関節の動きと可動域

【足関節(足部関節)と足趾関節】運動方向(作用とROM)【イラスト図解でわかりやすい運動学と解剖学】

レオナルドダビンチが「工学の傑作」と称賛した優れた構造を持つ【足関節(足部関節)および足趾関節】の運動方向や可動域(ROM)についてイラスト図解を用いてわかりやすくまとめました。

【足部関節】とは?どこにあるどんな関節

【足部(かかとや足首〜足のゆび先まで)】は左右合わせて56個の骨があり、「下腿骨(脛骨・腓骨)」つながって複数の「足部関節」を構成し、立位歩行時に床面と接して体重を支えつつ動作がコントロールできるように相互作用することで、足部の安定性と可動性を両立しています。

体重を支えて安定させつつも、水平方向(歩行やランニング)にも垂直方向(ジャンプ)に大きな運動ができるような仕組みで構築された足部関節」は、人体工学の最高傑作と言われています。

【足部関節と足趾関節】種類と解剖学構造

【足部(かかとや足首〜足のゆび先まで)】では、それぞれの骨結合ごとに関節面があるだけでなく、配列や筋肉の作用ごとに運動機能関節や足裏のアーチ(土踏まず)を作る構造などもあり、体重を支える足部の安定性を維持しつつ多様な方向へ運動を可能にしています。

関節名関節の種類要素
距腿関節
(Ankle Joint)
蝶番関節下腿骨(脛骨・腓骨)
距骨
距骨下(距踵)関節
(Subtalar Joint)
滑走関節
(+ 球状関節構造)
距骨下面
踵骨上面(後踵骨関節面)
距踵舟関節凹凸による球関節状関節距骨下面
舟状骨の前距骨関節面および中距骨関節面
踵立方関節滑走関節踵骨
立方骨
ショパール関節
(横足根関節)
滑走関節
(+ 球状関節)
距踵舟関節
踵立方関節
リスフラン関節
(足根中足関節)
滑走関節遠位足根骨(立方骨と楔状骨)
中足骨底
中足趾節間関節
(MTP)
顆状関節中足骨
基節骨
近位趾節間関節
(PIP)
蝶番関節基節骨
中節骨
遠位趾節間関節
(DIP)
蝶番関節中節骨
末節骨

「足部骨」の形状や配列、関節面の解剖学構造を理解して置くことで、運動方向がイメージしやすくなります。

足部骨について詳しくはこちら!

【足部関節】運動方向と可動域(ROM)

地面に足をつける運動(立位や歩行)においては、複数の【足部関節】による連動が不可欠です。

立位で踵を上げたり下ろしたりする時の主動作は、足関節(距腿関節)の【底屈⇄背屈】ですが、もし、足関節の動きが足関節(距腿関節)の【底屈⇄背屈】だけだったら、普通に歩行しているだけでもちょっとバランスを崩すだけで簡単に捻挫してしまいますし、サッカー、バスケ、テニスなど素早く方向転換してダッシュするようなスポーツはできません。

運動方向

足部運動が単純な矢上面での上下運動(背屈⇄底屈)だけでなく、前額面や横断面を含む動きがあること、複数の骨と筋肉で構成される足のアーチ構造があることで、立位歩行における唯一の接地面である足部の可動性と安定性が両立できる仕組みになっています。

関節名矢状面横断面前額面
足関節(距腿関節)底屈⇄背屈(内旋⇄外旋)(内反⇄外反)
距骨下関節(距踵関節)底屈⇄背屈内旋⇄外旋内反⇄外反
ショパール関節底屈⇄背屈内転⇄外転内反⇄外反
リスフラン関節底屈⇄背屈内転⇄外転内反⇄外反

【足部関節】運動は、歩行や立位運動で地面(床)を捉えたり、足を蹴り出すなどの際に重要な役割があり、これらの運動を起こす筋肉は下腿および足部の前面、後面、および側面に付着しています。

足部骨について詳しくはこちら!

足趾関節との連動

【距腿関節】の「底屈⇄背屈(矢上面)」は、歩行における足の蹴り出しや接地、立ち上がりやしゃがみこみなど基本動作時に頻回に行う運動なので、より遠位部にある「足趾関節」とも連動しています。

足関節を背屈する時は指と指の間が開く傾向があり、足関節を底屈する時は、指と指の間が近くように足先が押し合うようになります。

例えば、【距腿関節 背屈】はかかとを下げると同時につま先が上がる動作なので、同時に足趾間が開きやすい傾向がありますし、【距腿関節 底屈】は足先を引き下げて踵を持ち上げる運動なので、バレエのようにつま先(足趾)で地面を押す運動が同時に生じる傾向があります。

距腿関節

【距腿関節】とはいわゆる足首(ankle)部分にある狭義の「足関節」で、「下腿」と「足部」を繋ぐように3つの骨(脛骨 + 腓骨+ 距骨)で構成されています。

基本の運動方向(底屈⇄背屈

【距腿関節】は、「距骨上面の距骨滑車(円筒のような凸)」が「下腿骨(脛骨・腓骨)下面(凹)」に嵌まり込む構造である滑膜性の「蝶番関節」なので、基本の運動方向は「底屈⇄背屈(矢上面)」となります。

運動方向同時に起こりやすい運動参考ROM作用する筋肉
足関節背屈
(DorsiFlexion)
外旋 + 内反10-20度前脛骨筋
長趾伸筋
長母趾伸筋
第3腓骨筋
足関節底屈
(PlantarFlexion)
内旋 + 外反20-50度腓腹筋(膝伸展時)
ヒラメ筋
足底筋
後脛骨筋
長趾屈筋
長母趾屈筋
長腓骨筋と短腓骨筋

「足背」とは「足の甲(上部)」のことで、「しゃがむ」ときなど「足背」が「下腿骨前面」に近づく足関節運動を「背屈」呼びます。

【足関節背屈】は、歩行やランニングなどの際につま先が床を擦らないようにしたり、前傾姿勢を保つスキーやスケートなどで重要な運動で、下腿背面深層にある「後脛骨筋」や「長趾屈筋」や外側にある「長腓骨筋」なども足関節背屈に補助的に作用します。

一方、「足底」は「足の裏(下部)」のことなので、「立ち上がる」ときなど「足背」が「下腿骨前面」から離れる足関節運動を「底屈」と呼びます。

【足関節底屈】は体を前に押し出す運動なので、歩行、ランニング、ジャンプなどで重要な動きになり、主動作筋は下腿三頭筋です。

歩行において、「腓腹筋」は足を底屈してかかとを持ち上げ、「ヒラメ筋」は脚を足に安定させるために強い力を発揮しています。

「オープンチェーン(非荷重)」と「クローズドチェーン(荷重)」の違い

足部は立位歩行時に唯一接地面となる部位なので、【距腿関節】「底屈⇄背屈」運動も、オープンチェーン(非荷重)かクローズドチェーン(荷重)かで他の足部関節への連動や影響が大きく変わってきます。

椅子に座っていたりベットや床で長坐位になっている時など足首が自由に動ける完全な「オープンチェーン」の場合は、「下腿骨」に対して「距骨」が動くので他の足部関節には影響がありませんが、足部に体重が乗っている「クローズドチェーン」では、「下腿骨」や「距骨」を介して荷重を受ける他の足部関節も連動します。

【距腿関節】の安定性と運動軸

もう一つ抑えておきたいポイントは、【距腿関節】の安定性と運動軸が底背屈運動の角度によって変化するということです。

これは、「距骨」の前方が後方よりも平均で約4.2mmほど幅広になっていて、「距骨」と関節面を構成する「腓骨外果」が「脛骨内果」よりも後下方に位置していることにより生じます。

つまり、【距腿関節】可動域や運動方向を考える上で重要なポイントは、基本姿勢(真っ直ぐ立っていて一番安定している状態)では、下腿軸が内側に回旋して【距腿関節】が背屈しているということです。

バイオメカニズムの詳細を説明をすると長く難しくなってしまうので別の記事で解説しますが、足関節の運動方向と可動域を考える上で重要なことは、「荷重時(いわゆる日常の立位歩行やスポーツをする時)の足関節の運動においては純粋な足関節のみの底背屈など単関節や短軸方向での運動ではなく、他の関節の運動と付着する筋肉や靭帯などに影響を受けながらの複合運動になっている」ということです。

外旋⇄内旋(水平面)

【足関節(距腿関節)】は、運動により生じる軸の変化や他の骨との関節面との連動などで、踵を中心にした水平面で「外旋⇄内旋(水平面)」方向にもわずかに動きます。

内反⇄外反(前額面)

【足関節(距腿関節)】は、運動により生じる軸の変化や他の骨との関節面との連動などで、「前額面」では足裏が内側または外側に回転する「外反⇄内反(前額面)」方向にもわずかに動きます。

【足の外反】は、足の裏が身体の正中線から離れて外側を向く運動で、【足の内反】は足の裏側を見る時のように足の裏が身体の正中線から離れて内側を向く運動で、常生活だけでなく、サッカーのリフティングや空手など武道の蹴りなどでも重要な動きのひとつになります。

距骨下関節(距踵関節)

【距骨下関節(距踵関節)】は「かかとの骨(踵骨)」と「下腿骨に直接つながる距骨」の関節で、足関節の真下にあります。

【距骨下関節(距踵関節)】は、「かかと(踵骨)」と「脚(下腿骨)」をつないでいる関節とも言え、「足関節(距腿関節)」と連動して動くことで立位運動時の衝撃吸収に重要な役割を果たしています。

関節面の特徴

【距骨下関節(距踵関節)】は距骨下面と踵骨上面(後踵骨関節面)で構成される滑走関節ですが、以下の2つの関節面が作用して球関節の要素も加わり、過剰な内反や回内で捻挫や損傷を起こす時に問題となることが多い足部の関節のひとつでもあります。

  • 「距骨後下部」と「踵骨後上部」による後外側の関節面結合
  • 「距骨頭」「載距突起(踵骨)」「舟状骨」近位部による球関節と似た構造の前内側関節面(ショパール関節の一部)

運動方向:「矢上面」「前額面」「横断面」

【距骨下関節(距踵関節)】は基本3面での運動方向に加えて、三面の運動方向が合わさった複合運動も生じます。

運動面運動方向
矢状面底屈
背屈
前額面外反
内反
横断面内旋
外旋
複合運動回内
回外

「矢上面」「前額面」「横断面」の運動における基本的な考え方は「距腿関節」と同じなので、それらの複合運動である「回内⇄回外」運動について説明します。

回内⇄回外

【距骨下関節】で足部に体重が乗っている時は、「踵骨」に対し「距骨」が動くので、「距骨」の動きに連動して「下腿骨(脛骨・腓骨)」から下肢ポジションに変化が生じますが、足部に体重が乗っていない時は「距骨」に対して「踵骨」が動きます。

つまり、【距骨下関節】における【回内⇄回外運動】では、荷重時と非荷重時で異なる運動連鎖が生じます。

 回内回外
非荷重時踵骨外反+外転+背屈内反+内転+底屈
距骨なしなし
荷重時踵骨外反内反
距骨内転+底屈外転+背屈

非荷重時における【回内⇄回外運動】は、「距骨下関節」における「踵骨」の動きのみで、「距腿関節」や「横足根関節」は関与しません。

荷重時における【回内⇄回外運動】では、「踵骨」の動きに加えて「距骨」も動くため、より近位の関節やポジションに影響します。

ショパール関節(横足根関節):「距踵舟関節」 + 「踵立方関節」

【ショパール関節(横足根関節)】は、足根部を横断するように存在する以下の2つの関節の組み合わせのことです。

関節名性質構成要素
距踵舟関節凹凸による球関節状関節
(球関節より制限あり)
「距骨」「踵骨」「舟状骨」
踵立方関節滑走関節「踵骨」「立方骨」

【ショパール関節(横足根関節)】は、「距腿関節」および「距骨下関節」に連動して足根間で運動を行います。

運動面運動方向
矢状面底屈
背屈
前額面内反
外反
横断面内転
外転

リスフラン関節(足根中足関節)

【リスフラン関節(足根中足関節)】は、「遠位足根骨(立方骨と3つ並んだ楔状骨)」と「中足骨近位端」で構成される「滑走関節」で、足根部と足趾を繋いでいます。

【リスフラン関節(足根中足関節)】も、「距腿関節」および「距骨下関節」に連動し、足のアーチを平にしたり、盛り上げたりすることで、歩く、走る、ジャンプするなど体重を支えながら行う運動を調整する役割があります。

運動面運動方向
矢状面底屈
背屈
前額面内反
外反
横断面内転
外転

足部の「底屈⇄背屈」と同時に生じる【リスフラン関節(足根中足関節)】の「内反⇄外反運動」は、ゴツゴツした道や不安定な面で身体のバランスをとるために重要な作用です。

【足趾関節】運動方向と可動域(ROM)

【足趾関節】は、各足趾の「中足骨頭」と「基節骨底」による関節である【中足趾節関節】と各趾節間の関節である【指節間関節(遠位と近位)】があります。

【足趾関節】の基本運動方向は「伸展⇄屈曲」ですが、足根骨と関節を作る「中足骨」の動きに追随するように、足部関節の作用に応じた動きも生じます。

 中足趾節関節(MTP)母趾指節間関節(IP)近位趾節間関節(PIP)遠位趾節間関節(DIP)
 顆状関節蝶番関節蝶番関節蝶番関節
矢状面伸展⇄屈曲伸展⇄屈曲伸展⇄屈曲伸展⇄屈曲
横断面外転⇄内転MTPに追従MTPに追従MTPに追従
前額面回旋MTPに追従MTPに追従MTPに追従

つま先(足趾)は、立位保持や歩行において足部と連動するように働きます。

例えば、歩行時に足が地面から離れて前に降り出す時は、つま先が上方向に伸展しながらわずかに広がってつかっかりを防ぐ方向に動きますし、足が床に着地する時には屈曲することで地面を掴んで立位を安定させます。

足関節や足趾関節運動に作用する筋肉

「足部」や「足趾」に作用する筋肉は、下腿および足部に筋腹を持つ筋肉群です。

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