正しいストレッチ

憧れの【180°開脚】を目指す!開脚のための柔軟性を高めるストレッチの正しいやり方

身体の柔らかさ(柔軟性)を象徴する【180°開脚】ができるようになるための「正しいストレッチ方法」についてわかりやすく解説しています。

【開脚】って本当にすごいの?

脚を前後または左右に180°開く「180°開脚」ができると、すごく身体の柔らかい人に見えますし、どんなポーズでも自在にできるように思えてしまいます。

確かに、「180°開脚」を達成するには、可動範囲が広く大きい「股関節」を支える複数の組織の柔軟性や筋力が必要なため難易度の高いポーズであることは間違い無いのですが、「180°開脚」ができる人がどんなポーズでも柔軟性が高いとは限りません。

例えば、片脚を前方の高い位置に上げて保持するポーズでは、脚を開く角度は180°以下なので、床上で行う「180°前後開脚」できる人なら当然なんの問題もなくできそうですが、こ2つのポーズに必要な「柔軟性」は異なります。

床上で行う「180°開脚」に必要なのは「静的受動的柔軟性」で、片脚を高い位置に上げて保持するポーズでは「動的柔軟性」と高い「静的能動的柔軟性」が必要です。

漠然と身体を柔らかくしたいと思っても、自分が求めている柔軟性を理解していないと、正しい柔軟性向上エクササイズを選べないので、一生懸命頑張っても理想の姿勢、スタイル、パフォーマンスを獲得できないだけでなく、怪我につながるリスクもあります。

身体が柔かくなりたい(柔軟性を高めたい)なら、どんなエクササイズをするかを考える前に、自分に必要な柔軟性はどのタイプかを見極めましょう。

【柔軟性】の種類について詳しくはこちら!

【開脚】を達成するために必要な能力と期間

床上で行う「180°開脚」を達成するには、「股関節」に骨変形などの問題なく最大可動域が180°の場合で、「静的受動的柔軟性(static-passive flexibility)」を最大(筋長を最大にした状態を維持)にする必要があります。

「180°開脚」を目指してから達成できるまでの期間は、個々が元々持っている柔軟性やトレーニングのやり方によって異なりますが、最も効果の出やすい「PNFストレッチ」を適切に実践し続けたとして最短でも2ヶ月程度はかかると考えて気長に取り組むべき挑戦です。

また、「180°開脚」だけにこだわって練習するというよりも、「柔軟性を高めたい股関節周りの筋肉(筋肉群)をひとつひとつ丁寧にストレッチすること」や「身体のつながりを意識して全身を整えていくこと」で、結果として、より早く安全に「180°開脚」ができるようになります。

合わせてチェック!

【開脚】解剖学と運動学(正しいポジション)

【開脚】には、「股関節」を前後に開く「前後開脚(front split)」と股関節を左右に開く「左右開脚(side split)」の2種類がありますので、それぞれの正しいポジション(目指すべきゴール)を解剖学と運動学の観点で整理しましょう。

【開脚】すると、「股関節の痛み」(特に「左右開脚(side split)」で生じやすい)や「膝の痛み」を感じることがありますが、正しく【開脚】できていないサインなので今すぐ中止して基本から見直しましょう。

「前後開脚(front split)」

「前後開脚(front split)」は、上半身は床に対して真っ直ぐに起こした状態(背骨のS字カーブを維持)で「骨盤」から上半身を固定した姿勢から行う、「大腿骨」を運動軸とした「股関節屈曲(前方)」と「股関節伸展(後方)」が基本動作です。

前方(股関節屈曲)脚の「膝蓋骨」は真っ直ぐ上(天井と並行)を向け、「足関節」は「底屈位(pointed)」でも「背屈位(flexed)」でも構いません。

ただ、「足関節背屈位」の方が「筋膜(SBL)」により「ハムストリング」がより伸張されますので、ストレッチの際に感じる抵抗が増え(難易度が上がり)ます。

後方(股関節伸展)脚の「膝蓋骨」を床に向けた場合は、「大腿四頭筋」と「大腰筋」のストレッチ強度を高めることができ、外側に向けると「内転筋(太もも内側の筋肉)」のストレッチ強度高めることができます。

「膝蓋骨」を床に面している場合は、足の甲も床に接しているはずなので「足関節」は「底屈位」のままで無理に背屈位にする必要はありません。(というかほぼ不可能です。)

「膝蓋骨」を外側に向けている場合は、「膝関節」への負担をかけないように足先は伸ばしたまま(底屈位)にしておきましょう。

「左右開脚(side split)」

「左右開脚(side split)」では、上半身は床に対して真っ直ぐに起こした状態(背骨のS字カーブを維持)で「骨盤」から上半身を固定した姿勢から行う「大腿骨」を運動軸とした「股関節外転」が基本動作です。

「膝蓋骨」を真上に向けると「ハムストリング(太もも裏の筋肉)」のストレッチ強度を高められますし、正面に向けると「内転筋(太もも内側の筋肉)」のストレッチ強度を高められます。

「膝蓋骨」を正面に向ける姿勢の方が膝関節の負荷が大きくなるので、膝に痛みを感じる場合は、膝関節を真上にむけ、同時に「骨盤」も前傾させます。

「左右開脚(side split)」に「股関節」に痛みや違和感を感じるとき、ほとんどケースで「骨盤」が前傾していないことが原因です。

「股関節」柔軟性を高める部位別ストレッチ

あこがれの【開脚】を効果的かつ安全にできるようになるためには、適切なステップでトレーニングを行います。

ストレッチはできるだけ要素を分解して行った方が効果的なので、【開脚】を達成するために必要な要素を以下の順番で行うことで最短かつ安全に【開脚】のための柔軟性を獲得できます。

  • ウォームアップストレッチ
  • 腰周りストレッチ(臥位)
  • お尻ストレッチ(臥位)
  • 鼠蹊部と内転筋ストレッチ(坐位)
  • ふくらはぎとハムストリングストレッチ(坐位)
  • 腸腰筋ストレッチ(坐位)
  • 大腿四頭筋ストレッチ(坐位)
  • 「V字」ストレッチ(臥位)

繰り返しますが、【開脚】はとても負荷が大きいので、正しくやらないと関節や軟部組織を痛めてしまいますし、関節や組織の構造上そもそも「180°開脚」を目指すべきでは無い(物理的にできない、またはやらない方がいい)人もいます。

決して無理せず、心配な点がある場合は必ず専門家に相談しながら丁寧に、ゆっくり時間をかけて行いましょう。

ウォームアップストレッチ

負荷の大きいエクササイズやトレーニング前には丁寧な「ウォームアップ」が不可欠です。

「ウォームアップ」をすることで自分の今の身体の状態と向き合い、深部体温を温めて「柔軟性」を高める準備ができます。

ウォームアップのやり方についてはこちら!

腰周りストレッチ(臥位)

「ウォームアップ」が終わったら、まず「腰やお腹周りの筋肉」を「パッシブストレッチ」します。

リラックスした深い腹式呼吸と共に、以下の順番で「骨盤」と「上半身」をつなぐ筋肉群全体の過剰な緊張をほぐしてバランスを整えます。

  • 仰向けで両脚を真っ直ぐ伸ばす
  • 片脚は真っ直ぐ床につけたまま、もう片方の脚の膝関節と股関節を屈曲して太ももをできるだけ胸に近づけて10-15秒保持する
  • 曲げている方の脚を伸ばしている脚にクロスして膝を床につける(両肩は床についたまま)
  • 脚を入れ替えて②③を繰り返す
  • 両方の太ももを胸に近づけて抱え(背中は床につけたまま)10-15秒保持する
  • 両膝を曲げたまま足裏を地面につけ両膝を揃えたまま腰を回旋させて片側へ倒して膝を地面につけ(肩はできるだけ床につけたまま)10-15秒保持する
  • 反対側へも同じように行い10-15秒保持する
  • 足裏を床から離して膝関節を90度屈曲した状態で⑥⑦を繰り返す

お尻ストレッチ(臥位)

続いて、股関節伸展に作用する「お尻の筋肉(臀筋)」をメインターゲットとした「パッシブストレッチ」をします。

  • 仰向けで足裏を床につけたまま膝を曲げる
  • 右足を左手で下から指先が外側を向くように持って支えながら膝を曲げたまま右脚を持ち上げて胸の上に持ってくる(左の足裏は床につけたまま動かさない)
  • 息を吐きながらゆっくり右脚を肩の外側に向かって外側上方にひっぱり20秒ほど保持してお尻をストレッチする
  • 脚を入れ替えて同じように反対側もストレッチする

鼠蹊部や太ももの筋肉群にも刺激が入り、お尻に心地よいストレッチを感じていれば正しくできていますが、膝に痛みや違和感を感じる場合は、すぐに中止してもう一度ポジションをチェックしましょう。

膝に痛みや違和感を感じる場合は横方向の引き方が不適切であることがほとんどなので、使っていない方の手で膝関節をサポートしながら調整しましょう。

より効果の高い「アイソメトリックストレッチ」に変更したい場合は、「パッシブストレッチ」でお尻の筋肉が伸びているのを感じているときに、足を肩の外側方向へ引く腕の力に対抗するように手を押し返します。

ただし、「アイソメトリックストレッチ」では膝関節にかかる負担が増えるので、正しい知識でコントロールできる人以外はやらないようにしましょう。

鼠蹊部と内転筋ストレッチ(坐位)

ここからは坐位になり、鼠蹊部と内転筋をストレッチします。

「バタフライストレッチ」や「フロッグストレッチ」とも呼ばれる方法で、鼠蹊部と内転筋群がメインターゲットですが、先にストレッチした腰回りの柔軟性も必要です。

  • 背筋を真っ直ぐに伸ばして長坐位になる(壁に寄りかかってもよいので背中を丸めないことが重要)
  • 膝関節と股関節を曲げながら左右の足裏を合わせ、踵をできるだけ股間に近づける
  • 膝をできるだけ床に近づけるようする
  • 息を吐きながらゆっくりと股関節から上半身を屈曲し、胸を床に近づけて20秒ほど保持する

膝関節に抵抗を加えないように注意し、膝に違和感や痛みを感じる場合はすぐにやめてください。

「アイソメトリックストレッチ」に変更したい場合は、③のときに手を足首に肘を膝におくように腕をセットして、④のときに前腕で膝を床に近づける方向へ押すと同時に太ももで押し返す力を入れます。

「アイソメトリックストレッチ」では更に膝関節にかかる負担が増えるので、正しい知識でコントロールできる人以外はやらないようにしましょう。

ふくらはぎとハムストリングストレッチ(坐位)

もも裏の筋肉である「ハムストリング」ストレッチは、効果的な分離をするために、片脚の裏側(ふくらはぎ→ハムストリングの順番)をストレッチしてから、もう一方の脚をストレッチします。

  • 30cm以上の高さがあり長坐位になれるベンチか椅子を2つ用意する(お尻と足をそれぞれ乗せる)
  • 片脚は椅子(ベンチ)の上で前方に真っ直ぐ伸ばし、片脚は膝を曲げて椅子(ベンチ)から降ろして足裏を床につける
  • 身体は真っ直ぐ伸ばしている脚に向かい、上半身を股関節から少し屈曲し両手で母趾球を囲む
  • 身体を後ろにゆっくりと引き戻しながら手で母趾球を引いて足関節を背屈させ、ふくらはぎの筋肉をストレッチして20秒ほど保持する。
  • ふくらはぎのストレッチが完了したら②の姿勢に戻る
  • 脚を真っ直ぐ伸ばした状態を維持したまま、両手をできるだけ踵の近くに置く
  • 背筋を真っ直ぐに伸ばし、ゆっくりと息を吐きながらお腹を太ももに(胸を膝に)近づけるように上半身を股関節から屈曲し、ハムストリングのストレッチを感じながら20秒ほど保持する
  • 反対側も同様に行います。

⑦ハムストリングストレッチがふくらはぎから分離した状態で効果的に行うために、④でハムストリングストレッチの阻害要因になるふくらはぎを先にストレッチしているので、⑦の段階ではハムストリングとともにふくらはぎの筋肉もしっかりと伸びていることを感じられると正しい姿勢でできています。

④を「アイソメトリックストレッチ」にする場合は、手と身体で引いて足関節を背屈させようとする力に対抗するように、ふくらはぎの筋肉を使って足先を伸ばそう(足関節底屈)とします。(*実際に足や脚の位置は変化しません。)

⑦を「アイソメトリックストレッチ」にする場合は、お腹を太ももにできるだけ近づけてから、脚を真っ直ぐを維持したまま両手で足裏から押す力を加えて抵抗します。

また、⑦に続けて反対側のストレッチの前に、曲げた脚の方に身体の向きを変えて内もものストレッチも追加できます。

このとき伸ばしている脚のつま先は天井に向けていても、足首を背屈したまま前に向けて(股関節を内旋する)も、もしくは両方でやっても構いませんが、足首を背屈したまま前に向ける(股関節を内旋する)方が骨盤の傾きを伴う分、解剖学理解が不十分だと正しい姿勢が取りにくく膝を痛めやすい傾向があるので注意しましょう。

背筋を真っ直ぐ伸ばして、胸を床に近づけるように股関節から上半身を屈曲し、内もものストレッチを感じながら20秒ほど保持します。

「アイソメトリックストレッチ」にする場合の負荷のかけ方はハムストリングストレッチと同じです。

腸腰筋ストレッチ(坐位)

続いて、身体の前面で上半身と下半身をつなぎ、股関節屈曲の主動作筋である「腸腰筋(主に大腰筋)」を、短距離走者のスタートポジションのような姿勢でストレッチします。

  • 両手の平と両膝を床につけて四つ這いになる
  • 片脚を膝関節屈曲角度が90度になるように前に出して足底を床につける
  • 後脚は前後開脚の時のようにできるだけ真っ直ぐに伸ばして後ろに引き、母趾球に体重を乗せて足裏のアーチが自然とできるようにする
  • 後脚の太もものラインからつながるように背筋を真っ直ぐに伸ばし、息を吐きながら胸の位置を下げるように(前脚の膝屈曲角度は増やさない)重心を下げて後ろ脚太ももの付け根あたりの伸びと前脚のハムストリングの伸びを感じながら15秒ほど保持する
  • 左右の脚を入れ替えて繰り返す

「アイソメトリックストレッチ」に変更したい場合は、手を床ではなく壁におき、母趾球と壁で押し合う力を活用します。

また、このストレッチ姿勢からm後脚の膝から前ももが床に向いて直角になるように体重を後ろに戻し、膝関節をこれ以上曲げないようにしながら重心を下へ下げる(膝は床につけない)と、主にストレッチされる部位が前ももの付け根ではなく、太もも前面全体になり、後脚の「大腿四頭筋」もストレッチできます。

大腿四頭筋ストレッチ(坐位)

「腸腰筋」をストレッチしたした姿勢から、枕(ピロー)やクッションを活用した膝関節への負担を抑えた「大腿四頭筋」ストレッチへ以降します。

まず、「大腿四頭筋」ストレッチは、膝関節に強い負担がかかりがちなので、解剖学構造と正しいやり方をしっかりと理解してから行うこと、決して無理をせずに膝に痛みや違和感を感じたらすぐにやめて専門家に相談してください。

  • 後脚の膝下にクッションなどを置いてから膝を床に着ける
  • 両手で足の甲を掴む
  • ゆっくりと息を吐きながら後足をお尻に近づけながら重心を前足に乗せるように前に傾く
  • 後脚の大腿四頭筋の伸びを感じながら15秒ほど保持する
  • 足を保持したままゆっくりと元の姿勢に戻る(支えていた手を離して急に戻すと膝に大きな負担がかかるので意識してゆっくりと戻す)
  • 脚を入れ替えて反対側も行う

「アイソメトリックストレッチ」にする場合は、③のときに後足をお尻に近づけようとする手の力に抵抗して後脚を床に戻そうとする力を加えます。

②で足の甲をうまく掴めない場合は、一度正座するように座るか後ろに重心を移動して足の甲を掴んで、そのまま重心を前上に移動する方法もあります。

V字ストレッチ(臥位)

「腰まわり」「股関節」「太ももの筋肉(機能単位)」をひとつひとつ丁寧にストレッチできたら、複合的な要素を同時にストレッチする段階に入ります。

このストレッチは、特に「左右開脚(side split)」にとても近い姿勢(ポーズ)で行います。

  • 仰向けに寝て両脚を真っ直ぐにして揃える
  • 股関節を90度屈曲して両脚を空中に置く(膝が顔ではなく壁を向く位置で保持)
  • 膝を伸ばしたままゆっくりと脚を左右に開いていき限界と感じる場所で保持する(足首は背屈、底屈どちらでも良い)
  • 左右の手でそれぞれ下腿(足首から膝の間)の持ちやすい場所を持つ(足首の直上あたりがベスト)
  • 息を吐きながら腕の力を使って両脚の間隔を更に広げつつ、膝を床に向かって押し下げながら20秒程度保持する(腕で力を加え続ける)

「アイソメトリックストレッチ」にする場合は、腕の力に対抗するように太ももの筋肉に力を入れますが、通常腕の力よりも強いので、パートナーに負荷をかけてもらうとより効果的に実践できます。

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