首(頸部)の筋肉

【頭長筋と頸長筋】椎前筋②【イラスト図解でわかりやすい筋肉解剖学(作用と起始停止)】

首前面から顎の下を引っ張る作用を持つことで重い頭が転がり落ちないように前から支え、頸椎の自然なカーブ(生理的前弯)にとても重要な首のインナーマッスル【頭長筋と頸長筋】の解剖学をイラスト図を用いてわかりやすく解説しています。

【頭長筋と頸長筋】とは?どこにあるどんな筋肉?

【頭長筋と頸長筋】は、椎骨前面を左右で挟むように縦に走行して頸部の生理的湾曲(S字カーブ:頚椎前湾)をサポートしながら頭部を頸部に安定させるためのインナーマッスル(姿勢筋)で、同じく「椎前筋群」に含まれる「外側頭直筋」や「前頭直筋」とも筋膜を共有しています。

 読み方/ふりがな英語
頭長筋とうちょうきんLongus Capitis
頸長筋けいちょうきんLongus colli

【頭長筋と頸長筋】も運動のための筋肉というよりも、頭部を頚部に安定させるための筋肉で、眼精疲労や肩首コリの原因となる背部(後部)の「後頭下筋群」や「板状筋」などの拮抗筋です。

スマホ首で短縮してコリ固まりやすいため、「後頭下筋群」や「板状筋」と合わせてコンディショニングをすることで、首こり、肩こり、眼精疲労、視力低下、疲れやすさなどの解消に役立ちます。

【頭長筋と頸長筋】起始停止

【頭長筋】は「椎前筋群」で最も表層にある縦長の筋肉で、全頸椎椎体前面に沿って頭頂部まで走行します。

【頸長筋】も頸椎前面にあり、椎体を挟むように左右対になって第一頸椎〜上位3胸椎間を走行する縦長の筋肉ですが、「垂直部」「上斜部」「下斜部」と3つの走行束があり、それぞれ上端と下端で細くなり中央部分が広くなっています。

筋肉起始停止
頭長筋C3-C6横突起の前結節後頭骨底部下面の咽頭結節外側
頸長筋 上斜部C3-C5横突起の前結節C1前結節
頸長筋 垂直部C5-T3椎体前面C2-C4椎体前面
頸長筋 下斜部T1-T3椎体前面C5-C6横突起の前結節

【頭長筋】起始停止と隣接組織(層)

【頭長筋】は、「3番目〜6番目の頸椎横突起前結節」から起始し、それぞれ上内側に走行しながら合して、「後頭骨(前頭直筋停止部の前で咽頭結節外側)」に停止します。

【頭長筋】は椎体に隣接して「全頸椎前面」をカバーしながら「後頭骨底」まで上行している筋肉で、「椎前筋」の中では最表層で、「前頭直筋」前部に位置し、【頭長筋】外側縁には咽頭後リンパ節があり、【頭長筋】と「前斜角筋」の間を前「椎骨静脈」および隣接する「上行頸動脈」が通過します。

【頸長筋】起始停止と隣接組織(層)

【頸長筋】は、「垂直部」「上斜部」「下斜部」と3つの走行束があります。

【頸長筋】各筋繊維は、咽頭後腔後方で椎体と横突起の接合部にある溝部分を走行しているため、【頸長筋】前面には「食道」「気管」「甲状腺」および「上下舌骨筋群」が存在し、「頸神経叢」「腕神経叢」「鎖骨下動脈」と接しています。

また、【頸長筋】外側は「前斜角筋内側」と隣接していて、「胸管」「頸部交感神経幹」「椎骨動脈(V1)」がその間を通過し、C7レベル【頸長筋】外側には「頸胸神経節」があります。

更に、【頸長筋】後方では、C6横突起結節の前上に「頸動脈」と「横隔神経」があります。

【頸長筋 上斜部 】起始停止

【頸長筋】上斜部は、「第3〜第5頸椎横突起の前結節」から起始し、上内側方向へ走行して「環椎(C1)前弓の前結節」に停止します。

【頸長筋 垂直部 】起始停止

【頸長筋】垂直部は、「下位3頸椎と上位3胸椎 (C5-T3)椎体前面」から起始し、垂直に上行して「2から4番目の頸椎(C2-C4)椎体前面」に停止します。

【頸長筋 下斜部 】起始停止

【頸長筋】下斜部は、「上位3胸椎(T1-T3)椎体前面」から起始し、上外側に向かって走行し、「5から6番目の頸椎(C5-C6)横突起前結節」に停止します。

【頭長筋と頸長筋】作用

【頭長筋と頸長筋】の主な作用(役割)は、頭頸部後面の伸筋群(「僧帽筋」「肩甲挙筋」「板状筋」「後頭下筋群」など)の拮抗筋として頭部を頸椎を全面から安定させつつ自然なカーブを保つこと(姿勢筋)です。

また、【頭長筋と頸長筋】は、他の椎前筋群や胸鎖乳突筋などと連携しながら「頭頸部の屈曲および回旋運動」に関与しますが、関節運動を起こすための筋肉として強い力(作用)はありません。

 両側収縮片側収縮
頭長筋頭頸部の屈曲頭部回旋(同側)
頸長筋頸部の屈曲頭部回旋(同側)、側屈(同側)

【頭長筋】作用

【頭長筋】は、他の「椎前筋群」や「胸鎖乳突筋」と共同して、頭頸部の屈曲筋として作用しますが、特に頭部伸展位から頭の位置を中間位に戻す時(姿勢をニュートラルに戻す時)によく働きます。

【頸長筋】作用

【頸長筋】は「頸椎の自然なカーブ(生理的前弯)を前側から支える」ことが主な作用の姿勢筋です。

【頸長筋】は、むちうちなどで頚部靭帯にゆるみが生じているとそれを補強するために過緊張になりやすく、筋膜性の疼痛も残りやすい特徴があります。

【頭長筋と頸長筋】神経支配

【頭長筋と頸長筋】は、脊髄神経前枝支配です。

 神経
頭長筋脊髄神経前枝C1-C3(C4)
頸長筋脊髄神経前枝C2-C6

【頭長筋と頸長筋】触診

「椎前筋」の中では表層にありますが、「舌骨筋群」の深層にあって直接的な触診は困難です。

頸椎前面で椎体を囲むように全頸椎を縦に走行する筋肉なので、首前面を動かすことで作用や走行を意識しやすくなります。

【頭長筋と頸長筋】ストレッチとトレーニング

【頭長筋と頸長筋】は、スマホやパソコンの使用などを使用している時になりがちな首を前に出した姿勢で短縮したまま動かず機能低下しやすい筋肉なので、意識して動かす時間を作り柔軟性を保つ必要があります。

【頭長筋】の走行(解剖図)のイメージを持って、【頭長筋】は首前面から顎の下を引っ張るように顎を引くこと、【頸長筋】は、首全体を丸めながら目線を少し下に下げる意識で顎をひくことで効果的に動かせます。

顎を動かそうとするよりもニュートラルな状態から目線を少し下にするイメージで行うと外側の大きな筋肉の影響をうけにくくなり、効果的にインナーマッスルである【頭長筋と頸長筋】強化できます。

拮抗筋である「後頭下筋群」を含む頸部背面の筋肉をほぐすことも重要で、首回りの筋緊張のバランスが整って頸椎の生理的湾曲が正常化すると、頭もスッキリし身体も軽く感じられるようになります。

また、そもそも【椎前筋群】に負担をかけない姿勢を意識することも効果的な【頭長筋と頸長筋】トレーニングやストレッチにつながります。

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【椎前筋】とは?どこにあるどんな筋肉?

【椎前筋】とは、「舌骨筋群」よりも更に深層部で頸椎前面に接して縦(上下)に走行する筋肉で、椎前筋膜に覆われる4つのインナーマッスル:【頭長筋・頸長筋・外側頭直筋・前頭直筋】が含まれ、頭蓋底から第3胸椎体まである頸部筋膜の椎前層に覆われています。

 読み方/ふりがな英語
前頭直筋ぜんとうちょくきんRectus Capitis Anterior
外側頭直筋がいそくとうちょくきんRectus Capitis Lateralis
頭長筋とうちょうきんLongus Capitis
頸長筋けいちょうきんLongus colli

【椎前筋】は、頭蓋骨と第一頸椎の関節である環椎後頭関節の安定と運動に作用する「頭直筋(外側頭直筋と前頭直筋)」と頸椎間を繋ぐように走行して首を前から支えつつ頭頸部の運動に作用する「長筋(頭長筋と頸長筋)」の2つに分類できます。

【椎前筋】はそれぞれ左右対称に存在し、主な作用はいずれも頸部屈曲ですが、それぞれの筋肉の走行が異なるため、私たちは目線の変化に合わせて頭頸部を様々な角度に調整できます。

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