前腕の筋肉

【前腕筋肉】種類一覧まとめ【イラスト図解でわかりやすい筋肉解剖学】

「前腕」に主要な筋腹を持つ筋肉群を【前腕筋肉】としてまとめ、名前、種類、分類、解剖学構造(起始・停止・作用・神経支配)を一覧で整理しました。

【前腕に筋腹を持つ筋肉】とは?

「上腕骨」または「前腕の骨」から起こり「前腕」に主要な筋腹を持つ【前腕筋肉】は、前腕の太さや形状を決める筋肉であり、家事など日常生活からラケットスポーツ、野球、ゴルフ、家事、腕相撲など前腕・手首・手指の細かい動きや調整、パワーが必要な時に広範囲に活躍します。

「前腕」に主要な筋腹を持つ【前腕筋肉】のほとんどは、手根(手首)を越え手内の骨に停止しますが、手根を越える筋は前腕で細長い腱になって手根部で腱鞘に包まれて、前面では「手根管」、後面では腱区画を通り「屈筋支帯」や「伸筋支帯」によって固定されます。

テニスやバトミントンなどのラケットスポーツ、野球やゴルフなどスウィングが重要なスポーツ、手首を酷使するコックさん、家事で忙しい主婦、パソコン作業やスーツケースなど重い物を持つことが多いビジネスマンなど【前腕筋肉】を酷使(誤用や過用)した場合、【前腕筋肉】起始部の炎症である「内側上顆炎」や「外側上顆炎」、停止に近い腱部分の炎症である「腱鞘炎」などで、肘や手首の痛みや痺れを生じることがよくあります。

【前腕筋肉】解剖学構造を意識したセルフケアやコンディショニングで、手首や指の機能を高めれば、怪我や痛みを予防して高いパフォーマンスが維持できます。

【前腕筋肉】解剖学構造と分類

【前腕筋肉】は、機能(位置)から、まず大きく「前部(手掌側)」と「後部(手背側)」に分類でき、前部と後部それぞれの筋群を「深層」と「表層」の筋群に分類できます。

筋肉名ふりがな英語名
前面表層
円回内筋えんかいないきんPronator teres
橈側手根屈筋とうそくしゅこんくっきんFlexor carpi radialis
尺側手根屈筋しゃくそくしゅこんくっきんFlexor carpi ulnaris
長掌筋ちょうしょうきんPalmaris longus
浅指屈筋せんしくっきんFlexor digitorum superficialis
前面深層
深指屈筋しんしくっきんFlexor digitorum profundus
長母指屈筋ちょうぼしくっきんFlexor pollicis longus
方形回内筋ほうけいかいないきんPronator quadratus
後面表層
腕橈骨筋わんとうこつきんBrachioradialis
長橈側手根伸筋ちょうとうそくしゅこんしんきんextensor carpi radialis longus
短橈側手根伸筋たんとうそくしゅこんしんきんextensor carpi radialis brevis
総指伸筋そうししんきんextensor digitorum
尺側手根伸筋しゃくそくしゅこんしんきんextensor carpi ulnaris
小指伸筋しょうししんきんextensor digiti minimi
深層橈骨神経
回外筋かいがいきんSupinator
長母指外転筋ちょうぼしがいてんきんabductor pollicis longus
短母指伸筋たんぼししんきんextensor pollicis brevis
長母指伸筋ちょうぼししんきんextensor pollicis longus
示指伸筋じししんきんextensor indicis

【前腕筋肉:前面】:屈筋群

前腕に筋腹がある筋肉のうち「前面(手掌側)」にある筋肉群は、主に「手根と手指の屈曲」と「前腕回内」に作用する筋肉が含まれます。

「前面(手掌側)」にある筋肉群のほとんどが「正中神経支配」ですが、「尺側手根屈筋」は「尺骨神経」から、「深指屈筋」は「正中神経」と「尺骨神経」の両方から支配を受けています。

【前腕筋肉:後面】:伸筋群

前腕に筋腹がある筋肉のうち「前面(手背側)」にある筋肉群は筋肉は「橈骨神経支配」で、主に「手根と手指の伸展」と「前腕回外」に作用します。

【前腕前面(手掌側)表層の筋肉】

前腕に筋腹がある筋肉のうち「前面(手掌側)」表層にある筋肉群には、以下の5筋が含まれます。

筋肉名ふりがな・読み方英語名主な作用
円回内筋えんかいないきんPronator Teres前腕回内
橈側手根屈筋とうそくしゅこんくっきんFlexor Carpi Radialis手首掌屈
尺側手根屈筋しゃくそくしゅこんくっきんFlexor Carpi Ulnaris手首掌屈
長掌筋ちょうしょうきんPalmaris Longus手首掌屈
浅指屈筋せんしくっきんFlexor Digitorum Superficialis手指屈曲

「前腕前面表層群」に含まれる5筋は、全て「上腕骨内側上顆」から起始し、「共通の屈筋腱」で覆われているため、相乗的に前腕、手首、手指の多様な運動に作用します。

「尺骨神経(C7-T1)支配」の「尺側手根屈筋」以外は全て「正中神経 (C6-C7)支配」です。

【円回内筋】

【円回内筋】は、「橈側手根屈筋」「尺側手根屈筋」「長掌筋」「浅指屈筋」と共に前腕前面浅層の筋群に分類され、その中で最外側にある筋肉です。

【円回内筋】の主な作用は前腕の回内で、前腕が回内すると掌が下を向くため、パソコンや家事など作業をする姿勢を作る時によく働きます。

ゴルフ肘や野球肘などの「肘関節炎(内側上顆炎)」は【円回内筋】の疲労が原因の場合があり、【円回内筋】の過緊張で正中神経が圧迫されると腕や手の痺れの原因となります。

デスクワークや家事などでも継続的に負荷がかかる筋肉のため、夕方疲れてくると痺れを感じるなどの場合は要注意です。

【円回内筋】解剖学構造を理解して効果的にセルフメンテナンスをしましょう。

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【橈側手根屈筋】

【橈側手根屈筋】は最強の手首屈筋(掌屈筋)で、「腕や手首の繊細な調整」 + 「パワー」が重要なスポーツ(野球・ゴルフ・テニスなど)で活躍します。

【橈側手根屈筋】と「長掌筋」が一緒に作用することで、橈骨側へ変位のない掌屈(屈曲)が生じ、【橈側手根屈筋】と「長橈側手根伸筋」および「短橈側手根伸筋」と一緒に作用することで、「掌屈」や「背屈」を含まない「橈屈(外転)」作用が生じるなど、他の前腕筋群との協調的な作用により、様々な動作が可能になります。

また、【橈側手根屈筋】は、「前腕回内」や「指の過剰な伸展の抑制」にも貢献しています。

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【長掌筋】

【長掌筋】は前腕前面表層の筋肉に分類され、握りこぶしを作った時に手首で最も目立つ腱である「手掌腱」につながる筋肉で、手掌腱膜を張ることで血管や神経を保護したり、他の筋肉作用の調整役をしています。

【長掌筋】は木登りなどをする哺乳類でよく発達している筋肉ですが、人類においては退化している傾向があり、先天的に欠損している人(10%程度)も増えています。

【長掌筋】が欠損していても手内筋や他の前腕筋群により作用がカバーされて特に問題はないので、美容整形やスポーツなどで損傷した靭帯に対して「長掌筋腱」を移植することがあります。(大谷選手やダルビッシュ投手も行った肘の手術:トミー・ジョン手術などが有名)

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【浅指屈筋】

【浅指屈筋】は、前腕前面深層にある「深指屈筋」と共に指の屈筋群としても強力に作用し、物を握る(握力を出す)動作でよく働きます。

【浅指屈筋】は4指それぞれに独立した筋束が作用するため、近位指節間関節の独立した屈曲ができますし、広い筋腹があるため、前腕の太さや形状にも大きく影響します。

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【尺側手根屈筋】

【尺側手根屈筋】は、「上腕骨内側上顆」から始まる手首の屈筋群の中では最内側(尺側)にあり、他の筋群と協力して「手首の掌屈」に作用すると共に、「手首の尺屈」にも強く働きます。

日常生活ではもちろん、ゴルフや野球のピッチングなど手首の調整が重要なスポーツで活躍する筋肉なので疲労しがちなので、【尺側手根屈筋】の解剖学的構造をイラストで理解して効果的なストレッチや筋トレで怪我予防しつつパフォーマンスを高めましょう。

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【前腕前面(手掌側)深層の筋肉】

前腕に筋腹がある筋肉のうち「前面(手掌側)」深層にある筋肉群には、以下の3筋が含まれます。

筋肉名ふりがな・読み方英語主な作用
深指屈筋しんしくっきんFlexor Digitorum Profundus手指屈曲
長母指屈筋ちょうぼしくっきんFlexor Pollicis Longus母指屈曲
方形回内筋ほうけいかいないきんPronator Quadratus前腕回内

前腕後面表層筋群のほとんどは、「上腕骨外側顆」から生じる共通の「伸筋腱」を介して「上腕骨遠位端」から起始します。

また、前面表層筋群の深層筋肉群のほとんどは、「正中神経支配(深指屈筋の一部は尺骨神経支配)」で、主に「前腕回内」と「手首および手指の屈曲」に相乗的に作用します。

【深指屈筋】

【深指屈筋】は、「尺骨の近位部分」から広範囲で起始し、「第2~5指末節骨底」まで走行しています。

【深指屈筋】は単独でも作用しますが、通常は前腕前面表層にある「浅指屈筋」や手内在筋ある「虫様筋」「短小指屈筋」と相乗的に作用して、握力を要する動作や物を掴む動作、特に握った状態を維持する時に重要な役割をします。

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【長母指屈筋】

【長母指屈筋】は、「深指屈筋」「方形回内筋」と共に前腕前面深層の筋肉群に分類され、前腕前面表層筋群の深層(骨の近く)に存在します。

【長母指屈筋】は母指IPの独立した屈曲運動に作用する唯一の筋肉として「深指屈筋」と並走し、握る動作に大きく貢献しています。

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【方形回内筋】

【方形回内筋】は「尺骨遠位前面」から起始し、短く平らな四角形の筋腹を構成するように走行して「橈骨遠位前面」に停止します。

【方形回内筋】の主な作用は「前腕回内」で、「ジャムの瓶のフタを回す」「ドライバーを回す」「ピッチャーがシュートボールを投げる」時など手首で細かい調整が必要な時に活躍し、遠位前腕を保護するサポーターのような役割もしています。

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【前腕後面(手背側)表層の筋肉】

前腕に筋腹がある筋肉のうち「前面(手背側)」表層にある筋肉群には、以下の6筋が含まれ、全て「橈骨神経(C5-C8)」支配です。

筋肉名ふりがな・読み方英語主な作用
腕橈骨筋わんとうこつきんBrachioradialis手首背屈
長橈側手根伸筋ちょうとうそくしゅこんしんきんExtensor Carpi Radialis Longus手首背屈
短橈側手根伸筋たんとうそくしゅこんしんきんExtensor Carpi Radialis Brevis手首背屈
総指伸筋そうししんきんExtensor Digitorum指伸展
尺側手根伸筋しゃくそくしゅこんしんきんExtensor Carpi Ulnaris手首背屈
小指伸筋しょうししんきんExtensor Dgiti Minimi小指伸展

前腕後面筋肉のうち、浅層にある筋群は「上腕骨遠位」から起始し、ほとんどが「上腕骨外側顆から生じる共通の伸筋腱」を介しているため相乗的に前腕、手首、手指の多様な運動に作用します。

位置的にはこの分類に「肘筋」も含まれますが、「肘筋」については「上腕三頭筋」作用と密接に連携しているため、「上腕の筋肉」に分類して解説しています。

詳しくはコチラ!

【腕橈骨筋】

【腕橈骨筋】は「前腕後面表層筋群」に分類される筋肉ですが、解剖学的部位分類による法則には当てはまらない、走行も機能もかなり特殊な筋肉です。

【腕橈骨筋】は、独特な走行から、前腕回内位で「肘屈曲筋」として強力に作用します。

肘関節屈曲筋としては、前腕に筋腹を持つ「上腕二頭筋」は有名ですが、前腕中間位でビールジョッキを持つ時、ハンマーを使う時やボートを漕ぐ時など強い力が必要な時に【腕橈骨筋】が主肘関節屈曲筋なって作用します。

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【長橈側手根伸筋】

【長橈側手根伸筋】は、前腕後面筋群(手首伸筋群)として、物を掴んだり持ち上げたりする時などに重要な役割をする筋肉です。

【長橈側手根伸筋】は、テニスのバックハンドなどのように「前腕回内位で手首を伸展するような運動」で強く作用し、使いすぎ症候群であるテニス肘(「長橈側手根伸筋」および「短橈側手根伸筋」の挫傷や断裂などで肘の内側が痛む)の原因筋としてもよく知られています。

【長橈側手根伸筋】解剖学的構造を理解して、効果的なストレッチや筋トレでセルフメンテナンスしましょう。

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【短橈側手根伸筋】

【短橈側手根伸筋】は、並走する「長橈側手根伸筋」と協力して、物を掴む動作やテニスのバックハンドなど手首を伸展しながら握力を出すような動作をでよく働く筋肉です。

手背伸筋群が働いて手首を伸展位に保つ(掌屈を制御する)ことで、手指屈筋群の作用を最大化して把持(グリップ)力を効率よく高められます。

「長橈側手伸筋+短橈側手伸筋」および「橈側手根屈筋」と相乗的に作用する時は、「橈屈(外転)」が生じます。

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【総指伸筋】

【総指伸筋】は、指伸筋の中では最強かつ最表層にあり、4本の指を同時伸展させる唯一の筋肉でもあります。

拮抗する指の屈筋は「浅指屈筋」と「深指屈筋」の2つに別れていますので、ひとつの筋肉で2つの筋肉に拮抗している力強い手指伸筋だと言えます。

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【小指伸筋】

【小指伸筋】は「総指伸筋」の内側(尺側)を走行して、第5指(小指)の独立した伸展運動に作用する筋肉です。

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【尺側手根伸筋】

【尺側手根伸筋】は、前腕後面表層筋群に分類される筋肉で一番内側(尺側)にあり、グリップ(握力)を高めたり、ゴルフやバッドのスイング、釘を打つ、テニスのバックハンドなど手首での調整が重要な運動で活躍しています。

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【前腕後面(手背側)深層の筋肉】

前腕に筋腹がある筋肉のうち「前面(手背側)」深層にある筋肉群には、以下の5筋が含まれます。

筋肉名ふりがな・読み方英語主な作用
回外筋かいがいきんSupinator前腕回外
長母指外転筋ちょうぼしがいてんきんAbductor Pollicis Longus母指外転
短母指伸筋たんぼししんきんExtensor Pollicis Brevis母指伸展
長母指伸筋ちょうぼししんきんExtensor Pollicis Longus母指伸展
示指伸筋じししんきんExtensor Indicis第2指伸展

この筋群に分類される筋肉は全て「橈骨神経」の枝である「後骨間神経(C7-C8)」によって支配されていて、前腕、手首、手指(第1指と第2指)の多様な運動に作用します。

【回外筋】

【回外筋】が収縮すると、「近位橈尺関節」で「橈骨」を外側に回旋させる作用が生じ、「橈骨」と「尺骨」が並行になるため掌が上を向き、前腕回外運動が生じます。

例えば、ポップコーンを掴んで口に入れる時など抵抗がなくゆっくりと回外する場合は、【回外筋】だけで十分な力を発揮でき、主要な回外筋となります。

一方、ジャムの瓶のフタを回す、ドライバーを回す、ワインのコルクを抜く、バトミントンやバレーなど前腕の調整が重要なスポーツなど、素早さや強さを要したり、強い抵抗に対して回外する時は、主要な回外筋は前腕に筋腹を持つ「上腕二頭筋」になり、【回外筋】は補助として作用します。

ただし、肘が完全に伸展した状態では「上腕二頭筋」は回外に作用しないため、肘関節90度で回外の作用は最大化します。

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【長母指外転筋】

【長母指外転筋】は、「肘筋」停止部のすぐ下あたりの前腕後面から起始して下外側に走行して第1中手骨底に停止する筋肉で、主な作用は第一手根中手関節における母指外転と伸展です。

また、「短母指伸筋」「短母指伸筋」など母指伸筋群と相乗的に作用して「第1中手指節関節での伸展」や、他の前腕後面筋群と相乗的に作用して「橈骨手根関節における手首の運動(伸展・橈屈)」にも作用します。

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【短母指伸筋】

【短母指伸筋】は、前腕に筋腹を持ちますが、主に母指の独立した伸展運動に作用する筋肉です。

【短母指伸筋】は、「第1(母指)手根中手関節」と「中手指節関節」に作用して母指の独立した伸展運動を起こしますが、「母指中手指節関節伸展」は「長母指伸筋」との相乗作用です。

また、他の前腕後面筋群と相乗的に作用して、「橈骨手根関節における手首の運動(伸展・橈屈)」にも作用します。

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【長母指伸筋】

【長母指伸筋】は、前腕に筋腹を持ちながら、長い腱を有して母指の独立した伸展運動に作用する筋肉です。

【長母指伸筋】の主な作用は、「第1中手指節間関節と指節間関節の伸展」ですが、母指が完全伸展または外転している時は「母指内転」を補助する作用も生じます。

また、手首を介しているため、他の手根伸筋群と一緒に「手首の伸展および尺屈」や「前腕回外」にも関与します。

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【示指伸筋】

【示指伸筋】は、「尺骨遠位」から起始して細い筋腹を構成し、手背で「第2指の指背腱膜」に停止する筋肉で、主な作用は、名前の通り「人差し指(示指)の独立した伸展(伸ばす)」です。

4指を同時を伸ばす「総指伸筋」とは別に存在することで、人差し指だけを伸ばす運動(指を指す)が可能になります。

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