【腹横筋】とは、腹腔(コア)をコルセットのように囲んでいる腹筋群最深層にある筋肉です。
凹んだ下腹、きれいなくびれやウエストラインの土台や強く安定したコア(体幹)を作るための基礎になる腹筋である【腹横筋】の解剖学構造や作用についてイラスト図解を使ってわかりやすく説明しています。
目次
【腹横筋】とは?どこにあるどんな腹筋?
【腹横筋】は、名前の通り白線と直行するように横(水平)方向に走行している腹筋で、「腹圧を高める」「腹腔内の組織を守る」「姿勢を保持する」「呼吸をコントロールする」など、他の腹筋群と共同して様々な役割がある筋肉です。
読み方(ふりがな) | 英語 | |
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腹横筋 | ふくおうきん | Transverse Abdominal |
【腹横筋】は、腹筋群の中では「腹斜筋(外腹斜筋と内腹斜筋)」と共に「側腹筋群」に分類され、腹腔(腹壁)最深層にある薄いシート状の筋肉です。
「側腹筋群」は「前腹筋群(腹直筋と錐体筋)」とつながり、前面から側面までの腹腔の壁となる腹筋構造が完成します。
【腹横筋】は、腹腔を上下左右から囲む機能構造単位である「インナーユニット」の側面を構成し、安定したコア(体幹)作り(ボディメイクや運動パフォーマンス向上)や呼吸・発声の練習などでも意識してトレーニングすると結果が出やすくなります。
【腹横筋】起始停止
【腹横筋】は、広範囲の起始から「腹直筋」中央にある白線と直行するように、幅広い横向きの筋腹を構成しながら走行します。
起始 | 停止 | |
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腹直筋 | 第7~12肋骨の肋軟骨内面・腸骨稜前2/3・腸恥筋膜弓など | 白線・内腹斜筋腱膜・恥骨稜・恥骨櫛 |
【腹横筋】起始は、「鼠蹊靭帯上面外側1/3と関連する腸骨筋膜」「腸骨稜内唇の前部2/3」「腸骨稜と第12肋骨間の胸腰筋膜」「下位6肋骨および肋軟骨の内面」と広範囲になります。
【腹横筋】それそれの起始部から始まった筋繊維は、それぞれ腹壁を正中線に向かって水平に走行するため「白線」と直行します。
「鼠蹊靭帯」から起始する筋繊維は、「鼠径管」を超えて下内側にアーチを作り、「内腹斜筋」腱膜線維を結合して「結合腱」を形成し、「恥骨稜」および「恥骨櫛」に停止します。
その他の筋繊維は、「腹直筋鞘」を構成する広範囲の筋膜と結合して「白線」に停止します。
【腹横筋】と腹筋群(腹直筋・腹斜筋・腰方形筋)の連携
【腹横筋】腱膜は「腹直筋鞘(腹直筋と錐体筋の前外側を囲む多層腱膜構造)」を構成する要素のひとつです。
【腹横筋】腱膜は、「内腹斜筋」筋膜と腹直筋鞘後壁を構成して「腹直筋」後上部3/4を覆っています。
【腹横筋】と「内腹斜筋」筋膜は、腹直筋前部で「外腹斜筋腱膜」と収束して腹直筋鞘前葉下1/4を形成しますが、収束するポイントは弓状線と呼ばれ、臍の2.5cm下にあります。
【腹横筋】下縁の下方では、「鼠蹊靭帯」と共に【腹横筋】筋膜と「内腹斜筋および外腹斜筋」が続き、「鼠蹊靭帯」中央から約1.5 cm上方には、「深鼠径輪」と呼ばれる丸い開口部があります。
また、「深鼠径輪」の内側縁に沿って、【腹横筋】下縁部が「窩間靭帯」と呼ばれる繊維帯を構成する場合があります。
【腹横筋】作用
【腹横筋】の主な作用は、腹筋群の土台および腹腔を囲むインナーユニットの構成要素として、他コア筋肉群と相互作用して体幹を安定させ、腹腔内の臓器を保護しながら安定して働けるコア(腹腔)環境を作ることです。
【腹横筋】が腹腔内圧を高めたり腹壁として機能することで、呼吸をしたり、内臓の位置を安定させたり、排便を助けたりなど、生命維持や健康維持においても重要な機能を維持できます。
器官・関節 | 作用 | |
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運動 | 体幹 | 回旋(同側) |
姿勢保持 | 腹腔 | 姿勢安定(内臓保護) |
腹圧調整 | 腹腔 | 腹圧を上昇させる |
【腹横筋】は姿勢を安定させたると共に、ウエストのくびれを作ったり、体幹と呼吸が重要なあらゆる筋トレやエクササイズ、ヨガなどあらゆる運動の基礎にもなる腹筋です。
【腹横筋】単独で大きくわかりやすい関節運動をするわけではありませんが、呼吸と安定した体幹を作るための土台になる筋肉なので、普段の姿勢維持はもちろんあらゆる運動時にも活躍しています。
【腹横筋】神経支配
【腹横筋】は、「下部6胸椎神経(T7-T12)」による「下位5肋間神経の末端枝(T7-T11)」と「肋下神経(T12)」に支配されています。
更に、「腸骨下腹神経(L1)」と「腸骨鼠径神経(L1)」からも支配を受けています。
【腹横筋】触診
【腹横筋】は深層にあるため直接触れることはできませんが、お腹を背中につけるイメージで引っ込める運動で収縮を意識できます。
また、骨盤前側にある骨の出っ張った部分から指2本分くらい下部内側のあたりで、少し凹んだ柔らかい部分を探し、息を吐きながらお腹を膨らませた時や咳をすると、内側から【腹横筋】が盛り上がっているように感じられます。
【腹横筋】鍛え方(ストレッチと筋トレ)
【腹横筋】を鍛えるメリットはたくさんあります。
特に「下腹を凹ませたい」「横腹をスッキリさせたい」「腰痛を予防改善したい」「女子らしいくびれたウエストを作りたい」「運動のパフォーマンスを高めたい」「姿勢を良くしたい」「便秘を解消したい」などの場合には、【腹横筋】を解剖学的に正しく理解した効果的なトレーニングで効果が期待できます。
【腹横筋】トレは関節を動かす運動というよりも、あらゆる運動を行う際に「体幹を安定させること」や「呼吸」を意識することで効果的に筋トレできますので、この方法で【腹横筋】を鍛えることで、痩せやすく疲れにくい身体が作れますし、便秘も解消するなどの美容健康効果が期待できますし、姿勢が安定することで、腰痛予防や肩こり解消にもつながります。
【腹横筋】トレーニングやエクササイズは、高齢者や関節運動に制限がある人でも、座った状態でも寝た状態でも無理なくトレーニングできますし、お腹の横面、くびれたきれいなウエストが欲しい女子の腹筋トレーニング、呼吸と安定した体幹がキーになるヨガでも常に意識すべき腹筋です。
【腹横筋】筋トレ
【腹横筋】は、正しい姿勢を維持したり、深い呼吸を意識することで強化できます。
【腹横筋】を鍛えて体幹が安定することで、下腹が凹んだり、ウエストがくびれるのはもちろん、脚の負担が減ることで脚痩せ効果や上半身の余計な力が抜けることによる肩こりや腰痛解消も期待できます。
【腹横筋】単独でというよりも、インナーユニット全体や他の腹筋群との関連も意識しながら体幹を鍛えて整えていく意識を持つことが重要です。
体幹(軸)と呼吸を意識するヨガポーズや体幹に対して自重で負荷をかけるプランクなどの筋トレを正しいポーズで行うことがオススメです。
【腹横筋】ストレッチ
【腹横筋】を効果的にストレッチするには、深い呼吸(腹式呼吸)が最適です。
【腹横筋】解剖学構造を意識することで、更に効果を高められます。
【腹横筋】とインナーユニット
【インナーユニット】とは、腹腔(骨格で囲まれていない体幹部分)を上下左右から囲むように覆う機能構造単位(機能ユニット)のことで、「横隔膜」「腹横筋」「多裂筋」「骨盤底筋群」の4筋で構成されます。
筋および筋グループ | |
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上面 | 横隔膜 |
側面 | 腹横筋(内腹斜筋後部線維も含む場合あり) |
後面 | 多裂筋(最長筋と腸肋筋の腰部も含む場合あり) |
下面 | 骨盤底筋群 |
【インナーユニット】は、腹部にある大切な臓器(消化器や生殖器など)が正常に働ける空間を作る壁となるだけでなく、可動性を保ちながら体幹(コア)を安定させて、身体に負担の少ない正しい姿勢(背骨の正しいアライメント)を維持する役割があります。
腹腔をぐるりと腹巻やコルセットのように囲む構造の「腹横筋」は背中の筋肉(背筋群)を取り巻く結合組織(胸腰筋膜)に接続し、「腹横筋」が収縮することで体重を支える腰椎が安定します。
【インナーユニット】を構成する筋肉群の詳細構造(起始停止・作用・神経支配など)は、筋肉解剖学のページで詳細を解説しているので確認してみてください。
合わせてチェック!
背骨のアライメントを整えて姿勢を根本から改善し、下腹が凹んでくびれたウエストがある強くてキレイなコア(体幹)を作りたいならば、まず注目して鍛えるべきは【インナーユニット】です。