バランス能力強化が期待できるヨガポーズの正しいやり方やできない時の効果的な軽減方法や注意事項についてイラスト図解を使ってわかりやすく解説しています。
【バランス】とは?
バランスとは単純に身体の平衡感覚のことではなく、身体を空間において適切な位置に保持し、運動を円滑に行うすべての調整機能を含みます。
解剖学および生理学的にバランス能力が強化される仕組みを理解しておくと、取り組む姿勢や視点も変わってきます。
ヨガバランスポーズ(アーサナ)の種類
ヨガポーズでは、足、つま先、手、前腕、お尻、頭など、身体の様々な部位を使ってポーズの支持面(床に触れて身体を支える面)を作ります。
二本足歩行をしている普段の生活において支持面になるのは足(足裏)だけなので、ヨガポーズを通して異なるバランスの神経経路が形成されて多様な動作に対応できるバランス能力を強化できる他、精神力(集中力)強化効果も期待できます。
ヨガバランスポーズをポースの支持面で分類すると大きく以下のような種類に分けられます。
種類 | 支持面 | 効果 |
---|---|---|
レッグバランス | つま先や足で体重を支える | 立位バランス改善 |
アームバランス | 手や前腕で体重を支える | 体幹含めた全身バランス強化 |
アームレッグバランス | 片脚を片手または両手で支える | 体幹強化と上半身と下半身の統合 |
坐位バランス | 上半身と下半身の重心を対抗させるようにする | 上半身と下半身を繋ぐコアと股関節周りの強化 |
バランスポーズは、前屈や後屈などの他の要素が含まれる場合も多くありますが、逆転のポーズはバランスポーズには含まれません。
レッグ(立位)バランスポーズ
「レッグバランスポーズ」は、つま先または片足で立つなど足裏での支持面を減らしり変化させたりしながら重心を移動させる「ヨガポーズ(アーサナ)」のことです。
私たちは普段2つの足裏で体重を支えることで直立姿勢を安定して保持していますが、「レッグバランスポーズ」では足裏の支持面を普段の安定した状態よりも小さくした状態でバランス能力を強化するので、歩行(継続的に片脚立ちになる運動)安定や立位時の衝撃による転倒予防など、日常生活に直結するバランス機能改善が期待できます。
ダンサーのポーズ(ナタラージャーサナ)
「ダンサーのポーズ(ナタラージャーサナ)」は、片足でバランスを取りながら、腕の付け根から膝まで繋がる後屈カーブを作るヨガポーズです。
後脚を上に上げるのではなく、後ろに引いて前に伸ばした腕とひっぱりあうようなイメージで行うと、正しいヨガポーズになります。
- 両足を揃えて立ち、骨盤と背骨をニュートラルに整える
- 片足の膝を曲げ同側の手で足の甲か足首を掴み、膝頭は正面を向いたまま股関節は外転させない
- 腰を反らないように姿勢を維持しながら、足首を持っていない方の腕を前方に伸ばす
- 足の甲を後ろに引きながら、足首を持っている肩の力を抜き、股関節から伸展する
- 後ろに伸ばした脚と対角線上に伸ばした腕でひっぱりあうようにポーズを深め、目線は前に伸ばした手の指先へ向ける
- バランスが安定したら、胸を開いて気持ちよく伸びた上半身を保ちながら、前方に伸ばした腕を肩の高さに下ろす
足首は「外側から掴む」または「内側から掴む」方法がありますが、「内側から掴む」方が骨盤が安定しやすくなります。
肩関節の柔軟性がなく、「内側から掴む」ことが難しい場合は、「外側から掴む」ようにしましょう。
また、そもそも足首に手が届かない場合は、ヨガベルトやタオル(手ぬぐい)などを使って軽減できます。
片足木のポーズ
「片足木のポーズ」は、脚を引き上げるための体幹の力、片脚に重心を乗せてバランスを取る運動能力が必要なヨガポーズです。
足を掴む時のピースフィンガーとは、親指と人差し指+中指で作るピースになり、足の内側から3本の指で母趾を掴みます。
- 両足を揃えて立ち、骨盤と背骨をニュートラルに整え、両手を腰に添える
- 右足をあげ、右手でピースフィンガーを作ったら、背中を丸めて、足の内側から母趾を掴む
- 右脚を持ち上げながら、骨盤を立てて軸を伸ばし、両胸を前に出す
- 軸足でしっかりと踏み込み、軸を伸ばした姿勢を維持しながら、膝の高さまで踵を上げる
- 右肩の力を抜き、右足を更に斜め上方向へ上げて、踵を押し出す
- 脚を少し外転し、軸足の内側に重心を乗せ、胸を開く
バランスが取れない場合は壁を使って練習したり、脚を上げる体幹の筋力がない場合は、要素を分解した筋力トレーニングを行なってから挑戦しましょう。
「片足木のポーズ」の応用編として更に難易度を上げることもできます。
前屈して右腕を膝裏から通し、背面で両手を結んでから、骨盤から上体をお越し、骨盤と軸を真っ直ぐ立ててから膝を伸ばします。
アームバランスポーズ
アームバランスポーズでは、普段は安定よりも自由に動くことを得意としている上肢(肩・腕・手)で体重を支えてバランスを取るヨガポーズ(アーサナ)のことで、腕と肩の筋肉とつながる背中・腰・腹部・骨盤周りなど体幹の筋肉を総動員させる必要があるとても難易度の高いポーズで、高い集中力や精神力も必要です。
アームバランスポーズはできた時の達成感は抜群ですが、もともと身体を支える強度や安定感を兼ね備えている身体のパーツに体重を乗せるため、手首、肘、肩の関節に不安要素が少しでもある場合は、怪我のリスクがとても大きいので絶対に取り組まないようにしましょう。
無理に挑戦しなくても、同程度以上の効果が期待できるヨガポーズは他にもたくさんあります。
聖者カウンディニャのポーズⅡ
聖者カウンディニャのポーズⅡは、両手で体重を支えて両脚を前に伸ばす難易度の高いポーズです。
片脚ずつ練習してから、両脚のバージョンに挑戦しましょう。
- ダウンドッグポーズを作る
- 右足を手と手の間に入れ、右膝の下に右肩を通し、手を足の外に置く
- 背骨の軸をまっすぐに維持し、右の肩で支えながら、右脚を真っ直ぐ前に伸ばす
アームレッグバランスポーズ
アームレッグバランスポーズでは、片脚と片手、または片脚と両手で体重を分散しながらバランスをとるポーズです。
体幹を強化しながら上半身と下半身を統合させて協調的に機能させる能力を鍛えることができますし、両方の脳半球を活性化するので認知機能を高める効果も期待できます。
アームレッグバランスポーズは横方向のブレに対応するバランス能力を強化する効果に優れているので、例えば、ウォーキング、階段を上る、自転車に乗るなどの日常活動のパフォーマンス向上にもつながります。
ワンレッグダウンドッグ
きれいに片足を上げるのが難しい「ワンレッグダウンドッグ」は、「ダウンドッグ」は胸からお腹の前面までを伸ばして軸(背骨)を整えるヨガポーズなので、股関節からではなく、胸からのつながりを意識して片足を上げると正しく綺麗なヨガポーズになります。
また、対角になる腕と脚(右脚を上げるなら左腕)で引っ張りあうことで、支持脚に重心が乗って肩に負担がかからずバランスが取りやすくなります。
- ダウンドッグポーズを整える
- 片脚をまずは床と並行の位置まで上げる
- 胸から脚が生えているようなイメージで更に上に上げる
- 上げた方の脚と体側の腕で引っ張り合うようにお腹と体側の伸びを深める
上げる脚の高さは同則の肩が上がりすぎない位置までとし、ダウンドッグの目的であるお腹と体側の伸びを深めることへの意識を忘れずに、バランス要素を足します。
臀筋(お尻の筋肉)が弱いと片脚を大きく後ろに上げる(股関節伸展)動作は困難になりますので、臀筋トレーニングや壁を使ったバランス練習がおすすめです。
股関節伸展は、歩行にも重要な運動要素で、臀筋を鍛えるとヒップアップ効果、美姿勢効果も高いので、臀筋の作用も意識しながら行うとより効果が高まります。
スタンディングスプリット
重心が外に逃げないように、軸足太ももの内側の筋肉がしっかりと使えていることが綺麗なヨガポーズを作るポイントです。
- 両足を揃えて立ち、骨盤と背骨をニュートラルに整える
- 両膝を軽く曲げて手を前方につき、幅の狭いダウンドッグのようなポーズを作る
- 片足を床から離し、膝の屈伸をしながらゆっくりと上方向に伸ばしていく
- 軸脚の趾先前方に重心を乗せて内腿に力を入れながら、更に脚を上げ、頭を下げる
- 両手を少しずつ軸足に近づけ、肘と脇を閉じ、顎を引いて頭頂を床面に向ける
ワンレッグダウンドッグからつなげてスタンディングスプリットへ移行するシークエンスもお勧めです。
聖者ヴァシシュタ
「聖者ヴァシシュタ」は、とても難易度の高いヨガポーズです。
- 足の爪先を立てた四つん這いになる
- 肩の真下に手首があることを確認し、左足を後ろに引く
- 右膝を床から離し、つま先を真横に向け、右足を手の方向へ近づける
- 左のつま先も真横に向ける
- 右手でピースフィンガーを作り、足の内側から右足の親指を掴む
- 左手でマットを押して右真横を向き、左足全体で床面を捉えて、右脚を真上に引き上げて足裏を天井に向ける
難易度の高いポーズなので、サイドプランクから脚を上げる練習をしていくと完成形がイメージしやすくなります。
坐位バランスポーズ
坐位バランスポーズでは、上半身と下半身の重さを相殺させることでバランスをとるので、上半身と下半身を繋ぐコアと股関節周りの強度が必要になります。
支持面が広く軽減方法も調整しやすいので、誰でも挑戦しやすいポーズです。
【ヨガのバランスポーズ】よくある間違いと効果的なやり方
ヨガのバランスポーズが上達しない、うまくできないのは理由があります。
よくある間違いと正しい対処法についてまとめました。
バランス強化はバランスポーズでしかできない
バランスを強化するには「バランスポーズ」を繰り返し練習するしかありません。
支持面が広く安定した状態でのヨガポーズをいくら練習してもバランス能力改善効果はありません。
ひとつのポーズで6-10呼吸程度を目安に新しい神経回路を形成する意識で丁寧に取り組み、1回のレッスンで2-3種類のバランスをポーズを組み合わせて静的バランスだけでなく、日常のパフォーマンスに反映できるように動的バランス練習もバランスよく組み込みましょう。
難しいバランスポーズよりシンプルなバランスポーズを選ぶ
バランスポーズというと、よりアクロバティックで難易度の高いヨガポーズに挑戦したくなりますが、「バランス能力」を強化することにフォーカスを当てた場合、よりシンプルで簡単な基礎ポーズを丁寧に行った方が効果が高くなります。
バランスポーズの目的は、支持面の場所や大きさに関わらず、その姿勢でバランスを維持することです。
バランスポーズの難易度が上がる時は、通常必要な「バランス能力」が高くなるのではなく、「バランス能力」に加えて高い柔軟性や筋力など必要な他の要素が加わってくるだけです。
そのため、一番シンプルなバランスポーズの方が他の要素に気を取られずにバランス能力強化に集中できます。
グループレッスンなどで難しいポーズを指示された時も、目的と自分の能力と相談しながら適切に軽減方法を使いましょう。
グラグラして途中で壁に寄りかかったり、両足をついてしまうくらいなら、最初から軽減したバランスポーズを選ぶ方が、早くバランス能力を向上できます。
(もちろん、バランス改善が目的ではなく、そのポーズができるようになることをも目的に壁などに寄りかかるのは問題ではありません。)
難易度の高いバランスポーズは、うまくできるととても達成感があり、集中力強化などのメリットも高いので、バランス能力と他の要素に分解し、筋力や柔軟性など必要な準備を十分にしてから挑戦するとバランス能力効果も十分に実感できます。
【ヨガのバランスポーズ】効果的なシークエンスの組み方
バランス能力と効果的に強化するには、動的バランス強化と静的バランス強化をバランスよく組み合わせたシークエンスを上手に組み合わせていく必要があります。