【筋膜とアナトミートレイン】筋膜リリースや筋膜はがしのためのイラスト図解解剖学

機能連結
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「筋膜リリース」や「筋膜はがし」という言葉が流行していますが、そもそも「筋膜」とはどんな構造や役割を持っているものなのか正しく理解しておかないと機能改善は期待できません。

「筋膜」の構造や仕組み、筋膜による筋肉のつながりがわかれば、何故「筋膜」が私たちの姿勢や活動に影響するのか、どんな方法で「筋膜リリース」すればいいのかが自分で考えられるようになります。

筋膜の構造と全身の筋膜のつながりをマッピングした「アナトミートレイン」についてイラストを使ってわかりやすく解説します。

筋膜とは?筋膜の構造と特徴

筋膜とは筋肉を包んで互いに連動させている薄い膜のことで、筋膜があることで筋繊維それぞれがバラバラにならずスムースな筋肉運動ができ、血液やリンパの流れなども正常に保てるので、若々しく健康的なボディラインを保ち運動パフォーマンスを高めます。

筋膜の階層

筋膜は以下の3層に分類できます。

  • 筋繊維単位で包む筋内膜
  • 筋繊維の主要束単位で包む筋周膜
  • 骨格筋単位で包む筋外膜

注:筋膜とは筋肉を包む膜のことで、皮下組織(血管・神経・リンパ節・脂肪)や臓器を包む膜なども含みますが、このサイトでは、わかりやすくするために骨格筋を包む筋膜に範囲を絞って説明しています。

筋膜と固有受容器

筋肉を包み込む筋膜には、筋肉の収縮を感知する固有受容器がたくさん含まれています。

例えばストレッチをするときには「筋肉の伸びを感じる」と表現しますが、筋肉よりも筋肉を囲む筋膜の方が固有受容器の数が6倍程度あるので、実際には「筋膜の伸びを感じる」ことの方が多いかもしれません。

筋肉内の固有受容器(筋紡錘)も、結合組織の長さの変化から筋長の変化を予測する機能がありますが、後頭下筋、眼筋、足底筋、深層の固有背筋群など一部の筋肉を除いて、筋肉自体には筋肉の長さの変化を感じる機能がほぼありません。

筋肉組織を囲む筋膜内には、多様な機能を持つ受容体が分布しています。

受容体 役割
GTO 負荷を感知
Paciniform小体 圧力を感知
ルフィニ終末 せん断を感知
自由神経終末 あらゆる刺激を測定し侵害受容(痛み)路にも接続

脳は、前庭器官や皮膚にある様々な感覚(痛み、温度、触覚、圧覚など)センサー同様、筋膜細胞間での変化も常に感知し、空間における身体の位置や姿勢を認識しています。

筋膜の役割

筋膜は深層から浅層まで身体全体に立体的に張り巡らされていて、相互に連絡し合い、筋肉同士だけでなく、神経・血管・リンパ節・脂肪など皮下組織も含んで全身の筋肉運動(姿勢・日常生活動作・スポーツなど)を協調して行っています。

筋膜のコラーゲン繊維配列を正常に保ち弾力性を維持するためには、十分な水分量と定期的な筋肉運動が必要です。

座っている時間やスマホやパソコン使用で長時間同じ姿勢をとることが多い現代人は、筋膜が筋肉や皮膚に癒着してしまいがち。

筋膜が固く柔軟性がなくなると筋肉運動が制限され、姿勢やアライメントが崩れて肩こりや腰痛になったり、血液やリンパの流れが滞ることでむくみや老廃物蓄積の原因となります。

筋膜のどこか1箇所でも萎縮や癒着が起こるとそこを起点に全身のパフォーマンスに悪影響が生じるので、全身のパフォーマンスの中でどこが制限されているのか見極めることが重要です。

アナトミートレインとは?

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】とは、Thomas Myers氏が開発した、全身の筋膜のつながりを示すマッピングのことです。

身体中には複数の筋肉があり、姿勢を保持したり関節を動かす運動を行うために筋肉が収縮と弛緩を繰り返していますが、人間というひとつの機能単位として、目的に合わせて全身の筋肉が協調して動くことが必要です。

筋繊維を機能単位ごとにまとめているのが筋膜ですが、全身の協調運動を起こす際に、同じ深さで直接的に筋膜でつながって互いに影響を及ぼしているつながりが【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】です。

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】は、Thomas Myers氏が姿勢パターンの分析を経て体系化したものですが、姿勢の仕組みを制することで、スポーツ、リハビリ、ヨガなど動作を伴うすべてに役立ちます。

また、近年の研究で筋膜が運動に直接的に及ぼす影響についても解明されてきています。

例えば、長時間のパソコンワークやスマホ使用などで猫背が続くと肩こりだけでなく、腰痛や頭や目の奥の重だるさまなど体調不良が全身に連鎖することがあります。

また、ハムストリングの硬さを感じて前屈ができなかったのに、足裏をほぐしたら前屈ができるようになることもあります。

筋膜のつながり(アナトミートレイン)を理解すると何故そうなるのかがすんなり理解でき、効果的な対処法も自分で考えられるようになりますし、身体の使い方、動きの統合、姿勢の問題は正しい知識を持って意識を変えるだけで大きく改善します。

・姿勢改善や健康増進
・発育期(子供)の発育を促す運動(体育)
・リハビリテーション(ネガティブ→ニュートラル)
・パフォーマンス向上(スポーツ競技やアスリート、ダンス、演劇、楽器演奏など)

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】は、姿勢や運動パフォーマンス改善だけでなく、人生100年時代と呼ばれる現代において健康寿命を伸ばすために必要不可欠な知識と言えます。

【アナトミートレイン】基本ルール

筋膜は、筋肉の張力(筋力)を直接的かつ効率よく伝達するために方向と深さに一貫性を持ってつながっています。

機能的な「筋膜のつながり」を示す【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】にも基本となるルール(規則性)があります。

筋膜がどこでどのようにつながっているのかがわかれば効率的な身体の使い方ができるので、安全かつ効果的にパフォーマンスや柔軟性を高めるトレーニングやエクササイズができます。

また、特定の姿勢においては筋膜のつながりが途切れる「脱線」が生じたり、特定の機能構造における「例外」もありますので合わせて整理しておきましょう。

同一方向

【アナトミートレイン(Aatomy Trains)】は、筋膜および筋肉や靭帯などを含む結合組織を経由地点として筋膜繊維のつながりなので、基本的には真っ直ぐか、徐々に進行方向を変えて進行します。

車でも電車でも、方向を変えたりカーブを曲がる時は大きく減速しなければならないので、直線の方が効率がよいことは簡単にイメージができると思います。

例えば、「小胸筋」と「烏口腕筋」は、肩甲骨烏口突起でツナっがっていることが明らかです。

腕をリラックスして下に降ろしている時はそれぞれ別機能の筋肉として作用していますが、腕を頭上に持ち上げたり、懸垂をする時などのように何かにぶら下がったり、テニスのサーブや投球などで肩関節を大きく振るように動かすような時、「小胸筋」と「烏口腕筋」は、肋骨から肘までをひとつのラインとして繋ぐ1本のチェーンようになって機能します。

更に言えば、「デイープフロントアームライン(DAFL)」から「スーパーフィシャルフロントライン(SFL)」を含めて、親指から骨盤まで1本のほぼ真っ直ぐな機能ラインとしてつながっています。

ただし、筋膜の連結機能を維持したまま大きく角をまがるように走行する場合(例外)もあります。

例えば、「腓骨筋」は外くるぶし周辺で角度のあるカーブを描くように走行しますが、この構造自体が滑車の役割を果たして筋膜のつながりによる力の伝達の効率を高めています。

同階層

骨格筋は複数の層構造になっていますが、力を効率よく伝達するための筋膜は、基本的に同じ層(平面)で連結しています。

階層が異なれば連結するための階段が必要になるので、同じ面で連結するよりも非効率になってしまうからです。

もちろん、機能的に筋肉が階層を超えて連結している場合などの例外になります。

層構造におけるつながりを正しく理解するには、筋肉それぞれの起始停止など基本構造の理解が不可欠です。

例えば上半身を正面から見た場合、腹直筋と胸骨筋膜から肋骨前面を走行する筋膜は、理論上、喉の前面を通る舌骨下筋群につながるように見えます。

上部脊椎全体が過伸展している場合、胸から喉への機能的な接続を感じることはありますが、表層の胸筋膜と「舌骨下筋群」では、筋膜面の階層が異なるため、直接的な筋膜連結はありません。

上部脊椎全体が過伸展している場合、胸から喉への機能的な接続を感じることはありますが、表層の胸筋膜と「舌骨下筋群」では、筋膜面の階層が異なるため、直接的な筋膜連結はありません。

「舌骨下筋群」は胸骨深層を通過し、肋骨内壁と胸腔内の筋膜に接続していて、胸骨および肋軟骨接合部から上行する表層の筋膜は、「胸鎖乳突筋」へとつながります。

隣接

筋膜は隣接する機能構造をつないでおり、特定の関節や組織を飛び越えてつながることはあり得ません。

例えば、「長内転筋」は恥骨から大腿骨粗線に下降し、大腿骨粗線から「大腿二頭筋短頭」が下降しますので、一見筋膜構造がつながっているように見えます。

「大内転筋」が「長内転筋」と「大腿二頭筋短頭」を切断するように大腿骨粗線に付着しているため、この2つに筋膜のつながりはありません。

「長内転筋」と「大腿二頭筋短頭」には、骨を介在したなんらかの機能連結が存在する可能性はありますが、筋膜により力の伝達の観点では「大内転筋」により連結が切断されています。

【アナトミートレイン】種類

アナトミートレインには様々な種類があります。

姿勢や運動パフォーマンス改善に役立つラインを中心紹介します。

浅後線:スーパーフィシャルバックライン(SBL)

【SBL(スーパーフィシャルバックライン:浅後線)】足底から頭頂部まで背面を一直線につなぐラインです。

私たち人間が直立位を確立して二本足歩行ができることには【SBL】が大きく関与しています。

 

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【スーパーフィシャルバックライン(SBL)】アナトミートレイン・イラスト図解解剖学①
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浅前線:スーパーフィシャルフロントライン(SFL)

【スーパーフィシャルフロントライン(SFL)】は、足背から頭蓋側面まで、体の前面表層を通る筋膜のつながりのことで、「SBL」と拮抗して矢状面での姿勢保持に影響しています。

また、重要な器官を身体の前面に集めたまま直立位で生活をしている人間にとって、大切な器官を守るための保護機能としての役割もあります。

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外側線:ラテラルライン(LL)

【ラテラルライン(The Lateral Line)】は、足首外側周辺足部から下腿と太ももの外側、体幹、肩、耳の後ろの頭蓋骨まで上行して身体の両外側を囲むように走行する筋膜のつながりです。

【LL(外側線)】は、他のスーパーフィシャルライン(SFL・SBL)、全アームライン、スパイラルラインの作用を仲介しながらバランスを取りながら作用するので、姿勢において前後のバランス調整および左右でのバランス調整に機能しています。

運動面では、体幹の側屈、股関節の外転、足の外反運動に作用し、体幹の側屈や回旋を調整する「ブレーキ」としての役割も果たします。

 

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ラセン線:スパイラルライン(SPL)

【スパイラルライン(SPL/ラセン線)】は、身体の周りを左右2つの対抗するラセンで二重に包み込むように走行する筋膜のつながりで、ねじれ、回旋、横方向への重心移動などで姿勢や運動を維持調整しています。

【スパイラルライン(SPL/ラセン線)】を構成する筋膜要素のほとんどは他の筋膜経路 (SBL,SFL, LL,DBAL)にも含まれているため、様々な機能を持つ筋膜のつながりであると同時に、機能不全を起こすと他の様々な筋膜ラインにも悪影響を与える可能性があります。

 

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機能線:ファンクショナルライン(FL)

【FL(ファンクショナルライン:機能線)】には、体幹の運動と筋肉組織による推進力を腕(手)や脚(足)に伝達して強度を高めつつ、反対側では安定を維持するために機能している3つのラインを含みます。

名称 特徴
後機能線(BFL) 体幹後面でクロス(X)を作る
前機能線(FFL) 体幹前面でクロス(X)を作る
同側機能線(IFL) 肩から同側の膝内側をつなぐ

【FL(ファンクショナルライン:機能線)】は名前の通り、姿勢保持というよりは特定の動作における機能を高めるために腕から体幹を経由して脚まで含めてクロス方向へ作用します。

例えば、右での槍投げや野球のピッチングでは、左脚から腰を経由してためたパワーを右腕へ伝達して右腕からパワーとスピードを込めたボールや槍が放出されますが、【FL(ファンクショナルライン:機能線)】は、このように主にスポーツやアスリートの動作における動作の安定やバランス、外力への対応などにおいて重要な役割をします。

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アームライン

【アームライン(AL)】は、体幹軸から肩甲帯を経由して、腕、手、指までつながる4種類のラインです。

二本足歩行を獲得した人間の上肢(肩関節や腕の関節)は可動性に重視した構造になっていますが、複数のライン(前後深浅)を機能的に重ね合わせることで、負荷や多様な動作に柔軟に対応しつつ安定性も高めています。

【アームライン(AL)】は肩を経由する時の相対的な配置によってそれぞれ名前が付けられています。

名称 相対的位置
ディープフロントアームライン(DFAL) 前面深層
スーパーフィシャルフロントアームライン(SFAL) 前面表層
ディープバックアームライン(DBAL) 後面深層
スーパーフィシャルバックアームライン(SBAL) 後面表層

 

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【アームライン(AL)】アナトミートレイン・イラスト図解解剖学⑤
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深前線:ディープフロントライン

【ディープフロントライン(DFL)】は、アナトミートレインの中でも最もコアな部分を3次元面でカバーして安定した姿勢を作り、運動や姿勢変化における自律神経支配による心肺や内臓機能とを連携させています。

他の筋膜”ライン”よりのもよりスペース(空間)を含むことも大きな特徴のひとつで、【ディープフロントライン(DFL)】は、冠状面では左右の「外側線/LL」に挟まれ、矢状面では「浅前線/SFL」と「浅後線/SBL」の間にあり、「らせん線/SPL」と「機能線/FL」に囲まれるように存在して、筋膜の「コア」として機能しています。

 

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【ディープフロントライン(DFL)】アナトミートレイン・イラスト図解解剖学⑥
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【アナトミートレイン】と姿勢

筋膜のつながりである【アナトミートレイン】は、正しい姿勢を維持するための筋膜のつながりです。

私たちは、様々な活動やスポーツをするために特定の姿勢を維持したり変化させたりを継続しています。

特定の動きや運動の際に、筋膜経路通りの動きをすることはほとんどありませんが、身体のパーツが独自の動きができるのは筋膜のつながりによって全身の安定性が保持されていることが前提です。

例えば、椅子に座って片方の足の上にもう片方の足を置いてみてください。

そのまま膝を持ち上げて足を床から離そうとすると、つま先-股関節-お腹-胸骨-頸部までが緊張するのを感じられると思います。

膝の持ち上げ(股関節屈曲)は、主に「大腿直筋(大腿四頭筋)」と「大腰筋」の作用ですが、筋膜のつながりによってSFLおよびDFL全体が作用して姿勢を保持しているからです。

ヨガなどのポーズなどでよくあるように、脚を前後に大きく開いて前足に重心を乗せるとSBL全体が緊張するのを感じますし、後脚を床から離して体重を完全に片足に乗せると、LLとDFLが相互作用します。

身体のある部分をしっかりと固定することで、他のある部分の運動パフォーマンスを最大限高めるようにそれぞれのアナトミートレインが協調的に作用していることの理解も重要です。

例えば、先ほどのヨガポーズの場合でも、姿勢のキーとなる背骨や骨盤などをニュートラルに保つようにアナトミートレインが作用することで、姿勢が安定し更に腕の動きなども加えられます。

また、サッカーのキックでは、LLの腹筋群が十分に緊張して胸郭をニュートラルポジションに安定させることで、肋骨の回旋や傾きでキック力が低下させずに大きな力を発揮できます。

【アナトミートレイン】とトレーニング

筋トレやフィットネスブームに合わせて、「筋膜」が重要であることは認知されはじめています。

骨格および関節構造を維持したり動かしたりする役割がある骨格筋が、トレーニングやストレッチなどで作用する時にはもれなく筋膜を含む結合組織が連動します。

筋膜構造や筋膜のつながりで【アナトミートレイン】自体がトレーニング方法ではありませんが、姿勢がどのようなつながりで保持されているか、運動において緊張がどのように伝達されるかを体系化された知識があることで、怪我予防やパフォーマンス改善、姿勢改善などのために、身体のどこにどんなアプローチを加えるべきかが明確になります。

リハビリやトレーニングの分野では、昔から個別の関節ごとの腱や靭帯は考慮されてはいましたが、身体全体の筋膜を意識したアプローチをするセラピストはあまりいません。

ストレッチ、ダンス、武道、ヨガ、姿勢改善エクササイズ、筋力増強トレーニング、コンディショニングなど、様々なアプローチ方法(手段)がありますが、どんなトレーニング方法でも「筋膜」へ何らかのアプローチを加えています。

毎日椅子に座って何時間もパソコンに向き合っている姿勢も、筋膜をある一定の方向へひっぱり続けているので、「ストレッチ」や「筋膜トレーニング」のひとつであるとも言えます。

最新の研究では、栄養、神経伝達協調機能、筋力のバランスに加えて、筋膜の状態や適応性がパフォーマンスに大きな影響を与えることがわかってきています。

もちろん、「筋膜」が全ての姿勢やトレーニングの問題を解決する特効薬ではありませんが、適度な制限を設けながら多様な動きに機能的に対応するには、筋膜の作用が不可欠です。

筋膜のつながりを生かすことで、近位から遠位へ筋肉間で運動作用を効率よく伝達できるので、野球のピッチングなどの近位関節から遠位関節へ徐々に動きが移動する鞭のような複数関節の協調連動運動がスムースに行えます。

一方、個別の筋肉にフォーカスしたトレーニングでは、その筋肉だけ見たら効果的に強化できているようでも、身体全体の機能的で健全な動きで見たときにネガティブ効果になる場合もあります。

例えば、椅子に座って足首に重りをつけて膝を伸展することで「大腿四頭筋」を鍛えるトレーニングがありますが、反対側の仙腸関節靭帯と梨状筋への影響を考えないと骨盤の機能障害や痛みにつながります。

また、筋膜のつながりにアプローチしていても、全く同じ姿勢で行う筋トレ、エクササイズ、ヨガポーズだけを繰り返していると、特定の筋膜経路だけに負荷が加わって筋膜が整っていても、周囲の他の筋膜経路の筋膜の構造が乱れたままの場合、全身でみたときにアンバランスを増強してしまうため、特に訓練していていない腱膜経路に強い外力が加わった場合に、怪我や損傷につながりやすくなります。

ストレッチやトレーング中に負荷を加えるベクトルを変えることで、筋肉周辺の筋膜全体にバランスよく負荷を加える意識が重要です。

筋膜の弾性を高める方法【正しい筋膜リリース】とは?

運動機能、パフォーマンス、柔軟性を高める手段として【筋膜リリース】をして筋膜のコンディションを整えるための基礎知識を整理しました。

正常な筋膜とは?

筋膜が正常に機能しているか評価するポイントは2点あり、「静止時は一定の長さを保ち、遠位性収縮および求心性収縮のいずれにも対応できる」ことと「筋膜のつながり全体で一貫した張力を発揮できる」ことです。

筋膜トレーニングの期間と負荷

筋膜は、粘弾性(衝撃吸収)と弾性(ばね)の性質が組み合わさっていていますが、トレーニングで改善できるのは「弾性」です。

毛細血管で満たされた筋肉組織のタンパク質代謝に比べて、血管の少ない筋膜のコラーゲン代謝には時間がかかるため、筋力増強よりも長い目でみて取り組む必要があります。

コラーゲンの半減期は約1年なので、筋膜構造を完全に入れ替えるには、6–24ヶ月(年齢、食事、エクササイズ内容などにより変化)は必要です。

特に、鍛えている筋肉に対して筋膜構造が正常に作用していないトレーニング初期は怪我をしやすいので、短期集中でなんとかしようと思わないことが大切です。

また、過剰な負荷や急激な負荷も逆効果です。

ストレッチでも筋トレでも過度な刺激を加えられると、線維芽細胞が刺激されて更に筋膜が増え、コラゲナーゼやメタルラーゼなどの筋膜破壊酵素が他の筋膜を分解し始めます。

実際に怪我の多くは、筋膜の一部に大きな負荷がかかりながら急激に動いたときに生じます。

イメージとしてはプラスチックの買い物袋に似ていて、ゆっくり引き延ばされているときはかなり伸びても破れませんが、強い力で急激に引っ張ると破れます。

何か運動やエクササイズを始める時は、まずゆっくりと動きで練習をしてから同じ動きを速くした方が、最初から速い動きを習得しようとするよりも怪我のリスクを大幅に減らすことができます。

筋膜の弾性とは?

筋膜の弾性は若く健康な人の弾むような動きに象徴され、筋膜の弾性を活用して力を溜めてから発揮する効率的で素早い動きができます。

例えば、私たちは普段から筋膜の弾性機能を活用して以下のようなことを行っています。

・一般的なストレッチ(反対の動きによる準備運動)
・ジャンプ前にしゃがむ
・ストローク前にラケットを後ろに引く
・ケトルベルを前方に持ち上げる前に後ろに引く

筋膜の弾性機能を活用した準備運動を加えることで、目的動作の効率が高まるだけでなく、怪我予防にもつながります。

筋膜構造の変化

正常な筋膜は規則的な螺旋状のラインが格子のように整然と並んだ構造ですが、筋膜への負荷がない状態が続くとフェルトのような縮れたラインが不規則に並ぶ構造になります。

筋膜の配列が乱れると弾力性が低下し、弾力反応から筋力負荷を感知するゴルジ腱器官(GTO)機能も合わせて低下します。

パソコンなど机上作業時間が長かったり、病気や骨折などで長期臥床していると運動機能が低下するのは、単純に筋力が低下するだけでなく、筋肉の作用をコントロールする筋膜の構造が変化することも原因です。

筋膜は適度な負荷を与えることで、構造と機能を改善できることがわかっています。

筋膜に沿って押圧することで、筋膜の流れを整えることを目的としたローラーが流行していますが、自分ひとりで筋膜構造を整えるという意味では効果が期待できます。

筋膜の走行に沿って適切な姿勢で使いましょう。

自分でできる筋膜リリース

筋膜リリースとは、萎縮したり癒着した筋膜を正常な状態に戻す方法のことで、徒手的に筋膜を解きほぐす方法と関節運動で解きほぐす方法があり、併用することで最大限の効果が期待できます。

筋膜の萎縮や癒着は筋肉の短縮・硬化・疲労などと連動して起こっているため、動かしにくい関節運動方向でコリや歪みの原因を見極めます。

ゆっくりと呼吸しながら筋膜を解きほぐすように、ターゲットとなる関節運動を行い、10秒〜20秒程度保持してから元に戻すことを繰り返すと徐々に全身のバランスが整っていくのを実感できます。

筋膜に直接押圧刺激を加え、アイロンをかけるように癒着や短縮を引き伸ばしていく徒手での筋膜リリースを自宅で自分で行うには、ストレッチポールやトリガーポイントのフォームローラーが有効です。

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