肩甲帯の筋肉 胸郭の筋肉

【前鋸筋】筋トレやストレッチのための【イラスト図解でわかりやすい筋肉解剖学(作用と起始停止)】

ボクサーのパンチ、野球のピッチング、バレーボールのスパイク時など、腕を前方に素早く出す動作の際に働く【前鋸筋】の解剖学的構造(起始停止、作用、神経支配)をイラスト図解でわかりやすく解説しています。

【前鋸筋】とは?どこにあるどんな筋肉?

【前鋸筋】は「肩甲骨」や「胸筋」の下層(深層)の胸壁にある扇状の筋肉で、各肋骨から起始して鋸状(ギザギザ)になっている様子から名前がついています。

  • 名称:前鋸筋
  • ふりがな:ぜんきょきん
  • 英語名:Serratus Anterior

【前鋸筋】は「肋骨」から脇の下を経由して「肩甲骨」へと走行するため、主な作用は「肩甲胸郭関節における肩甲骨の運動と安定」と「肩関節や上腕骨(上肢)運動」です。

「肩甲骨」を肋骨面に安定させる姿勢筋として、肩甲骨が固定されている時は肋骨を動かして呼吸を補助する呼吸筋として、そして、ボクサーのパンチ、野球のピッチング、バレーボールのスパイク時などのように腕を前方に素早く出す動作の際によく働きます。

【前鋸筋】起始・停止

【前鋸筋】は、「第1〜第8(9)肋骨」から起始して「肩甲骨前面(肋骨面の上角から下角まで)」に停止する3つの筋束を含みます。

 起始停止
上部第1-2肋骨
肋間筋膜
肩甲骨上角前面
中部第2-3肋骨肩甲骨内側縁前面
下部第4-8/9肋骨肩甲骨下角
内側縁前面

【前鋸筋】下部繊維は、第10肋骨まで伸びて「外腹斜筋」と混ざり合っている人もいるなど、起始部に個人差がありますが、【前鋸筋】の中でも一番発達していて強力に作用を発揮するパーツです。

【前鋸筋】作用

【前鋸筋】は主に「肩甲骨運動と安定に作用」しますが、肩甲骨固定されている時は「肋骨を引き上げて呼吸補助筋」としても作用します。

 関節作用
全体肩甲胸郭関節肩甲骨を前外側に引く
肩甲骨を胸郭に安定させる
下部繊維肩関節屈曲(前方挙上):90度まで
上部繊維肩甲胸郭関節肩甲骨引き下げ

【前鋸筋】は、ボクサーがストレートパンチを打つとき、野球のピッチング、バレーボールのスパイク時、空手で相手を引き寄せる時など腕を素早く前方へ出す時に特に強く作用する筋肉としても有名ですが、【前鋸筋】が弱化すると肩甲骨が背中に羽のように浮き出た状態:「翼状肩甲」になったり、腕で自重を支えるような腕立てなどの筋肉トレーニングが難しくなります。

【前鋸筋】全体としての作用

【前鋸筋】が全体的に収縮すると、「肩甲骨」が前外側へ移動する力(作用)が生じ、腕を前に出す動作に強く関与します。

また、【前鋸筋】は肩甲骨を肋骨面に安定させる姿勢筋としても重要で、腕を前に出して物を押す時にもよく働きます。

【前鋸筋下部繊維】作用

【前鋸筋下部繊維】は最も力の大きい筋束で、「肩甲骨下部」を引くことで「肩関節が上がる」作用が生じ、「肩関節挙上90度」までに作用します。

【前鋸筋上部繊維】作用

【前鋸筋上部繊維】は、肩甲骨引き下げに作用するため【前鋸筋下部繊維】と拮抗して肩甲骨安定に作用します。

【前鋸筋】神経支配

【前鋸筋】は、腕神経叢の枝である長胸神経(C5-C7)支配です。

  • 長胸神経(C5~C7)

【前鋸筋】触診

【前鋸筋】は、「大胸筋」と「広背筋」の間で簡単に触診でき、【前鋸筋】が発達しているアスリートなどでは、腋窩の肋骨あたりで目視もできます。

腕を組むなどして肩関節を内転させた時、脇の下の肋骨部分の盛り上がりを作っている筋肉が【前鋸筋】です。

【前鋸筋】筋トレとストレッチ(正しいトレーニングと鍛え方)

【前鋸筋】は肩関節90度屈曲位で「肩甲骨」を「胸郭」に押し付けるように腕を前に出す運動やプッシュアップなどの自重トレーニングなどで筋トレできます。

【前鋸筋】の解剖学的構造をイメージしながらストレッチポールや壁などとうまく使って負荷や収縮を調整しましょう。

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