大腿(太もも)の筋肉

【ハムストリング】ダッシュや柔軟に重要なもも裏筋肉【ストレッチと筋トレのためのイラスト図解剖学】

【ハムストリング:「大腿二頭筋」「半腱様筋」「半膜様筋」】解剖学構造(起始停止、作用、神経支配)についてイラスト図解を用いてわかりやすく解説しています。

【ハムストリング】とは?どこにあるどんな筋肉?

【ハムストリング】は主に「膝関節屈曲」や「股関節伸展」に協力して働いて姿勢や立位運動に貢献する太もも裏の筋肉群です。

【ハムストリング】はまとめてひとつの筋肉のように表現されることもありますが、実際は、太もも裏外側にある「大腿二頭筋」、太もも裏内側の「半腱様筋」と「半膜様筋」の3(4頭)筋肉の総称です。

ふりがな英語名特徴
ハムストリング
はむすとりんぐHamstring「膝関節屈曲」「股関節伸展」に作用
太もも裏の筋肉群
「大腿二頭筋」+「半腱様筋」+「半膜様筋」
大腿二頭筋だいたいにとうきんBiceps Femoris外側ハムストリング
二頭筋(実質2つの筋肉)
半腱様筋はんけんようきんsemitendinosus内側ハムストリング
腱となって脛骨粗面の内側に停止
「縫工筋」「薄筋」とともに【鷲足】を形成して膝関節を安定させる
半膜様筋はんまくようきんSemimembranosus内側ハムストリング
膝関節を膜で包み伸展した膝関節を安定

【ハムストリング】は、前屈や柔軟体操などの時に「股関節」から屈曲しながら「膝関節」を伸展した時に、「伸びている!」と感じる膝裏〜もも裏の筋肉です。

【ハムストリング】は、お尻下から膝裏までの太もも裏側の形状や太さ(お尻や脚のライン)を決める大きな筋肉で、血液循環や体温保持にも大きく影響します。

運動面では「股関節」と「膝関節」の運動に大きく影響を与え、、脚を蹴り出すダッシュの時によく働きますので、「ダッシュ筋」と呼ばれることもあります。

更に、【ハムストリング】「股関節」「骨盤」「膝関節」にさまざまな角度から影響を与える筋群でもあるので、姿勢保持、立位バランス、歩行、ランニングなどの際に、負担がかかりがちな「膝関節」を保護する機能もあります。

【ハムストリング】の柔軟性や筋力および活動性が低下すると、「姿勢が悪くなる」「身体が硬い(前屈がしにくい)」「腰痛」「膝痛」などの原因にもなるので、解剖学構造を理解した正しい【ハムストリング】ストレッチや筋トレでしなやかな脚のラインと良い姿勢、キレのある運動パフォーマンスを維持しましょう!

【ハムストリング】起始停止

【ハムストリング】には、3つ(4頭)の筋肉が含まれ、「坐骨」から大腿後面を覆って「膝関節」を通過し、「下腿骨」に停止します。

筋肉起始停止
大腿二頭筋 長頭坐骨結節後面
(「半腱様筋」と共同腱)
腓骨頭
下腿筋膜
脛骨外側顆
大腿二頭筋 短頭大腿骨粗線外側唇下方1/2長頭と共同
半腱様筋坐骨結節内側
(大腿二頭筋長頭と共同腱)
下腿筋膜
脛骨上縁で薄筋停止部の後下方
(「半腱様筋」「薄筋」「縫工筋」で鵞足を構成)
半膜様筋坐骨結節脛骨の内側顆後部
脛骨粗面
斜膝窩靭帯
膝窩筋筋膜
下腿筋膜

【大腿二頭筋】起始停止

【大腿二頭筋】は、長頭と短頭の二頭で始まりますが、共同して「腓骨」に停止します。

長頭は「股関節」と「膝関節」を経由する二関節筋ですが、短頭は「膝関節」にのみ作用します。

「半腱様筋」起始停止

【半腱様筋】は「大腿二頭筋長頭」と同じ「坐骨結節」に起始がありますが、停止が膝の内側なので裏ももの内側を構成するように筋腹を構成し、名前の通り、膝に近づくに連れて腱のようになって「脛骨」に停止します。

【半腱様筋】停止部は、股関節内転筋のひとつである「薄筋」と、太もも前面から走行する「縫工筋」と停止部が近く、「半腱様筋」「薄筋」「縫工筋」の腱が扇状に広がりながら「脛骨」に付着し、その部分が水鳥の足のような形であることから「鵞足」と呼ばれています。

【半腱様筋】も「薄筋」も「縫工筋」も「股関節」と「膝関節」に作用する細長い二関節筋で、太ももの前側、内側、裏側と全方向からの筋作用が停止する場所である鵞足は、太ももの筋肉がうまくバランスよく支えているか評価するときに重要なポイントになります。

「半膜様筋」起始停止

【半膜様筋】も「大腿二頭筋長頭」および「半腱様筋」と同じ「坐骨結節」に起始があり、「半腱様筋」の深層部(太もも裏内側)を膜のような形状で走行して、「脛骨」に停止する二関節筋です。

【ハムストリング】作用(働き)

【ハムストリング】を構成する各筋肉の走行(起始停止)からイメージできる通り、【ハムストリング】全体として主な作用は「膝関節屈曲」で下腿を太ももの方向へ引っ張る力ですが、固定されている関節(骨)などの条件により起こる動作(姿勢)は変化します。

条件作用
「膝関節」を固定股関節伸展
「膝関節」と「股関節」を固定した状態骨盤後傾
「膝関節」が自由膝関節屈曲

「ハムストリング」は「骨盤」から「太ももの骨(大腿骨)」を経由して「下腿骨(脛骨と腓骨)」に向かって走行していますが、どちらが起始停止でなく、2つの起点があることと走行方向がイメージできることが重要です。

【ハムストリング】の主な作用である「膝関節屈曲」と「股関節伸展」は、ダッシュする時に重要な脚の動きなので、【ハムストリング】は『ランナー筋』や『ダッシュ筋』とも呼ばれ、スプリンターのハムストリングは非常に良く発達しています。

「膝関節」を固定した場合

膝関節を固定した状態で【ハムストリング】が収縮(作用)すると、「股関節伸展」方向への力が働きます。

例えば、柔軟体操でよくやる立位前屈や長坐位前屈している状態から上半身を起こす運動では、【ハムストリング】が「大臀筋」と共に強く作用しています。

「膝関節」と「股関節」を固定した場合

「膝関節」と「股関節」を固定した状態で【ハムストリング】が収縮(作用)すると、「坐骨結節」を膝の方向へ引っ張る力により「骨盤後傾」が生じます。

【ハムストリング】の作用として「骨盤後傾」はイメージしづらいので日常動作で考えてみましょう。

普段椅子やソファに座っているときにやってしまいがちな背中のまるまった姿勢の時、「骨盤」が後傾していますが、この状態の時【ハムストリング】は短縮した状態(収縮して起始と停止が近づいた状態)になっています。

「膝関節」と「股関節」を伸展させたまま真っ直ぐ立っている直立姿勢(気をつけ!の姿勢)でも、【ハムストリング】は「骨盤」を後傾させる方向への力が作用しています。

ただ、立位姿勢を安定させるためにお腹側の筋肉が「骨盤」を前傾させる方向へ拮抗するように作用しているため、実際の立位では「骨盤」を後傾させる運動を起こすというよりも「骨盤」を後ろから引っ張るように体幹を起こして立位を安定させるための姿勢筋としての作用しています。

【ハムストリング】構成要素の作用

【ハムストリング】を構成する3筋(4頭)を個別に見ると、それぞれ起始停止が異なるので作用も少しずつ異なり、作用の異なる4つの筋肉が相互に働き制御しあうことで、「膝関節」の安定や微妙な動きやバランスの調整ができるようになっていることがわかります。

それぞれぞれの作用(働き)を詳しく正しく理解することで、安全かつ効果的に運動パフォーマンスを高めるトレーニングや「膝関節」や「股関節」の怪我や痛みを予防したりケアするための正しいコンディショニングやストレッチ、マッサージ、筋膜リリースができるようになります。

【ハムストリング】を構成する「大腿二頭筋」「半腱様筋」「半膜様筋」の作用を、起始停止から収縮したらどう関節(骨)が動くのか自分の身体で試したり、イメージしながら整理しましょう。

【大腿二頭筋】作用

「外側ハムストリング」と呼ばれる【大腿二頭筋】は、【ハムストリング】全体としての働きに加え、太ももの外側を走行して「腓骨」に停止しているため、「膝関節」外旋方向への作用もあります。

関節作用
股関節伸展(長頭のみ)
骨盤後傾
膝関節屈曲
外旋

「膝関節」外旋の可動域自体はとても小さいのですが、立位や歩行で負担がかかりやすい「膝関節」に遊びを持たせつつ、運動パフォーマンスを高めるためにとても大切な作用です。

また、【ハムストリング】の中で、【大腿二頭筋短頭】は股関節の状態(関節可動域)に影響されない唯一の純粋な「膝関節屈曲に作用する筋肉」であるということも抑えておきたいポイントです。

「骨盤(坐骨結節)」から「膝関節」を経由して「下腿骨(腓骨)」まで走行する【大腿二頭筋長頭】は「膝関節」と「股関節」の運動に作用する二関節筋ですが、「大腿骨」から「腓骨」まで走行する【大腿二頭筋短頭】は、膝関節の運動にのみ作用して「股関節運動」には直接関与しません。

二関節をまたぐ【ハムストリング】の筋肉群は、「股関節」の角度により「膝関節」に対する張力が弱まりますが、【大腿二頭筋短頭】は「股関節」の角度に関わらず「膝関節」に対して張力を発揮できます。

柔軟体操で前屈運動をする時、ハムストリングが硬い(柔軟性がない)と膝を伸ばしたまま股関節屈曲をしようとしても膝が曲がってしまいますが、この時の膝を曲げようとする力は、【大腿二頭筋短頭】以外の3筋(【大腿二頭筋長頭】「半腱様筋」「半膜様筋」)が主導しています。

【半腱様筋】作用

「内側ハムストリング」と呼ばれる【半腱様筋】は、「外側ハムストリング」と呼ばれる「大腿二頭筋長頭」同様に「坐骨」から始まりますが、「大腿二頭筋長頭」と別れるように内側に向かって走行して「脛骨」に停止します。

そのため、「ハムストリング」全体としての作用に加えて、「大腿二頭筋長頭」に拮抗する作用を持つことで「膝関節」の安定にも貢献しています。

部位作用
股関節伸展
内転
骨盤後傾
膝関節屈曲
内旋

【半腱様筋】の停止部は、前ももに筋腹を持つ二関節筋である「縫工筋」、および内ももに筋腹を持つ二関節筋である「薄筋」とも近接していることも注目するべきポイントで、膝関節の安定と運動に複数の筋肉が影響を受けていることも改めて確認しておきましょう。

【半膜様筋】作用

【半膜様筋】も「半腱様筋」および「大腿二頭筋長頭」同様に「坐骨結節」から始まり、「半腱様筋」の深層を「脛骨」まで走行するため、「半腱様筋」同様に「内側ハムストリング」と呼ばれます。

そのため、【半膜様筋】作用も「半腱様筋」と類似していますが、名前の通り半分膜のような筋肉なので、運動に作用する力は小さく、膝関節を膜で包み込みんで伸ばした膝関節を安定させることが主な役割です。

部位作用
股関節伸展
骨盤後傾
膝関節屈曲
内旋

【ハムストリング】触診

太ももの裏側には【ハムストリング】しかなく、お尻下(お尻と太ももの境目)から膝裏までの膨らみ(裏もも)の形状や太さは【ハムストリング】によって決まりますので、見た目でも状態が簡単にわかりますし、触診も簡単です。

【大腿二頭筋】は「もも裏外側をお尻の下から膝下くらいまで手のひらで撫でたときに触れるあたりにある筋肉」で、その内側「お尻の下から膝の内側に向かってもも裏を撫でたときに触れるあたりにある筋肉」が「半腱様筋」です。

【ハムストリング】神経支配

【ハムストリング】は「坐骨神経」支配で、「坐骨神経」は膝の上付近で「腓骨神経」と「脛骨神経」に別れます。

【ハムストリング】のうち「大腿二頭筋短頭」のみ「腓骨神経支配」で、「大腿二頭筋長頭」「半腱様筋」「半膜様筋」は「脛骨神経支配」です。

筋肉神経
大腿ニ頭筋 長頭脛骨神経(L5ーS2)
大腿ニ頭筋 短頭総腓骨神経(S1ーS2)
半腱様筋脛骨神経(L5ーS2)
半膜様筋脛骨神経(L5ーS2)

ちなみに、太ももに筋腹のある筋肉のほとんどは「脛骨神経」支配です。

【ハムストリング】コンディションチェック!

【ハムストリング】は「お尻と脚の境目」から「膝と太ももの境目」までの裏ももの形状や座位姿勢などで、簡単にコンディションをセルフチェックできます。

【ハムストリング】を効果的に鍛えることで、姿勢改善、美尻効果、美脚効果も期待できますし、柔軟性や運動パフォーマンス向上も期待できます。

【ハムストリング】柔軟性チェック

【ハムストリング】は脚を後ろに蹴り出す動作でよく作用する筋肉で、私たちが普段歩いたり走ったりする時や立位での安定した姿勢維持ためにとても大きな役割を果たしていますので疲れやすいですし、長時間の座位姿勢などで短縮したまkまコリ固まりやすい傾向にあります。

一番わかりやすく簡単な【ハムストリング】柔軟性チェック方法は、寝たままでも、座った状態でも、床でも、立位でもできる「前屈(股関節屈曲)」です。

例えば、両脚を肩幅に広げて立って前屈したときに、「膝が伸びない」「太ももの裏がつっぱる」「膝に不快感や違和感や痛みがある」ときは【ハムストリング】の柔軟性が低下している(硬い・短縮している)サイン。

【ハムストリング】が短縮したり柔軟性がなく硬い状態になっていると長坐位をしようとしても膝が曲がってしまったり「骨盤」が起こせず正しい姿勢ができませんので、長坐位ができるかどうかも【ハムストリング】のコンディションチェックに有効です。

【ハムストリング】冷えチェック

特に、女性が気になるもも裏のセルライトは、【ハムストリング】の機能低下で筋肉運動による循環機能や体温生産機能が低下することで、脚が冷えて老廃物が溜まることが原因のひとつです。

もも裏を構成する【ハムストリング】は筋肉としての面積が大きいので、太もも周りが冷えている場合は、身体の他の部位も冷えていることが多く、【ハムストリング】の機能低下は、肥満や冷えの要因にもなり得ます。

膝痛や腰痛はない?

前屈方向が優位になりがちな日常生活姿勢で、「股関節」から体幹を引き上げて安定させる姿勢保持筋としても常に作用している【ハムストリング】には日々大きな負担がかかっています。

また、【ハムストリング】は太もも前側にある「大腿四頭筋」と拮抗する関係にあり、「股関節」や「膝関節」の内外旋を加えて重力に抗してバランスを調整しながら「骨盤」を安定させて、安定した上半身姿勢を維持するためにも作用してるので、【ハムストリング】が硬くなったり機能が低下すると、筋肉のアンバランスが生じて、姿勢や運動パフォーマンスが低下して、「腰痛」や「膝痛」の原因にもなります。

【ハムストリング】ストレッチとコンディショニング

【ハムストリング】は「骨盤」からもも裏と膝裏を経由して「下腿骨」に付着している筋肉なので、前屈する際には背中を丸めないように「股関節を屈曲」して「膝関節を伸展する」意識でストレッチやマッサージ、筋膜リリースして柔軟性を取り戻しましょう。

もも裏にボールやストレッチポールを当てて体重を乗せて転がすと【ハムストリング】を自重でマッサージできますが、背面の筋肉のつながり(アナトミートレイン)を意識して、足裏から頭頂までコリや短縮のある部分を中心に背面全体をほぐしていくことで、全身アンバランスが整いやすくなります。

合わせてチェック!

【ハムストリング】が短縮したり柔軟性がなく硬い状態になっていると「長坐位」をしようとしても膝が曲がってしまったり「骨盤」が起こせず正しい姿勢ができませんので、まず「長坐位」を目標にし、「長坐位」で膝関節伸展位のまま「股関節」屈曲角度を徐々に深めていきましょう。

【ハムストリング】鍛える筋力トレーニング

【ハムストリング】は半身(骨盤や背骨)はしっかりと安定させた状態を保ち「膝関節」と「股関節」を屈伸するスクワットなどのエクササイズで強化できますが、拮抗する関係の「大腿四頭筋」や連動する「大臀筋」や「下腿三頭筋」などの働きも理解することで効果的な筋トレになります。

代償動作で腰や膝を痛めないようにポジション(姿勢)を意識して丁寧に行うことが重要です。

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