姿勢と生活習慣

「良い姿勢のメリット」と「普段から良い姿勢を維持するための解剖学ガイド」

【『姿勢』が良いことのメリットとデメリット】【良い『姿勢』の基準】【良い『姿勢』の保ち方】など日常で良い『姿勢』を維持するための基礎知識をまとめました。

【姿勢が良い】と自然と人生も良くなる医学的理由

『姿勢』が良いと自然と人生も良くなります

【姿勢が良い】だけで、「実年齢より若く見える」「自信がありそうに見える」など、相手に与える見た目の印象が良くなることは普段から実感している人も多いと思います。

普段から姿勢を意識しているモデルや芸能人は実年齢より若く見えることが多いですし、腰が曲がっている人をみると、まさに文字のごとく「老」を連想しませんか?

私たちが普段接する相手に感じている印象は「姿勢」に大きく左右されていることは否定しようのない事実ですが、【姿勢が良い】ことのメリットは見た目にとどまらず、日々のパフォーマンスや健康状態にも大きく影響しています。

 姿勢が良い姿勢が悪い
第一印象若々しく元気老けて覇気がない
自信(の印象)あるように見えるなさそうに見える
性格(の印象)ポジティブ(明るい)ネガティブ(暗い)
健康状態良好不良
パフォーマンス高い(疲れにくい)低い(疲れやすい)

健康状態が良く、日々の活動のパフォーマンスが高ければ、相手に与える印象がさらによくなり、自信も生まれるので、表情や性格もポジティブになり、さらに周囲の印象がよくなるという好循環が生まれるからです。

「姿勢が良い」と見た目から受ける印象が良くなる

「姿勢が良い」ことの一番わかりやすいメリットは、「見た目から受ける印象が良くなること」で、「良い姿勢」と「悪い姿勢」の人を並べて比較すれば一目瞭然です。

私たちは、本能的に「左右対称でバランスの取れたもの」を美しいと感じますので、左右対称でバランスが取れた「良い姿勢」に対しても本能的に好印象を持ちます。

更に、左右対称でバランスが取れた解剖学的に「良い姿勢」では、「胸が開き(猫背ではなく)」「背筋がスッと伸び」「目線も自然と真っ直ぐ前を捉える(下を向かない)」ため、必然的に「自信がある」「堂々とした」「元気でハツラツとした」印象を与えます。

姿勢と感情表現や性格は、鶏と卵のようにどちらが先ということもなく連動していることもよく知られていますよね。

実際、自信や喜びなどプラスの感情は「胸を張った姿勢に代表される伸展優位の姿勢」として現れやすいし、劣等感や不安などのマイナスの感情は「猫背に代表される屈曲優位の姿勢」として表れやすい傾向があります。

つまり、「嬉しいことがあったり、自分に自信があると自然と胸が開いた良い姿勢」になりやすく、「自信がなかったり、嫌なことがあると伏し目で猫背の悪い姿勢」になりがちな傾向があるということです。

反対に、「前屈みの姿勢になると自尊心や気分が大幅に低下し、恐怖を感じやすく、発言も否定的になり、否定的な経験ばかり思い出すようになる傾向」がありますが、「胸を開き、背筋を伸ばし、目線を上に向けると思考や性格もポジティブになりやすい傾向」があります。

特に、私たちは顔を合わせて相手を認識する機会が多いので、目線(頭の位置)が印象に与えるインパクトはとても大きくなります。

実際、俳優さんや漫画などでも表情だけでなく姿勢を使って様々な感情が表現されていますし、コーチングや面接のアドバイスなどでも姿勢を意識する(姿勢から自信や意欲を見せること)ことを教えられます。

例えば、セリフのないバレエでは身体の動きと表情ですべてを表現するのですが、頭が下に落ちることは絶対にないそうで、頭が下に向くことがあるとすれば、「乞食の役」の時だけだそうです。

ちなみに、下を見るときは頭を下げるのではなく、目線だけそっと落とすようにすれば、姿勢も崩れず印象も変わりません。

「姿勢が良い」と健康状態を保ちつつ効率よく高いパフォーマンスが出せる

「姿勢」は「日々の生活における身体パーツの位置決め」なので、日常活動におけるパフォーマンスや健康状態と常にリンクしています。

人間の身体は、もともと無駄なく無理なく動ける高性能マシンとして作られていますので、医学の観点で【良い姿勢】とは身体が健康であることのひとつのバロメーターでもあります。

つまり、医学の観点で【良い姿勢】とは、「見た目の印象をよくするための姿勢」というよりも「身体の機能構造を最大限に生かすための姿勢」で、身体の機能を最大限活かせるから、結果として「見た目の印象も自然」も良なります。

【良い姿勢】を維持することで、身体の機能が円滑に働き無駄なエネルギーを使わずに済み、筋肉、関節、靭帯などに過剰な負荷をかけないので怪我や痛みのリスクも小さく、神経伝達や血流もスムースになるので健康なので日々のパフォーマンスも必然的に高くなるし、深い呼吸も維持しやすくなるので疲れにくくなり、十分な酸素や血液が巡るので頭も冴えてスッキリしますし、目線も自然に上を向いてくるし、目にもチカラが宿り、前向きになれます。

一方、「悪い姿勢」では、相手に良い印象をもたれないだけでなく、呼吸、循環、基礎代謝など人間としての基礎機能も低下するため、肩こり、腰痛、不眠、肌荒れ、太り気味、眼精疲労、など身体の不良や悩みを引き起こしてしまいます。

実際、多くの現代人が悩む、「肩こり」「腰痛」「眼精疲労」「猫背」などの身体のトラブルや不調のほとんどが、姿勢の悪さによる身体の機能不全(本来の機能が十分に発揮できていない)が大きな要因となっています。

下を向いて長時間を作業をするネイリストにうつ病が非常に多いという事実がありますが、不自然な姿勢を続けることとに加えて、自律神経調整や脳機能に直接的な影響の大きい目にも負担をかけ続けることが続けば、人生を大きく変えてしまうような病気につながってしまっても不思議ではありません。

ネイリストのようなことは、普段下を向いて長時間スマホをい続ける習慣でも同じような原理でうつ病など心の病気につながりやすくなってしまいます。

本来のアライメント(バランスが良く機能的な姿勢)とは異なる悪い姿勢(特定の部位に負担がかかり非効率な姿勢)で生活する時間が長いと、全身のバランスが崩れて、身体の機能が正しく働かなくなってしまうという事実を理解することはとても重要です。

例えば、右脚を骨折して歩くときに右脚が使えなくなったら、今までは左右の脚で支えていた全身の体重を左脚と松葉杖などを使った腕で支えなければならなくなるので、怪我をする前には大変だと感じたことのなかった歩行や椅子からの立ち上がりでさえ、とてもエネルギーを使う動作になりますし、骨折が治癒しても骨折していた右脚のリハビリには膨大な時間と労力がかかります。

日常生活において不良姿勢を続けるということは、これと同じようなこと(ある場所がお休みして、特定の場所に過剰な負担をかける)を繰り返しているのと同じで、とても非効率で身体を痛める行為です。

身体が本来の機能を発揮できない状態が長期間続くけば、脳卒中、高血圧、心筋梗塞、糖尿病などいわゆる生活習慣病と呼ばれる病気や、慢性腰痛や膝関節症などで活動が制限されるような機能障害につながってしまいます。

「姿勢変化」は骨折のようにいきなり訪れて大きなダメージを与えるのではなく、少しずつゆっくりとあなたの身体機能を弱らせて、様々な不調、病気、機能障害を作り出していくので、手遅れになる前に、できるだけ早い段階で意識を向けることが重要です。

良い『姿勢』を3つの要素でチェック!

医学的な【良い姿勢】、つまり、解剖学や生理学の観点でいう【良い姿勢】とは、解剖学的に正常な(人体にとってもっとも負担が少なく効率が良い)アライメントを保ち、生理学的に身体の各機能が無駄なエネルギーを使わずパフォーマンスが高い機能的な姿勢のことです。

普段の姿勢が【良い姿勢】かどうかを評価する重要なポイントは姿勢や運動の軸となる「背骨」と「骨盤」および体幹部をの安定と運動を制御する「コアの筋肉群」の3つです。

  • 背骨
  • 骨盤
  • コアの筋肉群

特に【背骨のライン(生理的湾曲)の変化や背骨とのつながり】と【上半身と下半身をつなぐ構造である骨盤の傾き】は、姿勢の特徴や問題点を知る重要なバロメーターになるので、明確なボディイメージができるまでは、鏡などで視覚的に確認することも大切です。

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立位姿勢チェックのポイント

立位姿勢では、以下の点に注目しながら姿勢を鏡で確認してみましょう。

 正面から見た時真横から見た時
背骨肩の高さが同じ【耳→肩先→ウエストの中心→太ももの真ん中→外くるぶし】をつないだラインが一直線
骨盤左右平行前後に傾いていない
立位姿勢チェック

人体の背骨は、効率よく重力の負荷を分散させて安定した立位と二本足歩行を獲得するため、生理的に湾曲(背骨を真横から見た時にS字にカーブ)した構造になっています。

そのため、真横からの立位の静止姿勢をチェックした時に、【耳→肩先→ウエストの中心→太ももの真ん中→外くるぶし】をつないだラインが一直線になっていれば、機能的な背骨のラインが維持できていることになり、良い姿勢であると言えますが、骨盤の前後の傾きや真正面からみた時に左右の骨盤の位置が平行であることや、肩の高さが同じであることも確認しましょう。

例えば、耳が肩先よりも前に出ていれば「スマホ首」ですし、肩先が前にずれていれば「巻き肩(猫背)」ですし、ウエストの中心から後ろにずれていれば「反り腰」、ウエストの中心部分から前に出ているような「出っ尻」など様々な特徴的な姿勢パターンが見えてきます。

よくある不良姿勢パターン

坐位姿勢チェックのポイント

座位姿勢の評価も基本的なポイントは、基本的に立位の場合の姿勢チェックと同じです。

ただし、股関節を屈曲した姿勢のため、立位よりも骨盤が後傾して腰椎前弯が減少しやすいため、立位より少し腰が丸くなるのは問題ありません。

支持面となる左右の坐骨に均等に体重が乗り、骨盤が前後に大きく傾いていないことが重要です。

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ただし、そもそも座位は、骨盤の位置が正常であっても、首が前に出たり猫背(巻き肩)になりやすく、かつ、姿勢を維持するコアの筋肉が脱力しやすい姿勢です。

つまり、そもそも座位姿勢は立位姿勢よりも不良姿勢が生じやすい傾向がありますので、骨格への意識に加えて、コアの筋肉をバランス良く緊張させて背骨のアライメント(自然なS字カーブ)を維持する意識が必要です。

「首が前に出ていない」「おへそに力が入る」「骨盤が過剰に後傾していない」「骨盤が左右対称で左右坐骨に体重が均等に乗っている」「膝が股関節より下にある」ことなど複数の要素から、正しい姿勢になっているかどうかを確認しましょう。

『姿勢』が悪くなる日常にある原因とは?:筋肉のアンバランス

さて、「デフォルトである」機能的な良い姿勢を維持できれば、「首コリ」「肩こり」「腰痛」などの身体の辛い不調や見た目が悪くなることがないのに、なぜ私たちの姿勢は「悪く」なってしまうのでしょうか?

ずばり、姿勢が悪くなる原因は「生活習慣」による筋肉のアンバランスで、多くの場合は長時間固定されることが多い坐位姿勢です。

「老」という漢字は、「腰が曲がって顎が突き出た老人の姿を形どったもの」だと言われていますが、老人の腰が骨から曲がる(自然なS字カーブが崩れる)のは身体の軸となる背骨周りの筋肉や腹筋や背筋など背骨の正常なアライメントを保つ為に十分な体幹の筋肉量が少なくなったり、筋力が低下することから始まります。

普段の生活の中で骨変形や関節疾患がいきなり生じるほどの強い外力が加わることはほぼありませんが、正常なアライメントや姿勢から逸脱した状態が続くことで、長い時間をかけて、「老」の漢字のように骨や関節のアライメント自体が変形してしまうこともあります(骨の変形は元に戻りません!)ので、人生100年時代を健康で元気に過ごすために、普段から正しい姿勢を意識して修正保持する必要があります。

『坐位姿勢』で筋肉のアンバランスが生じやすい理由

そもそも、人間の身体は立位で活動しやすいように作られているため、長時間坐位姿勢を保持する習慣に適していません。

坐位では立位よりも支持面が大きくなり股関節屈曲位であることが大きな特徴で、立位姿勢より楽で負担の少ない姿勢だと思っている人も多いのですが、もともと立位よりも身体の本来のアライメントを維持しにくい姿勢で、不良姿勢の原因となる筋肉のアンバランスを生じさせやすい姿勢でもあります。

椅子座位

例えば、「椅子座位」。

椅子に座る座位は、主に勉強やデスクワークなど机上作業勉強や食事の時などの姿勢で、子供から大人まで多くの人が長時間続ける姿勢です。

目、口、鼻を含む顔は全て身体の前面にあり、机上作業や運転など手先も身体の前面に置いて前方で集中し続ける姿勢なので、首が前に出がちになり、猫背や巻き肩になる方向への力が入りやすくなるので、首と肩に大きな負担がかかりやすくなります。

また、椅子座位では骨盤下部にある坐骨で上半身を支えられると骨盤が過剰に傾かず、正常な背骨のラインを維持しやすくなるのですが、平面の椅子に対して坐骨の点で上半身を支えるには、立位を保持する以上に強い体幹(コア)筋力が必要になります。

そこで、多くの人は徐々に骨盤を後傾させて背中を丸め(腰椎前弯減少)ながら仙骨を座面につけるような坐位姿勢(仙骨座り/前滑り)になりがちですので、仙骨座りで後ろに重心が移動した状態になります。

その状態で机上作業を続けようとして肩を前に持っていくことで、更に骨盤後傾(腰の丸さ)と猫背(巻き肩)が増強します。

骨盤を後傾して背中を丸め、頭を前に出し、肩が内側に入り込んだ猫背の姿勢では、正しい姿勢を保つための筋肉が正常に作用できなくなり、主に身体の前面にある筋肉群が縮んだ状態でおやすみし、主に身体の後面にある筋肉群が引き伸ばされた状態で更に引っ張られ続けます。

 後面前面症状
頭(首)が前に出る胸鎖乳突筋・僧帽筋など椎前筋群など首こり・肩こり
猫背・巻き肩僧帽筋・菱形筋など小胸筋・大胸筋など肩こり
骨盤後傾・腰が丸くなるハムストリング・腓腹筋など腸腰筋・大臀筋・大腿四頭筋・腹直筋など腰痛

体重の10%ほどの重さのある頭を乗せた首が前に出た状態では、頭が落ちないように引く強い力が必要で、胸鎖乳突筋や僧帽筋など大きな筋肉が強く収縮して硬く凝り固まるので、肩こりや首こりを感じます。

更に、猫背と巻き肩の状態では、小胸筋・大胸筋が短縮して硬くなる一方で、菱形筋など拮抗する作用を持つ筋肉は引き伸ばされたままの状態が続きます。

骨盤が後傾して腰椎の前弯が減少している状態では、ハムストリングスや腓腹筋などの脚の裏側の筋肉群は短縮したまま硬くなる一方で、腸腰筋、大腿四頭筋、大臀筋、腹直筋など骨盤上に上半身を安定させる筋肉には刺激が入らず筋力低下します。

正座

では、他の座位ではどうでしょうか?

例えば、正座。

日常で正座をする人は非常に限られていて、瞑想、ヨガ、宗教上の行事などの目的で行うことが多いと思います。

正座をする時は姿勢そのものが目的になることが多いので、首や肩周りから姿勢が崩れることはあまりありませんが、股関節の屈曲角度や骨盤後傾による腰椎への負担や姿勢の崩れのメカニズムは椅子座位と同じです。

更に、正座は脚前面(大腿四頭筋や前脛骨筋)のストレッチ効果が高い姿勢ですが、膝への負担が非常に大きく、割り座では特に膝関節内側に負担が集中するので注意が必要です。

あぐら座位

では、リラックス座位の代表でもある「あぐら座」はどうでしょうか?

あぐら座は、股関節の外旋・外転が含まれることが他の坐位にはない大きな特徴で、ヨガでは安楽座と言われるようにリラックスしやすい坐位姿勢です。

日本では御行儀の悪い坐位のように考えられていて、特に女性はあまりしない坐位ですが、フランスなどでは女性でも普通にあぐら座で座っています。

あぐら座は股関節屈曲角度が90度以上になりやすく、それに伴って骨盤後傾することで腰が丸くなり、バランスをとるために猫背になってしまいがちです。

長座位

また、長坐位は両脚を伸ばして体幹と下肢がL字になる坐位姿勢である長坐位は、関節への負担が少ないので、下半身や体幹の筋力の状態や柔軟性を評価やヨガやストレッチの際にも基本姿勢としてよく登場します。

ただ、もも裏のハムストリングが硬い場合や骨盤を立てる筋力が弱い場合はとても辛く感じる坐位姿勢なので、正しい軽減方法を知らないと間違ったストレッチなどで腰や首を痛める原因になりやすい座位でもあります。

不良姿勢で「肩こり」と「腰痛」がセットで起こる理由

このような不良座位姿勢を長時間続けると、姿勢を支える一部の「骨格筋」が適切に作用しない一方で特定の筋肉や関節に過剰な負担がかかるという、姿勢保持機能全体のアンバランスが生じてしまいます。

現代人は、スマホパソコン姿勢に代表される機能的ではない猫背坐位のような姿勢を長時間保持することが多くなるなど、機能的な良い姿勢を保持する筋肉群の前後や左右のバランスが崩れやすい環境の中で日々の活動を行なっています。

長時間の坐位姿勢で骨盤や背骨のアライメントや筋緊張のバランスが崩れた状態(腰が丸くなったり、猫背や首が前に出た姿勢)がデフォルトになってしまい、修正しないまま立位姿勢を取ったり、悪くなった姿勢を修正しようとして間違ったストレッチしようとすると、反り腰や出っちりにしてバランスを取る必要が出てくるため、さらに背骨(椎間板)に負担をかけ、より姿勢を悪化させてしまいます。

これが、現代人のほぼ全員が悩んでいると言われる【肩こり& 腰痛】セットの原因となってしまいます。

スマホやパソコンの長時間使用でどうしても猫背になりがちで、猫背が肩こりや首こりの原因になることはよく知られているため、肩こりの解消のために、猫背と反対側の姿勢である背伸びや上体反らしを推奨されますし、パソコン作業の合間に積極的にやっている人も多いと思います。

もちろん、この考え方自体は間違いではないのですが、正しい身体(特に背骨)の解剖学や生理学および運動学的メカニズムを理解して正しく行わないと、腰痛を引き起こしたり、肩こりを増強させる可能性があります。

実際多くの現代人が肩こりと腰痛を併発している原因にもなっているという事実があり、良かれと思って頑張ってやっているストレッチやヨガなどのトレーニングで症状を悪化させているケースも多く見られます。

もしあなたが、肩こりと腰痛を両方に悩んでいたり(自覚症状の差はあれどほぼ100%の人がセットで悩みを抱えています)、ストレッチやマッサージなどを一生懸命行っているにも関わらず、肩こりや腰痛が解消しない、もしくは悪化している場合は、まずこれまでのストレッチや運動をいったんやめて、姿勢を根本から見直すことから始めましょう。

肩こり + 腰痛増強!よくある間違いストレッチ

パソコンやスマホを使っている時、背中が丸まって肩や腕が内側に入り込み、首が前に出ている姿勢になりがちです。

「猫背」や「巻き肩」などと呼ばれる姿勢では、体重の10%ほどの重さのある頭が前に前方に移動するため、頭を支えるために首や肩の後ろ側の筋肉群は非常に強い緊張状態を強いられていて、引き延ばされて疲れ切った首や肩の後ろ側の筋肉群は、疲労物質を溜めてパンパンになり、これが肩こりの自覚症状として現れます。

そこで、辛い肩こりを解消するために、丸まった身体を後ろに反らして、疲れた筋肉を緩めて休ませようようという考えのもと、上体反らしをすると思いますが、多くの人は間違った反り方をして腰や首に過剰な負担をかけてしまいます。

その結果、猫背や肩こりが解消しないだけでなく、腰痛や首の痛みまで引き起こしてしまいます。

  1. 胸椎の後弯が増強(猫背になる)
  2. 肩や腕が内側に入り込む(巻き肩)
  3. 胸椎の柔軟性がなくなる(猫背が定着して慢性肩こりに)
  4. 前に傾いた重心を位置を戻そう(姿勢を正そう)として、胸椎ではなく腰椎と頸椎の前弯増強で代償する
  5. 背骨のアライメントが崩れ、首や腰回り筋肉や神経に負担がかかり痛みや張りなどの不快症状が生じる
  6. 背骨のアライメントが崩れ、首や腰回り筋肉や神経に負担がかかり痛みや張りなどの不快症状が生じる

似たようなことが、普段の生活やヨガなどの姿勢をホールドするストレッチや筋トレでもよく生じていて、自分が動かしやすい方向ではなく、正しくターゲットとなる関節や筋肉にアプローチをしなければ、改善のためにやっているつもりで症状を悪化させてしまうというひとつのよい例です。

問題点がどこにあるのかわからないままなんとなく形を真似したストレッチやトレーニングを続けても効果がでないばかりか、どんどん悪化していくのは解剖学的に考えれば簡単に説明できます。

肩と腰は背骨でつながっていますが、24個の椎骨からなる背骨は、頸椎・胸椎(胸郭の一部)・腰椎・仙骨(骨盤の一部)と3つのパーツに別れています。

腰部分の背骨である腰椎は骨盤の直上にあり、その上に肩関節の重要要素である胸郭の一部である胸椎がありますので、  猫背が原因の肩こりを解消するには、原因となっている胸椎へアプローチするストレッチをする必要があります。

ですが、胸椎は背骨の中で唯一後弯していてそもそも反りにくい構造になっているため、何も意識せずに背骨を反らそうとすると、反りやすい頸椎と腰椎を代償的に過剰に反ってしまいがちで、これが腰椎や首の負担を引き起こす要因になっています。

肩こり + 腰痛 同時解消するための正しいストレッチとは?

背骨の解剖学構造を理解していると、上体反らしを正しく行うことができて、辛い肩こりや腰痛を解消できますしそもそも普段から姿勢を意識して直せるようになるので、そもそも肩こりや腰痛知らずになれます。

また胸郭の柔軟性が低下している状態で、胸郭も狭くなっているため呼吸も浅くなり、内臓が圧迫されて機能低下し、様々な体調不良、肌荒れ、整理不純、肥満などに繋がりますので、胸椎から背骨全体のアライメントを修正することで、これらの体調不良の問題も同時に解決できます。

赤ちゃんの寝返りも胸椎の動きから始まるように、胸椎は背骨運動の起点となる部位なのですが、猫背姿勢が長時間続いているともともと動きの制限要素が多い胸椎の動かし方がわからなくなってしまいがちです。

結果、猫背(胸椎後弯増強)のまま、反らしやすい腰椎を更に反らしてしまい、腰椎に過剰な負担がかかることで腰痛が生じます。

【猫背肩こり+腰痛】のセットを解消するには、まず、身体の変化と問題点を理解して、胸椎の柔軟性を取り戻すことが必要です。

その上で頭が頸椎の上に頚椎の上にまっすぐ乗る正しい姿勢を意識し、姿勢を維持するために必要な筋力を強化することで根本解決につながります。

以下は姿勢を整える時によく使われる言葉ですが、とても的を射ています。

  • 胸を張る
  • 頭を上から引っ張られるように背筋を伸ばす

姿勢が悪くなってきたな、と感じたら、首や腰を後ろに反らすのではなく、胸を張りつつ頭を上に引っ張っていくように胸椎から姿勢を整えていくイメージが実感できるようになります。

また、自分の身体の中で背骨(頸椎・胸椎・腰椎)がどんな構造になっているかイメージし、頭部の位置、骨盤の傾きなどに合わせて胸椎後弯角度と柔軟性(制限している要素は何か)もチェックできるように少しずつ個別の解剖学も勉強していきましょう。

座位姿勢改善コアトレーニング:重要ポイント

「坐位」姿勢は、スマホ姿勢、パソコン作業、運転、食事など日常で長時間とる姿勢で、「坐位」姿勢が悪いこと(猫背や巻き肩など)が肩こりと腰痛など様々な体調不良やパフォーマンス低下の原因になっていることはよく知られていますが、そもそも坐位姿勢が不良(猫背や巻き肩)になりやすい理由まで理解して効果的な対策を取れているひとはあまりいません。

疲れにくく機能的な「良い姿勢」を維持するには、骨盤と股関節、骨盤と背骨の運動学的なつながり(連動)を理解して、軸を安定させる必要がありますが、正しい姿勢を維持するために重要なのは固定する力ではなく、柔軟性とバランスの取れた筋収縮です。

姿勢におけるコアとなる筋肉のアンバランスを見極め、まず凝り固まっている筋肉をストレッチや筋膜リリーズなどで緩めて筋肉の弾力を取り戻し、正しい姿勢に戻してから、弱くなったりお休みしてしまっているコア(体幹)の筋肉群を正しい方法で鍛える必要があります。

姿勢不良が原因で体調不良が生じている時は、無理にジムへ行ったり、スポーツをしようとすると、更に身体に負担をかけてしまいますので、まずは姿勢をリセットして正しい姿勢を意識できるようになることに集中しましょう。

正しい姿勢を保持するためには、正しい骨格(アライメント)を理解し、普段から機能的な姿勢と呼吸に意識を向けた方が有効です。

正しい姿勢に重要な要素について理解し、普段の姿勢や呼吸に意識を向けられるようになってから、姿勢維持や変化に重要な役割を果たすコア(体幹)の筋トレやストレッチなどを行うと、正しい姿勢を自然と維持したまま、効果的なパフォーマンスができる能力が身に付きます。

良い姿勢が維持できるようになると、普段の無駄なエネルギー消費や疲労感がなくなり、運動のパフォーマンスが上がるので、自然と運動量も増えて行きますし、本格的にスポーツなどを始めた時も怪我などなく効果を最大限楽しめます。

コアの筋肉の役割や機能を理解した上で、正しいコアトレーニングを行う方法について整理しましょう。

筋肉名筋肉の特徴生じやすい問題やよくある間違い正しいトレーニング方法のポイント
背骨周りの筋肉群人体の軸:背骨を重力に対抗して上方向に伸ばす複数の筋肉や構造の組み合わせのため、作用イメージが難しい背骨と背骨周りの構造を理解した上で、「軸」を上方向に伸ばす意識が重要
腹横筋骨構造がほとんどない腹腔を囲む腹部最深層の筋肉運動作用が認識しにくいため、機能低下しやすいいわゆる関節を動かす腹筋運動ではなく、呼吸筋や姿勢筋としての機能を意識する
腹斜筋(内腹斜筋と外腹斜筋)腹横筋を左右からサポートし、肋間筋(呼吸補助筋)とも連動外腹斜筋と内腹斜筋は直行する走行で作用も逆ですが、互いに連動して作用するため明確な区別は困難 呼吸と連動する筋肉や機能連結を意識しながら、体幹回旋や側屈要素を入れる
腹直筋体幹前面を広く覆う、体幹前屈の主動作筋意識が向きやすく、身体の前面を縮めるクランチ腹筋などをやりすぎて、逆効果になりがち適切な背骨の弯曲を維持する姿勢筋として、後屈姿勢から直立のニュートラルポジションに戻す作用に注目する
腰方形筋「腸腰筋」と「脊柱起立筋群」の間でそれぞれを制御するように働く姿勢筋姿勢コントロールにおいて常に収縮しているので、疲労しやすく左右差も生じやすい腰椎、骨盤、肋骨(呼吸)運動にも作用しているため、周辺の筋肉とのバランスや左右差をケアする必要あり
大腰筋「腰方形筋」の前部で脚と背骨を接続運動時、同じ股関節屈曲作用がある大腿直筋(大腿四頭筋)作用と混同しやすい解剖学構造と周囲筋肉との連動などを理解したコンディショニングと分離したトレーニングが必要

理論的な良い姿勢がわからない時は、タイトなジーンズを履く時や痩せて見せたい時にお腹を凹ませる動作をしてみましょう。

自然と背筋も伸びて理想的な姿勢に近づいていると思いますので、あとはあごを少し引いて、胸を使った呼吸ができているか確認してみましょう。

鏡で確認しながら、筋肉の走行や役割をイメージしてみてから、もう一度解剖学を整理してみると頭に入りやすくなるかもしれません。

背骨周りの筋肉群

背骨周りの筋肉群は、人体の大黒柱である背骨の可動性と安定性を維持調整するための筋肉群で、筋肉の種類と役割は広範囲に及びます。

背骨周りの筋肉を鍛えるトレーニングや柔軟性を高めるストレッチをする際には、椎間関節と背骨の生理的湾曲を意識して「軸」を伸ばす意識がとても重要です。

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腹横筋

【腹横筋】は、コア最深層を腹巻きのように囲み、姿勢保持筋群の土台となるとても重要な筋肉です。

【腹横筋】は、クランチなどに代表されるいわゆる関節を動かす腹筋運動ではなく、「呼吸」や「軸(背骨)を伸ばす姿勢に意識を向けることで強化できます。

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【腹斜筋(外腹斜筋と内腹斜筋)】は、「腹横筋」とサイドから補強する姿勢筋としての他、様々な運動における筋肉や筋膜の連動において多用な活躍をします。

【腹斜筋(外腹斜筋と内腹斜筋)】は単独でというよりも、呼吸を意識しながら、機能ユニットの中での体幹回旋(片方が回旋ストレッチで片方が収縮)またや側屈(腰方形筋と共に) などでバランスよくトレーニングやストレッチをすることが大切です。

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腹直筋

【腹直筋】は腹筋(コア)の代名詞のような大きな表層の筋肉です。

見た目にもわかりやすく、身体の前面を縮めるクランチのような腹筋で作用していることを実感しやすく、認識が簡単なので、ついついやりすぎてしまい、姿勢や機能改善の観点では逆効果になりがち(目的に対して間違ったトレーニングになりがち)です。

具体的には、他のコア筋肉群作用とのバランスを無視してやりすぎると逆効果(実際背中を丸めるようにお腹を縮める運動をやり続けるだけでは平なお腹にならないし姿勢も悪くなる)になります。

そもそも「腹直筋」の前屈作用は、適切な背骨の弯曲を維持する姿勢筋として後屈姿勢から直立のニュートラルポジションに戻すためにあり、腰に負荷のかかる動きを頻回に行っている私たちの身体構造を守っています。

後屈するときはどこか一点(多くの場合は腰椎下部)に負荷を集中させないように背骨全体で負荷を分散させるように背筋群を収縮させますが、背筋群と同時に【腹直筋】が収縮することで急激な姿勢変化(骨盤の傾き)を抑制する作用もあります。

つまり、姿勢保持筋としての【腹直筋】を鍛える時は、クランチのような前屈動作を頑張るよりも、後屈要素を含むエクササイズの時に【腹直筋】を意識して遠心性収縮することに意識を向けましょう。

これが、【腹直筋】を最も効果的に強化するとともに、全体としての運動パフォーマンスを高めることができるトレーニング方法になります。

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腰方形筋

【腰方形筋】は、「腸腰筋」と「脊柱起立筋群」の間でそれぞれを制御するように働く姿勢筋であり、腰椎、骨盤、肋骨(呼吸)運動にも作用しているので、疲弊しやすく左右差も生じやすい傾向があります。

左右差を意識したコンディショニングで、姿勢バランス保持機能を維持できるようにケアしましょう。

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大腰筋(腸腰筋)

【大腰筋(腸腰筋)】は上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉として腰部の安定性にも重要な役割があります。

長時間坐位や腰椎屈曲のやり過ぎで硬くなりやすく、柔軟性を失った【大腰筋(腸腰筋)】が背骨をひっぱってアライメントを崩す原因になりますので、解剖学構造を理解したコンディショニングを行いましょう。

また、同じ股関節屈曲作用がある大腿直筋(大腿四頭筋)作用と混同しやすいため、「大腿四頭筋」と分離してトレーニングやストレッチを行いましょう。

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姿勢改善のための環境調整とツール

解剖学によるボディイメージ(自分の身体構造の理解)が正しくあり、姿勢を保持調整するための筋肉群に十分な筋力と柔軟性があれば、省エネ効果の高い良い姿勢を自然と保持できるようになります。

とはいえ、そもそも不良姿勢を誘発しやすい環境がデフォルトであり、悪姿勢が習慣化していると、正しいボディイメージの理解や自分への落とし込み難しく、最初は正しい姿勢を維持することを不快(つらいこと)に感じてしまうこともあるため、悪循環から抜け出せません。

そういう時は、環境から整えることで姿勢改善のための第一歩を踏み出すことが有効です。

立位は移動や運動のための姿勢:一箇所に負荷を集中させない!

立位はそもそも移動(動く)のための姿勢なので、同じ姿勢をずっと続けることはあまりありません。

そのため、立位姿勢においては、悪い姿勢習慣を予防する環境調整というよりも、一箇所に強い負荷をかけるように身体を痛めない配慮が重要になります。

例えば、歩きやすく自分の足にぴったりの靴を履く、荷物を片側だけでなく両側でバランスよく持つようにするなど、姿勢を乱す外的要素を排除することが重要です。

たったまま姿勢を維持する時は、定期的に鏡を確認して「正しい姿勢」を意識するようにしましょう。

不良姿勢は座位に始まる?!

何か他の活動に集中したり、食事をしたり、リラックスする時など、日常的に長時間する座位では、姿勢への意識を持ち続けるのが難しいため、不良姿勢パターンのほとんどは坐位姿勢から始まります。

そして、その悪い姿勢が立位姿勢、日常活動、運動パフォーマンスなどにも反映されてしまいます。

つまり、「正しい姿勢」を維持するための環境調整としては、日常的に長時間行う坐位姿勢において、「正しい姿勢」を作り、維持できることを目的にするととても効果的です。

適切に活動を行うことができる姿勢を作ることを「ポジショニング」と言いますが、それを座った姿勢で行うことを「シーティング」といいます。

座位は1日で最も長時間とる姿勢であり、食事、仕事、勉強など多くの日常生活活動の基礎姿勢なので、「シーティング」が適切にできれば、最適な身体の位置を保持しながら機能的な運動ができるので、肩こりや腰痛に悩むことも疲れることなく、長時間仕事、作業、趣味など没頭できる時間がつくれますし、立位姿勢、歩行、運動をする時のパフォーマンスも改善できます。

正しいパソコン作業姿勢を作る

長時間のパソコン作業による肩こりや腰痛に悩む人が増えていますので、長時間パソコンで作業する人は、まずパソコン作業時の環境を改善するととても効果的です。

正しい姿勢を維持できるパソコンディスプレイの位置

長時間続くパソコン作業においては、軽くあごを引いて胸を張った状態で目線が丁度よい位置にディスプレイを置きましょう。

パソコン作業時に適切な姿勢

股関節屈曲角度を小さくしたり、立位で作業する

また、股関節の屈曲角度を75°位にするように座布団などで調整したり、時々立位で作業すると、骨盤と腰椎をニュートラルに保ちやすくなり、坐位での腰への負担を立位とほぼ同じレベルで維持できます。

股関節屈曲角度と腰部への影響について詳しくはこちら

もちろん、座面を調整した場合や立位で作業を行う場合は、高くなった目線に合わせてディスプレイの位置も再調整しましょう。

シーティングツールを使う

すでに崩れた姿勢が慢性化してしまっている場合は、意識して戻せるようになるまでに時間がかかりますし、正しい姿勢が実感としてよくわからない場合も多いと思います。

その場合、姿勢を保つ努力を最小限になるように人体構造を計算して作られた市販のシーティングツールを使う方法もあります。

シーティングツールとは、胸郭、骨盤、脚、足の支持面を快適な位置に保ちつつ、身体の軸がぶれずに安定したまま疲れずに目的のパフォーマンスを実践できるような坐位を作りやすいように工夫がされています。

しかも使い方は簡単で、普段使う座面や椅子の上におき、お尻を奥まで入れて深く腰掛けるだけ。

お尻のまわりをぴったりフィットさせたら、一度後ろにもたれて肋骨の支えと背骨が伸びた感覚を確かめてみましょう。

楽ちんで気持ちいい坐位姿勢を一瞬で実感できますし、長時間坐位で腰痛を感じていた人、肩こりや首こりを感じていた人も、筋肉の緊張が和らぎ、全身の負担が軽くなっていくのを感じられます。

座面も快適で、座った時の圧力を分散させる構造になっていて、長時間のデスクワークやドライブでもお尻が痛くなりにくいので、快適に過ごせます。

折りたたんで持ち運べる軽量なシートタイプなら、仕事中はもちろん、ドライブ、食事、寛ぎのソファーでもいつでも一番負担の少ない姿勢で快適に過ごせます。

正しい姿勢を普段から維持していると、姿勢保持に必要な筋肉にも徐々に意識が向くようになり、効果的なトレーニングを行えるようにもなります。

-姿勢と生活習慣