器系)
- 内臓や運動器
腸は内臓の中でもかなり特殊で、食物を消化吸収して排泄させるための器官に止まりません。
他の器官とは比較にならないくらい多くの神経細胞が集まってできていて、神経伝達物質が生成されたり自律神経と密接につながるなど、脳や脊髄神経と類似する機能も持っています。
人体の司令塔である脳が全身の状態を知るために全身に神経を張り巡らせていますが、神経細胞の多い腸から情報に大きく影響されるのもとても自然なことです。
腸が持っている神経機能
腸は自律神経によって制御されていて、またドーパミンやセロトニンなど神経伝達物質の元のなる成分の90%以上を生産しています。腸内環境を整えておくことでストレス耐性を高める効果が期待できます。
腸と自律神経
腸は、私たちの意思に関係なく働く自律神経に支配されていますが、自律神経を制御しているのは脳なので、脳と脳と同じように神経細胞や経路の多い腸の状態は密接にリンクし、大きく影響を与え合っていると言えます。
腸と神経伝達物質
セロトニンやドーパミンなど、神経間の情報伝達を行う際に必須の物質:神経伝達物の元となる成分の90%が腸の中で作られています。
ドーパミンは快感を感じる物質でやる気の源になると言われていて、ドーパミンがバランス良く分泌されている状態だと困難にも立ち向かっていける意欲になり、セロトニンは幸福や安心感を感じる物質でドーパミンと拮抗する働きをします。
ドーパミンが、車でいうことろの「アクセル」であるとすれば、セロトニンが「ブレーキ」にあたり、両者がバランス良く適材適所で分泌されることが心の健康のためには必須となってきます。
ドーパミンが過剰になると依存症や統合失調症などの原因にもなりセロトニンがこれを抑制する役割を果たしていますが、セロトンはストレスによって不足しがちで、セロトニンが不足するとうつ病の原因になることもありますが、逆にドパミンが減少するとパーキンソン症候群の原因になります。
腸の免疫機能
人間の免疫機能は、人体と外部が接する部分(皮膚や粘膜)に存在します。
特に口(摂食機能)と肛門(排泄機能)を繋いでいる内臓の中でも腸の面積は非常に大きく、人体の免疫機能の60%以上が腸内に集まっています。
健康長寿と腸内環境の関係
長寿のお酒「オールド・パー」は、15世紀から17世紀にかけて152歳まで生きたと言われるイングランド人【トーマス・パー】からとった名前だそうでが、彼の死後に遺体を解剖してみたらその年齢にしては驚くほどに腸が若く綺麗だったそうです。
よい腸内環境では、老廃物が滞ることなく排泄され、必要な栄養がスムースに消化・吸収されますので、内視鏡などでみても腸が綺麗であることがわかります。
腸が綺麗な状態を維持できれば、当然血液循環や神経伝達等もスムースになるので、健康長寿を全うしやすいというひとつの証明でもあります。
腸内環境と心の関係
腸の健康が脳に影響を与えることはさまざまな研究からわかってきており、それは身体の健康に止まらず、こころの健康にも大きく影響を与えています。
腸内環境と自律神経は相互に関連しているので、対人ストレスなどの自律神経の乱れから腸内環境が悪くなることもありますが、腸内環境が汚れることで自律神経が乱れて全身の体調も悪くなることもあります。
腸の働きを整える細菌を与えたマウスとそうでないマウスを比較した実験では、腸の働きを整える細菌を与えられたマウスのお腹の調子が良くなっただけでなく、行動量が増え、血液中のストレスホルモンも減っていましたし、記憶力や学習能力テストでもよい結果が出ていましたし、人間への同様の実験では、感情コントローや痛みなどにおいてわかりやすい変化が観測されたそうです。
自律神経によって制御され、神経伝達物質の元のなる成分の90%以上を生産しています。腸内環境を整えておくことでストレス耐性を高めて精神安定効果が期待できます。
腸内環境を決める腸内細菌(腸フローラ)とは?
腸内環境は健康のバロメーターであるだけでなく、腸内環境を整えることで精神安定効果も期待できます。
腸内環境を決めるのは、腸内に約200種類・100兆個・重さにすると1キロ以上ある腸内細菌で、排便の7%は腸内細菌なので、便の状態(臭い・色。形状など)は腸の健康状態を知るバロメーターになります。
- 便の成分
- 水分:80%
- 食べかす:7%
- 細胞の死骸:7%
- 腸内細菌:7%
腸内細菌には、有用菌、有害菌、日和見菌の3種類があり、有用菌を増やすことで腸内環境が整いやすくなります。
腸内環境を整えるコツ
腸内環境を整える(腸内の善玉菌を増やす)には、日本古来からある味噌、醤油、漬物、納豆などの発酵食品で善玉菌を摂取するのが良く、また大豆はセロトニンを補う食品としてもとっても有効です。
日本古来の和食をゆっくり時間をかけて作って食べる、そんな時間をあえて取れるような日常を見直してみるのもいいかもしれません。
もちろん、骨盤や骨格の歪みのない良い姿勢で腸や脳が安心して働ける物理的な環境(あなたの身体)を作ることも大切ですし、十分な睡眠をとって腸内環境を整える時間を作ることも重要です。
腸内環境を守る食事の目安(実践)
腸内環境の話は、知識として知るだけでも意味がありますが、日常で役に立つのは「じゃあ何を意識するか」という目安です。
極端な食事法や難しいルールを増やす前に、まずは次の考え方で十分です。
腸内細菌が元気であれば、多少好ましくないものが体に入ってきても処理してくれますし、足りない栄養素を補ってくれることもあります。
逆に、腸内環境が弱っていると、同じ食事でも影響が出やすくなります。
現代人は、栄養面の下支えをしてくれる腸内細菌がすでに弱っているケースも多いため、「腸を立て直す」前提で食事を組み立てるほうが現実的です。
そもそも食事は単独で存在していない
医の前に食があります。
食の前に農があります。
農の前に微生物があります。
これらは切り離して考えることができません。
この流れをまとめて考えると、多くの病気の原因は、不自然な生活をしていることという一点に集約されます。
人の身体は、自然の仕組みの中で作られています。
そのため、
不自然なものをとらない、
不自然なものを使わない、
不自然な身体の使い方をしない。
このシンプルな考え方が、健康管理の土台になるということはこのサイトの基本理念でもあります。
「自然」「不自然」の考え方
「自然」「不自然」という言葉は人によってイメージが異なります。
ここでは、以下のようにシンプルに分類します。
不自然なもの:もともと地球上になかったもの
人工的に作られたもの:化学的な処理を前提としたもの
逆に、自然なものとは、自然界に存在するもの、または自然の仕組みの中で作られてきたものを指します。
食事で大切なことは2つだけ
そう考えると食事において最も大切なことは、次の2点に集約されます。
- 不自然なもの(もともと自然界になかったもの)をとらないこと
- 必要な栄養がきちんと巡る状態を作ること
つまり、栄養をきちんととり、身体に負担となるものをできるだけ避けるということです。
言い換えると、どのような食べ方であっても、自然に沿った内容で栄養が十分にとれていれば、健康に生きることは可能です。
食べ方以上に重要な要素
そして、食べ方以上に重要なのが腸内細菌の状態です。
腸内細菌が元気であれば、多少好ましくないものが体に入ってきても処理してくれます。
また、足りない栄養素を補ってくれる働きもあります。
植物に寄せるという考え方もあり
食事において植物性に少し比重を置いた考え方をするのもシンプルに実践できるという意味ではおすすめです。
動物性の肉1kgを生産するためには、およそ10kgの穀物が必要になります。
水資源まで含めると、さらにその数倍〜数十倍の負荷がかかるとされています。
植物性の食事を選ぶことは、環境、動物、微生物、そして人の身体にとっても負担が少ない選択です。
自然に沿ったやり方は、すべてがつながっています。
日本の伝統食という実例
そうすると結局、戻ってくるのが日本の伝統的な食事、つまり自然な素材を使った和食です。
農薬や化学肥料に依存しない農作物、添加物を使わない調味料を使った食事です。
基本は、ごはん、みそ汁、漬物。
本来、腸内細菌が元気であれば、野菜たっぷりのみそ汁と漬物だけでも、身体は十分に機能します。
現代人向けの現実的な工夫
現代人は、腸内細菌による栄養の下支えが弱くなっている場合が多いため、工夫が必要になる場合もあります。
そこで、おかずを追加して一汁一菜から三菜程度にします。
そのときの目安が、
いわゆる「まごは(わ)やさしい」です。
まめ
ごま
わかめ(海藻)
やさい
さかな
しいたけ(きのこ類)
いも
これは暗記するための言葉ではありません。
本質は、乳製品や肉に依存しない食事という点にあり、本来の日本の伝統食は、それらがなくても成り立つように設計されてきました。