【手内に筋腹を持つ筋肉(手内在筋)】を一覧にまとめました。
手や指の運動に関与する筋肉には前腕に筋腹を持つ筋肉(外来筋)もあり、握力を出すような運動はほとんど外来筋に依存していますが、手内在筋があることで手や指を使った繊細な作業や細かい動きができるようになります。
それぞれの筋肉の起始・停止・作用・神経支配などは各筋肉の詳細ページをご確認ください。
【手と指の筋肉(手内在筋)】とは?どこにあるどんな筋肉?
【手内に筋腹を持つ筋肉(手内在筋)】として、手内に主要な筋腹を持つ筋肉群(起始停止も手内)には以下の筋肉が含まれます。
母指下にある掌のふくらみを作る母指球筋群、小指下にある掌のふくらみを作る小指球筋群、指の間にある中手筋群に大きく分類できます。
分類 | 筋肉名 | 主な作用 | |
---|---|---|---|
母指球筋 | 短母指外転筋 | Abductor pollicis brevis | 母指外転 |
母指内転筋 | Adductor pollicis | 母指内転 | |
短母指屈筋 | Flexor pollicis brevis | 母指屈曲 | |
母指対立筋 | Opponens pollicis | 母指対立 | |
中手筋 | 背側骨間筋 | Dorsal interossei | 指の外転 |
掌側骨間筋 | Palmar interossei | 指の内転 | |
虫様筋 | Lumbricals | 2-5指屈曲・伸展 | |
小指球筋 | 小指外転筋 | Abductor digiti minimi | 小指の外転・屈曲・伸展 |
短小指屈筋 | Flexor digiti minimi | 小指の屈曲・外旋・対立 | |
小指対立筋 | Opponens digiti minimi | 小指の屈曲・外旋・対立 | |
短掌筋 | Palmaris brevis | 腱膜を緊張させる |
手や指の運動に関与する筋肉には前腕に筋腹を持つ筋肉(外来筋)もあり、握力を出すような運動はほとんど外来筋に依存しています。
人間特有の手の細かく繊細な動きを実現するためには、手内に存在する複数の小さな筋肉の作用が不可欠です。
【手内に筋腹を持つ筋肉(手内在筋)】の主な役割は、掌の膨らみや形状(神経や血管の通り道や保護機能)を構成したり、握力を調整したり、手や指を使った細かい作業をする時に作用することです。
【手内に筋腹を持つ筋肉(手内在筋)】それぞれに独自の走行と役割があります。
【母指球筋】
【母指球筋】とは、手掌外側(橈側・親指側)で親指下あたりに小さな筋腹の隆起(母指球)を作る4つの短い筋肉で、「母指内転筋」「短母指外転筋」「短母指屈」「母指対立筋」が含まれます。
【母指球筋】に分類される筋肉はそれぞれ異なる手根骨から母指遠位に走行し、母指中手指節間関節(MCP)および手根中手関節(CMC)の(他の4指から)独立した運動(内転・外転・屈曲・対立およびそれらの組み合わせ)に作用し、握る、つまむ、離すなど手の巧緻性向上に貢献しています。
「短母指屈」深頭と「母指内転筋」が尺骨神経(C8、T1)支配で、その他は全て正中神経(C8、T1)支配です。
【短母指外転筋】
【短母指外転筋】は、舟状骨・大菱形骨・屈筋支帯から起始し、第1基節骨に停止し、母指球筋の中でも最も表層にある筋肉です。
【短母指外転筋】の主な作用は母指の外転ですが、母指の屈曲や対立にも貢献して手の巧緻性を高めていて、スマホを持ったまま親指を他方向へ動かすスマホ操作でもよく使う筋肉です。

【短母指屈筋】
【短母指屈筋】は、母指球(親指下にある掌の膨らみ)を構成する筋肉のひとつで、母指を単独で屈曲させかつ掌側へ引き込む作用があり、親指を握り込む「グー」の手を作る時や物を掴むときなどに活躍します。
「短母指屈」深頭と浅頭に別れますが、深頭の大きさには個人差が大きく、欠如しているケースも見られます。

【母指対立筋】
【母指対立筋】は、大菱形骨と屈筋支帯から起始し、背外側に走行して筋腹を構成し、第一中手骨前外側に停止します。
【母指対立筋】の主な作用は、名前の通り母指の対立で、親指の先と他の指の先を合わせることができます。
対立運動は関節の複合運動で、手根中手関節の屈曲・内転・内旋の組み合わせで、物を掴む、鉛筆を持つなどの手を使った細かい作業に貢献します。

【母指内転筋】
【母指内転筋】は母指球筋の中で最大最強の筋肉で、最も深層にあります。
主な作用は、母指を外転位から第2指側へ動かす母指内転ですが、母指屈曲+内転+内旋の複合運動である母指対立の初期段階にも作用します。

【小指球筋】
【小指球筋】とは、手掌内側(尺側・小指側)で小指下あたりに小さな筋腹の隆起(小指球)を作る3つの短い筋肉:「小指外転筋」「短小指屈筋」「小指対立筋」と小指球の範囲にある「短掌筋」が含まれます。
【小指球筋】に分類される筋肉はそれぞれ異なる手根骨から小指遠位に走行し、小指中手指節間関節(MCP)および手根中手関節(CMC)の(他の4指から)独立した運動(外転・屈曲・外旋・対立およびそれらの組み合わせ)に作用し、握る、つまむ、離すなど手の巧緻性向上に貢献しています。
尺骨神経浅枝(C8、T1)に支配される「短掌筋」以外、小指球筋は全て尺骨神経深枝(C8、T1)支配です。
【短掌筋】
【短掌筋】は手掌腱膜・屈筋支帯から起始し、内側に走行して小指球領域の真皮に停止します。
【短掌筋】が収縮すると手掌腱膜が収縮して手のひらの窪みを更に深くすることができるため、球状のボールなどを保持し続けるスポーツや、手のひらで水をすくって飲む時などに掌をくぼませた状態を維持する時によく働きます。

【小指外転筋】
【小指外転筋】は主に豆状骨から起始し、小指球最内側の筋腹を構成して小指基節骨底尺側に停止します。
【小指外転筋】の主な作用は小指外転ですが、小指屈曲にも関与し、バスケットボールなど大きな物を指を広げて掴む時によく働く筋肉です。

【短小指屈筋】
【短小指屈筋】は、有鉤骨および屈筋支帯から起始して第5基節骨に停止し、主に小指屈曲に作用します。
【短小指屈筋】は、他の4指から独立した小指の運動を可能にしている筋肉のひとつで、小指屈曲の他にも小指の外旋および対立にも関与します。

【小指対立筋】
【小指対立筋】は小指球を構成する筋肉のひとつで、他の2つの筋肉の深層にあります。
【小指対立筋】の主な作用は小指対立で、「母指対立筋」と共に作用して掌のくぼみを作り、物を摘む、水をすくう、握手するなどの動作や、野球など投球するスポーツで重要な動きを担っています。

【中手筋】
指の間に存在する中手筋群は、手指の動きを調整し、手の巧緻運動に貢献しています。
【手の虫様筋】
【手の虫様筋】は、屈筋腱から起始して伸筋腱に停止するユニークな構造の筋肉で、中手指節関節(MCP)の屈曲と指節間(IP)関節の伸展に作用します。
【手の虫様筋】は屈筋腱から起始して指背腱膜に停止する構造のため、骨に付着している筋肉に比べて支点が移動しやすくなっていて、【虫様筋】腱がMCPでは掌側を、遠位では手背を走行するため、一見相反するように見える指の屈曲と伸展に作用できます。
更に、【虫様筋】には筋紡錘を多く含むことがわかっており、固有受容器として他の筋肉との調整に関わっている可能性が高いことを示しています。

【手の背側骨間筋】
【背側骨間筋】は、手背の中手骨間を埋めるように走行する4つの筋腹を持つ手の内在筋肉で、第2指〜4指を外転して指の間を広げ、「パー」の形を作る運動でよく働きます。
更に、【背側骨間筋】は、中手指節関節(MCP)関節屈曲と、近位(PIP)および遠位指節間(DIP)関節伸展運動に主に作用する筋肉群を補助していて、関節の安定に貢献しています。

【手の掌側骨間筋】
手の骨間筋は2つあり、掌側にあるより小さい筋群が【掌側骨間筋】です。
【掌側骨間筋】には、第1,2,4,5中手骨に付着する4つの筋腹(単腹)を含み、橈側(外側)から尺側(内側)の順で、第1〜第4掌側骨間筋まで順番に番号が付けられています。
また、指の外転に作用する「背側骨間筋」に対し、【掌側骨間筋】は指の内転に強力に作用する他、2,4,5指の伸展と屈曲にも貢献しています。
