関節の動きと可動域

【仙腸関節】運動方向(作用とROM)【イラスト図解でわかりやすい運動学と解剖学】

【仙腸関節】が動く方向(作用)と範囲(関節可動域:ROM)についてイラスト図解でわかりやすく説明しています。

【仙腸関節】解剖学構造と特徴

【仙腸関節】は、人体の大黒柱である「背骨(脊柱)の末端部」を構成する「仙骨」と、「仙骨」とともに骨盤を形成して上半身(背骨)と下半身(大腿骨)をつなぐ骨である「寛骨」による骨盤内関節です。

関節要素特徴
仙腸関節【仙骨】耳状面
【腸骨(寛骨)】耳状面
靭帯によって連結が補強

【仙腸関節】構成要素

【仙腸関節】は「仙骨」と「左右寛骨(腸骨)」による関節ですが、「仙骨」と「腸骨」は【骨盤】の一部でもあり、「仙骨」は【背骨(脊柱)】の一部なので、「仙骨」は第5腰椎と「椎間関節」を、「寛骨」は「大腿骨」と「股関節」を構成しています。

【仙腸関節】要素特徴関節
仙骨背骨最下部
骨盤中央部
第5腰椎と「椎間関節」
左右寛骨(腸骨)骨盤の空間を作る
上半身と下半身をつなぐ
「大腿骨」と「股関節」

【仙腸関節】は、【骨盤】の構成要素でもあり、「脊柱(椎間関節)」および「股関節(下半身)」の動きに連動する衝撃を吸収し、姿勢やバランス調整に重要な役割を果たす人体の関節のひとつです。

【仙腸関節】作用の特徴と役割

「骨盤」は運動の中心(上半身と下半身の連結部分)にある骨ユニット構造で、【仙腸関節】のみを単独で動かすことはとても難しく、通常は「脊柱(背骨)」や「股関節」の動きに連動します。

【仙腸関節運動】によって「背骨」や「股関節」にはどのような影響があるか、もしくは、「背骨」や「股関節」を含めた運動や姿勢によって【仙腸関節】がどう作用するのかという視点で考えることが使える知識にするためにとても重要です。

人体の大黒柱である「背骨」末端部である【仙骨】と上半身と下半身をつなぐ骨である左右の【寛骨】で構成される【仙腸関節】は、他の関節に比べて動きの小さい目立たない関節ですが、二本足歩行をする人類の姿勢や動きの中心にあるため、腰痛予防改善、姿勢改善、運動パフォーマンス改善のキーになる体幹(コア)の中心関節といっても過言ではありません。

また、これは全ての関節に共通することですが、【仙腸関節】の動きと付着している靭帯や筋肉の緊張は連動するので、筋肉や靭帯の特徴も合わせて理解しておくことも重要で、身体の中心にある【仙腸関節】の動きや構造を正しく理解できることで、股関節、骨盤、お尻周りだけでなく【仙骨ストレッチ】と呼ばれて注目されている深層部の筋肉の正しく効果的なセルフメンテナンス(ストレッチや筋トレ)が行えるようになります。

【仙腸関節】作用(役割)

身体の中心にある【仙腸関節】は、姿勢や運動になどによる重力外力および全身の骨格(関節)の状態に影響を受け、全身状態が整うように調整しようとする役割がある関節です。

  • 上半身と下半身の連結と連動調整
  • 身体の中心での衝撃吸収

【仙腸関節】だけを切り取るのではなく、身体全体の構造をイメージしながら【仙腸関節】の作用(役割)を整理しましょう。

上半身と下半身の連動調整

【仙腸関節】の役割のひとつめは「上半身と下半身の連結と連動調整」で、これは、【仙腸関節】の解剖学的な構造と位置がわかっていればすんなりとイメージできると思います。

【仙腸関節】を介して、「上半身(背骨)」の情報が「下半身(股関節以下)」に、逆に「下半身(股関節以下)」の情報が「上半身(背骨)」に伝わるので、上半身と下半身が連動した滑らかに動きの調整ができます。

【仙腸関節】の動き自体は小さいので、姿勢保持やバランス保持を含む「背骨」や「骨盤(股関節)」運動には【仙腸関節】による調整作用が関与している(【仙腸関節】の働き次第で股関節や背骨の動きを含む運動パフォーマンスが変わる)と考えた方がイメージしやすいかもしれません。

身体の中心での衝撃吸収

「上半身」と「下半身」をつなぐ身体の中心にある関節である【仙腸関節】のもうひとつの重要な役割は身体の中心での衝撃吸収です。

【仙腸関節】のこの役割はとても重要なのですが、詳しく説明した解説書はほとんどないので、基本的なことから丁寧に書いてみたいと思います。

ここでいう「衝撃」とは、転んだり、ぶつかったりなどのように急激に大きな力が加わることだけではなく、普段の生活で、「何か物を持ち上げたりしたときに加わる重さ」や「歩いたりするときに片脚を持ち上げたりしたときに移動する重心(体重)」なども含みます。

人体関節には、他にも「背骨の前弯後弯構造(S字カーブ)」「足関節の回内/回外運動」「股関節の内旋/外旋運動」など多様な衝撃吸収構造がありますが、【仙腸関節】は、「うなずき運動」と「逆うなずき運動」の2つの運動で「重心移動」「重力」「外力」などによる衝撃を吸収しています。

この後に【仙腸関節】運動方向について説明しますが、【仙腸関節】関節運動は「衝撃吸収のためにあること」を念頭においた上で、他の関節との連動を含めて整理していきましょう。

【仙腸関節】運動方向(ROM)

【仙腸関節】が動く主な目的(作用)は「連動調整」と「衝撃吸収」なので、動く範囲は3~5mm程度とごくわずかです。

【仙腸関節】の運動方向は、「仙骨」矢状面(体を左右対称に切る面)上の回旋運動を中心に考えるので、以下のように名前がついています。

運動方向目的
うなずき運動
Nutation(ニューテーション)
身体の中心にかかる衝撃や体重を吸収
逆うなずき運動(起き上がり運動)
Counternutation(カウンターニューテーション)

【仙腸関節】は他の関節のようにわかりやすい可動域(ROM)を持って運動(動き)をする訳ではないのですが、【仙腸関節】の動きが「背骨の動き」や「股関節の動き」に反映されていることを理解することがとても重要です。

【仙腸関節】運動は、他の関節のように単独で動く方向を覚えることにはほとんど意味がありませんので、なぜそのような動きをするのか、その動きによって身体にどんな変化が起きるのかを考えてイメージするように意識しましょう。

うなずき運動(ニューテーション)

【仙腸関節】の「うなずき運動(ニューテーション)」は、身体の中心にかかる衝撃や体重を吸収するために起こる動きです。

【仙腸関節】は身体の中心にある「上半身」と「下半身」をつなぐ関節なので、「下半身(脚)」および「上半身」から重力および衝撃が集まりますが、「仙骨」が前方へうなずくように回旋しながら傾く(仙骨岬角が前下方かつ仙骨尖が後上方に動く)と同時に「腸骨」は反対方向へ回旋して衝撃を吸収します。

【仙腸関節】うなずき運動(ニューテーション)が最大可動域に達するまでに「靭帯」が「負荷」を吸収し、その反動で反対方向の運動である逆うなずき運動(カウンターニューテーション)切り替わりますが、「靭帯」で支えられる以上の衝撃が加わった場合は、【仙腸関節】が捻挫して体幹が不安定になります。

いわゆるぎっくり腰などの急性腰痛は【仙腸関節】の捻挫が原因で、【仙腸関節】の捻じれが続くと「腰椎」に負荷が集中するため「慢性腰痛」の原因にもなります。

逆うなずき運動(カウンターニューテーション)

【仙腸関節】の「逆うなずき運動(カウンターニューテーション)」とは、うなずき運動(ニューテーション)の反動運動で、仙骨が起き上がるように(仙骨岬角が後上方かつ仙骨尖が前下方に)動く運動です。

「腸骨」は「仙骨」と反対方向へ同時に回旋します。

【仙骨ストレッチ】とは?〜正しく効果的なやり方〜

【仙骨ストレッチ】のやり方をよく聞かれます。

【仙骨】自体は骨なので厳密にはストレッチできませんが、「仙骨(仙腸関節および骨盤)」周辺の筋肉や靭帯などの組織を柔軟にかつ適切な緊張度を保つことは姿勢を正しく保ち健康を維持するためにとても重要です。

まずは【仙腸関節】や【骨盤】まわりに付着した筋肉(骨格筋)や靭帯などの組織の解剖学構造を理解した上で、症状や希望に合わせて【仙骨ストレッチ】や筋トレに挑戦してみましょう。

【梨状筋】ストレッチ

【梨状筋】は「深層外旋六筋」と呼ばれるお尻深層部の筋肉(骨格筋)で、「仙腸関節」と「股関節」運動に関与する2関節筋で、「坐骨神経」上部を走行しているため「梨状筋症候群」と呼ばれる坐骨神経痛の原因筋としても有名です。

【梨状筋】の柔軟性がなくなると「仙腸関節」と「股関節運動」に制限がかかり、特に上半身と下半身の連動する回旋運動がやりにくくなります。

【梨状筋】は、立位を保持して姿勢を支えるためにも重要な筋肉なので、緊張をほぐしたらしっかりとバランスよく筋力を鍛えて適度な筋緊張を保つ必要があります。

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【大臀筋】ストレッチ

【大臀筋】は、お尻表層でお尻のラインを作る大きな筋肉(骨格筋)で、「仙骨」および「仙腸関節まわりの靭帯」に広く付着しています。

座り姿勢が多く運動不足の現代人の【大臀筋】は引き延ばされて凝り固まっていることが多いので、まずマッサージや筋膜リリースなのでコリをしっかりとほぐし、筋力強化エクササイズ(筋トレ)をすることで、筋肉の柔軟性を高めて「仙腸関節」および「骨盤」運動における柔軟な可動性を取り戻しやすくなります。

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【多裂筋および脊柱起立筋群】ストレッチ

「背骨(脊椎および脊柱)」に広範囲に付着して、姿勢や運動に作用している【多裂筋】および【脊柱起立筋群】などの固有背筋群も「仙骨」および「仙腸関節」に広く付着しています。

背骨全体の調整効果のあるヨガポーズや姿勢をニュートラルに整えて行う意識的な腹式呼吸などで、【多裂筋】および【脊柱起立筋群】などの固有背筋群ほぐして柔軟性を高めることができ、「仙腸関節」および「骨盤」運動における柔軟な可動性を取り戻しやすくなります。

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【骨盤底筋群】ストレッチ

【骨盤】構造を下からサポートする【骨盤底筋群】の一部が「仙骨」に付着しています。

【骨盤底筋群】の効果的なストレッチおよびトレーニング方法としては呼吸がオススメです。

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