「側頭筋」と「咬筋」の深層で「蝶形骨」と「顎関節」をつないで咀嚼運動に作用する【外側翼突筋】解剖学構造(起始停止、作用、神経支配)についてイラスト図解を使ってわかりやすく説明しています。
【外側翼突筋】とは?どこにあるどんな筋肉?
【外側翼突筋】は「側頭筋」「咬筋」「内側翼突筋」と共に「咀嚼筋」に分類される筋肉で、「頭蓋骨の側頭下窩」に2頭の扇形筋腹を構成します。
- 名称:外側翼突筋
- ふりがな:がいそくよくとつきん
- 英語名:Lateral Pterygoid
【外側翼突筋】は両側同時に収縮すると「下顎の下制御とプロトラクション」に、片側収縮すると「下顎の回転」に作用し、他の「咀嚼筋」との相乗作用で咀嚼時に活躍します。
【外側翼突筋】起始停止
【外側翼突筋】は「蝶形骨」から2頭で起始して、「顎関節」に停止します。
起始 | 停止 | |
---|---|---|
上頭 | 蝶形骨大翼側頭下稜 | 顎関節関節包前内側 関節円板 |
下頭 | 蝶形骨翼状突起外側板外側面 | 下顎関節突起上の翼突筋窩 |
【外側翼突筋 上頭】起始停止
上内側の筋腹を構成する【外側翼突筋 上頭】は「蝶形骨大翼側頭下稜」から起始して水平面で後外側に進んで筋腹を構成し、「顎関節関節包前内側」と「関節円板」に停止します。
【外側翼突筋 下頭】起始停止
より大きな筋腹を持つ【外側翼突筋 下頭】は「蝶形骨翼状突起外側板外側面」から起始して水平面で後外側に進んで筋腹を構成し、「下顎関節突起上の翼突筋窩」に停止します。
【外側翼突筋】作用
【外側翼突筋】は、固定されている「蝶形骨」付着部に向かって収縮し、下顎の動きを制御することで咀嚼運動に貢献しています。
【外側翼突筋】作用:上頭繊維と下頭繊維
【外側翼突筋】上頭繊維は、「顎関節」上部要素に作用して「下顎関節頭」と「円板」の滑り運動を起こすことができ、下頭繊維は「顎関節」下部要素に作用して「下顎関節頭」と「関節円板下面」の間での蝶番のような回転運動を起こすことができます。
繊維 | 部位 | 作用 |
---|---|---|
上頭繊維 | 「顎関節」上部要素 | 「下顎関節頭」と「円板」の滑り運動 |
下頭繊維 | 「顎関節」下部要素 | 「下顎関節頭」と「関節円板下面」の間での蝶番のような回転運動 |
【外側翼突筋】作用:両側収縮と片側収縮(下頭)
【外側翼突筋】が両側収縮すると、「下頭」は「下顎関節頭」を前側へ引き「関節円板下面」に対して「下顎関節頭」を回転させますが、同時に「上頭」が「関節包」と「円板」を同じ方向(前側)へ引いて「下顎関節頭」の動きによる衝撃を和らげています。
部位 | 作用 | |
---|---|---|
両側収縮 | 下顎 | 下制(閉口開始) プロトラクション(前方突出) |
片側収縮(下頭) | 下顎 | 回転(左右移動) |
「下顎関節頭」と「関節円板」が前方に移動すると同時に「下顎関節頭」の回転も生じるため、「下顎下制(閉口)とプ「ロトラクション(前方突出)」が生じます。
「顎関節」内の「関節円板」は「下制」や「プロトラクション」時の前方移動を制御する構造で、弾力性によって閉口を開始する力になり、「顎二腹筋」と「オトガイ舌骨筋」が相乗的に作用することで完全に開口できます。
口を閉じている時も「顎関節」内で同じ移動と回転が生じていますが、反対方向に作用して、「下頭」の遠心性収縮は「下顎」を後方を引く作用がある「側頭筋」の作用に拮抗します。
【外側翼突筋】下頭が同側の「内側翼突筋」と相乗的に片側収縮すると、「下顎関節頭」が前内側に回転して顎を左右に動かす運動が生じ、口の片側で食べ物を噛む時などによく働きます。
【外側翼突筋】神経支配
【外側翼突筋】は「下顎神経(CN V3)」の特別な枝である「外側翼突筋」に支配されています。
「上頭」と「下頭外側半分」は「下顎神経」の枝である「頬神経」から、「下頭」の内側半分は「下顎神経」から直接支配神経を受け取ります。
【外側翼突筋】触診
【外側翼突筋】は、「側頭筋」と「咬筋」の深層で「蝶形骨」と「顎関節」をつなぐように走行している「咀嚼筋」で、「咀嚼筋間隙」内で側頭下窩の内壁を構成し、「内側翼突筋浅頭」と「側頭筋腱」深層にあります。
【外側翼突筋】深層には、「内側翼突筋深頭」「蝶下顎靱帯」「中硬膜動脈」および「下顎神経(CNV3)」などがあります。
「咀嚼筋間隙」は下顎枝のレベルで表層と深層に分かれる「深頸筋膜表層」に囲まれていて、「深頸筋膜」は「咬筋」の外面と「内側翼突筋」の深部表面も覆っています。
嚼筋間隙には、「側頭筋腱」「咬筋」「内側翼突筋」「翼突筋静脈叢」など様々な関連する解剖学構造が含まれます。
【外側翼突筋】上縁を「下顎神経の側頭および咬筋枝」が通過し、下縁を「舌神経」と「下歯槽神経」が通過し、【外側翼突筋】上頭と下頭の間を「上顎動脈」と「頬神経(下顎神経の枝)」が通過します。
【外側翼突筋】ストレッチと筋トレ
【外側翼突筋】は「顎関節」と「蝶形骨」をつなぐ構造なので、凝り固まると顎や顔の左右差や歪みなどの原因にもなります。
【外側翼突筋】は左右差が生じやすい筋肉なので、左右のバランスを整える意識を持って、顔・頭・首を含め全身の凝りをほぐしてバランスを整えましょう。
「咀嚼筋群」だけでなく、「表情筋」や「頭の筋肉」の解剖学構造を理解して効果的にセルフメンテナンスすると、お顔が左右対称に整い、エラ張りやたるみ改善、リフトアップ、口角が上がるなどの美顔・小顔も期待できます。
また、左右の噛み癖を意識して改善したり、無表情でパソコンやスマホに向かう時間やストレスを減らし、歯ぎしりなどで余計な負荷をかけないようにする生活改善への意識も重要です。