姿勢と生活習慣 脳と神経 血液と循環

めまいはなぜ起こる?「めまい」「ふらつき」「酔い」原因別対処法まとめ

日常のちょっとした変化(寝不足や血糖値の低下など)でも起こり得るが、重篤な病気(脳血管障害など)の症状である【めまい】について、種類(原因別)と起こり得る症状、正しい対処法などについて整理しました。

【めまい】とは?

突然「めまい」が起こり緊急入院した患者さんのうち、耳鳴り、難聴、吐き気、嘔吐などはあっても、脳の症状がなかった約100人の患者さんに詳しい検査(脳のCTとMRIを含む)をして、その原因を調べたとあるデータによると、その結果は以下の通りになったという報告があります。

  • 81%:耳鼻科の病気
  • 12%:ごくごくちいさな脳梗塞の所見あり(麻痺などの症状はなし)

また、耳性めまいを訴える方の合併症(高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病、喫煙歴)は、脳卒中の合併症と一致しているというデータもあります。

【めまい】は寝不足などのよくある体調不良でも起こるケースがありますが、脳梗塞など重篤な病気の可能性も含んでいるので、めまいの症状と原因の関連を理解しておくことで適切な対処ができるようになります。

【めまい】が起こる仕組み

【めまい】とは、頭や体の位置を認知する機能の一部が障害されて起こる症状で、自分自身や周囲が動いていないにも関わらず自分自身または周囲動いているような違和感を感じ、平衡感覚を失った不快な状態です。

体の平衡機能には耳・眼・首・脳など身体のいろいろな部位が関与していますので、そのいずれかに問題があると【めまい】の症状が現れます。

人体の平衡機能

人間の「平衡感覚(平衡機能)」とは、身体の空間における適切な位置変化を察して適切な状態に保持しつつ、運動を円滑に行う調整機能全般のことで、以下の要素が含まれます。

機能役割器官
位置覚
(深部感覚)
空間において自分の身体の位置情報を感じ取る皮膚
筋肉
関節
前庭機能頭部の重力面に対する位置変化を感じ取って適切に統合する前庭
視覚目でとらえた情報で自分の位置やバランスを確認する
神経経路外部情報を脳に伝える(感覚神経)
脳の指令を運動器に伝える(運動神経)
脊髄
末梢神経
感覚信号を統合して筋肉(骨格筋)へ司令を出す

【めまい】のメカニズム

人間の身体には頭や身体の位置を確かめて安定した姿勢を維持したり適切な運動を行うためのネットワーク(連絡網)があり、このネットワークが正常に機能することで「平衡感覚(平衡機能)」が維持できます。

  • 目・耳・手足などの感覚器からの情報が脳に届く
  • 脳に送られた情報は平衡中枢で統合される
  • 自分の頭や身体が今どこを向いているのかを最終的に判断

「平衡感覚(平衡機能)」を構成する要素のいずれかに問題があると、正常な「平衡感覚(平衡機能)」が維持できなくなるため、【めまい】が生じます。

目・耳・首・手足などそれぞれの器官から脳に送られてくる情報が完全に一致していて平衡中枢である脳が正常に機能している限り【めまい】は生じないのですが、各感覚器官から異なった情報が送られてきた場合や、統合する脳自体に問題がある場合「めまい」症状が現れます。

【めまい】と「乗り物酔い」

「乗り物酔い」も正常な「平衡感覚(平衡機能)」が維持できなくなることで生じ、症状も【めまい】と類似しています。

ただ、「乗り物酔い」は「平衡感覚(平衡機能)」に問題があるというより、目や脳で予測している運動方向と実際に身体で感じる情報が異なることで、統合中枢である脳が混乱して生じます。

他人の運転する車に乗るということは、自分の脳(や視界の変化)を運転手に委ねているようなものなので、乗り物酔い対策には「できるだけ運転席の近くに座る(運転手のつもりで乗る)」ことが有効(人の運転では簡単に酔ってしまう人も自分の運転で酔う人はほぼいない!)です。

また、「乗り物酔い」に似た【めまい】は、パソコンやスマホの長時間使用で「頸部筋肉」に負担がかかることでも生じます。

【めまい】の種類と原因

【めまい】は原因により症状の出方や経過が異なります。

【めまい】種類症状経過原因病名例

真性めまい
(回転性)
平行または垂直の回転
+ 吐き気(嘔吐)
突然起こって一定期間続いて解消耳(前庭)機能良性発作性頭位性めまい
メニエール病
(耳鳴りや難聴も伴う)
突発性難聴
前庭神経炎
仮性めまい
(動揺性)
車酔いに類似するめまい感突発性で一定期間だけ起こる
or
慢性的に持続する
脳血管障害
脳血流障害
高血圧
失神性発作いわゆる立ちくらみ原因により多様多様ストレス
自律神経失調
視力低下
首こり

【真性めまい】回転性めまい

【真性めまい】とは、「前庭機能」を含む「平衡感覚(平衡機能)」に問題があって生じる「めまい」のことで、内耳と視覚と筋肉からなる身体のバランスを保つ機能(平衡機能)の異常であり、耳と脳に起因して起こります。

【真性めまい】の症状は、平行または垂直の回転を感じ、吐き気や嘔吐が加わります。

水平方向へ回転は「目が回る」「天井がグルグル回る」などと表現され、垂直方向の回転はエレベーターに乗った時のように「すーっと下がっていく感じ」と表現されますが、突然起こってある一定期間だけ持続し、その後は完全に消える場合が多いことが特徴です。

【仮性めまい(めまい感)】動性・動揺性のめまい

「真性めまい」に対して、主に脳の機能障害(脳血管障害、脳血流障害、高血圧など)によって生じる動揺性のめまいのことを【仮性めまい(めまい感)】と呼びます。

【仮性めまい(めまい感)】の症状は、「身体がフワフワ浮いているような感じ」「ユラユラ揺れているような感じ」と表現され、「車酔い」に類似しているの特徴です。

【仮性めまい(めまい感)】も吐き気や嘔吐や嘔吐を伴いますが、突発的に生じて一定期間だけ起こるタイプと慢性的に持続するタイプがあります。

失神性発作(たちくらみ)

「目の前が真っ暗になった」などと表現される【めまい】で、頭からスーツと血の気が引いていくような感覚になるいわゆる「立ちくらみ」のことで、様々な原因があります。

  • 起立性調節障害や不整脈
  • ストレスなど心因的な原因
  • 耳疾患(耳性めまい)
  • 視力異常(眼性めまい)
  • 頚部筋緊張異常(頚性めまい)
  • 過度の血圧下降(降圧)
  • うつ状態
  • 小脳疾患
  • 脳幹疾患
  • 大脳疾患

【めまい】原因別対処法

【めまい】は原因により対処法が異なります。

内耳(前庭機能)

内耳の前庭にある「三半規管」には三つの輪のようになった管がついていて、管の中は液体(リンパ液)で満たされています。

内耳のリンパ液は通常静止していますが、頭頸部の運動によりその運動と反対方向に動き、その流れで頭がどの方向に動いたかを察知してその情報は脳に送られます。

これが目をつぶっていても頭の位置がわかる仕組みですが、これらの「平衡感覚(平衡機能)」を司る「前庭」機能が正常に機能しない場合、脳における頭の位置の把握に影響が出るため【めまい】の原因になります。

例えば、片側の内耳に異物がある場合、片側のリンパ液は動かないので左右の耳からの情報が一致しないため脳は混乱して「回転性めまい」が生じますが、この仕組みで生じるめまいは頭部が動いている時だけ起こるので、動きを止めると間もなく消失します。

【回転性めまい】は、頭部をある方向に向けていると起きるが別の方向に向けているとまず起きないという特徴があり、頭部を急激に動かすとめまいがするがゆっくり動かせば起きにくくなるので、めまいが起こりにくい方向を向いて安静にし、動くときはゆっくり動かすようにしましょう。

耳鼻科疾患による【めまい】は早ければ1日以内、長くても1~2か月程で消失する場合がほとんどです。

視覚(視力低下や左右差)

「視覚」には、目でとらえた情報で自分の位置やバランスを確認する役割もあるため、視力の極端な左右差があったり、眼鏡が合わなくなった場合にも「平衡感覚(平衡機能)」が正常に機能せずに【めまい】が発生するケースがあります。

この場合はメガネなどの補正具で調整することで解消します。

頸部筋肉の過緊張

頸部には、視線の変化に応じて頭部の位置を微調整する筋肉が多数存在しますので、頸部筋肉の過緊張や緊張の左右差により、「頭重感」と共に「めまい(ふらふら感・時に回転性めまい)を訴えるケースがよくあり、頭部への血流不足により一時的な視力低下を伴っている場合もあります。

この場合は、頸部筋肉の緊張を緩和して血流を改善することで解消します。

血圧(血流)低下

低血圧だと心臓から出た血液を全身に運ぶ力が不足して臓器に流れる血流量が減少し、脳の血流量も不足して酸欠状態になった結果めまいが生じることがあります。

血流不足による【めまい】は、起立性低血圧や降圧剤の服用などでも起こり得ますが、血圧を安定させることや全身の血液循環を高める運動などで解消します。

うつ状態

うつ状態に伴って不眠や頭重感などとともに【めまい】生じるケースがありますが、うつ状態だから【めまい】が生じるというよりも、様々な機能障害に伴って鬱状態が生じていると考える方が自然です。

うつの薬に加えて、むやみに頭痛薬やめまいの薬などを服用してしまうと、全身機能の低下を促進してより症状が悪化してしまう場合があります。

個別の状況に応じて、問題となっている障害や問題をひとつひとつ取り除いていくこと、根本改善を図りましょう!

脳異常(脳血管障害)

「平衡感覚(平衡機能)」の司令塔である大脳だけでなく、「小脳」や「脳幹」の脳血管障害でも【めまい】が生じます。

60~70%は「動揺性のめまい + 嘔吐」で、30~40%が「回転性めまい+嘔吐」に以下のような症状を伴っていますので、すぐに救急対応のできる医療機関を受診してください。

  • 片側の手足が動きにくい
  • 半身の感覚がおかしい
  • 物が二重に見える
  • 呂律がまわらない
  • 頭が痛い
  • 意識がもうろうとする

-姿勢と生活習慣, 脳と神経, 血液と循環