肩甲帯の筋肉 背筋(背中の筋肉)

【菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)】ストレッチと筋トレのための【イラスト図解でわかりやすい筋肉解剖学(作用と起始停止)】

猫背になりがちな姿勢を修正したり、懸垂や腕立て伏せ (プッシュアップ)などの自重筋力トレーニングなどで肩甲骨を安定させる役割がある【菱形筋】の解剖学構造をイラスト図解で正しく理解して効果的な菱形筋ストレッチと菱形筋筋トレをしよう!

【菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)】とは?どこにあるどんな筋肉?

【菱形筋】とは、項靭帯および胸椎棘突起と肩甲骨内側縁をつなぐように走行する、名前の通り菱形(四角形)の2つの筋肉が含まれます。

 読み方/ふりがな英語
小菱形筋しょうりょうけいきんRhomboid Minor
大菱形筋だいりょうけいきんRhomboid Major

【菱形筋】は「僧帽筋」「広背筋」「肩甲挙筋」などとともに外来性背筋表層部にあり、主な作用は「肩甲胸郭関節における肩甲骨の安定とリトラクション(内転)」です。

「肩甲骨リトラクション」は猫背姿勢の時とは反対方向の肩甲骨の動きなので、猫背解消など姿勢改善には解剖学構造の理解が不可欠な筋肉です。

【菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)】起始停止

【菱形筋】は、「椎骨棘突起」から起始してほぼ真横に走行し、「肩甲骨内側縁」に停止する左右対称の筋肉群です。

肩甲棘より上部に停止している筋繊維が「小菱形筋」、「小菱形筋」の直下で「肩甲棘」から「肩甲骨下角」までの間に停止している筋繊維が「大菱形筋」です。

 起始停止
小菱形筋 C7-T1の棘突起、項靭帯肩甲骨内側縁(肩甲棘より上)
大菱形筋T2-T5棘突起肩甲骨内側縁(肩甲棘〜下角)

通常「大菱形筋」と「小菱形筋」は完全に分離していますが、稀に融合しているケースがあったり、「小菱形筋」と「後頭骨」を繋ぐ細い筋繊維が存在する人もいます。

【小菱形筋】起始停止と解剖学構造

【小菱形筋】は菱形筋上部の小さい円筒形の筋腹で、「一番下の頸椎(C7)と一番上の胸椎(T1)棘突起と項靭帯」から起始し、下外側に走行して「肩甲骨内側縁(肩甲棘より上)」に停止します。

【小菱形筋】は、更に背側と腹側の2つの層に別れ、背側層は「肩甲挙筋」より下かつ外側に、腹側層は「肩甲挙筋」の上内側に停止し、「肩甲挙筋」を挟み込むような構造になっています。

更に、腹側層の停止部では「小菱形筋」と「前鋸筋」の筋膜が結合しますが、ごく稀に、小菱形筋と後頭骨を繋ぐ細い筋繊維が存在する人もいます。

【大菱形筋】起始停止と解剖学構造

【大菱形筋】は「小菱形筋」下部にある広い四辺形の筋肉です。

「第2から第5胸椎(T2-T5)棘突起」から起始して下外側方向へ走行し、「肩甲骨内側縁(下角から肩甲棘)の背側および肋骨側」に停止します。

【菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)】作用

【菱形筋】の主な作用は「肩甲胸郭関節における肩甲骨のリトラクション」です。

【菱形筋】は、収縮すると肩甲骨を体幹(胸郭)に沿って上内側に引く運動が生じ、結果として「関節窩を下向きにして肩甲帯を引き下げる作用」となるので、猫背姿勢で生じやすい「肩甲骨プロトラクション」を抑制し、坐位、立位、歩行などの運動時に姿勢を整えるために重要な役割をしています。

また、懸垂や腕立てのような上腕で支える自重筋トレをする際にも肩甲骨を胸郭に安定させるためによく働きます。

 作用
小菱形筋肩甲骨を上内側に引く(リトラクション、下方回旋、挙上)
大菱形筋肩甲骨を上内側に引く(リトラクション、下方回旋)

【小菱形筋】は、「僧帽筋上部繊維」や「肩甲挙筋」と共に肩をすくめるような運動(肩甲骨挙上)時にも働きます。

【菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)】神経支配

【菱形筋】は、腕神経叢の枝である肩甲背神経(C4-C5)支配です。

  • 肩甲背神経(C4~C5)

【菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)】触診

【菱形筋】は厚い際表層のアウターマッスルである「僧帽筋」にほとんど覆われていますは、「聴診三角」から【大菱形筋】停止部を触診できます。

「聴診三角」とは、「僧帽筋外側縁」「広背筋上縁」「肩甲骨内側縁」で構成される三角で、背聴診に重要な位置ですが、この三角から【大菱形筋】停止部を「僧帽筋」の影響を受けずに触診できます。

【菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)】ストレッチと筋トレ

【菱形筋】は、「肩甲胸郭関節」において「肩甲骨を上内側に引き、関節窩を回旋させることで上肢運動において肩甲骨を胸郭に安定させている筋肉」で、【菱形筋】が働くことで運動の支点が安定し、様々な上肢運動に関与する筋肉が相互作用しやすくなります。

また、懸垂や腕立てのような上腕で支える自重筋トレをする際にも肩甲骨を胸郭に安定させるためによく働いています。

肩甲骨リトラクション方向への動きは、普段の生活ではあまり意識しないので、代償動作にならないようにまずは肩甲骨を内側へ寄せる菱形筋の動きを意識することから始めましょう。

手軽にできる【菱形筋をストレッチ】としては、胸の前で大きなボールを抱えるイメージで手を前に伸ばして左右の肩甲骨の間を開きますが、肩がすくまないように、少し引き下げるくらいのイメージで行うとより効果的です。

テレビを見ながらでもできるので気がついた時にでもやってみましょう。

【菱形筋をストレッチ】は、肩こり緩和にも効果的ですし、背中を丸めることで腰椎の緊張もほぐしてくれるので背中の重だるさも解消できます。

【菱形筋をストレッチ】で菱形筋がほぐれたら、胸郭にフォーカスして左右の肩甲骨を引き寄せるように小さく動かすだけで【菱形筋】筋トレ& 強化できます。

プッシュアップや懸垂運動などの自重筋トレの際に菱形筋の働きを意識できると、正しいポジション安定するので、「大胸筋」や「三角筋」などにも欲しい刺激が入ります。

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