大腿(太もも)にメインとなる筋腹がある筋肉の種類、分類、名称を一覧にまとめ、解剖学構造(起始停止、作用、神経支配)、特徴、正しい筋トレやストレッチ方法をイラスト図解を使ってわかりやすく解説しています。
【大腿(太もも)の筋肉】とは?
大腿(太もも)にメインとなる筋腹がある筋肉は、機能別にみると、前ももの筋肉(膝関節伸筋群:大腿四頭筋)、後もも(膝関節屈筋群:ハムストリング)、内もも(股関節内転筋群)の3つに大きく分けられます。
更に、それらの3つの太もも筋肉機能構造を統合して調整するように走行する長い機能構造を持つ2関節筋(「大腿筋膜張筋」「縫工筋」など)もあり、股関節から膝関節周りの連動と安定をサポートしています。
部位 | 筋肉群 | 主な役割 |
---|---|---|
大腿前面 | 大腿四頭筋 | 股関節屈曲 膝関節伸展 |
大腿後面 | ハムストリング | 股関節伸展 膝関節屈曲 |
大腿内側面 | 股関節内転筋群 | 股関節内転 |
大腿全域 | 「大腿筋膜張筋」「縫工筋」 | 股関節から膝関節周りの連動と安定をサポート |
【大腿(太もも)】には大きな筋肉が多く、身体の中心である股関節運動と下半身の負担が集中しやすい膝関節運動に作用するので、正しく効果的に鍛えることで全身の循環や代謝を高めて、太りにくく疲れにくい姿勢や身体作りに役立ちます。
作用(役割)や構造により、前もも、裏もも、内もも、2関節筋の4つに大きく分類して筋肉の名前をリスト表示してまとめていますので、太ももの筋肉の解剖学構造を理解して、正しく効果的なストレッチ、筋トレ、マッサージなどを実践しましょう!
【大腿(太もも)筋肉】役割
大腿骨(太ももの骨)には複数の筋肉が付着または経由していて様々な役割を持っています。
- 脚(太もも)の形(太さや大きさ)を決める
- 股関節(骨盤)運動や安定に作用
- 膝関節運動や安定に作用
- 姿勢や下半身(美脚・美尻)ラインを作る
- 立位動作や立位バランスを調整する
- 代謝機能を高める
太ももに筋腹があるということは、主に、股関節・膝関節・骨盤の運動に作用して、私たちの姿勢、立位、歩行、運動に大きな役割を果たしていますし、太ももの形や太さ、お尻〜脚〜膝のラインや形状を決める筋肉群でもあります。
太もものラインを作る
まず、見た目から。
【大腿(太もも)の筋肉】は、上半身の重さを支えつつ大きな運動も行う股関節や膝関節の一部である「大腿骨(太ももの骨)」の周囲に大きな筋腹を持つ筋肉のことです。
つまり、【大腿(太もも)の筋肉】が、大腿(太もも)、つまりお尻または下腹から膝下までの間の太さや形を決めるので、美脚や美尻ラインを目指したボディメイクをする上では、解剖学構造を正しく理解する必要があります。
股関節〜膝関節の運動に作用する
次に運動面。
太ももに筋腹を持つ筋肉群である【大腿(太もも)の筋肉】は、骨盤や大腿骨から膝関節をまたいで下腿の骨まで走行する筋肉がほとんどなので、上半身を支えつつ股関節(骨盤)や膝関節の運動に作用します。
私たちの立位姿勢や立位バランスが安定し、歩く、走るなどの運動ができるのは、【大腿(太もも)の筋肉】が協調的に作用しているからです。
代謝や循環に大きな影響
最後に代謝や循環面。
骨格筋は、身体の熱を生産したり、血液や酸素を全身に循環させるためにも重要な役割を果たしていますが、太もも周りの筋肉の筋腹はとても大きいので、全身の血液循環、体温生成、基礎代謝にも大きく影響しています。
つまり、太もも周りの筋肉を鍛えることは、全身の代謝や循環や高めることにもつながります。
【大腿(太もも)筋肉】種類と分類
大腿(太もも)に筋腹や主要構造を持つ筋肉を、機能および走行の特徴により大きく4つに分類しています。
筋肉群 | 筋肉 | |
---|---|---|
前面 | 膝関節伸筋群 | 【大腿四頭筋】 「大腿直筋」*二関節筋 「内側広筋」 「外側広筋」 「中間広筋」 |
後面 | 膝関節屈筋群 | 【ハムストリング】 「大腿二頭筋」 「半腱様筋」 「半膜様筋」 |
内側面 | 股関節内転筋群 | 【恥骨筋】 【長内転筋】 【短内転筋】 【大内転筋】 【薄筋】*二関節筋 |
全域 | 二関節筋 | 【大腿筋膜張筋】 【縫工筋】 |
【大腿四頭筋】膝関節伸筋群:大腿前面筋肉
大腿前面には、ふともも前面の太さや形を決め、主に膝関節伸展に作用する4つの筋肉:「大腿直筋」「中間広筋」「外側広筋」「内側広筋」があり、膝伸展時に共同して働くため【大腿四頭筋】と総称されています。
「大腿直筋」は下前腸骨棘、「中間広筋」「外側広筋」「内側広筋」は大腿骨に起始があり、膝蓋骨・膝蓋靭帯を経て脛骨粗面にまとめて停止するため、【大腿四頭筋】としては膝関節伸展が主な作用で、「大腿直筋」は股関節屈曲にも作用する二関節筋です。
【股関節内転筋群】:大腿内側面筋肉
【股関節内転筋群】には「恥骨筋」「長内転筋」「短内転筋」「大内転筋」「薄筋」が含まれます。
【股関節内転筋群】は「骨盤」から「大腿骨」や「脛骨」に走行して股関節内転に作用し、骨盤の位置を整え美脚を作ったり、立位バランスを安定させるなどの重要な作用があります。
また、【股関節内転筋群】の中でも【薄筋】は、【股関節内転筋群】唯一の二関節筋として膝関節も含めた運動調整をしています。
太ももの内側では、「股関節内転筋群」が作る大きな筋腹ラインに触れることができますが、普段の生活では意識しにくい【股関節内転筋群】作用や解剖学を理解すれば、姿勢や脚のラインの問題(O脚やX脚など)が改善したり、運動メニューの効果が格段にアップします。
【ハムストリング】膝関節屈筋群:大腿後面筋肉
【ハムストリング】は、「大腿二頭筋」「半腱様筋」「半膜様筋「の3筋(4頭)が含まれ、ひとつの大きな筋膜単位で主に膝関節屈曲に作用する筋肉群で、立位体前屈など柔軟体操をするときに太ももの裏側の張りが気になるので、意識することも多い筋肉群です。
【ハムストリング】の起始停止構造をより詳しく見ると、外側に「大腿二頭筋」、内側に「半腱様筋」と「半膜様筋」があるので、股関節や膝関節の内外旋を加えてバランスを調整しながら主に「膝関節屈曲+股関節伸展」する筋肉であることがわかります。
実際スプリンターのハムストリングは非常に良く発達しているので、『ランナー筋』や『ダッシュ筋』とも呼ばれます。
日常でも立位姿勢を維持するときに、「大臀筋」などと共に後ろから骨盤をひっぱり続ける働きもあるので、疲労して硬い状態になりやすく、【ハムストリング】の機能が低下すると、膝関節や腰に負担をかけてしまうので、ハムストリングの柔軟性を維持するようなセルフケアは日課にしたいものです。
【ハムストリング】の解剖学構造を理解して正しいストレッチや筋トレを効果的に実践しましょう!
【調整役の二関節筋】(大腿広範囲を覆う筋肉)
太もも周りには、「前側」「後側」「内側」と3つの大きな機能別の塊がありますが、私たちの姿勢や運動がスムースに実践されるには、ある特定の作用を持つ筋肉グループが作用しているときは、拮抗する作用を持つ筋肉群の作用が停止する、もしくは関連する作用を持つ筋肉群が協力して作用するなど、全身の筋肉の連携が必要です。
特に、二本足歩行を獲得した私たち人間は、「股関節」と「膝関節」を連動させつつ、重力(体重)や床からの反発力に対して負担を受けやすい「膝関節」を保護して安定させるシステムも必要です。
そのため、太ももまわりには、全体を囲んで機能ごとに分ける多層構造の筋膜が張り巡らされていて、「股関節」と「膝関節」に同時に作用して調整役する「二関節筋」が複数存在します。
二関節筋 | 特徴 |
---|---|
大腿筋膜張筋 | 大腿骨上部で「腸脛靭帯」と結合 |
縫工筋 | 【大腿筋膜張筋】とは反対の内側方向から大腿前部と大腿後部の筋肉を分けるように走行 脛骨の内側に停止 |
薄筋 | 「股関節内転筋」群唯一の二関節筋 |
大腿直筋 | 「大腿四頭筋」唯一の二関節筋 |
【大腿筋膜張筋】
【大腿筋膜張筋】とは、名前の通り大腿筋膜(太もも全体をカバーする筋膜)を緊張させる筋肉です。
大腿骨上部で「腸脛靭帯」と結合するので筋腹は小さいですが、正面から見ると太もも最前および最外側にあり、股関節運動に大きな作用を持ちます。
【大腿筋膜張筋】は、二本足歩行を獲得した人類特有の機能構造を持つ「腸脛靭帯」と結合し、歩行時の骨盤安定や脚の振り出しを真っ直ぐに調整するなど、股関節運動調整や膝関節安定に様々な角度から関与している筋肉です。
【縫工筋】
【縫工筋】は大腿前面から内側面まで斜めS字にテーピングするように走行する表層の薄い、人体では最も長い筋肉で、マラソンランナーのように脂肪が少なく筋肉が発達している場合は地面についている側の脚でその走行が浮き出て見えます。
【縫工筋】起始は【大腿筋膜張筋】とほぼ同じ位置で、【大腿筋膜張筋】とは反対の内側方向から大腿前部と大腿後部の筋肉を分けるように走行して脛骨の内側に停止します。
また、停止部では、「薄筋(股関節内転筋群唯一の二関節筋)」および「半腱様筋(ハムストリング)」と隣接するように合して「鷲足」を形成し、ランナーなどが炎症を起こしやすい部分として有名です。