背骨を回旋させることにより椎間組織の弾性を高め、背骨と肩甲帯、背骨と骨盤帯の連携を調整する効果がある【ツイスト(ひねり)ヨガポーズ】の解剖学および運動学に基づく正しい姿勢の作り方、注意点、様々な応用ポーズの種類や効果、軽減方法などについてイラスト図解を用いてわかりやすく解説しています。
【ツイストヨガポーズ(アーサナ)】とは?
【ツイスト(ひねり)】とは背骨を長くするように各椎間を広げ、上半身と下半身を反対の方向へ回旋させることによって椎間関節がそれぞれ回旋し、背骨全体でひねりを生み出します。
【ツイストヨガポーズ】では、「骨盤の位置を固定して骨盤に対して上半身を回旋させる」か、「上半身と下半身を違いに反対方向へ動かす姿勢を作ることで背骨を回旋」させています。
【ツイスト(ひねり)】の動きは、振り向くときやゴルフのスイングなどで重要になりますが、「胸椎が含まれる胸郭に肩関節を介して付随する腕(上肢)」と「仙骨を含む骨盤と股関節を介して付随する脚(下肢)」はそれぞれ反対の方向へ誘導することで、【ツイスト(ひねり)】の強度は高まります。
イメージとしては、「雑巾しぼり」です。
濡れたタオルの水分を効果的に絞り出すには、両端を引っ張ってそれぞれ反対方向へひねる必要がありますが、このタオルを背骨に置き換えると【ツイストヨガポーズ】がイメージしやすくなります。
【ツイストヨガポーズ】を解剖学および運動学の観点から正しい理解を深め、安全に美容健康効果を高めましょう。
【ツイストヨガポーズ】効果
【ツイストヨガポーズ】には様々なバリエーション(種類)がありますが、背骨を回旋させるポーズにより主に以下の効果が期待できます。
- 背骨の柔軟性や可動域を高める効果
- 椎間板や椎間組織の水分量や潤滑性を高める効果
- 背骨と肩甲帯の連携を調整する効果
- 背骨と骨盤帯の連携を調整する効果
- 腹筋強化&ストレッチ&内臓マッサージ効果
- 左右非対称を整える効果
【ツイストヨガポーズ】とは背骨の回旋運動なので、背骨の可動性や可動域だけでなく椎間板(椎間の軟部組織)の機能改善や、背骨に付随する肩甲帯および骨盤帯との連携調整にも効果的です。
背骨調整効果
椎間を長くして回旋させる【ツイストヨガポーズ】では、背骨周りの筋肉を強化&ストレッチする効果が高く、人体の大黒柱である背骨の可動域や柔軟性を高め、姿勢を整える効果が期待できます。
椎間板の潤滑性向上
Mel Robin 氏の研究によると、【ツイスト(ひねり)】による圧縮力により椎間板が脱水して椎間板の厚さと背骨の長さが減少するが、【ツイスト(ひねり)】から解放されると椎間板と椎間内組織は回復した血流により再度加水されました。
つまり、適度な【ツイスト(ひねり)】を実践することにより椎間板の潤滑性を保つ効果が期待できます。
背骨と肩甲帯および骨盤の連携調整
背骨は頭蓋骨、胸郭、骨盤と共に身体の軸となり、その軸に肩甲帯から始まる上肢と骨盤から始まる下肢が付随しています。
肩甲帯は胸郭上の肩甲骨と鎖骨を含んで腕を体幹軸に接続し、骨盤を介して背骨と脚を接続していますが、この骨構造に複数の筋肉群が作用することで、上肢と下肢が体幹に接続された状態を維持したり、様々な運動ができます。
肩甲骨周りの筋肉が緊張して硬くなったり、筋緊張のアンバランスが生じると、肩甲骨を正常な位置に保持できなくなるため、腕の動きだけでなく、背中上部、肩、首のコリや痛み、姿勢不良などの原因になります。
骨盤周りの筋肉が緊張して硬くなったり、筋緊張のアンバランスが生じると、仙腸関節痛、腰痛、腰や脚の張りや重だるさなど様々な問題の原因になります。
筋肉のアンバランスや異常緊張が生じる主な原因は、普段の不良姿勢(座っている時間が長い、左右非対称...など)ですが、【ツイストポーズ】は、乱れた肩甲帯と背骨、骨盤帯と背骨の連携を調整する効果にも優れています。
腹部強化 & 内臓マッサージ効果
【ツイストポーズ】を効果的かつ安全に行うには、背骨の回旋運動に合わせてコアの筋肉組織(腹直筋・腹斜筋・腰方形筋)をしっかりと収縮させる必要があります。
また、腹圧を高めながら背骨をツイストすることで、腹腔内の内臓を一時的に圧迫するため、腹部内臓のマッサージして循環を改善する効果も期待できます。
左右非対称を整える
人体構造を重力空間内で支え、痛みを生じることなく機能的な動きをするためには、前後の適切なバランス、左右の最適なバランスが不可欠です。
例えば、身体を右にツイストすると、肩甲骨を胸郭と背骨に付帯させる筋肉群が作用して右肩甲骨が背骨に近づく(内転する)と同時に、左肩甲骨周りの筋肉はストレッチされて背骨から離れる方向へ動きます。
また、ほとんどの【ツイストポーズ】では片方の股関節を屈曲+内転位で保持し(身体の中心に向かって脚を折り曲げ)ますが、この時股関節内側の筋肉は収縮し、太もも内側の筋肉はストレッチされています。
このように、背骨と骨盤帯、背骨と肩甲帯を結びつける筋肉群が左右交互に収縮とストレッチさせることができるので筋緊張のアンバランスが整い、軸骨格と四肢骨格を正常のアライメントに整える効果が期待できます。
【ツイストヨガポーズ】種類と正しいやり方
【ツイストポーズ】はバリエーションをつけやすく、体幹だけをひねるものから脚を大きく使った負荷が大きいポーズもあり、肩甲帯に特化する、骨盤帯に特化する、など目的に応じてフォカース範囲を限定して安全に高い効果も得やすいヨガポーズです。
背臥位・坐位・立位の3つに大きく分類し、バリエーションや軽減方法などについて詳しく説明します。
主効果 | 特徴 | ヨガポーズ例 |
---|---|---|
背臥位 | 負荷が小さく応用範囲が広い | Jathara Parivartanasana (ジャタラ・パリバルタナサナ) |
坐位 | 骨盤の位置が固定されるため、胸椎からの背骨回旋を深めやすい | Bharadvajasana (バラドヴァージャ・アーサナ) |
立位 | 腕や脚の自由度が高く、背骨、肩甲帯、骨盤帯の筋肉群など広範囲にアプローチできる | Parivrtta Trikonaasana (パリヴリッタ・トリコナーサナ) |
四つんばい | 背骨への重力負荷を除いた状態で、ストレッチができる | ねじりキャットのポーズ |
【ツイストポーズ】ごとの特徴や負荷のかかる部分と効果を意識して、目的に応じたヨガポーズを選びましょう。
背臥位ツイストポーズ
背臥位で行う【ツイストポーズ】のほとんどが「Jathar Parivartanasana(ジャタラ・パリバルタナサナ)」のバリエーションです。
サンスクリット語 | 日本語 | 英語 |
---|---|---|
Jathar Parivartanasana (ジャタラ・パリバルタナサナ) | リクライニングツイスト | Supine Twist/Master Revolved Abdomen Pose |
サンスクリット語でJathar(ジャタラ)は「お腹」、parivartana(パリバルタ)は「完全に回旋する」という意味で、英語では「Supine Twist」や「Master Revolved Abdomen Pose」などと呼ばれています。
背中(肩甲帯)を床に安定させた(胸郭を固定した)状態で背骨を回旋させて骨盤帯だけが回旋するため、リクライニングツイストなどと訳されている場合もあります。
「Jathar Parivartanasana(ジャタラ・パリバルタナサナ)」はには、背骨回旋効果に加えて、股関節外側と腰部をストレッチしつつ頸部を緩める効果がありますが、基本のポーズからの応用範囲が広く、首、肩、上背部のストレッチ要素を強化することもできますし、股関節、骨盤、脚の強化やストレッチ要素を強化するためのバリエーションも豊富に展開できます。
栄養豊富で、単品でも様々な料理に加えることでも高い美容健康増進効果のある食品を「スーパーフード」と呼びますが、負荷が小さいのに身体の機能を根本的に整える効果が非常に高く、個々人の身体の状態や目的に合わせたバリエーション展開が豊富な「Jathar Parivartanasana(ジャタラ・パリバルタナサナ)」はヨガの「スーパーポーズ」のひとつといってもいいくらい注目したいポーズです。
ヨガに挑戦しようとするとき、どうしても見た目のインパクトや達成感を求めて難易度が高い複雑なポーズに挑戦したくなりますが、身体の機能を根本的に整える効果が非常に高いヨガポーズは、高い筋力や関節の柔軟性が必要なポーズばかりではありません。
むしろ、シンプルでリスクが小さく誰でも簡単に挑戦でき、応用範囲(バリエーションの幅)が広くて様々な効果を安全に得ることができる「Jathar Parivartanasana(ジャタラ・パリバルタナサナ)」のような「スーパーポーズ」こそ丁寧に頻回に取り組みたいヨガポーズです。
リクライニングツイスト(ジャタラ・パリバルタナサナ)
「Jathar Parivartanasana(ジャタラ・パリバルタナサナ)」には様々な応用パターンがありますが、一番伝統的なポーズは脚を真っ直ぐ伸ばして足を揃え片手で足のつま先を掴み、脚全体でレバレッジをかけながら背骨を回旋して骨盤帯を左右のいずれかへひねります。
この方法では脚によるレバレッジが非常に大きいため、ハムストリングを強く引っ張り、腰、仙骨、股関節、頸部に負荷がかかりやすい傾向があるため、1)両膝を揃えて屈曲する、または2)片脚は伸ばしたまま片脚を屈曲する方法のいずれかで行う場合がほとんどです。
背臥位で腕は床の上で肩の高さで外転させ手掌を上に向け、脚は膝を曲げて胸に寄せるように持ち上げます。
この準備姿勢の段階で呼吸を繰り返しながら腰の組織をリラックスして緩めるように少しゴロゴロします。
吸う息と共に背筋を伸ばして軸を長くしたら、吐く息と共にゆっくりと腹筋群を収縮させて腰椎の前弯を維持したまま、膝を積み重ねるようにしたまま脚をゆっくり右側(肘の方向)へと下ろしていき、同時に頭部を左に回旋させます。
このとき上半身(肩甲帯から腕を含む)は床から離れないようにし、膝が床に着かない場合はブランケットやタオルなどを使って姿勢を安定させます。
また、膝が骨盤より下になると腰椎に負荷がかかりやすく、首・肩・上背部が緊張して床から離れやすくなるので、膝を骨盤より上になるようにして背骨が回旋しやすい軸を維持しましょう。
膝の位置を調整したり、膝の下にブランケットを置いたりしても肩が床から浮いてしまう場合は、手を上の骨盤の上に乗せるなどして肩の痛みや緊張がが出ないように調整しましょう。
また、首を反対方向へ回旋すると痛みや違和感がある場合は、膝と同じ方向を向いたままにします。
戻るときは息を吸いながら、上半身(肩甲帯から腕を含む)は床から離れないように意識しながら脚と持ち上げて元の姿勢に戻り、反対側も同様に行います。
リクライニングツイスト(ジャタラ・パリバルタナサナ)バリエーション
両膝を揃えて屈曲するポーズでは背骨の回旋と腰の筋肉ストレッチ(片方ずつ)に適したポーズで、脚の位置や動きを変更すると、外転筋、回旋筋、股関節屈筋群やハムストリングなど股関節や脚の筋肉にもアプローチできますし、下半身を動かさず仙腸関節や腰部を保護しながら腕の位置や動きを調整することで、ターゲットを上背部、肩、首のストレッチや強化に変更するアレンジもできます。
また、腹筋を強化したいときは回旋動作に入るときに腹筋群の負荷を段階的に高め、脚をゆっくりと時間をかけて倒していくことで腹部強化トレーニングもできます。
さらに、臀筋群を鍛えた後にじっくりストレッチしたい場合上の脚を下の脚にクロスさせ、呼吸と共にツイストを深めたり、梨状筋を緩めたい場合は、膝を上下に動かすなどのアレンジもできます。
坐位でのツイストポーズ
坐位での【ツイストポーズ】にも様々なバリエーションがありますが、基本的に骨盤の位置が固定されるため胸椎から回旋を深めやすいヨガポーズで、胸の開きを十分に感じられると開放感があり、リフレッシュ効果も高められ、精神安定効果もあります。
サンスクリット語 | 日本語 | 英語 |
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Bharadvajasana (バラドヴァージャーサナ) | 聖者バラドヴァージャのポーズ | Bharadvaja’s Twist Pose |
さらに、肩甲帯から腕を使ってレバレッジをかけて胸椎からの回旋角度を深めやすいポーズですがその分負荷も大きくなりがちなので、解剖学的に椎骨の回旋構造を理解しておくことが重要です。
背臥位に比べて椎間にダイレクトに重力がかかるため、回旋前にしっかりと腹圧を高めて背骨の軸を作ることも重要です。
座位のツイストポーズ
安楽座の状態から上半身をツイストする基本のポーズの注意事項から確認しましょう。
- 安楽座を取り、軸(背骨)を真っ直ぐ伸ばす
- 上半身全体を、腰椎・胸椎・頸椎の可動域を意識しながらゆっくりと回旋させる
聖者バラドヴァージャのポーズ (バラドヴァージャ・アーサナ)
聖者バラドヴァージャを讃えたポーズと言われる「聖者バラドヴァージャのポーズ (バラドヴァージャ・アーサナ)」は、代表的なツイストポーズのひとつです。
正座の状態から膝を揃えたままお尻を右にずらし、左足の甲を右の土踏まずに乗せたら、頭頂から引っ張られているイメージで椎間を広げるように背筋を伸ばして胸を張り、胸を右へ向けるように体幹を回旋していきます。
片方の骨盤の位置が少し高くなる(骨盤が左右非対称になる)ポーズのため、中心バランスを維持するために身体の側屈が必要となりますが、バランスが取れず重心が後ろにずれてしまう(骨盤が後傾して腰椎前弯が消失してしまう)場合は、床についているお尻の下にタオルなどを入れて骨盤の高さを合わせる、膝と膝の間を開ける、支える手の下にブロックなどを置き高い位置で支える、などの方法で軽減します。
また、背骨の回旋が1番の目的なので、坐位姿勢は適宜アレンジできます。
立位で行うツイストポーズ
立位で行う【ツイストポーズ】では、背骨、肩甲帯、骨盤帯の筋肉群をまとめてストレッチや強化したりでき、非対称性(左右差)の調整にも優れています。
サンスクリット語 | 日本語 | 英語 |
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Parivrtta Trikonaasana (パリヴリッタ・トリコナーサナ) | ねじった三角のポーズ 三角ねじりのポーズ | Revolved Triangle Pose |
Parivrtta Parsvakonasana (パリヴリッタパールシュヴァコーナーサナ) | ねじった体側を伸ばすポーズ | Revolved Side Angle Pose |
立位で行う【ツイストポーズ】のほとんどは、腕や脚の自由度が高いため負荷を高めるアレンジも様々ですが、その分正しい知識と自分の身体への意識がなければ簡単に身体を痛めるリスクも高められますので、解剖学的に正しい理解を持って取り組みましょう。
ねじった三角のポーズ(パリヴリッタ・トリコナーサナ)
「パリヴリッタ」は、「まわる」「ふりかえる」という意味のサンスクリット語で、【パリヴリッタ・トリコナーサナ(Parivrtta Trikonaasana)】は、ヨガの代表的なポーズである「三角のポーズ(トリコナーサナ)」を回転させた(ねじった)ヨガポーズです。
「三角のポーズ(トリコナーサナ)」よりも難易度は高くなりますが、三角のポーズに股関節とウエストのひねりが加わるため、特に下半身とウエストの引き締め効果に優れたヨガポーズです。
三角のポーズから流れで行うと効果の違いを実感しやすいと思います。
- 三角のポーズを作る
- 腰が床と平行になるように上半身を下げ、膝を緩めて両手を床に着く
- 骨盤が真っ直ぐ正面を向くように上半身を起こして軸(背骨)を伸ばす
- 後ろに引いている脚側の手を肩の真下になる位置で床に置き、前脚側の手は腰に添える
- 胸を開きながら、腰に添えていた側の腕を上に伸ばして目線を指先に向ける
また、全身のリンパを刺激する効果もあるため、ポーズを開放した後に全身の血液やリンパの流れが改善して、上質のマッサージや整体のあとのように身体をスッキリさせる効果もあります。
右脚を大きく後ろに引いて右つま先を少し外側に向けたら、骨盤を立てて背骨はニュートラルのまま土台を安定させます。
息を吐きながら上半身を前に傾けて右腕を十分に前に伸ばしてから右手の甲を左脚の外側に添えます。(余裕があれば床についても良い)
腹筋に力を入れておへそから身体を左にねじりながら左腕を上げて胸を開き、余裕があれば首を回旋させて目線が左手の方を向くようにします。
前屈や【ツイスト】を深めるときは、腹筋をしっかりと収縮させて背骨のアライメントを崩さないことを最優先します。
ハムストリングが硬いなどが原因で前屈が深められない(手の平を床につけたり、脚に手を添えることが難しい)場合は、膝など高めの位置に手を添える、ブロックを利用する、膝を曲げるなどの方法で軽減してください。
首に違和感がある場合や上を向くことで苦しくなる場合などは、目線は下のままで構いません。
下半身が安定してバランスが安定してくると上半身や肩の力が抜けて、胸の開きや首の動きも自然と滑らかになっていきます。
ねじった体側を伸ばすポーズ(パリヴリッタパールシュヴァコーナーサナ)
【ねじった体側を伸ばすポーズ(パリヴリッタパールシュヴァコーナーサナ)】は、上半身をねじって体側を伸ばすヨガポーズです。
「パリヴリッタ」は「ねじった(回転した)」「パールシュヴァ」は「側面」「コーナ」は「角」を意味するサンスクリット語で、大きく開いた脚で重心を支え、体側伸ばしつつウエストの深いひねりを加えたヨガポーズです。
英語では「Revolved Side Angle Pose」、日本語では「ねじった体側を伸ばすポーズ」などと訳されています。
戦士のポーズ2(英雄のポーズ2)のように脚を大きく開いて全身を支え、ねじった三角のポーズ(三角ねじりのポーズ)よりも深いねじりを加えたポーズなので、より高いバランス感覚や柔軟性が必要になります。
土台が安定して柔軟性が向上してくると、足や手の位置で負荷や効かせたい場所をアレンジした応用バリエーションも楽しめ、両手を胸の前であわせるバージョンである「プレイヤーズツイスト」、背中で手をつなぐようにしてねじりを深める「バッダパリヴリッタパールシュヴァコーナーサナ」などがあります。
【ねじった体側を伸ばすポーズ(パリヴリッタパールシュヴァコーナーサナ)】の一番の効果は、普段意識しにくい体側(横腹)の伸びとひねりを感じられることですが、そのためには下半身を安定させてバランスを取る感覚が必要なので、太ももや股関節周りの柔軟性を高め、脚やお尻のラインを引き締めて鍛える効果にも優れています。
【ねじった体側を伸ばすポーズ(パリヴリッタパールシュヴァコーナーサナ)】を立位から始める場合は、ニュートラルな姿勢から左脚を大きく後ろに引き、右膝は90度程度屈曲して膝がかかとよりも前に出ないように調整してから、左膝を床につけて安定させます。
左肘はしっかり右膝の外側にひっかけられるようにしてから、上半身を十分に右にひねりますが、ひねりによって骨盤の左右差が出ないこと、膝が内側に入っていないことを確認してかかとから頭頂までが一直線になるように背骨を真っ直ぐに整えます。
左手を右足の外側に置いて右腕は耳に沿わせて頭上へ伸ばすか、両手を胸の前で合掌し、余裕があれば目線は上にします。
この姿勢で安定すれば左膝を床から離して伸展させたり、更に余裕が出てくれば左足を45°くらいの角度に開いてカカトを床に下ろしてポーズを深めます。
また、土台となる下半身が安定して更に上半身のひねりを深めたい場合、腹斜筋や回旋筋など体幹を回旋させる筋肉への負荷は、腕で太ももを押す力で調整しましょう。
四つ這いまたはダウンドッグからポーズを作る場合は、四つ這いまたはダウンドッグから右脚を前に出し、膝は90度屈曲し右足が左手の内側かつ膝がかかとよりも前に出ないように調整します。
後ろになる左脚は膝をついてつま先立ちにして骨盤の左右差が出ないこと、膝が内側に入っていないことを確認してかかとから頭頂までが一直線になるように背骨を真っ直ぐに整え、左の肘を右ひざの外側にかけるようにして上半身をねじります。
あとは、胸の前で手を合わせて合掌したり、左手を右足の外側につき、吸いながら右手を上に伸ばすなど個々の状態に合わせてアレンジを加えましょう。
使っている筋肉を意識することで、さらに効果を高められます。
- 大胸筋(上の手で下の手を押すようにするとより効果的)
- 僧帽筋(肩甲骨を安定)
- 三角筋(腕でふとももを押して体幹ねじりをサポート)
- 大臀筋(ストレッチされつつ股関節を安定させる)
- 中臀筋(ストレッチされつつ膝の内転を抑制)
- 大腿四頭筋(前後の脚で全身を支える)
- 内腹斜筋と外腹斜筋(体幹回旋)
- 腰方形筋(骨盤と胸郭のつながりをサポート)
- 脊柱起立筋(体幹の安定)
- 回旋筋(背骨の回旋)
- 多裂筋(背骨の安定)
【ねじった体側を伸ばすポーズ(パリヴリッタパールシュヴァコーナーサナ)】でバランスを安定させ上半身ねじりを深めるためには、まず土台となる下半身を安定させる必要があります。
足の位置と脚の感覚を調整してバランスの取りやすい姿勢になるまで軽減し、軸(バランス)感覚が掴めるようになったら、次の段階へ進めていきましょう。
前脚(足)で負荷を調整する場合は、膝屈曲角度90度(太ももが床と並行)が目標ですが、ぐらつくかずに下半身が安定する位置まで屈曲角度を減らして軽減してください。
後脚(足)で負荷を調整する場合は、以下の順番でレベルを上げてください。
- レベル1:つま先立ちで膝をつく
- レベル2:膝を伸ばす
- レベル3:膝を伸ばして足裏を着く
- レベル4:膝を伸ばして足裏を着き、足先を斜め45度外側に開く
安定した下半身と背骨の軸ができるようになってから、【ツイスト(ひねり)】を深めたり、腕や手の位置で様々なアレンジや負荷の調整などバリエーションを広げていきましょう。
また、下半身やバランスが安定していない状態で顔(目線)だけ動かそうとすると首を痛めてしまいますので、今とれるポーズで自然と向く方向で首はリラックスさせておきましょう。
四つばいで行うねじり(ツイスト)ヨガポーズ
「ねじりのキャットポーズ」は、キャットアンドカウポーズの後などシークエンスにも含まれることが多いヨガポーズです。
背骨への重力がかからないので、リラックスしながら肩や背中周りの筋肉をしっかりストレッチできます。
- 四つん這いになる(足のつま先は立てたままでも寝かせてもどちらでもよい)
- 片方の腕を真横に伸ばし、腕を伸ばしたまま体前面を横切るように水平内転し、肩の外側と頭を床に置く
- 腕になった方の腕を上に上げ、肘を曲げて手を腰の後ろに回す
- 肩甲骨の付け根から胸を開いて肩の力を抜く
【ツイストヨガポーズ】効果を高めるコツと注意ポイント
ツイストのポーズの主な目的は脊骨回旋で、付随する肩甲帯および骨盤帯と背骨の正常なアライメントや接続を整える効果もあります。
ただし、すでに身体のアンバランスがあり、例えば仙腸関節の痛みがある場合などはツイストで悪化する場合もありますので、自分の身体を理解し、達成したい目標に対して適切なアプローチなのかどうか解剖学的な正しい理解を持って取り組みましょう。
背骨(椎骨)の基本構造と回旋角度を理解する
回旋する背骨の関節(椎間関節)は、7本の頸椎-12本の胸椎-5本の腰椎-骨盤の構成要素である仙骨のそれぞれの間にあります。
解剖学構造およびその役割により、そもそも回旋できる可動域には違いがあります。
椎骨 | 回旋可動域 |
---|---|
腰椎 | 約5度 |
胸椎 | 約35-40度 |
頚椎(第2-第7) | 約40度 |
頚椎(第1) | 約40度 |
上半身を支えることが主な役割の腰椎はほとんど回旋しませんしが、目線(頭)とつながる上部頸椎は大きな回旋可動域を持っています。
上半身(背骨全体)を効果的かつ安全に【ツイスト】して、姿勢改善やウエストシェイプ効果を目指すのであれば、中心にある胸椎から回旋するイメージをしっかりと持ちましょう。
首を捻って後ろを見ること(頸椎の回旋)では、ウェストシェイプ効果は期待できませんし、腰を無理に回旋させようとすれば腰痛の原因になります。
また、背骨を回旋させるための筋肉の走行も理解しておくことで、正しい運動方向がイメージできるようになります。
【ツイスト(ひねり)】の基本原則を理解する
【ツイスト(ひねり)】には様々なバリエーションがありますが、どのねじりポーズでも基本原則は同じです。
- 背骨を長くする(回転軸を作る)
- 腹圧を高めて中心(胸椎)から回旋を開始する
- 胸郭と骨盤を反対方向へひねり背骨全体で回旋する
- 必要に応じ腕や脚でレバレッジをかける
簡単にまとめると、【ツイスト(ひねり)】の基本原則は「伸ばす(吸う)→締めるて中心から回旋を開始する(吐く)→背骨全体で回旋する」であり、あくまで背骨を回旋させることにフォーカスし、腕や脚でのレバレッジは最終的なオプションになります。
背骨を長くして回転軸を作る
【ツイスト(ひねり)】つまり、背骨を回旋できる状態にするには回転軸が必要です。
タオルを絞るときも上下から引っ張ることで綺麗に絞れるように、第一ステップでは、息を吸いながら頭頂から尾骨までの背骨のラインを上から引っ張られるように伸ばします。
ただし、タオルのように真っ直ぐ(一本の棒のような直線)にするという意味ではありません。
ただし、人間の背骨は横から見たときに全体でS字を描くようにカーブ(生理的湾曲)していますので、背骨のニュートラルカーブ(生理的湾曲)を維持したままそれぞれの椎間を少しづつ広げるイメージになります。
椎間間隔を開き、ニュートラルカーブ(生理的湾曲)を維持した背骨の正常な回転軸ができていない状態で回旋しようとしても、回旋できる場所が限定されてしまうため、背骨の一部分に過剰な負荷がかかってしまい危険です。
腹圧を高めて中心から回旋を開始する
安全かつ効果的に【ツイストポーズ】を行うには、背骨全体で回旋による負荷を分散させる必要があります。
構造上ほとんど回旋できない腰椎(腰)を保護しながら回旋に参加させるため、呼気で腹筋群を徐々に収縮させながら背骨の中心部分である胸郭から回旋を開始し、上下へ回旋を広げていきます。
腹部の収縮が不十分だと胸椎の一部と骨盤だけでの回旋になりがちで、下部胸椎から腰椎に過剰な負担がかかり危険です。
また、頭部が付着する上部頸椎は解剖学上の回旋可動域が他の椎骨よりも圧倒的に大きいですが、胸椎の回旋を伴いわない頸椎の回旋は頭部の回旋(目の位置の移動)にしかなりません。
胸郭と骨盤を反対方向へひねり背骨全体で回旋する
軸を伸ばして中心から回旋を始めたら、タオル絞りのように「体幹の筋肉を使って」胸郭と骨盤を異なる方向へひねります。
ポーズによっては骨盤が固定されている場合は胸郭のみで回旋を深めますが、この時はよくある間違いとして左右の肩甲骨を近づけて肩を動かしてツイストしたような気になってしまう例をよく見かけます。
ツイストのポーズのターゲットは背骨の回旋なので、左右の肩甲骨の間は広くとって胸をしっかりと開いた状態を維持したまま、そして、骨盤をしっかりと固定したまま、骨盤と胸郭をつなぐように走行している腹斜筋がしっかりと伸びていることを感じながら、背骨を回旋することに意識を向けましょう。
ツイストの時に肩甲骨の位置まで意識することで、ウエストだけでなく、気になる二の腕の引き締め効果も高まります。
また、一度回旋を加えたら、再度回旋する前にステップ1の背骨を長くして軸を作ることからやり直します。
腕や脚でレバレッジは一番最後
【ツイストポーズ】の目的は背骨を回旋させることなので、原則手脚は背骨の動きに自然に追従させます。
腕や脚に意識を向けてしまうと、ツイストされていないのに、やっている気になってしまうのでそもそもツイストポーズの効果は期待できません。
また、体幹の筋肉で背骨を回旋するのではなく、ツイストを深めようと腕や脚で過剰にレバレッジをかけると本来の可動域を超えて圧迫が加わるため、肩、股関節、仙骨を痛める可能性があります。
腕や脚でレバレッジをかけるのは背骨の回旋が正しくできるようになった後に、本当に必要な場合のみ行ってください。
椎間板に負担をかけることはしない
【ツイストポーズ】は正しく行うことで背骨の可動域や柔軟性だけでなく、椎間板(椎間組織)の水分量や潤滑性を高める効果も期待できます。
ただし、【ツイスト(ひねり)】の動きに際して、必ず椎間構造が圧迫されていることを忘れてはいけません。
そのため、椎間板にそもそも問題がある人、重度の側湾症など背骨のアライメントに大きな問題がある人は【ツイストポーズ】をそもそも行わないようにしましょう。
ほとんどの人は生活習慣から多少なりとも左右非対称の姿勢をしていますが、極端な非対称性がある場合、第一ステップである背骨を長くすることが困難であるため、回旋に耐えうる軸が作れません。
仙腸関節保護を意識する
【ツイストポーズ】では、上半身と下半身をつなぐ構造である骨盤内の関節である「仙腸関節」に大きな負荷がかかります。
上半身の構造(頭・胸郭・脊骨・臓器・筋肉など)の重さを仙骨を介して骨盤から下肢、足の順で地球との接地面へ適切に伝達するためには、骨盤は左右対称で安定している必要があるため、複数の筋肉や靭帯で構造が補強されています。
ツイストの動きを生じさせるには、1)骨盤の位置を固定して骨盤に対して上半身を回旋させるか、2)上半身と下半身を違いに反対方向へ動かす必要があり、特に片方の股関節を屈曲内転して(身体の前面でクロスして)上半身を反対方向へねじる方法がよく使われます。
例えば、右脚を左脚を超えてクロスし上半身を右にひねるように【ツイストポーズ】を実践する場合、右脚の動きに追従して骨盤の右側は前および左方向へ引っ張られると同時に、背骨(および仙骨)が右に回旋します。
つまり、この時仙骨には左右それぞれから回旋力が加わり、右側の仙腸関節靭帯に大きな負荷がかかっています。
ここに腕の力を使って更に背骨の回旋を深めようとすれば、更に負荷が増加します。
もちろん、仙腸関節を保護する仙腸関節靭帯が正常に機能していたり、ツイストに耐えうる臀筋の筋力があれば【ツイストポーズ】により仙腸関節に痛みなどが生じることはありませんが、なんらかの事情で仙腸関節靭帯が緩んでいたり(一度緩んだ靭帯は戻りません)、仙腸関節を保護して安定させる筋肉群に十分な筋力や張力がない状態で【ツイストポーズ】を行うと仙腸関節の不安定性がさらに悪化し、痛みの原因となります。
仙腸関節の不安定性や痛みがある場合は、【ツイストポーズ】は行わないか適切な対策をとり、負荷の小さいポーズから安全第一で行いましょう。
また、【ツイストポーズ】を左右交互に行いバランスを保ち、【ツイストポーズ】の前後に仙腸関節の対称性を保ったまま行うヨガポーズであるBhujangasanaやVimanasanaを取り入れて、仙腸関節のアライメントに問題が出ていないか確認するようにしましょう。
骨盤の両側と仙骨の関係は、地震や津波の原因となる構造プレートに似ています。
構造プレートは地球の表面を囲むような構造で、通常は一定の圧力によってパズルのようにぴったり接しているので通常動きはほとんどありませんが、稀に地球の中心で発生する熱により互いに滑るように動くことがあり、これらが地面を振動させ(地震)、波(大きくなると津波)を生みます。
仙骨が左右の寛骨にフィットして仙腸関節を構成して脊骨と骨盤のつながりを作っています。
上半身の構造(頭・胸郭・脊骨・臓器・筋肉など)の重さを仙骨を介して骨盤から下肢、足の順で地球との接地面へ適切に伝達するためには、骨盤は左右対称で安定している必要があるため、複数の筋肉や靭帯で構造が補強されています。
しかし、生まれつき、妊娠出産、怪我の既往などが原因で仙腸関節の靭帯が緩み、仙腸関節構造の安定性が低下してしまうことがあります。
一度靭帯が緩むと骨盤(寛骨)と仙骨の適切な関係性が維持できなくなり関越構造の歪みが生じやすくなります。
構造プレートの移動で地震や津波が起こるように、仙骨があるべき位置からずれてしまうことがあり人体軸の不安定感や非対称性、痛みなどを感じるようになります。
また、ゴルフのように片足にほぼ全体重を乗せて回旋する、片方の股関節を少し前に出したまま運転する、非対称性のヨガポーズやストレッチなどのエクササイズを片側だけやる、など左右非対称の活動を継続することでも仙腸関節構造の安定性が低下します。
一度緩んだ靭帯は元には戻らないので、再度仙腸関節の安定性を獲得するには、周囲の筋肉を強化するしかありません。
ツイストが仙骨を元の位置に戻す効果があると言われることもありますが、ツイストは骨盤と背骨の正常な関係に整える効果があるので、変位の種類によってはあり得ます。
ただし、非常に繊細で小さな動きでの調整になるため、正しい分析評価力と適切なアジャストメントができる知識や技術が不可欠なので、プロに依頼するべきです。
また、どれだけアジャストしても安定性の根本問題が改善しない限り、痛みは繰り返し発生しますので、自分で調整する場合は、仙骨に直接アプローチするのではなく、周辺の筋肉強化による改善を目指すほうが得策です。
筋膜リリースやマッサージで硬い筋肉をほぐしておく
特に硬さを感じる筋肉がある場合は、マッサージや筋膜リリースなどを行って柔軟性を向上させてからポーズに向かうようにしてください。
無理にポーズを完成させようとする代償動作で生じる関節痛や怪我を予防できます。
段階的に強度を高める
【ツイスト(ひねり)】は普段の生活で意識して行うことがあまりない動作なので、いきなりヨガポーズの教科書にあるような最終形を作ろうとすると腰や首を痛めます。
現在のコンディションで無理なくできる状態から計画的にポーズの強度を高めていきますが、まずやりたいヨガポーズの解剖学構造(骨格・関節・筋肉・筋膜のつながりなど)のレベルでポーズの本質を理解する必要があります。
その上で、安全にかつ効果が期待できる1回ヨガポーズレッスン内の変化目標と長期的な目標を決め、身体に余計な負担をかけないようにします。
一度に連続してやり過ぎない
何事もそうですがやればやるほど効果が高まる有りませんので、基本原則をきちんと守り、身体によけいな負担をかけないようにしましょう。
できない時の軽減方法を知っておく
【ツイストヨガポーズ】の効果を最大限高めつつ、代償動作による怪我を予防するため、できない時の軽減方法も解剖学的に理解しておきましょう。
基本的に支持面が大きいほど、また、脚が互いに並行または一緒に動かすポーズの方が脚がクロスするものよりも負荷が小さくなります。
現在の身体の状態や目的に合わせて負荷や姿勢を調整ししたり、補助具などを使って筋肉や関節組織に適切な刺激が入るように工夫し、正しい考え方と意識でポーズを続けていると自然に柔軟性が高まりますので、焦らず丁寧に自分の身体と向き合いましょう。