【母趾外転筋】は、土踏まずを作るように足裏内側に存在する筋肉で、母趾外転に作用して母趾の位置を整え、スムースな歩行や動作をサポートしています。
【母趾外転筋】の構造についてイラスト図解を使ってわかりやすく説明しています。
【母趾外転筋】の解剖学構造を理解して、扁平足や外反母趾の予防・改善はもちろん、疲れにくい身体作りを目指しましょう!
目次
【母趾外転筋】とは?どこにあるどんな筋肉?
【母趾外転筋】は、「短趾屈筋」「小趾外転筋」と共に足底筋第1層に分類され、「母趾内転筋」「母趾外転筋」と共に足底内側筋群(母趾球筋)にも分類される筋肉です。
- 名称:母趾外転筋
- ふりがな:ぼしがいてんきん
- 英語名:Abductor hallucis
【母趾外転筋】の主な作用は母趾外転で、母趾中心位置と足の縦アーチを維持して、歩行やランニングなどの運動における足部の機能や立位バランス安定に貢献しています。
【母趾外転筋】起始停止
【母趾外転筋】は、踵から母趾に向かって走行する細長い筋肉です。
起始 | 停止 | |
---|---|---|
母趾外転筋 | 踵骨隆起内側部・屈筋支帯・ 足底腱膜 | 母趾基節骨底内側 |
【母趾外転筋】は、踵骨隆起内側部、屈筋支帯、足底腱膜から起始し、足の縦のアーチを作りながら前内側に走行します。
第1中足骨体あたりで腱に移行し、中足趾節関節内側縁に沿って走行し、最終的に母趾基節骨底内側に停止します。
【母趾外転筋】作用
【母趾外転筋】は、細く小さい筋肉ですが、足の縦アーチ構成と中足趾節間関節での母趾外転に強力に作用します。
また、「長母趾屈筋」と「短母趾屈筋」とともに、母趾内転母趾屈曲にも作用します。
関節 | 作用 | |
---|---|---|
母趾外転筋 | 第1中足趾節間関節 | 屈曲・外転 |
【母趾外転筋】は、立位歩行時などつま先に体重がかかった状態で、母趾中心位置と内側縦アーチを保持し立位での動作を安定させています。
歩行や立位動作時に足に体重がかかると足のアーチが潰れる(土踏まずをなくす・扁平足になる)方向への大きな力が働きますが、【母趾外転筋】が作用することで足のアーチが維持でき、足や足首が内側に傾くのを予防してくれるので、歩行や立位動作の負担や衝撃が軽減できます。
サーフィンやスノーボードなどバランスを常にとり続けるような運動では、足の外側アーチを構成する「小趾外転筋」と一緒に足の踏ん張りと回旋動作に作用し、全身の動的バランス保持の要となります。
【母趾外転筋】神経支配
【母趾外転筋】は、脛骨神経の2つの末端枝である内側足底神経(S1-S3)支配です。
【母趾外転筋】触診
【母趾外転筋】は足底最内側の筋肉で、「短母趾屈筋」内側を走行しています。
【母趾外転筋】は、母趾を屈曲させて床に押し付けた時のかかと内側縁の収縮や、母趾を他の趾から離す方向へ動かす(趾の間を広げる・外転)運動で触診できます。
【母趾外転筋】は足底筋膜に覆われ、背側で「長趾屈筋」腱、内側足底動脈および神経と接しています。
【母趾外転筋】鍛える方法〜外反母趾予防トレーニング〜
【母趾外転筋】が凝り固まったり、正しい動きが出せない状態のまま歩行などをしていると、外反母趾などつま先の変形につながってしまう場合があります。
【母趾外転筋】および足部全体の解剖学構造を理解したコンディショニング(マッサージ・筋膜リリース・ストレッチでリセット→再教育筋トレ)が必要です。
ふくらはぎ、足首、足裏をしっかりとほぐしてリセットしてから以下のような方法でトレーニングします。
- タオルギャザー:椅子に座り床に敷いたタオルを足のゆびだけ掴む、引き上げる、離す動作を行う
- 足の趾をパーにする(趾と趾の間を開く)
- SF (Short Foot Exercises):足趾を屈曲せずに第1中足骨頭をできるだけ踵に向かって近づけるようする
足の趾をパーにする、掴んだタオルを離す運動の時に【母趾外転筋】の働きが重要になりますが、これらの動作がやりにくい場合は、【母趾外転筋】が弱化している証拠です。
また、足のアーチを高くするイメージで足の長さを短くしていく(Short Foot)運動も効果的に【母趾外転筋】を鍛えられます。
いずれのエクササイズでも、足趾伸展による代償が起こりやすいので注意します。
下腿や足首が緊張して頑張っているようなら足趾伸筋群を使おうとしている証拠なので、膝下をリラックスさせた状態で足裏の筋肉だけで動かすように意識をします。
感覚がわかりにくい場合は、足全体の解剖学構造を理解し、手の指で補助しながら感覚を掴むことから始めましょう。
外反母趾(つま先変形あり)のコンディショニング
【母趾外転筋】が正常に機能しない状態になると、外反母趾などのつま先の変形や足のアーチが崩れた扁平足の原因となりますが、すでに足の親指がくの字のように内側に入り込んでしまうような変形が起きている場合は、上記のトレーニングが逆効果になる場合があります。
すでに外反母趾になっている場合、【母趾外転筋】が短縮して硬くなっています。
そのため、【母趾外転筋】が内側種子骨とともに外側(小趾側)に移動するため、本来は母趾の内側と外側にある内側種子骨と外側種子骨の位置がずれています。
この結果、【母趾外転筋】も母趾内転作用を持つようになり、「長母趾屈筋」と「長母趾伸筋」腱も外側に移動してしまうので、そもそも母趾外転運動自体ができなくなってしまいます。
すでに外反母趾などつま先が変形している場合、硬直している筋肉をほぐして【母趾外転筋】が正常に作用するアライメント作りから行う必要があります。
【母趾外転筋】ストレッチやマッサージで解消できないくらい外反母趾が進行してしまっている場合は、【母趾外転筋】を鍛えようとしても悪化してしまうだけなので、専門医等にまず相談しましょう。
足首や膝・骨盤などのアライメントの崩れも併発している可能性が高いので全身をみながらメンテナンスが必要です。