【肩甲骨】は、胸郭背面(背中上部)に左右対称ある薄い三角形の骨で、「天使の羽」と呼ばれたりもします。
【肩甲骨】は肩関節の主要な構成要素で肩関節可動域や姿勢評価の指標にもなります。
【肩甲骨】周囲の組織をターゲットにアプローチして肩こりや姿勢の問題を解消する「肩甲骨はがし」や「肩甲骨ストレッチ」などのコンディショニンメニューもたくさん出てきています。
「肩甲骨はがし」や「肩甲骨ストレッチ」などを効果的に行って肩こり予防対策をしたり、肩甲骨周囲筋肉の起始停止を覚えたりするために役立つ【肩甲骨】骨解剖学(解剖学構造)をイラスト図解を使ってわかりやすく解説しています。
【肩甲骨】とは?どこにあるどんな骨?
【肩甲骨】は、背中上部(肋骨上)に背骨を挟んで翼のように左右対称に存在する翼のような形状の骨でなので、「天使の羽」とも呼ばれます。
腕を空中で自由に動かす【肩関節】の主要構成要素であるので、イメージとしても左右の腕を動かす【翼】と言えるかもしれません。
【肩甲骨】は3つの特徴的な突起と4つの大きな関節窩をもつ三角形(3つの縁と3つの角)で、肋骨の形に合わせた凹凸を持っているほぼ平面の骨です。
【肩甲骨】は複数の骨と接して間接を構成していますが、骨結合面がほぼ平面なので、肩甲骨周囲には複数の筋肉や靭帯が付着していて、複雑な関節構造を強固にサポートしています。
【肩甲骨】の動きや姿勢や運動評価のバロメーターになりやすいのは、肩関節(肩甲帯)、胸郭や背骨と筋肉や靭帯を介した結合が多く、動きが外から評価しやすいからです。
【肩甲骨】役割
【肩甲骨】の主な役割は、「肩関節(肩甲帯/複合関節)」を構成する要素として、人体で一番広範囲に動く上肢運動の可動性と安定性をサポートすることです。
【肩甲骨】は複数の骨と接していますが骨構造による結合よりも、複数の筋肉(および腱や靭帯)を介した結合が圧倒的に強固です。
そのため、肩甲骨周囲筋肉(および腱や靭帯)の緊張状態の影響は【肩甲骨】の動きや位置で表れやすく、姿勢や機能障害などの評価指標としてよく使われます。
- 肩甲骨・上腕骨・胸郭(鎖骨・胸骨・肋骨)と一緒に「肩関節(肩甲帯/複合関節)」を構成して肩と腕の動きを含んだ上肢の動きを調整する(体幹と腕をつないだ運動をする)
- 肩甲骨の位置や動きは、姿勢や機能障害評価の指標になる




【肩甲骨】解剖学構造
【肩甲骨】は3つの特徴的な突起と1つの大きな関節窩をもつ三角形(3つの縁と3つの角)で、肋骨の形に合わせた凹凸を持っているほぼ平面の骨で、左右対称に2つあります。
【肩甲骨】の解剖学構造について整理することで、肩甲骨の役割や機能がより深く理解できるようになります。
【肩甲骨2つの面】解剖学構造
【肩甲骨】は、肋骨と接する前面と背中から触診できる後面の2面構造です。
- 【肩甲骨前面】:肋骨と接している面なので肋骨面とも呼ばれる
- 【肩甲骨後面】:背中から触診できる面で、特徴的な突起がある
肩甲骨面は前面(肋骨面)も後面(背面)もほぼ前面筋肉で覆われ、肋骨面に安定したまま様々な方向へ動きます。
【肩甲骨3つの縁と3つの角】解剖学構造
【肩甲骨】を後ろから見ると逆三角形のような形をしていて、3つの縁と3つの角があります。
外側角は上腕骨骨頭と関節面を作る関節窩を含む広い面を持っています。
- 【上角】:【肩甲骨上縁】と【肩甲骨内側縁】を隔てる角
- 【下角】:【肩甲骨外側縁】と【肩甲骨内側縁】を隔てる角で、肩関節運動(主に挙上や外転)時の肩甲骨の動きを触診するときの指標となる場所
- 【外側角】:関節窩を中心とする広い角
角と角をつなぐように縁があり、上角と下角をつなぐ縁(内側縁)は背骨に沿うラインです。
- 【肩甲骨上縁】:肩甲骨上角から烏口突起に向かう薄く短い縁(烏口突起付近に切痕あり)
- 【肩甲骨外側縁】:関節窩結節から肩甲骨下角まで腋窩側の厚みのある縁
- 【肩甲骨内側縁】:関節窩上角から肩甲骨下角までの薄い縁(腕を真っ直ぐ降ろした状態では、脊柱とほぼ並行なラインになる)
【肩甲骨3つの突起】解剖学構造
【肩甲骨】には3つの特徴的な突起があります。
肩甲骨背面を大きく2つの面に分ける【棘突起】、棘突起の外側端である【肩峰】、肩甲骨上縁外側端の【烏口突起】です。
- 【肩甲棘】:肩甲骨背面を上下2つに分ける突起
- 【肩峰】:肩甲棘外側端で前面は鎖骨と接して関節を作る
- 【烏口突起】:肩甲骨上縁外側端
突起部は筋肉の付着部となったり、関節面となることで、肩甲骨複合体(肩甲帯)の運動(安定性と可動域)をサポートしています。
【肩甲骨4つの窩】解剖学構造
【肩甲骨】にはいくつかの特徴的な窪み(窩)があります。
それぞれの窪み(窩)は、関節面や筋肉の付着部になっています。
- 【棘上窩】:肩甲棘上の凹み
- 【棘下窩】:肩甲棘下の凹み
- 【肩甲下窩】:肩甲骨前面(肋骨面)の凹み
- 【関節窩】:肩甲骨外側角にある上腕骨骨頭と関節を作る凹み
棘上窩には棘上筋、棘下窩には棘下筋、肩甲下窩には肩甲下筋が付着していています。
【肩甲骨】と関節
【肩甲骨】は、肩関節複合体(肩甲帯)の構成要素で、複数の骨と関節を構成しています。
いずれも肩関節複合体の要素です。
- 【関節窩上腕関節】:肩甲骨と上腕骨で構成される関節
- 【肩鎖関節】:鎖骨外側と肩甲骨肩峰による平面関節
- 【肩甲胸郭関節】:肩甲骨と胸郭(肋骨)で構成される関節

【肩甲骨】の動きが悪いとどうなる?
【肩甲骨】は、肩関節複合体(肩甲帯)の構成要素の一つで、複数の筋肉、腱、靭帯が付着しています。
【肩甲骨】の動きが悪かったり、左右差があったり、位置がずれている場合は、肩甲骨周りの筋肉が固くなっているか、筋緊張にアンバランスが生じているか、肩甲骨周りの筋肉がその動きを忘れて(休んで)しまっている状態なので、既に姿勢が悪く、肩こり・首こり・腰痛や全身の不調が生じているかもしれません。
【肩甲骨】の動きが制限されると腕(肩関節)の動きや胸郭の動きも連動して制限されるので、五十肩や四十肩などの腕が上がらない症状や姿勢の悪さにもつながります。
「肩甲骨はがし」で効果を出すには?
「肩甲骨はがし」「肩甲骨ほぐし」「肩甲骨ストレッチ」など、肩甲骨の動きを良くすると姿勢が良くなったり肩こり・首こり・腰痛などが解消するようにいわれていますが、肩甲骨自体の動きは非常に小さく複雑で、複数の筋肉が関与し、腕や胸郭の動きと連動しています。
そのため、胸郭や背骨から正しい姿勢で土台を作り、【肩甲骨】の位置や動きをバロメーターにすることで、より効果的に全身の機能を高めたり、よい姿勢を維持できるようになります。
【肩甲骨】周囲の筋肉
【肩甲骨】に起始停止をもつ肩甲骨を動かす筋肉や肩甲骨の動きを含む肩関節(肩甲帯)を動かす筋肉のまとめリストはこちらの記事をご覧ください。

筋肉名 | 肩甲骨付着部位 | 起始停止 |
---|---|---|
肩甲下筋(ローテーターカフ) | 肩甲下窩の内側2/3 | 起始 |
棘上筋(ローテーターカフ) | 棘上窩の内側2/3(脊椎上面含む) | 起始 |
棘下筋(ローテーターカフ) | 棘下窩の内側2/3 | 起始 |
小円筋(ローテーターカフ) | 後面外側縁上部2/3 | 起始 |
大円筋 | 後面外側縁下部1/3 | 起始 |
大菱形筋 | 後面内側縁(肩甲棘と対称になるような走行) | 停止 |
小菱形筋 | 後面内側縁(肩甲棘から下角) | 停止 |
小胸筋 | 烏口突起内側縁上面 | 停止 |
烏口腕筋 | 烏口骨突起の先端の内側部 | 起始 |
肩甲挙筋 | 背面内側縁(上角から肩甲棘) | 停止 |
前鋸筋 | 前面内側縁(上角から肩甲棘+内側縁+下角) | 停止 |
三角筋 | 肩甲棘下縁(後部繊維)肩峰外側縁(中部繊維) | 起始 |
僧帽筋 | 肩甲棘上縁および肩峰内側縁 | 停止 |
広背筋 | 下角 | 起始 |
上腕二頭筋 | 関節上結節(長頭)烏口突起先端外側(短頭) | 起始 |
上腕三頭筋長頭 | 関節下結節 | 起始 |
肩甲舌骨筋 | 肩甲骨上縁~烏口突起内側 | 起始 |
【肩甲骨】運動方向
肩甲骨はがしや肩甲骨ストレッチなどの効果を高めて肩こりや腰痛を予防するには、肩甲骨がどこにある骨でどんな動きをするのか解剖学的に理解する必要があります。
