【肩甲上腕リズム】肩関節における腕と肩甲骨の動きの関係

【肩甲上腕リズム】とは、【肩関節複合体(肩甲帯)】作用(運動)おいて、上腕骨と肩甲骨の運動学的相互作用のことです。

【肩関節】解剖学構造に加えて、【肩甲上腕リズム】を理解しておくことで、肩周りの筋肉や靭帯の負担軽減や姿勢改善、肩の痛みや可動域制限の予防や解消に役立ちます。

【肩甲上腕リズム】について、イラスト図解を用いてわかりやすく解説しています。

【肩甲上腕リズム】とは

【肩甲上腕リズム】は、1930年代にCodmanが最初に発表した上腕骨と肩甲骨の運動学的な相互作用のことで、肩関節機能を最適化させるためにとても重要な役割があります。

「肩甲骨はがし」や「肩甲骨ストレッチ」など肩甲骨を動かしたりケアするメソッドがたくさんありますが、背中のコリや猫背などによって肩甲骨の正常なアライメントや可動域が制限されることで、腕が上がりにくい、腕が回らないなど肩関節の動きに制限がでる理由や原因分析も、【肩甲上腕リズム】を理解することで深まります。

そもそも【肩関節】の構造は?

【肩甲上腕リズム】を理解することで、【肩関節】解剖構造がなぜこれほど複雑になっているのかの理解にも役立ちますので、まず先に要点を整理します。

【肩関節】は4つの関節で構成される複合体ですが、主な作用として上肢(上腕骨)を広範囲空間での作業を可能にすることです。

  • 胸鎖関節:胸骨と鎖骨の関節
  • 肩鎖関節:肩峰と鎖骨の関節
  • 肩甲胸郭関節:肩甲骨と胸郭(肋骨)の関節
  • 関節窩上腕関節:肩甲骨窩と上腕骨骨頭の関節

【肩関節】運動で主に動くのは上腕骨ですが、上腕骨骨頭が関節面を作る肩甲骨関節窩はお皿状なので、肩関節のうち動きを主体とする関節窩上腕関節(上腕骨と肩甲骨の関節)に骨的な制限がほとんどありませんので、肩関節における上腕骨の可動域は広範囲です。

上腕骨の広範囲の動きに対する安定性を確保するため、【肩関節】は複数の筋肉、腱、靭帯が複雑に入り組んだ構造になっていて、上腕骨が体幹(肩甲骨・鎖骨・肋骨を介して)と強固に連結連動できるようになっています。

そのおかげで私たちの腕は重力に引っ張られて床に落ちることもなく、空間を自由に動いて、頭の上などでも手を使った様々な活動ができます。

 

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【肩関節における肩甲骨】動き方の特徴

【肩関節】運動(上腕骨の動き)には必ず肩甲骨が関与し、上腕骨の動きに連動して、肩甲骨は胸郭(肋骨)上を回旋します。

  • 上方回旋と下方回旋:前額面回旋(関節窩が上を向くまたは下を向く動き)
  • 外旋と内旋:垂直軸回旋(関節窩がより前額面、または矢状面を向く動き)
  • 前傾と後傾:矢状面回旋(関節窩が前方回旋または後方回旋)

【肩甲上腕リズム】肩甲骨と上腕骨の連動(相互作用)

【肩甲上腕リズム】は、腕を挙上する時の肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の寄与比率として定義されています。

ほとんどの場合では、最終的な肩関節挙上角度を上腕の挙上角度と肩甲骨の上方回旋角度に分けることで割合を算出しています。

肩関節屈曲の場合

肩関節屈曲の最大参考可動域は180°程度ですが、この時の関節窩上腕関節は100°-120°しか寄与していません。

肩甲骨が胸郭上を上方回旋し、関節窩を50°〜60°上を向けることで最大可動域を達成できます。

つまり、肩甲骨関節窩上を自由に動ける上腕骨でも肩甲骨の動きを伴わなければ、頭の上まで手を挙げられないということになります。

肩関節外転の場合

肩関節外転の最大参考可動域は180°程度ですが、この時の関節窩上腕関節は90-120°しか寄与していません。

肩甲骨の回旋運動が連動することで、150-180°挙上できます。

【肩甲上腕リズム】寄与比率の変化と個人差

例えば、肩関節屈曲または外転90度を肩甲上腕リズムで説明すると、肩甲上腕関節で60度、肩甲胸郭関節で30度挙上していることになります。

肩甲上腕リズムは平均で2:1になりますが、実際はかなりの個人差とROM地点ごとに大きく変動します。

【肩甲上腕リズム】挙上角度での変化

肩関節の運動において、挙上30°までは肩甲骨の関与はほとんどないか、あっても一貫性はありません。

  • 0-30°まで:関節窩上腕関節主体の挙上
  • 30°以降:肩甲上腕関節(上腕骨):肩甲胸郭関節(肩甲骨)が同時に動く(平均2:1の寄与比率)

0-30°までの【肩甲上腕リズム】

挙上30度までは、関節窩上腕関節主体の動きになり、肩甲骨(肩甲胸郭関節)の動きはほとんどないか、あっても一貫性がありません。

屈曲(前方挙上)の場合は、60°までは、関節窩上腕関節の関与が大きく、肩甲骨の動きには一貫性が見られないとする研究もあります。

いずれの場合も、腕に大きなストレス(外力)が加わっている場合は、肩甲骨の関与が増える場合があります。

30°以降の【肩甲上腕リズム】

挙上30°を超えると関節窩上腕関節および肩甲胸郭関節は、平均で2:1の寄与比率で同時に動きます。

肩甲骨の関与比率は一定(常に2:1)ではなく、挙上角度や方向によっても変化します。

例えば、肩甲骨面での肩関節外転運動において、平均43°の回旋運動が見られましたが、上腕骨挙上90°-120°で回旋角度が最大であったとする研究があります。

【肩甲上腕リズム】運動面での変化

【肩甲上腕リズム】は運動面でも差があります。

矢状面では他の面に比べて、より関節窩上腕関節の寄与比率が大きく(肩甲骨の回旋の寄与が小さく)なります。

また、聞き手側と反対側を比較した場合、前額面と肩甲骨面では、利き手側でより関節窩上腕関節の寄与比率が大きく(肩甲骨の回旋の寄与が小さく)なります。

【肩甲上腕リズム】個人差

【肩甲上腕リズム】は体型や運動面などによっても変化します。

利き手と非利き手【肩甲上腕リズム】

前額面と肩甲骨面で肩関節挙上時に利き手と非利き手を比較すると、利き手側で、より関節窩上腕関節の寄与比率が大きく(肩甲骨の回旋の寄与が小さく)なることを示した研究があります。

特に、肩甲骨面での肩関節挙上時の肩甲骨上方回旋において大きな優位差があり、矢状面では利き手と非利き手の差がでなかったそうです。

大人と子供の差【肩甲上腕リズム】

大人と子供で肩甲上腕リズムの差を調べた研究もあり、肩甲骨面での運動で肩甲上腕リズムで以下のような差がありました。

  • 【大人】2.4:1
  • 【子供】1.3:1

また、この研究では、以下の優位差があったと記載しています。

・腕を降ろしている時は子供の方が関節窩上腕関節の寄与比率が大きく(肩甲骨の回旋の寄与が小さく)なる。

・挙上25° 〜125°で肩甲骨面での上方回旋角度が子供の方が大きい。

体型による差【肩甲上腕リズム】

BMIの高い人の方がBMIが低い人よりも、肩関節挙上時の肩甲骨上方回旋角度が大きいことを示した研究もあります。

アスリートの【肩甲上腕リズム】

スポーツアスリートの場合は、特有の動きをするため、左右(利き手側と非利き手側(の肩関節で動きに大きく差が出る場合があります。

また、肩甲骨上方回旋角度と肩甲上腕リズムの比率がが、利き手と反対で優位差があることも報告されていますので、スポーツ選手などの場合は、競技への適応を考慮されるべきなので、一般理論は当てはまりません。

【肩甲上腕リズム】目的

【肩甲上腕リズム】には2つの重要な目的があります。

  • 肩関節周囲筋の長さと張力を調整して可動範囲を広げる
  • 上腕骨と肩甲骨突起の衝突を防ぐ

肩関節可動域を広げる【肩甲上腕リズム】

筋肉が伸び縮みすることで張力を発揮しますが、筋肉の長さが変化できる範囲は決まっています。

複数の筋肉に作用され胸郭の上を自由に動ける肩甲骨を上腕骨の動きに連動させることで、上腕骨に作用する肩関節周りの筋肉の長さや張力を調整できます。

これにより、関節としての安定性を保ちつつ、広い運動方向と範囲がカバーできます。

肩関節での骨衝突を予防する【肩甲上腕リズム】

上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩は、股関節(大腿骨と寛骨臼)のように骨と骨がぴったりはまるような骨構造ではなく、平面に近い肩甲骨関節窩を球状の上腕骨骨頭が滑るように動く構造です。

そのため、大きく広範囲に動くことができるのですが、何らかの動きの制限がなければ、肩甲骨の突起部と上腕骨が衝突して、正常な関節運動を妨げてしまいます。

肩関節挙上時に、肩甲骨と上腕骨が同時に動くことで、骨同士が衝突しないように動きを制限することにつながっています。

【肩甲上腕リズム】評価方法

肩関節外転運動時に、上腕骨の挙上角度に対する肩甲骨の位置(背骨に対する下角を触診)で確認します。

肩甲上腕リズムは肩関節周りの筋肉の状態や肩関節の解剖学構造のコンディションを評価する指標のひとつです。

一般的な肩関節挙上時には、肩甲骨には3つ運動方向パターンがあります。

  • 上方回旋(前額面)
  • 後傾(矢状面)
  • 内旋または外旋(運動面や挙上角度で変化)

肩甲骨と上腕骨が正常な位置関係にない場合は肩甲上腕リズムが崩れます。

【肩甲上腕リズム】に影響する疾患や損傷

【肩甲上腕リズム】の障害だけで特定の疾患を鑑別できる訳ではありませんが、肩甲骨の動きが制限されたり、肩甲上腕リズムを乱す疾患はたくさんあり、大きく以下のグループに分類できます。

  • 骨の問題:過度な胸椎後弯、鎖骨骨折など
  • 関節の問題:肩甲上腕関節や肩鎖関節が軟部組織損傷などで不安定
  • 神経の問題:頸部の神経根、長胸神経、脊髄副神経などの損傷や麻痺
  • 柔軟性の問題:肩関節周囲筋や軟部組織が硬化したり短縮することによる制限、など
  • 筋肉の問題:前鋸筋や僧帽筋の機能低下などによる肩甲骨の不安定性や運動制限

肩甲骨が正常に動かない原因の68 -100%は肩の解剖学構造の損傷です。

具体的には、肩関節を支える組織の機能低下、回旋腱板(ローテーターカフ)の損傷、肩周りの靭帯や組織の損傷などです。

一般的に肩甲骨の貢献度が増加している時は、関節窩上腕関節の動きに制限が出ています。

矢状面と肩甲骨面での挙上において、回旋腱板(ローテーターカフ)の損傷があると肩甲骨上方回旋角度の貢献度が大幅に増加することを示した研究もあります。

肩関節における肩甲骨の役割を考えると、肩甲骨と上腕骨の共同運動(肩甲上腕リズム)の変化を臨床評価の指標として意味があると言えます。

 

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