大腿(太もも)の筋肉

【股関節内転筋群】内ももの筋肉【ストレッチと筋トレのためのイラスト図解剖学】

「骨盤」の位置を整え美脚ラインを作る、立位バランスを安定させるなどの重要な作用がある【股関節内転筋群】の解剖学構造(起始停止、作用、神経支配)をイラストや図解を用いてわかりやすく解説しています。

【股関節内転筋】とは?どこにあるどんな筋肉?

【股関節内転筋】とは大腿内側(内もも)の5筋:「恥骨筋」「長内転筋」「短内転筋」「大内転筋」「薄筋」の総称です。

太ももの筋肉と言えば、前側にある「大腿四頭筋」や後ろ(裏)側にある「ハムストリング」が有名ですが、内側にある「股関節内転筋」も、美脚ラインや身体の柔軟性を高めたり、運動パフォーマンスを高める上でとても重要な働きをしています。

筋肉ふりがな英語名特徴
股関節内転筋(群)こかんせつないてんきんhip-adductors
(正式名称ではない)
「恥骨筋」+「長内転筋」+「短内転筋」+「大内転筋」+「薄筋」
恥骨筋ちこつきんPectineus「股関節内転筋群」の中で一番上位
長内転筋ちょうないてんきんAdductor Longus「恥骨筋」の下
短内転筋たんないてんきんAdductor Brevis「長内転筋」と「大内転筋」の間に挟まれる位置
大内転筋だいないてんきんAdductor Magnus「長内転筋」の背面
「股関節内転筋群」中最大かつ最強
薄筋はっきんGracilis「股関節内転筋群」最内側を「脛骨」まで走行
(「大腿骨」から一番離れた位置)
「股関節内転筋群」唯一の二関節筋
停止部では【鷲足】を形成

【股関節内転筋群】は「骨盤」から「大腿骨」および「脛骨」に走行して主に「股関節内転(股関節を閉じる働き)」に作用している筋肉で、他の「骨盤」や「股関節」まわりの筋肉と拮抗や協同して「骨盤」の位置を整え美脚ラインを作ったり、立位バランスを安定させるなどの重要な作用があります。

【股関節内転筋群】は前ももの「大腿四頭筋」や裏ももの「ハムストリングス」に比べて普段の生活で意識することも使うことも少なく、筋力低下したり硬い状態になりやすい筋肉です。

【股関節内転筋群】の柔軟性が無くなったり、筋力や機能が低下すると開脚など「股関節」運動に制限が出たり、太ももを閉じた真っ直ぐの脚のラインや脚の筋肉のバランスが崩れて「膝関節」に負担がかかったりしてしまいます。

脚の筋トレやストレッチを頑張っているのに、O脚やX脚、膝痛、股関節の歪みなどの脚のトラブルが改善しない、「骨盤」の歪みがあり疲れやすい、胃腸がトラブルが多い、身体が硬い(脚を組んだり開脚しようとすると内側が特につっぱる感じがする)などの場合は、【股関節内転筋群】に意識を向けてセルフケアやメンテナンスを実践すると解消や改善するかもしれません。

【股関節内転筋群】解剖学構造を正しく理解して、効果的なセルフメンテナンス、ストレッチ、マッサージ、筋トレなどを実践しましょう。

【股関節内転筋群】起始停止

【股関節内転筋群】は「骨盤下部(恥骨や坐骨)」から起始し、太もも(大腿骨)内側に筋腹を作って「大腿骨」に停止(「薄筋」のみ「脛骨」)に停止します。

筋肉起始停止
恥骨筋恥骨上枝
恥骨櫛
恥骨靭帯
大腿骨粗線近位部
恥骨筋線
長内転筋恥骨上枝(恥骨結合下方)大腿骨粗線内側唇中部1/3
短内転筋恥骨下枝下部大腿骨粗線の内側唇上部1/3
大内転筋坐骨下枝前面
坐骨結節下面
大腿骨粗線の内側唇
(小転子〜内側上顆)
薄筋恥骨下枝内縁脛骨粗面の内側
(鵞足を形成)

【股関節内転筋群】のうち、一番「骨盤」に近い位置にある筋肉が「恥骨筋」で、その下方に比較的に筋腹の大きい「長内転筋」と「大内転筋」が裏表になるように存在し、その間に「短内転筋」があります。

「薄筋」は、【股関節内転筋群】唯一の二関節筋で、停止部では「鵞足」を形成し、股関節内転運動を起こすというよりも前ももや裏ももの筋肉群と【股関節内転筋群】のバランス調整に作用しています。

【恥骨筋】起始停止

【恥骨筋】は、「股関節内転筋群」最上部の筋肉で、「恥骨」から起始して「大腿骨」の前上部に向かって走行し、「大腿骨粗線近位部」および「恥骨筋線」に停止します。

【長内転筋】起始停止

【長内転筋】は「恥骨筋」の下部を走行する筋肉で、「恥骨上枝(恥骨結合下方)」から起始して「大腿骨粗線内側唇中部1/3」に停止します。

【短内転筋】起始停止

【短内転筋】は「長内転筋」と「大内転筋」の間に挟まれる位置にあり、「恥骨下枝下部」から起始して「大腿骨粗線の内側唇上部1/3」に停止します。

【大内転筋】起始停止

【大内転筋】は、「長内転筋」の背面に位置する「股関節内転筋群」中最大かつ最強の筋肉で、「坐骨」から起始して「腿骨粗線の内側唇」に停止します。

【薄筋】起始停止

【薄筋】は、「股関節内転筋群」最内側(大腿骨から内側へ最も離れた位置)を「脛骨」まで走行する「股関節内転筋群」唯一の二関節筋で、停止部では【鷲足】を形成します。

【股関節内転筋群】作用(働き)

【股関節内転筋群】の主な作用は、名前の通り「股関節内転」です。

筋肉関節主な作用
恥骨筋股関節内転
屈曲
長内転筋股関節内転
屈曲
内旋
短内転筋股関節内転
屈曲
外旋
大内転筋股関節内転
外旋
屈伸補助
薄筋股関節内転
屈曲
薄筋膝関節屈曲
内旋

実際の日常生活で「股関節内転」運動を意識することはほとんどありませんが、【股関節内転筋群】の作用があることで、「骨盤」「股関節」「膝関節」運動における筋肉の拮抗バランスが整い、立位姿勢や歩行などが安定します。

【恥骨筋】作用

【恥骨筋】は一番上部(「骨盤」に近い位置)にある「股関節内転筋」です。

「恥骨」から「大腿骨」前上部に付着しているため、「股関節内転」の他に「股関節屈曲」にも作用し、「大腿四頭筋」や「腸腰筋」を補助します。

【恥骨筋】の作用は、脚を組むときなどに「大腿骨」を「骨盤」に近づけつつもう片方の脚の上に載せてクロスする運動(「股関節屈曲」+「股関節内転」)をイメージするとわかりやすいと思います。

また、「股関節内転筋群」の中でも「骨盤」に一番筋腹が近いため、「大腿骨」を身体の重心軸に引き寄せて「骨盤」左右方向バランスをとりつつ安定させるために重要な働きをしています。

【長内転筋】作用

【長内転筋】は「恥骨筋」下部に比較的大きく長い台形の筋腹を持つ「股関節内転筋」のひとつです。

【長内転筋】は「股関節内転筋」の主な作用である「股関節内転」の他、「股関節屈曲」方向および「股関節内旋(大腿骨骨頭を内側に捻る動き)」にも作用しています。

【恥骨筋】同様、「大腿骨」を身体の重心軸に引き寄せて「骨盤」左右方向バランスをとりつつ安定させるために重要な働きをしています。

【短内転筋】作用

【短内転筋】は「恥骨筋」と「長内転筋」の間に挟まれるように走行する比較的小さな筋肉で、起始部は「長内転筋」のすぐ下で、停止部は「大腿骨小転子」下側です。

【長内転筋】同様に「股関節内転」と「股関節屈曲」に作用する他、「股関節外旋方向」へも作用します。

【股関節内転筋群】の中でも「股関節内旋と外旋」の動きが別れていて、脚の微妙な位置調整をしていることがわかります。

【大内転筋】作用

【大内転筋】は、「股関節内転筋群」の中で最大で「股関節内転作用」も最も大きい筋肉です。

「恥骨下枝前面」「坐骨下枝の前面」「坐骨結節」から始まり、「恥骨筋」と「長内転筋」後方を大きな筋腹を広げながら下方へ向い、一部は大腿骨粗線の内側唇に広く停止し、一部は「大腿骨内側上顆」に停止します。

【大内転筋】の作用は、「股関節内転」以外に、「短内転筋」同様に「股関節外旋」方向の作用が働きます。

また、筋腹が大きい筋肉のため、筋膜のつながりにより「股関節屈曲」や「股関節伸展」にも補助的に作用する場合があります。

【薄筋】作用

【薄筋】は、「股関節内転筋群」の中でも最も内側にある細長い筋肉で、「脛骨」まで走行する「股関節」と「膝関節」の運動に作用する二関節筋です。

【薄筋】は運動を起こすパワーは小さく、前ももの筋肉(大腿四頭筋)や後ろももの筋肉(ハムストリング)と協調し、「股関節」と「膝関節」のバランスをとる調整役として重要です。

【股関節内転筋】神経支配

【股関節内転筋群】は全て「閉鎖神経支配(L2~L3)」です。

筋肉神経支配
恥骨筋閉鎖神経支配(L2~L3)
大腿神経(L2~L3)
長内転筋閉鎖神経支配(L2~L3)
短内転筋閉鎖神経支配(L2~L3)
大内転筋閉鎖神経支配(L2~L3)
脛骨神経(L4)
薄筋閉鎖神経支配(L2~L3)

また、【股関節内転筋群】のうち、「恥骨筋」は「大腿神経(L2~L3)」、「大内転筋(浅部)」は「脛骨神経(L4)」の支配も受けています。

【股関節内転筋】触診

【股関節内転筋群】は太ももの内側で簡単に触診できますが、特に、「薄筋」は大腿の最も内側かつ表層(皮膚直下)にあり触診も視診もしやすい筋肉です。

股関節の「内転+屈曲運動」することで筋肉が収縮するので、より触診しやすくなりますし、膝関節内外旋を加えると各筋肉を区別した触診もしやすくなります。

【股関節内転筋】コンディションチェックとセルフケア

【股関節内転筋群】は、日常で開閉脚運動を行うことはほとんどないため意識しずらく、運動不足や柔軟性も低下により硬い状態になりがちです。

開脚ができなかったり、「股関節」を曲げたときに「内側でつっぱる感覚がある」「X脚やO脚」「膝痛」などのトラブルがある場合は、【股関節内転筋群】の状態をチェックして、自分にあった正しいセルフケアやコンディショニングを取り入れましょう。

「股関節(骨盤)」や「膝関節」運動や立位姿勢、脚のラインの調整役である【股関節内転筋群】がしっかり働くようにしておくだけで、前もも、後ろもも、膝関節への負担が軽減し、脚のラインや姿勢が驚くほどきれいに整い、運動パフォーマンスも上がります。

【股関節内転筋】マッサージ

【股関節内転筋群】は太ももの内側で簡単に触れることができますので、手のひら全体で触れながら筋繊維にそってマッサージすることで、【股関節内転筋群】がほぐれて柔らかくなってくるのを感じられます。

【股関節内転筋】筋膜リリース

太ももの付け根から「股関節内転筋群」の走行に添うように、フォームローラーやボールなどで押圧しながら、凝り固まった筋膜をほぐしていきましょう。

骨盤前面の「腹直筋」や「腸腰筋」、骨盤底面の「骨盤底筋群」、骨盤横後面の「大臀筋」や「中臀筋」、太ももまわりの「大腿四頭筋」や「ハムストリング」とのつながりも意識しながらバランスよく筋肉の状態を整えていきましょう。

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【股関節内転筋群】ストレッチ

【股関節内転筋群】は、「股関節外転」、つまり、脚を開脚することでストレッチできます。

仰向け、坐位などポジションや片脚ずつや両脚同時など現在の筋肉の状態やストレッチをする場所に合わせてアレンジしましょう。

ストレッチをするときに痛みや不快感を感じた状態だと逆効果になってしまいますので、呼吸を忘れずゆっくりと伸ばせる範囲で伸ばし、無理せずキープする時間やストレッチの深さ少しづつ増やしていきましょう。

【股関節内転筋群】筋トレ

【股関節内転筋群】は本来開脚のように大きく関節を動かすための筋肉ではないので、筋トレをしても最初は【股関節内転筋群】に効いているがわかりにくいかもしれません。

それでも下半身の筋肉の役割分担を理解し、じっくりゆっくり丁寧に負荷をかけていくことでしっかりトレーニング(強化)できます。

側臥位や仰向けで足をクロスするトレーニング、スクワットのときに膝の間に柔らかいボールなどを挟んで【股関節内転筋群】を意識するトレーニング、ヨガの脚をクロスするポーズなどがオススメです。

普段座っているときに脚の間を開かない様に意識したり、ボールなどを挟んで置くだけでも【股関節内転筋群】を意識する良いトレーニングになります。

-大腿(太もも)の筋肉
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