関節の動きと可動域

【手首・手・手指関節】運動方向(作用とROM)【イラスト図解でわかりやすい運動学と解剖学】

細かい動作ができる【手関節(手首および手部部関節)および手指関節】の運動方向や可動域(ROM)についてイラスト図解を用いてわかりやすくまとめました。

【手首および手指関節】とは?どこにあるどんな関節

【手部(手首〜ゆび先まで)】は左右合わせて54個の骨で構成されていて、「隣接する手根骨や手指骨」結合による関節面はもちろん、前腕部との関節や機能(主要な運動方向)関節も定義されていて、細かく複雑な動作がコントロールできるように複数の関節が相互に連動しています。

関節名関節の種類要素
手関節
(橈骨手根関節)
顆状関節橈骨
手根骨(「舟状骨」「月状骨」「三角骨」)
手根中央関節平面関節手根骨近位列と遠位列
手根間関節平面関節各手根骨間
手根中手関節
(CMC関節)
鞍関節(第1指)
滑走関節(第2〜5指)
「各指中手骨底」と「遠位手根骨」
中手指節関節(MCP関節)顆状関節「各指中手骨頭」と「各指基節骨」
指節間関節
(IP関節)
蝶番関節「中節骨」がない母指の「基節骨頭」と「末節骨底」
または、「指節間関節」総称
近位指節間関節(PIP関節)蝶番関節第2〜5指「基節骨頭」と「中節骨底」
遠位指節間関節(DIP関節)蝶番関節第2〜5指「中節骨頭」と「末節骨底」
合わせてチェック!

【手首および手指関節】解剖構造と運動方向の特徴

【手首および手指関節】関節の運動は「前腕の位置」に関係なく生じますので、「手背⇄手掌」「橈側⇄尺側」「円運動」で運動方向を区別します。

関節名構造手背⇄手掌橈側⇄尺側円運動
橈骨手根骨関節(手関節)
Radiocarpal Joint
顆状関節掌屈⇄背屈橈屈⇄尺屈円運動
手根中央関節
Midcarpal Joint
平面関節回旋を伴う滑走回旋を伴う滑走N/A
手根間関節
Intercarpal Joints
平面関節回旋を伴う滑走回旋を伴う滑走N/A
手根中手関節
(CMC)
鞍関節(第1指)
滑走関節(第2〜5指)
屈曲⇄伸展外転⇄内転対立(円運動)
中手指節関節
(MCP)
顆状関節屈曲⇄伸展外転⇄内転円運動
指節間関節
(IP)
蝶番関節屈曲⇄伸展N/AN/A

「手指関節」においては、他の関節にはない「対立運動」は抑えておくべき重要な運動方向です。

「対立運動」とは親指と小指を近づけて手のひらを器のようにする運動で、「手根骨」と「屈筋支帯」によるアーチである「手根管(しゅこんかん)」の両端が近づきます。

【手根骨を含む関節】運動方向と可動域

【手根骨】とは、手首とつながる手の近位端にある8個(遠位列4個 + 近位列4個)の骨で、3種類の関節が連動しています。

関節名構造要素
橈骨手根骨関節(手関節)
Radiocarpal Joint
Wrist Joint
顆状関節いわゆる手首部分
手根中央関節
Midcarpal Joint
平面関節遠位手根骨列と近位手根骨列を分ける関節
手根間関節
Intercarpal Joints
平面関節手根骨間同士の関節
指と親指をつなぐ手のアーチ構造を形成

【手関節(橈骨手根関節)】とは「前腕」と「手部(手)」を繋ぐ関節で、いわゆる手首部分で、「手根間関節」は小指と親指をつなぐ手のアーチ構造を形成していますが、3種類の関節のうち、実際に動きとして測定できるのは前腕と手部の移行部である「橈骨手根骨関節」のみです。

【手関節(橈骨手根関節)】は「橈骨遠位端(凹面)」と「並列する3つの手根骨(舟状骨、月状骨、三角骨)」の凸面による「顆状関節」なので、以下の方向へ運動(可動)します。

手関節運動の説明
掌屈⇄背屈前腕に対して手を手掌側 ⇄ 手背側に動かす
橈屈⇄尺屈前腕に対して手を橈骨側 ⇄ 尺骨側に動かす(傾ける)
「舟状骨」と「橈骨茎状突起」が近いため、橈屈の方が制限が多い
手首を回す前腕に対して手(手根)を回旋させる
回内⇄回外前腕の回内 ⇄ 回外運動に追従して手のひらを回旋可能

「橈骨手根骨関節」運動の間、「手根中央関節」および各「手根間関節」は、橈骨との間でそれぞれの関節面でわずかに回旋しながら滑走するように動いています。

【中手骨を含む関節】運動方向と可動域

【中手骨】は、手背(手の甲)および手掌(手のひら部分)大部分を占める5本の骨で、「手根骨」と「手指骨」をつないでいます。

【手根中手関節(CMC)】は、「各中手骨底」と「遠位手根骨」による関節なので、部位ごとに構造が異なります。

手指種類構成要素
第1指鞍関節対立を含む広範囲に可動
第2指平面(滑走)関節ほとんど動かない
第3指平面(滑走)関節ほとんど動かない
第4指平面(滑走)関節4指で主可動
第5指平面(滑走)関節4指で主可動

第2〜第5指の【手根中手関節(CMC)】は、「手根骨遠位列」と「各中手骨」による「平面(滑走)関節」ですが、2番目と3番目の関節はほとんど動かず、主な可動は第4および第5指の【手根中手関節(CMC)】です。

「第1(母指)中手骨」と「手根骨(大菱形骨)」による関節のみ「鞍関節」で、手根中手関節(CMC)の中で一番可動性がある関節で、「屈曲⇄伸展」「内転⇄外転」に加えて、他の指との対立運動ができます。

 運動の説明
屈曲⇄伸展指を曲げ伸ばしする運動
外転⇄内転指の間を広げたり近づけたりする運動
対立親指が手のひらを経由して他の指と合わせる運動で母指の回旋を含む

「手根」と「手指」を繋いで手の甲/手のひら部分を構成する骨である「中手骨」を含む【手根中手関節(CMC)】は、対立運動を行うための関節として覚えておきましょう。

【手指骨を含む関節】運動方向と可動域

「手指骨」は片手で14本(母指2本と他の4指が各3本)があり、「中手骨との関節」および「指骨間の関節」があります。

手指種類構成要素
中手指節関節顆状関節「中手骨」および「末節骨」
指節間関節蝶番関節「指骨」間

【中手指節関節(MCP関節)】

【中手指節関節】は、「中手骨頭」と「基節骨底」による「顆状関節」です。

手指構成要素
第1指「第1中手骨頭」および「第1末節骨底」
第2指「第2中手骨頭」および「第2末節骨底」
第3指「第3中手骨頭」および「第3末節骨底」
第4指「第4中手骨頭」および「第4末節骨底」
第5指「第5中手骨頭」および「第5末節骨底」

「中手骨頭」は【中手指節関節(MCP関節)】を屈曲する(グーを作る)とメリケンサックのように飛び出てくる部分です。

 運動の説明
屈曲⇄伸展曲げたり伸ばしたりする運動
外転⇄内転指と指の間を広げたり閉じたりする運動(第3指が軸)
回旋(母指のみ)指を根元から回す

外転 ⇄ 内転運動では第3指が軸になって第3指から離れるように指と指の間隔が開く運動を「外転」、開いた指を戻して指と指の間を近づける運動を「内転」といいます。

母指運動は「鞍関節であるCMC関節運動」と同時に起こるため、他の4指にはない回旋運動が加わります。

【指節間関節(IP関節)】

【指節間関節】は、指節間による「蝶番関節」で、屈曲と伸展運動のみ可能です。

手指構成要素
第1指「第1基節骨頭」と「第1末節骨底」
第2指近位:「第2基節骨頭」と「第2中節骨底」
遠位:「第2中節骨頭」と「第2末節骨底」
第3指近位:「「第3基節骨頭」と「第3末節骨底」
遠位:「第3中節骨頭」と「第3末節骨底」
第4指近位:「「第4基節骨頭」と「第3末節骨底」
遠位:「第4中節骨頭」と「第3末節骨底」
第5指近位:「「第5基節骨頭」と「第3末節骨底」
遠位:「第5中節骨頭」と「第3末節骨底」

【指節間関節】においては、母指のみ「中節骨」がないためIP関節はひとつだけです。

【手首・手・手指関節】運動に作用する筋肉

【手部および手指関節】運動に作用する筋肉はこちら!

合わせてチェック!

-関節の動きと可動域