人体の構造を知る【生理学】と【解剖学】の違い、また、正常との違いから病気を読み解く「病理学」の定義や違いについてわかりやすくまとめました。
正常の身体の仕組みや構造(人体の解剖学と生理学)を理解していると、病気の原因を突き止めたり、予防や対処方法なども考えられるようになります。
病理学と正常の人間の仕組みを学んで、病気が発信する異常サインを正しく読み取り、病気の予防や早期改善に役立てましょう!
「生理学」と「解剖学」の定義と歴史
「生理学」と「解剖学」の違いを説明する前に、まず「生理学」と「解剖学」の定義や歴史をそれぞれみていきましょう。
「解剖」を文字通り解釈すると「切り開いて、形状や構造を調べる」という意味になります。
実際に医学部の解剖学授業では、人体などの生命体を部位一つ一つを切り分けて細部まで観察しながら、構造を学んでいきます。
歴史的にはも、「解剖学」は生命体を切り開いて、構造を肉眼で観察することから始まっており、技術革新に伴い、現在では顕微鏡や様々な器具や機械を用いて、肉眼では確認できない部分まで構造が明らかになってきています。
「解剖学」の定義をひとことでまとめるとすれば、「解剖学は生命体の構造を学ぶ学問」と定義できます。
しかし、「解剖学」で人体など生命体の構造を理解できたとしても、その構造がもつ機能や仕組みを理解しなければ、使える(役立つ)医学知識にはなりません。
そのため、「解剖学」で解明された構造に対して、どんな機能や仕組みがあるのか研究しようとするのは当然の流れで、生まれたのが「生理学」です。
生理学の定義をひとことでまとめるとすれば、「生理学は生命体の構造ごとの機能を学ぶ学問」と定義できます。
「解剖学と生理学の違い」とは?
では、「生理学」と「解剖学」の違いについてはどう答えるべきでしょうか?
一番シンプルな答えは「同じ対象に対して見る角度が違うだけ」になり、「解剖学」が「人体の構造を学ぶ学問」であるのに対し、「生理学」は「人体を構成するパーツの機能」を学ぶ学問です。
つまり、人体の仕組みを理解する学問を、構造の観点で見る「解剖学」と機能の観点で見る「生理学」の2つに分けただけと言い換えてもいいかもしれません。
つまり、人体を理解して役立つ医学知識にするためには、必ず「生理学」と「解剖学」両方の知識がセットで必要だということです。
人体を家に例えると、家の中でどんな生活ができるかイメージするには、家の物理的構造と住居としての機能両方の観点が必要ですよね。
家がどんな建材でどんな構造でできていて、間取り、家具や家電がどう配置されているのかを知ることが「解剖学」で、その構造や配置で家が構成されていることで、その家でどんな生活ができるのかを見ているのが「生理学」、みたいな感じです。
「解剖学」で構造をとらえてから「生理学」で役割をみていくことで、人間の仕組みの全体像が初めて理解できるようになります。
結局【人体の設計図と機能】を理解すればいい
「生理学」と「解剖学」は、人体を理解する上で基礎になる膨大な量の情報を理解して覚える必要がある学問なので、医学を学ぶ学生が最も苦戦する科目のひとつです。
でも、「解剖学」や「生理学」の本質はとてもシンプル。
人間が身体がどんな構造でできているのかという身体の設計図を理解(解剖学)し、それぞれの機能がどのように機能しているのか理解する(生理学)ことが目的です。
どちらも、身体をメンテナンスをする場合の必須知識です。
設計図としてイメージしやすいものと言えば建物の設計図。
まず、想像力を働かせて、あなたが住みたい家(土台、外装、内装、家具家電、ライフラインなど生活に必要なものを全て考慮)を設計することを考えてみましょう。
ひとつだけ条件があって、一度作ったらずっと同じ家に住み続けなければいけないことを前提とします。
簡単な修理や増強はできる部分もありますが、気に入らなくたったり古くなったりしても、本体はもちろん、パーツや部品の交換も原則不可能で、一生使い続けなければいけません。
さて、どんな家を作りますか?
あなたの個性が溢れた素敵な家だと思いますが、おそらくどんな家でも以下の3点のポイントは押さえているのではないかと思います。
- 適度な(快適な生活を送るために十分な)広さがある
- 外の環境の変化や外敵の侵入から守ってくれる十分な耐久性やセキュリティーがある
- 便利な家具や家電とそれらを動かす電気や水道などのライフラインが適切に安定して供給されている
少なくとも上記3点が満たされていれば、安心で快適な日常生活が送れます。
さて、先ほど想像していただいた一生住み続ける家があなたの身体だとしたらどんな感じになるでしょうか?
構造(解剖学) | 役割(生理学) | |
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外壁・間取り | 骨・筋肉・皮膚など | 人体構造(運動の軸や内臓や脳神経が収まるスペースなど)を作る |
内装・インフラ・家電 | 脳・神経・内臓・血管など | 生命維持活動や外部との情報統合、運動司令などを行う |
人体において柱となるのは骨盤と背骨(脊柱)で、骨盤と背骨を中心に、複数の骨で姿勢や運動の軸となる関節構造と、脳や神経、内臓や血管などが収める空間を作ってそれらを保護します。
主な空間としては、脳が収まる頭蓋骨で囲まれた空間、心臓や肺が収まる胸郭、消化器や生殖器が収まる骨盤で囲まれた空間、脊髄神経が通る脊椎があります。
骨に付着する筋肉は骨組みだけでは不安定な人体の外側を補強する壁であるとともに、姿勢保持や関節運動に作用し、血液というライフラインを全身に運搬する血管を張り巡らせ、循環させる役割も果たします。
人体の最も表層にある皮膚は人体で一番大きな臓器で、1枚の皮膚が全身をラップするように身体全体を覆っていて、人体最大の免疫機能としての役割もあります。
骨格の内部空間には様々な臓器が収まって生命維持のための活動を行っています。
生命維持活動にはエネルギーが必要ですから、全身に血管を巡らせ、血液を通じて各臓器や器官に栄養素を送り、老廃物を受け取り処理場へ運びます。
それぞれの臓器や筋肉が好き勝手に活動しては困るので、全ての臓器や器官の動きの指令は脳から出て、結果は全て脳にフィードバックされます。
脳からの指令は神経によって各臓器や器官に伝達され、フィードバックも神経によって脳に伝達されます。
「解剖学」と「生理学」を学んで病気を予防しよう
例えば、壁の役割をしている筋肉の緊張にアンバランスが生じれば、家の柱や枠組みの役割をしている骨格が歪みます。
骨格が歪むと臓器や神経が格納されている部屋が狭くなるので、臓器や神経などが正常に働けず不具合が生じます。
これが病気や怪我につながります。
「解剖学」や「生理学」はあなたの身体の設計図や正常な機能を知るための学問です。
「解剖学」や「生理学」も観点で理想の状態を維持できていれば、身体の不調は感じないはずですし、病気にもなりません。
逆を言えば、もし何か身体の不調を感じるのであれば、その原因は本来あるべき人体設計図(「解剖学」や「生理学」)とのズレから見つけられます。
病理学とは?
病理学は病気の原因や発生機序を明らかにしていく学問で、正常の身体の構造や仕組みを理解した上で病理学を学べば、病気のサインに早く気がつけるため、早期に適切な対処ができます。
病気はサインを送っている
病気は、あるとき突然やってくる訳ではありません。
ほとんどの病気では、ごく初期の段階からあなたの身体を通じて【異常のサイン】を送っています。
病気が発信する【異常のサイン】に気がつくためには、正常の身体の仕組みを知っていることが大前提。
正常から逸脱をはじめた時(病気の初期)に身体が発信しているサインに気がつくことができれば、早期に適切な対策ができるようになるので、問題が大きくなることを防げます。
病理学とは
病理学とは、病気が発信する【異常のサイン】を解明していく学問です。
病気の原因、発生機序の解明や病気の診断を確定するのを目的とする医学の一分野で、細胞、組織、臓器の標本を、肉眼や顕微鏡などを用いて検査し、それらが病気に侵されたときにどういった変化を示すかについて研究する学問である。
病気が発信する【異常のサイン】が出ている時、身体の中ではどんな変化が起こっているのか解明することで、適切な対処方法がみえてきます。
正常の比較から異常を見つけて対処する
人間にとって正常な身体の状態から逸脱する何かが起こった時私たちは病気になりますが、なぜその症状が起こるのかを正常との比較から追求することで、適切な解決方法・予防方法を探求していくことができます。
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「症状」...どんな「異常のサイン」が現れているか?
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「原因・病理」...何が原因で、解剖生理学的に身体の中で何が起きているのか?
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「検査・診断」...どんな検査で「異常」を調べ、病名を決めるのか?
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「治療・予防」...原因に対してどんな対処をしていくのか?
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「予後」...これから先どのような症状の経過をとると予想できるのか?
「医学」を普段の健康管理に活かす
「医学」は、正常の身体の仕組みを理解するとともに、病気の発生の仕組みを理解することで、適切な解決方法をみつけて対処していくための学問です。
そして、正常を理解して、異常に早く気がつけるようになれば、病気の予防や早期対策が可能になります。
病気になった人を治療するよりも、人が病気にならずに健康を維持できるように、このサイトを活用して自分の身体に向き合う時間をとっていただければ嬉しいです。