関節の動きと可動域

【肘関節】可動域と運動方向【イラスト図解でわかりやすい関節運動解剖学】

大きく力強い運動をする「肩関節」と細かい作業を行う「手関節」の間にある上肢関節【肘関節】の正常な運動方向や役割(関節運動学)についてイラスト図解を用いてわかりやすく整理しました。

【肘関節】とは?どこにあるどんな関節

【肘関節】は大きく力強い運動をする「肩関節」と細かい作業を行う「手関節」の間にある上肢関節で、「力こぶを作りながら物を持ち上げる時に曲げる」「遠くの物を取る時に伸ばす」など普段の生活でも大活躍します。

【肘関節】役割

私たちの上肢(腕)は、「肩関節」を使って大きくダイナミックな動きをすると同時に、指先や手先では細かい作業ができますが、その間にある【肘関節】は、肩の強力な動きと手の緻密な運動制御力を間で繋ぐ役割があります。

「物を持ち上げる」「運ぶ」「手先を顔や頭に近づけるなどの動作」や「転倒時に手をついた時の衝撃吸収」などでも活躍しますし、「テニス」「野球のピッチング」「バトミントン」など手先のコントロールとパワーが同時に必要なスポーツでは【肘関節】での運動コントロールもとても重要になります。

【肘関節】解剖学構造と特徴

【肘関節】は「上腕骨」と「前腕の骨(橈骨および尺骨)」によって構成され、以下の3つの関節を含みます。

関節名構成要素関節の種類主な運動方向
腕尺関節「上腕骨」と「尺骨」蝶番関節屈曲⇄伸展
腕橈関節「上腕骨」と「橈骨」車軸関節
(球関節)
回内⇄回外
近位橈尺関節「橈骨」と「尺骨」車軸関節回内⇄回外

各関節はそれぞれ異なる関節面および機能を持っていますが、【肘関節】として同じ関節包を共有しているため、ひとつの複合関節として作用します。

【腕尺関節】解剖学構造と特徴

【腕尺関節】は、「肘関節」運動の主軸となる関節で、「屈曲⇄伸展」の一方向運動に作用します。

「腕尺関節」は、「上腕骨上腕骨滑車」と「尺骨滑車切痕」により構成される蝶番関節で、屈曲および伸展時にピタリと骨の凹凸がはまり込むとても安定した構造です。

【腕橈関節】解剖学構造と特徴

【腕橈関節】は「上腕骨」と「橈骨」により構成される関節で、球状の「上腕骨小頭」が上面に凸がある「橈骨頭」を滑るように動ける構造になっているので、「近位橈尺関節」と共に前腕を回旋する動き(回内と回外)に作用します。

【腕橈関節】は、「肘関節」の「屈曲⇄伸展運動」には直接的に関与していません。

【近位橈尺関節】解剖学構造と特徴

【近位橈尺関節】は、「上橈尺関節」とも呼ばれる「橈骨」と「尺骨」による車軸関節で、車輪のような構造を持つ「橈骨頭関節環状面」が「橈骨切痕」の周りを「尺骨」から「橈骨頭頸部」を包み込む「橈骨輪靭帯」にサポートされながら回旋するように動きます。

「橈尺関節」は遠位部にもあり、「近位橈尺関節」と「遠位橈尺関節(手関節を関節包を共有)」により、「尺骨」周りを「橈骨」が回旋できるので、前腕回内⇄前腕回外運動が生じます。

「近位橈尺関節」は、「腕尺関節」と関節包を共有しているため解剖学的には「肘関節」の一部になりますが、運動面(機能面)では全く異なる運動をする関節です。

【肘関節】運動方向と可動域

【肘関節】としての主要な運動方向は【屈曲⇄伸展】ですが、「橈骨」が「尺骨」の周りを回旋できる構造のため、「橈骨」の動きによる前腕の【回内⇄回外】運動にも関与します。

要素運動方向
上腕骨に対する前腕骨(尺骨)屈曲⇄伸展
前腕
(尺骨に対する橈骨)
回内⇄回外
(橈骨の回旋運動)

*実際の運動時はこれらの複数の運動方向が組み合わさって起こります。

*以下の記事で記載している正常関節可動域(このサイトでは参考ROM、最大可動域などとも表記している)は、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会による「関節可動域表示ならびに測定法」 による条件で測地した場合の参考値で、規定姿勢で測定した場合、筋肉の柔軟性や骨構造の個人差によって異なります。(このサイトのイメージ図は日常や普段の動きから関節の動きをイメージできることを優先して作成しているため、上記測定法の姿勢ではない場合もあります。)

【屈曲と伸展】

肘関節の【屈曲と伸展】は、「上腕骨上腕骨滑車」と「尺骨滑車切痕」により構成される「腕尺関節(蝶番関節)」の運動作用です。

運動方向参考ROM作用する筋肉
肘関節屈曲145度上腕二頭筋
上腕筋
腕橈骨筋
肘関節伸展0度上腕三頭筋
肘筋

「腕尺関節(蝶番関節)」は、屈曲および伸展時にピタリと骨の凹凸がはまり込むとても安定した構造で、肘を曲げて手を顔に近づける方向の運動(肘関節屈曲)と、屈曲リバースアクションである曲げた肘を伸ばす動作(肘関節伸展)に作用します。

【回外と回内】

「回外」と「回内」は、橈骨が尺骨の周りを回旋する運動で、「腕橈関節」と「(近位および遠位)橈尺関節」が作用します。

「前腕中間位」を基準にすると、手のひらを下に向けるように「橈骨」を外側へ回旋させる運動動きが「回内」で、手のひらを上に向けるように「橈骨」を内側へ回旋させる運動が「回外」です。

運動方向参考ROM作用する筋肉
前腕回内90度円回内筋
方形回内筋
前腕回外90度回外筋
上腕二頭筋
腕橈骨筋

前腕中間位では「橈骨」と「尺骨」は並行ですが、回内運動が生じると「橈骨」が「尺骨」の周りを回旋して互いにクロスするような配置になり、手が上向き(前向き)から下向き(後ろ向き)に反転し、回外運動(回内運動のリバースアクション)で、「橈骨」と「尺骨」が並行位に戻ります。

【肘運動】に作用する筋肉

【肘関節】に作用する筋肉について詳細はこちら

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