みんなやったことがあるけれど正しくできるいる人が意外に少ない「ラジオ体操」ですが、実はたった3分で全身をバランスよく整える美容健康効果に優れた最強エクササイズです。
「【ラジオ体操第二】⑤体を横に曲げる運動」を解剖学と運動学の視点から分析し、うまくできない時の軽減方法やなりたいスタイルや目的に合わせたアレンジも提案します。
「ダイエットやボディメイクをしたいけれど何から始めたらよいかわからない」「運動を始めたいけど難しいのは続かない」なら、まず「ラジオ体操」を極めてみることをオススメします!
目次
【ラジオ体操】とは
ラジオ体操に関する一般情報や目的別エクササイズへのリンクはこちらの記事を参照してください。
【ラジオ体操】は最強ダイエット運動メニュー?!【イラスト図解付き解剖学】
【ラジオ体操第二】⑤体を横に曲げる運動【正しいやり方と解剖学】
目的と効果
「【ラジオ体操第二】⑤体を横に曲げる運動」は、「固くなりがちな脇腹の筋肉を柔軟にする」の運動で、以下のような効果があると公式サイトに記載されています。
- 柔軟性アップ
- 正しい姿勢づくり
- 消化器官働き促進
【公式サイトより引用】
「【ラジオ体操第二】⑤体を横に曲げる運動」でポイントになるのは「側屈」運動ですが、脇腹全体を伸ばす「【ラジオ体操第一】⑤体を横に曲げる運動」との違いは、脇の下に手を添えることで胸椎(胸郭)の動きに焦点を当てている点です。
普段の生活では動かす機会が少ない胸椎(背骨)の横方向への運動と「脇腹を含む体側のストレッチ効果」に優れていて、左右差を意識して「姿勢を整える効果」もあります。
呼吸をしながら左右交互に側屈をすることで内臓を囲む空間を作るインナーユニットの収縮と弛緩を繰り返す運動になるため「消化器官の働きを促進」する効果(内臓マッサージ効果)や、猫背や不良姿勢で凝り固まりがちな胸椎と胸郭にアプローチすることでコリや歪みをリリースして「柔軟性アップ」や「呼吸を深める」効果、左右差を整えた「正しい姿勢づくり」効果につながります。
準備姿勢(スタートポジション)
「【ラジオ体操第二】⑤体を横に曲げる運動」の準備姿勢(スタートポジション)は、背骨と骨盤をニュートラルした良い姿勢で、脚を肩幅よりも広く真横に開き土台を安定させます。
両腕は真横に開き、曲げる側の手を脇の下(肋骨)に当てて側屈の支点を意識します。
どんなエクササイズ、筋トレ、ヨガなどの運動メニューでもそうですが、基本となるスタートポジションはとても重要で、基本の姿勢が正しくできていないと、次に続く動作を正しく行うことができないのはもちろん、無理にポーズ(姿勢)を取ろうとすると代償動作で、関節(骨)や筋肉を痛めてしまったり、せっかく運動してもきになる症状や状態を悪化させてしまう可能性もあります。
まず自分の中心軸を感じ骨盤と背骨がニュートラルとなる姿勢をしっかり自分で意識した上で運動方向を確認しましょう。
正しい姿勢を作る「背骨」「コア」「骨盤」の解剖学
「良い姿勢のメリット」と「普段から良い姿勢を維持するための解剖学ガイド」
正しいやり方(流れ)と解剖学
「【ラジオ体操第二】⑤体を横に曲げる運動」は、「胸椎を意識して側屈する」運動です。
胸椎の側屈なので動きはとても小さいですが、正しく行うことで胸郭と肩甲骨周りのインナーマッスルを効果的に刺激できます。
- 基本姿勢
- 左手を脇の下にあて、右腕を横から振って体を2回曲げる
- 両手で体の横を軽く2回たたく
- 反対側も同様に
【公式サイトより引用】
【側屈】運動を正しく行うには、まず前後にブレない安定した基本姿勢を作る必要があります。
背骨全体で側屈させた「【ラジオ体操第二】⑤体を横に曲げる運動」とは異なり、骨盤と下半身は安定させて更に腹筋にも力を入れた状態で胸椎の側屈運動に集中しますので、脇の下や肩甲骨を含んだ胸郭周りの柔軟性を深めやすくなっています。
運動メニュー | 運動要素 | 解剖学 | |
---|---|---|---|
関節 | 運動方向 | ||
左手を脇の下にあて、右腕を横から振って体を2回曲げる | 基本姿勢(脚を開いて腕を真横に開いた状態) | 骨盤 | ニュートラル |
背骨 | ニュートラル | ||
股関節 | 外転 | ||
肩関節 | 外転 | ||
左手を脇の下に当て | 肘関節 | 屈曲 | |
手関節 | 掌屈 | ||
右腕を横から振って | 肩関節 | 外転 | |
身体を2回曲げる | 脊柱(胸椎) | 側屈 | |
両手で体の横を軽く2回たたく | 身体を真っ直ぐに戻し | 背骨(胸椎) | 側屈 |
両腕を真横に開き | 右肩関節 | 内転 | |
左肘関節 | 伸展 | ||
身体の横を2回たたく | 肩関節 | 内転⇄外転 |
注意ポイント(コツ)
公式サイトでも腕も身体も「脇の下を支点にして真横に」動かすことがコツだと記載されていますが、解剖学でもう少し噛み砕いて正しく効果的に行うためのコツを考えてみます。
脇の下にあてた手を支点にし、真横にリズムよく曲げましょう
胸椎を側屈する
側屈は背骨を横に曲げる運動なので、背骨を前後に曲げる動きやねじる動き、骨盤が傾く動きではありません。
背骨の前屈や後屈、骨盤の傾きがで出ないように自分の身体にしっかり意識を向けて「側屈」に集中しましょう。
更に、背骨全体で側屈するというよりも胸椎を側屈させる運動なので、横に曲がっている感覚よりも胸郭(肋骨)が独立して動いているような感覚です。
腕を真横に上げる運動について
腕を真横に上げることで筋膜のつながりにより、側屈を最大限深めることができますので、脇腹から指先まで一直線に伸びるラインを意識しながら側屈を深めることで効果が最大化します。
肩関節は人体の中でも一番可動範囲が大きく関わる筋肉の数も多いため、姿勢や目線、筋肉の緊張状態によっても可動域が変わってきます。
また上腕骨の動きに連動して、肩甲骨と鎖骨の動きも関与してくる(肩甲上腕リズム)ので、肩甲骨の動きも意識することで可動域や運動の滑らかさにも違いが出ることを意識できるようになると更に効果を高められます。
つま先の向きについて
通常「真っ直ぐ立った良い姿勢」では、足のつま先を真っ直ぐ前に揃えた状態ですが、公式サイトの正しいやり方の動画や図解では、かかとは左右揃えたままつま先を外に45度程度開いています。
公式サイトに記載されている注意ポイント(コツ)では、脚のポジションに関する記載はなく、目的を考えると足の位置にこだわるよりも腕と上半身をしっかりと伸ばせるように安定する足の位置にするのが正解ですが、慣れてきたら足の向きにも意識を向けるとより多くの美容健康効果が期待できます。
足のつま先を外に向けると股関節を外旋した状態になるため、足先を真っ直ぐ揃えているよりも普段意識しにくい股関節内転筋群や深層外旋六筋などお尻周りのインナーマッスルへの負荷が増え、立位での姿勢保持システムも変化するため、運動負荷や効果が変わってきます。
実際に真っ直ぐつま先を揃えて立った状態から、つま先だけ外に開いてみると、太ももと内側の筋肉とお尻がギュッと引き締まるのを実感できると思いますが、同時に反り腰にもなりやすいので、背骨と骨盤をニュートラルに保つには、骨盤や太ももの前側にある腸腰筋や腹筋もしっかり収縮させる必要が出てきます。
つまり、脚を揃えてつま先を外に向けるだけで良い姿勢を維持するために作用する筋肉の種類や負荷が増えるので、姿勢保持も難しくなります。
できない時の軽減方法
前屈みになったり身体が捻れてしまう
背骨の側屈以外の運動(前屈や回旋)が出てしまう場合は、まずはニュートラルの姿勢を意識して、背骨の運動方向をそれぞれ意識できるようになりましょう。
最初は小さな動きからでいいので、正しい動きを意識できるようになることで、姿勢改善効果やストレッチ効果につながります。
【背骨の運動方向】まとめはこちら
【脊柱(椎間関節)】運動方向(作用とROM)【イラスト図解でわかりやすい運動学と解剖学】
胸椎では腰や首を側屈してしまう
側屈させるターゲットは胸椎ですが、胸椎周りの筋肉が硬い状態になり動きが悪くなっている場合、側屈しようとして腰や首を過剰に曲げて代償してしまいがちです。
腹筋にしっかりと力を入れて肋骨より下はしっかり安定させ、肩や首は完全にリラックスしておきましょう。
最初は小さな動きでいいので、胸椎の動きを意識するようにしましょう。
腕が上がらない場合
姿勢が悪かったり、肩関節周りの筋肉が硬い状態になっている場合は、腕を上がる範囲までで止めるか、腕を腰や肩に添えるなどして体幹の側屈に集中します。
腕が上がらないと側屈角度も制限されてしまいますが、姿勢が整い、肩周りの筋肉の柔軟性が向上すると自然と腕が上がりやすくなり、側屈を深められるようになりますので、最初は小さくても「正しい」動きと姿勢を意識することに集中しましょう。
肩腱板断裂など肩に機能障害がある場合も、肩甲骨やローテーターカフなどインナーマッスルを意識した小さな動きにしましょう。
脇の下に手が添えられない場合
胸郭の位置を意識するために、肋骨に触れます。
公式サイトのやり方では手関節掌屈で手背を肋骨に触れていますが、掌屈が難しい場合や手が脇の下に届かないなどの場合は、脇を締めて上腕で肋骨を感じながら側屈しましょう。
無理に手を添えようとして、背骨や肩関節のアライメントが崩れてしまうと逆効果です。
つま先が外側に開けない場合
最初は足の位置は真っ直ぐにして、安定した姿勢と骨盤を維持することを最優先にしましょう。
側屈しようとすると脚がグラグラする場合
まず左右の足の位置が左右揃っているかを確認します。
バランスが取りにくいと感じる場合は、脚幅をより広くとって調整するか椅子に座って行いましょう。