知らない人はいないくらい有名な国民体操「ラジオ体操」ですが、正しい動きで行って、優れた効果を最大限実感できている人は多くありません。
「ラジオ体操」はたった3分で終わるシンプルな体操なのに、全身をバランスよく整える美容健康効果に優れた最強エクササイズです。
「【ラジオ体操第一】③腕を回す運動」を解剖学と運動学の視点から分析し、うまくできない時の軽減方法や更に効果を高めるコツやアレンジ方法を提案します。
「【ラジオ体操第一】③腕を回す運動」は、パソコン仕事やスマホが手放せない生活で猫背が習慣化しやすい現代人の悩み(肩こり)を予防解消できるエクササイズでもあるので、正しい運動方法を理解して日常生活に取り入れましょう。
目次
【ラジオ体操】とは
ラジオ体操に関する一般情報や目的別エクササイズへのリンクは以下のラジオ体操まとめ記事を参照してください。
【ラジオ体操】は最強ダイエット運動メニュー?!【イラスト図解付き解剖学】
【ラジオ体操第一③腕を回す運動】とは
「【ラジオ体操第一】で3番目に行う③腕を回す運動」は、「肩まわりの筋肉を柔軟に保つ」目的で作られているので、以下のような効果があると公式サイトでは記載されています。
- 肩こり予防
- 血行促進
- 首の疲労回復
【公式サイトより引用】
【ラジオ体操第一③腕を回す運動】正しいやり方と解剖学
注目ポイント(正しく行うコツ)と効果
「【ラジオ体操第一】③腕を回す運動」でポイントになるのはスバリ肩関節で、意識して動かすのは肩関節(肩甲骨含む)のみになります。
肩や首の余計な力を抜いて肩関節の運動を正しく効果的に行うためには、「【ラジオ体操第一】①伸びの運動」で正しい姿勢を作れて維持できることが前提です。
デスクワークやスマホの長時間使用で猫背や背中が丸くなった状態が続くと、肩こりや首こり、ひどくなると眼精疲労や頭痛にもつながってしまいますので、よい姿勢を維持しながら肩関節(肩甲骨含む)を大きく動かす運動を習慣化することで、肩こりの予防解消効果はもちろん、姿勢が整いやすく修正しやすくなるので、様々な体調不良を予防できますし、正しい方法をマスターすれば仕事や作業中にリフレッシュにも役立ちます。
スタートポジション:正しい姿勢の作りと解剖学
「【ラジオ体操第一】③腕を回す運動」の準備姿勢(スタートポジション)は、背骨と骨盤をニュートラルした良い姿勢をとってから、腕を胸の前でクロスした(肩関節水平内転)状態です。
正しい運動要素と解剖学
「【ラジオ体操第一】③腕を回す運動」は肩関節(肩甲骨)の粗大運動(大きく動かす運動)で、公式サイトでは以下の2つの要素を4回繰り返すと記載されています。
腕や肩の力を抜き、遠心力を使って大きく回しましょう
- 腕を身体の外側から内側へ大きく回す
- 反対回し
更に細かく肩関節の運動方向に分解すると以下のようになります。
以下の大きな要素に加えて肩関節の内旋と外旋と上腕骨の動きに連動する肩甲骨の動きも加わるので実際の動きはより複雑ですが、わかりやすいように粗大要素だけ抜き出して単純化しています。
運動メニュー | 運動要素 | 解剖学 | |
---|---|---|---|
関節 | 運動方向 | ||
腕を身体の外側から内側へ大きく回す | 基本姿勢 | 骨盤 | ニュートラル |
背骨 | ニュートラル | ||
肩関節 | 水平内転(胸の前でクロス) | ||
胸の前のクロスをほどいて腕を体側へ | 肩関節 | 水平外転+伸展 | |
体側から横から開いて頭上へ | 外転 | ||
頭上から胸の前でクロス | 伸展+水平内転 | ||
クロスした腕を下ろして体側へ | 水平外転+伸展 | ||
体側から横へ | 外転90度 | ||
反対回し | 腕を体側に下ろす | 肩関節 | 内転 |
胸の前でクロスしながら頭上へ | 屈曲+水平内転 | ||
横から振り下ろす | 内転 | ||
体側から胸の前でクロス | 屈曲+内転 |
ラジオ体操効果を高めるコツ
「【ラジオ体操第一】③腕を回す運動」は肩関節を大きく最大可動域まで動かす粗大運動で肩甲骨の動きも含みますが、肩関節を動かす時に身体の軸(背骨や骨盤)が前後左右に傾かないように安定させておくことと肩に余計な力が入って肩がすくんだり(耳と肩が近づく)しないように意識しましょう。
更に肩関節の運動方向と可動域、腕と肩甲骨の動きの連動を意識しながら行うことでより効果を高められます。
肩まわりをリラックスさせる
首や肩に余計な力が入っていたり、スタートポジションが猫背や反り腰だったりすると正しい運動ができません。
肩や首の力を抜いてリラックスするには、安定して立位バランスが取れている必要がありますので、腕を動かす前に背骨と骨盤がニュートラルな良い姿勢が取れていることをしっかり意識しましょう。
肩関節の動き(可動域と運動方向)を正しく理解
遠心力を使って大きく肩関節を動かす意識を持つことで、短縮していたり、普段動きが少ない筋肉のストレッチ効果を高めることができます。
ただ、力強く大きな動きであればあるほど、遠心力で強い力がかかればかかるほど、間違った方向に動かして逆効果になった時のデメリットも大きいので、自分が動かしている関節の運動方向が正しいかどうか、自分の可動域の制限はどこにあるのかなど、解剖学構造を意識しながら行いましょう。
肩関節は人体の中でも一番可動範囲が大きく関わる筋肉の数も多いため、姿勢や目線、筋肉の緊張状態によっても可動域が変わってきます。
また上腕骨の動きに連動して、肩甲骨と鎖骨の動きも関与(肩甲上腕リズム)してくるので、肩甲骨の動きも意識することで可動域や運動の滑らかさにも違いが出ることを意識できるようになると更に効果を高められます。
【肩関節(肩甲帯)複合体】可動域と運動方向【イラストわかりやすい解剖運動学】
【肩甲骨とは?】肩の運動と姿勢のバロメーター【イラスト図解でわかりやすい骨解剖学】
【肩甲上腕リズム】肩関節における腕と肩甲骨の動きの関係
よくある間違いとできない時の軽減方法
肩関節の動きに制限がある場合
姿勢が悪かったり、肩関節や肩甲骨周りの筋肉が硬い状態になっている場合は肩関節の可動域に制限が出てしまい大きく腕を回すことができません。
姿勢が整い、肩周りの筋肉の柔軟性が向上すると自然と腕が上がりやすくなりますので、まずは姿勢を整え、肩甲骨や肩周りの筋肉のストレッチをして柔軟性を高めて少しづつ可動域を拡大していきましょう。
肩関節の可動域に制限がある状態で無理に腕を大きく動かそうとすると、身体の軸がぶれたり、腰を反ってしまったりする代償運動が出てしまい逆効果になりがちです。
真っ直ぐな良い姿勢はそのまま維持した上で、肩関節(肩甲骨)を動かせる範囲で動かすようにしましょう。
また、肩腱板断裂など肩に機能障害がある場合は、腕を下に垂らしたまま肩甲骨を動かしたり、肩甲骨やローテーターカフなどインナーマッスルを意識した小さな動きにしましょう。